注目のスタートアップ

一般社団法人Gifted Creative 峯上良平|生きづらさを抱えた若者へのオーダーメイドの伴走支援事業が注目の企業


生きづらさを抱えた若者へのオーダーメイドの伴走支援事業で注目されているのが、峯上良平さんが2019年10月に創業した一般社団法人Gifted Creativeです。

現在の日本においては、若者の「自立」に向けた、暗黙の了解としての「路線」が存在すると言われます。学校に通い、卒業して、就職して、結婚して、家を持って・・・といった具合です。一度その路線から外れてしまうと再びそこに戻ることが難しく、誰にも相談できないまま、引きこもりやうつ病発症や最悪の場合は自ら命を絶つという選択をしてしまう方もいるというのが実情です。
「こうあるべき」という目に見えない何かに囚われて、生きづらさを感じている若者が日本国内にたくさん存在しています。

加えて近年は、コロナの影響で若者のニートやメンタルヘルスの不調が急増中です。
2020年時点でニート数は87万人、特に15~24歳の若年層が大幅に増えており、全体数の増加に影響しています。これは飲食業などのパート・アルバイト先が時間短縮営業や休業となり、職を失った若年層がニートにならざるを得なかったことによるものと考えられます。
こうした背景も相まり、メンタルヘルスの不調によるうつ病発症者数も増加しています。特に、若者や女性を中心にうつ病発症が急増しており、新型コロナが流行する前は7.9%(2013年調査)だったところ、2020年には17.3%と2.2倍になっています(経済協力開発機構調べより)。
同様に『ひきこもり』者数も増加傾向にあり、大きな社会問題の一つです。

このように生きづらさを感じて悩み苦しむ人が減っていくことによって、個人の幸せな人生がたくさん開けるだけでなく、日本社会全体の活性や発展、勢いにも通じ、今まさに叫ばれているSDGs達成への要因にもなり得るでしょう。

今、悲しい現状を変え、日本社会全体の意識改革に挑戦する起業家の取り組みに、注目が集まっています。
一般社団法人Gifted Creativeの事業の特徴は、生きづらさを感じている若者たちがシェアハウスでの共同生活を通じて、生活リズムや精神状態の安定、自己理解、他者理解、自己肯定感等を身に付け、それぞれが納得のいくライフワークを見つけ出すまでを伴走しているという点です。
自身も鬱を発症し、引きこもりの経験がある代表やスタッフによって運営されているので、当事者視点でのサポートに徹底して寄り添ってくれるのも他にはない特徴です。

一般社団法人Gifted Creativeの峯上良平さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このサービスを開発しようと思ったきっかけや経緯について教えてください。

『支援する側、される側』、福祉の世界ではどうしてもこの構図が出来上がってしまっているのではないでしょうか?
代表の峯上も鬱でひきこもっていた当時、福祉に繋がろうと感じることが出来ませんでした。
相談窓口で何を言われるんだろうという不安や、体力のなさ、気持ちの落ち込みなど私自身の問題や、日本自体の福祉の課題、特に精神障がいに対する制度の問題がありました。
A型はどれもカフェなど飲食、接客系が多く、B型は単純作業かつ工賃もかなり低いところが多い。
もちろんそこを改善しようと頑張られている方もおられますが、制度の中での縛りが成長を鈍化させていました。

【当事者が本当に欲しい支援は何なんだろうか】

元々、当事者だった私は、その視点を持っていました。
例えば多くの当事者は、家の基礎を作らずに家を建て始める、というようなことをしてしまいます。
つまり、体力やメンタルの安定という、家でいうところの『基礎』がコントロール出来ない状態で、無理をして働こうとしてしまうわけです。

そこで我々は、空き家を活用し、シェアハウスを始め、当事者経験のある私や仲間達と共同生活を始めました。
どうしても実家では親御さんに甘えられる環境があったり、親子関係の悪化が本人のモチベーションを下げてしまう傾向があります。一定の距離感が非常に大切だということを、支援経験上わかっていますので、シェアハウスでの共同生活という形式を取り入れることにしました。

・このサービスの特徴は何ですか?

個人の状態に合わせ、段階的に社会復帰や自立を促し、それぞれが納得のいく『ライフワーク』を見つけられるように伴走しています。

第一ステップに生活リズムを整えることで、働けなくなる前の6割くらいまで回復します。しかしながら、まだまだ働けるまでの体力は足りません。

第二ステップでは徐々に運動量を増やしていきます。和歌山ならではの熊野古道を歩いたり、海で遊んだり、農作業をしたりすることで楽しいこと、疲れがあるものの達成感を感じながら体力作りができます。

第三ステップでは自分自身の就労準備を整えていきます。
自己理解、社会性、心身の安定、就業意欲、業務適正などはたらく上で必要な能力と、自らの認知の偏りや特性への対処を学びます。

第四ステップでは連携先の企業で一時間の短時間就労から始め、徐々に時間を増やし、最低限自立できる収入を確保します。
我々はそれをライスワークと呼んでいますが、ここだけでは他の福祉サービスと変わりません。
我々が欲しいのは、自分自身の人生に納得ができるちょうど良い仕事、つまりライフワークです。

人それぞれ価値観が違うため、
①仕事はライスワークとして割り切り、趣味をライフワークにする方
②ライスワークとライフワークのバランスを取る方
③ライスワークの収入をライフワークに投資しライフワークの割合を増やす方
などそれぞれにキャリア支援や起業支援も行います。

鬱、ひきこもり、支援、パラレルワーカー、起業など生きづらさを改善した私や仲間達が一緒に悩み、挑戦することでひとつひとつ、課題を克服し、共に成長しながら日々、生活を送っています。
これまでシェアハウスに半年以上滞在した方の就労率は100%
もちろんそれまでに退去した方もおられますが、家賃が払えないというお金の問題だったり、住人に迷惑をかけてしまった場合など人としてのルールを守れない場合のみです。
真面目で人に優しい方がピアサポーターや住人にはいます。

・どのような方にこのサービスを使って欲しいですか?

働きたい、変わりたいなどの意志を持っている方に使って頂きたいと考えています。
過去を後悔したり、未来に不安が私にもありました。
鬱などの精神障がいになるとどうしてもネガティブな考えを持ってしまい、自分は何てダメなんだと諦めそうになる気持ちは理解できます。
ただ元気になって振り返ると、自分自身がダメなのではなく、自分に合っていないやり方がダメだったと気づくことが出来ました。

私は生きづらさを抱えた若者には、その生きづらさの経験を乗り越えることが出来れば、沢山の可能性や能力があると感じています。
日本社会は確かに我々には合っていないことが多い。
だからといって自分自身を諦める必要はなく、自らが行動し、挑戦、失敗から学び、改善し続ければだんだんと生きやすくなります。
始めはどうしてもこんなことをしても意味があるのかと思うかも知れません。
しかし、その積み重ねが後々になって、あれがあったから今があるときっと思うでしょう。

・このサービスが解決する社会課題はなんですか?

うつ、ひきこもり、不登校、ニート、発達障がいなど、本来なら難しいと言われている領域の福祉制度を変え、空き家を活用しながら、全国にGiftedモデルをベースとしたシェアハウスを作り、より多くの若者が社会復帰できる仕組みを作りたいと考えています。
生活訓練、就労訓練、定着支援、キャリア支援など切れ目なく伴走することが我々当事者には必要であり、働くことのみを目的とした支援ではなく、自分らしく生きるための手段を一緒になって学べるというゴールを目指すことで、様々な問題が解決できるのではないでしょうか。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

私は農作業により体力の回復、心理学や認知行動療法でメンタルの安定、時計屋を起業することでビジネスを学んでおりましたが、福祉は全くの素人からスタートしました。
今でこそきちんとしたサービスを構築することが出来ましたが、当時は本当に試行錯誤の連続で、周りからは理解されませんでした。
峯上は何をしたいのかわからない。峯上とは関わらない方が良い。口先ばっかりで何もしていない、など散々陰口を叩かれたり、支援が難しい方を紹介されるなどの嫌がらせもありました。

今では和歌山県からGiftedモデルをベースにした農心連携事業を採択頂き、2年目を迎えることが出来ています。
時計事業からの投資で三年間は赤字でしたが、ようやく黒字化の目処が経ちました。
しかしながら、助成金事業だけではあと2年しかないため、Gifted Creativeの事業を新たに作り、完全に自立しないといけないため、まだまだ道の半ばだと思います。

今後、どのような会社、サービスにしていきたいですか?

生きづらさを抱えた若者がいなくなり、生きたい!と心の底から思える社会を実現させるために邁進していきます。

私がGifted Creativeを始めたきっかけは、友人の過労自殺です。
私は初めて働いたSEという仕事で鬱になって、ひきこもったけれど立ち直り、農業と時計屋で社会復帰できていました。
しかし、同じく会社でしんどくなった友人は、自殺という選択を選ぶしかなかったのです。

学生時代、私はその友人と同じ寮に住んでいて、テスト期間には、毎日のように部屋にいき、遅くまで勉強を教えてくれました。
私と違いその友人は、きちんと復習や勉強をしていたので、テスト前日にはしっかり睡眠を取りたかったはずです。
でも自らの睡眠時間を削ってでも私や勉強できない同級生を助けてくれました。

私はその恩を何一つ返せていないのです。その悔しさ、友人の死を無駄にしたくないという想いがあります。

過労自殺や若者の死。
一度はニュースに取り上げられ、社会問題として世間に広がるものの、時間が経てば風化する。そんな社会で良いのでしょうか。
私は、いつかあの世でその友人に、「君の死によって社会が変わったよ」と伝えたい。そのために活動しています。
日々、自らの至らなさや上手くいかないことの方が多いのですが、私は決して諦めず、生きづらさを抱えた若者が生きたいと思える社会の実現を本気でやりたいと思っています。

・今の課題はなんですか?

発達特性やトラウマなど、どうしても既存の仕事では働けない若者がいます。
それを解決するためには、新しく仕事を生み出す必要があります。
しかし、それも十分な解決策とは言えず、それを行う起業家を多く集め、連携することで多くの選択肢を若者に提示できるようにしないといけません。
私や仲間達だけでは、まだまだ足らず、志のある起業家、経営者の方との繋がりが必要です。

・読者へのメッセージをお願いします。

まずは起業をされた皆様のことを尊敬しています。
私はお恥ずかしながら、会社員として雇われることが出来ずに起業という選択をしましたが、皆さんは想いを持って起業されたのではないでしょうか?

起業というと周りは、
「そんなの簡単にできる訳がない」
「無理だよ、悪いことは言わないからやめときなさい」
と心無い言葉を言われたことがきっとあると思います。
世の中の素晴らしいサービス、製品は、全て一人の人間の勇気から始まっていると私は感じます。

諦めず、挑戦し、失敗から学び、改善し、また挑戦する。
頭で分かっていても、なかなかそれが出来ずに諦めてしまう人が大半だと思います。

しかし、成功した起業家は、諦めなかったからこそ、成功しているのであって、諦めた人やそれを見た人が起業は難しいと言っているだけです。

始めは自己資金や無料のサービスを活用し、頭を捻ってから始めるなど、小さく始め、徐々に大きくすることが大切だと実感しています。
私もまだまだ未熟ですが、きちんと戦略と選択、そして努力を重ねれば前に進み続けることができています。
うつ、ひきこもりで本すら読めなかった私でも、今、経営をしています。
よく経営者は孤独だと言われます。

従業員との間には溝があったり、想いが伝わらなかったり。
そんな孤独は、生きづらさのある私と近いものがあると思います。
私で良ければいつでもお話を伺うので、しんどい時はお声がけください。
私でなくても、困った時は一人で悩まず、周りに相談しましょう。
別の視点が狭くなった視野を広げ、解決の光が見えるようになります。

共に社会をより良くする仲間として頑張りましょう。

会社名 一般社団法人Gifted Creative
代表者名 峯上良平
創業年 2019年10月
事業内容 生活訓練、就労支援、キャリア支援
サービス名 生きづらさを抱えた若者へのオーダーメイドの伴走支援
所在地 和歌山県田辺市上芳養2533
回答者プロフィール :一般社団法人Gifted Creative 代表理事
(株)ニュータイプ・ラボ 相談役
いいね(株)取締役
大企業に入社するも1年目にうつを発症し休職、入院を経て退職。実家の梅農園にてリワークを行い、社会復帰。友人を過労自殺で亡くした事がきっかけで自殺を行う人々がいなくなるよう、就労支援の場を作る活動をはじめる。2018年5月、最初は一人暮らしをしていた自宅から居場所作りを始め、2019年6月にシェアハウスをオープン。現在では生きづらさを抱えた若者を対象としたシェアハウスを4軒運営。農作業での就労支援や、自身のうつ克服の経験から生きづらさを抱えた若者の仲間、居場所、仕事作りのアドバイザーとして活動を行っている。シェアハウスに住む11名は就労&定着率100%。セミナー登壇・企業コンサルやシェアハウス立ち上げ支援を行っている。
読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ GiftedCreative うつ ニート ひきこもり 不登校 峯上良平 発達障害
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