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うつ病など精神疾患を対象としたVRとアプリによる治療方法「VRデジタル療法」を開発する「BiPSEE」が資金調達

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2023年6月1日、株式会社BiPSEEは、資金調達を実施したことを発表しました。

BiPSEEは、うつ病を中心とした精神疾患を対象として、VRとスマートフォンアプリを用いた新たな治療方法「VRデジタル療法」を開発しています。

抗うつ薬の効き目が弱いとされる「反芻」傾向の高い患者を対象に、第三世代認知行動療法などを基盤に、反芻の背景にある感情や考え方と距離を置くことをサポートするVRのアプローチで治療を行います。

2023年6月現在、高知大学と共同で患者を対象とした探索的試験により、医学的な有用性の確認を行っています。

「VRデジタル療法」は、従来の治療法では効果の出にくかった患者への新たな治療法の提案、医療の質によって効果の差が出やすかった精神疾患の領域において均質的な医療サービスを提供できる、高い費用対効果を実現できるといったメリットがあります。

今回の資金は、研究開発のさらなる加速に充当します。


治療用アプリは、デジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics:DTx)とも呼ばれており、米国では「エビデンスに基づき臨床的に評価されたソフトウェアを利用して患者に直接医療行為を行うことにより、疾患・障害の治療・管理・予防を行うもの」と定義されています。

世界初のDTxは、米国で2010年にWellDoc社が承認を取得した、糖尿病管理用アプリ「BlueStar」です。

日本では、CureApp社が2020年8月に承認を取得したニコチン依存症治療用アプリが国内初の事例となります。

DTxは、アプリによって患者に継続的に介入し、治療効果を向上させたり、患者の情報の取得・把握を行うことで医師の負担の軽減を図るというものです。

主に患者の行動変容が治療につながる疾患が対象であり、現在はうつ病、耳鳴り、パニック障害、アルコール依存症などの治療用アプリが承認され、実際の治療で利用されています。

厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査」によると、気分[感情]障害(躁うつ病を含む)の患者総数は約110万人となっています。これは実際に病院にかかった患者のみが数えられているため、実際にはこれよりも多くの患者がいると考えられています。

うつ病は精神的ストレスや身体的ストレスなどにより、脳がうまく働かなくなっている状態です。一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめない、不眠、食欲不振、疲れやすいといった症状があらわれます。

うつ病は日常生活に大きな支障をきたします。重症になると希死念慮という、自殺についてくり返し考えてしまう状態になり、自殺のリスクを高めます。

うつ病の治療としては、主に抗うつ薬を利用した薬物治療や、認知行動療法や対人関係療法を利用した精神療法などが行われています。

しかし抗うつ薬を利用した薬物治療は、ネガティブな考えにくり返し陥ってしまう反芻思考が強い患者の場合、効果が弱いことが課題となっています。

一方、精神療法は実施する医者などの専門家のスキルにその効果が左右されてしまい、治療の質が一定でないことが課題となっています。

DTxは、こうした精神療法において、一定の質の治療を経済的に提供できるため、今後市場が拡大していくと考えられています。

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