IVRy 奥西 亮賀|起業であっても、9割程度は定石通りにやるほうが成功する

創業手帳人気インタビュー

「運要素以外で失敗する要素はすべて潰すべき」奥西氏に聞く起業につながる緻密なキャリア構築法

「起業したい」。ビジネスパーソンであれば、誰しも一度は抱く思いではないでしょうか。巷には起業のための方法論があふれていますが、精神論のようなものも多く、より着実な「起業の方法論」を知りたいという方も多いでしょう。

1日100円、最短5分で導入可能な自動電話応答サービス「IVRy(アイブリー)」を運営されている奥西亮賀氏は、「起業であっても定石通りにやったほうが成功しやすい」と断言します。

大学院を卒業後、リクルートに入社。エンジニアとしてのバックグラウンドも持ち、12月には3億円の資金調達も実施。今最も脂が乗っているスタートアップと言っても過言ではない、IVRyを経営する奥西氏に、成功するサービスの作り方や、起業するためのキャリアの築き方などについて、創業手帳の大久保が聞きました。

奥西 亮賀(おくにし りょうが)株式会社IVRy(アイブリー)代表取締役
1991年生まれ。2015年、同志社大学大学院理工学研究科情報工学専攻(博士課程・前期)修了。同年、株式会社リクルートホールディングス(現:株式会社リクルート)に新卒入社。保険事業のUI/UXディレクタ〜プロダクトマネージャー、EC事業のプロダクトマネージャーとして、新規事業の立ち上げ〜グロース戦略の策定および実行を担当。その後、2019年3月に株式会社IVRy(旧Peoplytics)を創業し、2020年11月電話自動応答サービス「IVRy(アイブリー)」を正式リリース。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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安価な電話自動応答サービスIVRy

大久保:IVRyのサービスについて教えてください。

奥西:IVRyは、従来大企業を中心に使われてきた「IVR」と呼ばれる自動音声応答システムを、ラーメン屋さんなどの店舗経営者や中小企業経営者の方でも使えるように安価に、なおかつ使いやすくした電話自動応答サービスです。

とくに創業したてのころはすべての電話に対応する時間がもったいないですよね。電話に出てみても9割くらいは営業電話などあまり出たくない電話ばかりで。でも残りの1割にはお得意様からの電話や予約の電話など、重要な電話もあります。そのため、結局は電話に出ざるをえない店舗経営者の方も多いはずです。

IVRyはそのような方々にこそ、おすすめしたいサービスです。電話がきたら出たい人の電話は自動応答なしで直接受電し、出たくない人の電話は自動応答に回せます。

大久保:それは便利ですね。営業電話は出ずに、お得意様の予約の電話だけに出る、みたいなことができるわけですね。

奥西:そうです。あらかじめ電話に出たい顧客を「ホワイトリスト」として登録しておけば、自動応答なしで常連さんの電話にだけ出ることも可能です。

大久保:店舗経営者などにうれしいサービスですね。

奥西:我々も小規模店舗経営者にこそ、使っていただきたいと考えています。

私がこのサービスを着想したきっかけについてお話しします。起業当初、代表電話を私の携帯電話にしていたところ、営業電話ばかりかかってきて鬱陶しかったんですね。あまりに面倒なので、「無視しても大丈夫だろう」と、無視を決め込むようになりました。

それからしばらくして、融資の話を進めていたときに、銀行からの融資の本人確認の電話が来たんです。でも私は当然のごとく無視しました。それで融資の審査に落ちてしまいました(笑)。

大久保:それは難しい問題ですね(笑)。

奥西:そうなんです。創業したてでサービス開発に集中していたら、融資のチャンスを逃してしまった。私の場合キャッシュがあったので一命を取り留めましたが、一撃即死になるケースもあるかもしれません。このときに、「電話ってすごく重要だな」と思わされました。

でも、そのすごく重要な電話は、全体の1割しかこない。そのためにほかの無駄な9割の電話に出るのは、ものすごい大変ですよね。この課題を解決できるサービスを作れないか、ということでIVRyを着想しました。

大久保:実体験に基づいてサービスができたんですね。

奥西:はい。融資の話もありますが、おそらく電話で一番悩まされているのは街のラーメン屋さんみたいな方々だと思うんです。美味しいラーメンを食べてもらいたい一心で経営しているのに、いちいちどうでもいい営業電話に邪魔される。それによって美味しいラーメンを作ることに集中できなくなると、お店にとっても、お店のお客様にとってもよくないですよね。そういった店舗経営者の方々の力になれれば、と思ってサービス開発を進めてきました。

そうしたスモールビジネスほど、電話の価値ってまだまだ高いんです。店舗の場合、顧客はリアルタイムで知りたい情報を聞くために、その場で電話をかけてくることが多いですよね。その電話に出れるか出れないかで顧客を逃してしまうこともあります。シニアの方も、ネットよりもまだまだ電話で問い合わせる方が多いですよね。そうしたことからも、「出たい電話にだけ出られる」電話サービスは、店舗経営などのスモールビジネスにおいてこそ価値が発揮できる、と考えています。

大久保:店舗・顧客双方にとって価値がありますね。

奥西:そうなんです。実際に、IVRyを導入したことで売り上げが顕著にアップしたという顧客もいます。

店舗経営者のようなスモールビジネスオーナーの方々にも気軽に使ってもらえるように、価格も1日100円、つまり、1ヶ月3,000円という価格にしました。

大久保:従来のコールセンターの自動応対サービスのようなものと比べると、破壊的に安いですね。

奥西:従来、大手企業向けに作られていた同様の電話応対サービスは、大手のSIerが数百万円〜数千万円程度かけて作成し、ランニングコストにも数十万円かかっていました。

大久保:今までありそうでなかったサービスです。

奥西:シニアの方々でも使いやすいようにUI・UXを作っていて、おかげさまで使い心地についてはご好評いただいています。設定も簡単で導入は最短5分、早い方だとホームページの反映まで15分程度で終わらせる方もいます。

大久保:すごく魅力的なサービスだと思います。

奥西:ありがとうございます。現在では45都道府県、20以上の業界の方々にお使いいただいています。累計受電件数も100万件を突破しました。

調べたら、電話の体験って、ここ50年〜100年くらいずっと変わっていないんですよね。「受けたい電話だけ受けられる」という本来あるべき電話体験の形をこれからもっと作り込んでいきたいです。

使いやすいUI・UXが強み

大久保:とても魅力的なサービスですが、そのなかでも、強みと言えるポイントはどこでしょうか。

奥西:デジタルに疎いシニアの方でも直感的にわかりやすいUI・UXが最大の強みですね。実際に、操作方法についての問い合わせがあまり来ないので、月額3,000円という安さで提供できている、というのもあります。

電話領域で、我々ほど顧客目線を徹底できているサービスはあまりないのではないでしょうか。昨日もエンジニアと「このコード一行を削るのに時間をかけるより、もっとお客様の理解に時間をかけたほうが、お客様のためになるのでは」なんて話をしていました。

大久保:なるほど。顧客目線のUI・UX開発に強みがあるのですね。

奥西:そうですね。UIについては特許も申請しているところです。

先日、2月22日にリリースを出したのですが、CXプラットフォームのKARTEさんと組んで、KARTE上で集めたWebサイトやアプリ閲覧のデータログと、IVRyのデータログを統合できるようになりました。

大久保:電話対応する人のWebサイト閲覧履歴がわかる、ということですか。

奥西:その通りです。ユーザー一人一人の閲覧履歴に基づいた、より丁寧な顧客対応が可能になりました。

エンジニアとして多数のプロダクトを開発

大久保:奥西さんのバックグラウンドはエンジニアですよね。

奥西:そうですね。大学時代にプログラミングと出会って、アプリ開発をやったり、大学院の研究室でも、光の制御の最適化問題の研究に取り組んでいました。今でいうAIの走りみたいな研究ですね。

当時、観光地での観光のレコメンド機能がついたアプリを作って、「これめっちゃいいじゃん」と思って大人に見せに行ったんです。そうしたら「これでどうやってお金を稼ぐんですか」と言われてしまいました(笑)。

そのときに「自分でマーケティングとかお金の稼ぎ方を学ばないと、いいサービスを作っても使ってもらえないのかな」と思ったんですね。それで「ビジネスを学ぶなら」ということで、ビジネスパーソンとして鍛えられそうなリクルートに入社しました。

大久保:優秀な大学生だったんですね。

奥西:リクルートに入ってからは、プロダクトマネージャーとしてアライアンスを組んだりマーケやったりUXやったりと、幅広くビジネスのことに関わりました。

リクルートでは保険領域のサービス開発に取り組んでいたのですが、5つほどのサービス開発に携わって、うち1つのサービスが大当たりしたんですね。その体験を経て、プロダクト開発が得意になり、「新サービスは10作って1当たればいいかな」という教訓を得ました。

大久保:起業することは、リクルート在職当時から考えていたのでしょうか。

奥西:入社前から起業しようとは思っていて、「3年で辞めます」と最初から伝えていました。結局4年ほどかかりましたが。

2019年の3月にPeoplytics(ピープリティクス)という会社を創業して、人材データ分析領域でサービス開発を始めたのですが、うまくいきませんでした。

そこで、「サービスを10作って1当てる」戦略をとり、2019年末から1ヶ月に1個ペースで新サービスを作るようになり、7つ目のIVRyが大当たりした、という経緯です。

大久保:それは大変でしたね。

奥西:2019年7月にIVRyのサービスをリリースしたところ、1ヶ月での反響が全然違ったので力を入れ始めました。

決定的だったのは、2021年の5月です。新型コロナウイルスワクチンの接種のために医療機関に電話が殺到したときに、医療機関からIVRyの問い合わせも急激に増えたんです。そのタイミングで「IVRy一本にサービスを絞ろう」と決めました。

2021年12月にはシリーズAでフェムトパートナーズ、プレイドから3億円を調達し、現在はよりスケールさせていくためにいろいろと施策を打っている最中です。

「スキルがないから起業に失敗」は×

大久保:最初から起業する選択肢もあったと思いますが、会社に入ってよかったですか。

奥西:絶対によかったですね。リクルートに入るまでは、LPとかコンバージョンとかそうしたビジネス用語すら全然知らなかったので、入社して丸一年はググってばかりで、よく「奥西の話は意味がわからない」とビジネスサイドの人たちから文句を言われていました(笑)。2年目になったあたりからようやく戦力になり出したみたいな感じでしたね。ビジネスについて学べたのはリクルートに入ったからです。

大久保:なるほど。会社員ならでは、というところだと、何かありますか。

奥西:やっぱり、失敗できることでしょうか。とある年の年度末に600万円くらい予算が余ったので「全部リスティング広告にぶち込んでみよう」となって600万円を投下して1つもコンバージョンが取れないという失敗をかましたことがあります(笑)。独立していたらできませんよね。

大久保:確かに失敗できることは会社員の特権かもしれませんね。独立してからは大変ですからね。それで経験値になることはあるでしょうね。

奥西:あとは、人脈ですね。リクルート在職時からサービス開発を一緒にやっていたフリーランスのエンジニアたちの約6割〜7割と今でもお付き合いさせていただいています。

大久保:起業するにあたって、スキルも人脈もどちらも重要ですからね。

奥西:はい。起業しようと決めたのは入社前でしたが、そこからは起業に必要そうなスキルや人脈を意識的に身につけていきました。マーケティングであったり、ファイナンスであったり。そうしたスキル的な面がないまま勢いで独立して、「マーケティングがわからなかったから起業に失敗した」というのが一番よくないと思っています。あらかじめ準備できることじゃないですか。

大久保:おっしゃる通りです。

奥西起業するまでにどのようなスキルを身につければ、あとは起業してからの「運次第」という状況まで持っていけるのか、緻密に考え、準備してから起業すべきだと思います。

メディアでは「いきなり独立してうまくいった」みたいな人を取り上げがちですが、実際に起業で成功しているのは、きちんと準備してきた人がほとんどだと思います。

9割くらいは定石通りにやればいいと思うんですよ。例えば、ファイナンスやマーケティングには定石がありますよね。でもそのなかで、1割くらいはほかのスタートアップがやらないような独自性のあることをやればいいと思うんです。そこにスタートアップごとの個性が出てきますよね。

起業初期のファイナンス戦略

大久保:最初は資金調達をせずにプロダクト開発に集中されていたんですね。

奥西:そうです。最初は受託開発で得た利益をプロダクト開発に回してやっていました。そもそも、我々のように「10試して1うまくいけばいい」みたいな開発方針を取っているスタートアップに出資してくれる投資家はいなかったのではないでしょうか。

我々のような場合、融資を受けたほうがメリットがありましたよね。投資を受けると、1つのプロダクトに集中しなければならなくなったはずですから。でも、決定的にうまくいきそうなプロダクトができるまでは、出資を受けず、融資のほうが都合がいいとは思います。

大久保:今は出資を受けてどんどんスケールさせていく段階ですか。

奥西:はい。IVRyに絞り込んだので、3億円の資金調達をさせていただきました。

我々は早い段階から信託型ストックオプションも発行していて、価値ある人材に対して還元するために今という早い段階から枠を用意しています。

我々は1,000億円〜1兆円の時価総額企業を目指しています。そのために最適なファイナンス戦略は何なのか、ということは常に考えていますね。エクイティとデットのバランスは、ものすごく考えています。

将来的に実現したい事業展開から逆算してファイナンス戦略を組むことは、起業家にとっては非常に重要だと思います。

会社を成長させるために一番重要なこと

大久保:起業して会社を成長させていくのに一番重要なことは何だとお考えですか。

奥西起業家によって答えは違うと思いますが、私の答えは、「創業者の個性」です。

創業者がどのようなタイプなのかによって、事業の伸ばし方は変わってくると思います。だから、起業家は自分自身のことを客観的に見極めないといけないですね。

例えば、SNSで発信してガンガンバズる人がいますよね。カリスマ性のある人なのかもしれません。

私自身はといえば、そのようなことができない人間です。どちらかといえばコツコツと地味に積み上げていくタイプだと自己認識しています。ただ、コツコツタイプだからこそできる戦略、というものもあるはずです。

「スタートアップだからもっと目立たなきゃ」みたいに履き違えてしまうと、どんどん変な方向に行ってしまうのかな、と思います。

メディアに出ない、ということではなく、きちんと実力通りに我々のことを伝えていく、というスタンスで私はやっていこうかなと思っています。

起業家へのメッセージ

大久保:最後に、起業家や起業志望の方にメッセージをお願いします。

奥西:私は2019年末の3ヶ月、ずっと一人でサービス開発をしていたのですが、その時期が一番苦しかったです。

でも、自分がとことん考えて「やりたい」と思ったこと、お客様のためになることを愚直にやっていくと、どこかのタイミングで仲間ができるはずです。真剣にやっていれば必ず共感してくれる人、理解してくれる人が現れます。そうなると、めちゃくちゃ楽しいです。
ちなみに、僕たちもまだまだ仲間を募集しています。

今苦しんでいる人も、あと少し耐えれば楽しくなるはず。だからどうか諦めないでいただきたいです。

大久保:本日は、IVRyの奥西さんから起業する方に向けて役立つ実践的なお話をお伺いできました。

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(取材協力: 株式会社IVRy(アイブリー)代表取締役 奥西 亮賀
(編集: 創業手帳編集部)

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