注目のスタートアップ

視覚障害者向け靴挿入型歩行ナビゲーションデバイス/システム「あしらせ」を開発する「Ashirase」が3億円調達

company

2022年10月5日、株式会社Ashiraseは、総額3億円の資金調達を実施したことを発表しました。

Ashiraseは、靴に挿入することで振動によってルートをナビゲーションするアタッチメントデバイスと、そのナビゲーションシステム「あしらせ」を開発しています。

位置情報とユーザーの足元の動作データから誘導情報を生成し、振動の位置と間隔により、直感的に理解できる情報を通知します。

このシステムは、視覚障害者が単独歩行を行う際、音声案内では周囲の重要な情報を聞き逃してしまうことや、安全確認とルート確認の手間といった課題を解決するものです。

Ashiraseは、本田技研工業株式会社(Honda)の新事業創出プログラム「IGNITION」発の第1号スタートアップとして、2021年4月に設立されました。

今回の資金は、「あしらせ」の2022年度内のコンシューマー向け販売の開始、事業拡大に向けた体制の構築、海外展開を見据えた現地実証の加速などに充当します。

政府のデータによると、視覚障害者は約30万人存在するとされています。

さらに、日本眼科医会は2009年に、視覚障害の認定から外れているものの、眼鏡などの視力矯正器具などを着用しても視力などの問題により日常生活に支障が出るロービジョン者は約145万人存在すると発表しています。

視覚に障害を抱える人が外出する場合、盲導犬やガイドヘルパーに頼ることになります。

一方で、盲導犬は全国に861頭(2020年度)しかおらず、さらにその数は減り続けています、

また、ガイドヘルパーについても自治体ごとの利用制限が設けられているため、自由な外出はできないという現状があります。

こうした背景から、視覚に障害がある人の日常生活をテクノロジーによって支援する取り組みが注目を集めています。

たとえば、夜などの暗所での視力が著しく衰える夜盲症を対象とした、光を増幅させて視界をディスプレイに表示するヘッドマウントディスプレイや、網膜に直接映像を投影する技術などが研究開発されています。

Ashiraseの歩行ナビゲーションデバイス/システム「あしらせ」は、靴に装着したデバイスの振動によって歩行をナビゲーションするというものです。

視覚に障害がある人にとって聴覚は歩行にとって重要な感覚なのですが、多くの歩行ナビゲーションは音声ナビゲーションを中心としているため、聴覚を阻害するケースがあります。

一方「あしらせ」は振動という触覚を利用するものであるため、聴覚を十全に利用でき、さらに身軽になるというメリットがあります。

株式会社Ashiraseのコメント

このニュースを受けまして、株式会社Ashirase 代表取締役 千野歩氏よりコメントが届きました。

・今回の資金調達の目的は何ですか?

資金調達の大きな目的は二つです。

・2022年度内のコンシューマ向け販売の開始
・確実な事業開始と拡大に向けた体制拡充

まず、2022年度内のコンシューマ向け販売の開始に向けた、量産体制の構築を完了させます。

また、事業拡大に向け、継続したアプリケーションのアップデート、ハードウェアのコストダウンといったプロダクトの開発と共に、旅行時の貸出など様々なモビリティと視覚障がい者の歩行移動を組み合わせたBtoB事業の構築も進めていくため、総合的な体制拡充を実施致します。

また、これらの実現に加え、海外展開を見据えた現地実証を加速し、中長期的な売上規模の拡大を進めて参ります。

・今後の展望を教えてください。

今後の展望としましては、まずしっかりとサービスを開始し、プロダクトマーケットフィットを目指していく点が直近の目標になります。

その上で事業に合った販路の確定や広告の設定を行います。

開発面では、顧客に寄り添った細かい課題を解決するアプリケーションを拡充していくことで、福祉SaaSを構築出来ればと考えております。

また、晴眼者向けの取り組みも並行して検討・開発を開始していく予定です。

・読者へのメッセージをお願いします

私たちは「人の豊かさを歩くで創る」というミッションの元、歩くことについて科学し続けていきます。

まずは視覚障がい者の歩行にITの力で、より行動範囲が拡がり自立的になれるようなプロダクトを目指すと共に、小さいと思われがちな視覚障がい者の市場においても、プロダクトやビジネスの工夫でチャレンジしていきます。

スタートアップの成長には戦略的な資金調達が欠かせません。シリーズ累計発行部数200万部を突破した起業ノウハウ集「冊子版創業手帳」の別冊「資金調達手帳」では、クラウドファンディングを成功させるためのノウハウや、VCから出資を受けるための方法などを掲載しています。

読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ Ashirase Honda あしらせ ウェアラブル ウェアラブル・デバイス デバイス ナビゲーション ルート 位置情報 支援 本田技研工業 株式会社 歩行 視覚障害 資金調達 障害 障害者
資金調達手帳
この記事を読んだ方が興味をもっている記事
起業の仕方サムネイル
起業の6ステップ。素人でも失敗しない起業の仕方を大解剖。起業の専門家が体験とデータで解説。
事業計画書の書き方とは?18ステップごとにわかりやすく解説!
持続化給付金の申請開始!最大200万円給付で事業を下支えー概要やポイントは?
小規模企業共済サムネイル
小規模企業共済とは?危ない?潰れる?加入手続きから解約方法、メリット・デメリットまで徹底解説!
【2025年版】会社設立の流れ・手順・やることリストをわかりやすく解説
家族を従業員にする4つのメリットと注意するべきポイント

有望企業の創業手帳ニュース

関連するタグのニュース

オンライン家庭教師サービス運営の「NoSchool」が資金調達
2020年4月20日、株式会社NoSchoolは、資金調達を実施したことを発表しました。 オンライン家庭教師の「NoSchool」を運営しています。 小・中・高校生のための、オンライン指導に特化した1…
自律型CADシステム「PlantStream」など建設SaaS展開の「Arent」が19億円調達
2021年11月24日、株式会社Arentは、総額約19億円の資金調達を実施したことを発表しました。 自律型CADシステム「PlantStream」を提供しています。 プラントにおけるプロットプランか…
ロボット遠隔制御サービス「HATS」開発の「キビテク」が1.5億円調達
2022年2月16日、株式会社キビテクは、総額1億5,000万円の資金調達を実施したことを発表しました。 ロボット遠隔制御サービス「HATS(Highly Autonomous Teleoperati…
スマホアプリ制作・運営の「アプセル」が「CARTA COMMUNICATIONS」と業務提携
2022年3月22日、アプセル株式会社は、株式会社CARTA HOLDINGSのグループ会社である株式会社CARTA COMMUNICATIONSと業務提携したことを発表しました。 アプセルは、従量課…
【9/27開催】「NEXs Fes #3」オープンイノベーションの新潮流~スタートアップと創る「5年後の東京」~
東京都は、「NEXs Fes #3」オープンイノベーションの新潮流~スタートアップと創る「5年後の東京」~を開催します。 東京都は、国内外の広域展開に挑むスタートアップを支援する事業「NEXs TOK…

大久保の視点

明治大学ビジコンで優勝&100万円獲得はゼファーさん明治大学2年「NEUROGICA」メンタルIoT
2025年3月14日(金)に明治大学・御茶ノ水キャンパスで第3回明治ビジネスチャレンジ(明治ビジチャレ)が明治大学経営学部主催で行われました。 明治大学の各…
(2025/3/14)
日本サブスク大賞2024グランプリはAI英会話スピークバディが受賞!
日本国内で唯一のサブスクリプション特化型イベント「日本サブスクリプションビジネス大賞2024」が、2024年12月4日(水)にベルサール六本木で開催されまし…
(2024/12/4)
国際団体エンデバージャパン「EndeavorJapanSummit 2024」を現地レポート!
パネルセッション例:中村幸一郎(Sozo Ventures ファウンダー・著名な投資家)、ヴァシリエフ・ソフィア市副市長(ブルガリアの首都) 「Endeav…
(2024/10/9)
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

注目のニュース

最新の創業手帳ニュース

創業時に役立つサービス特集