すごい改善 吉田 拳|Excelで業務効率化を推進!たった1日で誰でも即戦力になれるコツ

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年07月に行われた取材時点のものです。

Excelの専門家が伝える「脱Excel論」。システムとの使い分けで飛躍的な業務の効率化を実現


ビジネスマンであれば1度は使ったことがある「Excel」ですが、まだ活用できている方は少ないようです。

Excelの基礎的な機能を使いこなすだけでも「5時間かかっていた作業が1秒で終わることもある」と、Excelの便利さや可能性を伝えているのが「すごい改善」の吉田さんです。

Excelを使いこなすためのコツや少数精鋭で会社経営を続ける工夫について、創業手帳代表の大久保が聞きました。

吉田 拳(よしだ けん)
株式会社すごい改善 代表取締役
1975年、愛知県出身。東京外国語大学外国語学部英米語学科卒業。Excel専門の業務改善支援を行う株式会社すごい改善を2010年に設立、代表取締役に就任。著書『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』(技術評論社)が20万部、『たった1秒で仕事が片づくExcel自動化の教科書』(同)が5万部を突破。経済産業省、サイバーエージェント、キヤノンマーケティングほか大手団体・企業から中小企業までExcelの研修、効率化支援を受託し、参加者アンケートが全員満点をつけるなど高い評価を得る。2011年から毎週開催している自社主催のExcelセミナーは受講料5万円という高額にも関わらず、過去延べ4000名が受講している。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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Excelの便利さと可能性を伝えるために「すごい改善」を創業

大久保:起業までの経歴を教えてください。

吉田サラリーマン生活の10年間で4度の転職をしました。大学卒業後に歌手のマネージャーからキャリアをスタートさせて、販売促進の代理店、靴販売会社でマーケティングの仕事も経験しました。そして、最後に転職したワインメーカーで今の私の専門分野である「Excel」に本格的に触れました。

実は、最初からExcelが得意だったわけではなく、当時はExcelが使いこなせずに試用期間で解雇されそうになったんです。しかし、このことをきっかけに一念発起して必死にExcelを学んだ結果、Excelでマーケティング分析や社内業務の効率化の成果を出すことができ、社内で評価していただけました。

この経験を通じて、Excelの便利さと可能性を強く感じて、Excelの便利さを伝えることは他の会社にもニーズがあるのではないかと思い、2010年に「すごい改善」を創業しました。

大久保:Excelの魅力は何ですか?

吉田:Excelを活用すると業務の効率化の効果が本当にすごいんです。5時間かかっていた作業が30分になったという規模の効果ではなく、5時間の作業が1秒で終わることもあります

このようなExcelの便利さをより多くの方々に伝えるために、ブログへの投稿やオンラインレッスンを始めました。すると、サイバーエージェントさんから本格的にExcelに関する社員教育をしてほしいという依頼をいただき、事業が軌道に乗りました。

大久保:情報発信が仕事につながったんですね。

吉田:私の場合はブログでしたが、今であればSNS等で情報発信を続けるとファンが増え、信頼の獲得につながります。信頼が獲得できると、その中から大きな案件に繋がることも珍しくないと思います。

少数精鋭で会社を経営には「環境づくり」が大切

大久保:社員は何名ですか?

吉田:「すごい改善」を起業して約12年経ちますが社員は4名です。時折外注を活用してはいますが、社員はそんなに多くないんです。

大久保:すごい改善を創業して苦労したことを教えてください。

吉田:会社経営における「お金の知識」が少なかったことで、色々と苦労しました。

今期が創業12年目になりますが、少し前に初めて民間の金融機関から融資を受けました。これまで政策金融公庫から融資は受けましたが、この12年間民間の金融機関からの融資を受けなかったことを強く後悔しています。

なぜなら民間の金融機関から融資を受けて返済するという実績を積み重ねることで、資金が必要な時に受けられる融資額の上限が上がるからです。

私はこのことを知らずに経営を続けていたので、これから起業する方は創業融資を受けて、民間金融機関の実績を積み上げることをお勧めしたいですね。

Excelの基礎を学ぶだけで大幅に業務の効率化を実現できる

大久保:起業家にプラスになるExcelの便利な使い方を教えてください。

吉田:Excelには様々な関数がありますが、財務諸表を加工するなどして経営に必要な数字を把握するにはVLOOKUP(ブイ・ルックアップ)やIF(イフ)、SUMIFS(サムイフエス)の3つの関数を押さえておけば大体のことができます。

Excelは基礎を少し勉強するだけで、劇的に業務の効率化につながるので、起業家の方々には知っていてほしいですね。

大久保:基本的な関数が理解できると他の関数にも応用ができますか?

吉田:関数で必ず習得すべきものは全体の5%で20〜30個程度です。一部を知っていれば応用できるので全てを網羅する必要はありません。

最近は社内で使うExcel資料を作ってほしいというニーズも高まっています。多くの経営者はExcelの使い方を学ぶよりも完成した資料が欲しいのです。

大久保:Excelで業務の効率化を進めるために必要なことを教えてください。

吉田:クライアントからご相談をいただく際には、まず「業務の棚卸し」と「仕分け」をしていただくようにお願いしています。今まで惰性でやっていた業務が本当に必要なのかと検討するだけでも業務の改善に繋がることが多いんです。

大久保:Excelとスプレッドシートの違いや特徴を教えてください。

吉田:操作性に多少の違いはありますが、できることに大差はありません。

スプレットシートはインターネットに接続されているので、共有しやすい特徴があります。基本的な操作性はExcelの方が高いと思います。

「データベースは脱Excel」で「資料作成はExcel」と使い分けるべき

大久保:業務の自動化の選択肢には関数、マクロ(※1)、RPA(※2)、クラウドなど段階があると思いますが、判断基準はありますか?

吉田:明確な棲み分けがあります。システムとRPAとExcelを比べると、Excelで済むものはExcelで完結させた方が良いです。

判断する際には、自動化しようとしている業務の「規模と寿命」を考えます。

経理のシステムなど会社が続く限りずっと必要なものや、大企業で全社を包括しなければならないなど規模の大きいものは、ExcelではなくシステムやSaaSを使う方が良いです。

RPAは基本的に毎月の固定費がかかり、VBA(※3)は一度組めばプラスのコストはかからないという費用面での検討事項が出てきます。

システムで賄えない隙間をExcelで埋めることが大事だと思っています。

データを溜める場所はExcelではなくクラウドでデータベースを作る方が良いと思いますが、データを書き出した後に加工・集計・グラフなど資料作成をするのは、融通の効くExcelが向いています。

※1 マクロ…エクセル内の複数の操作を自動的に行うための機能

※2 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)…人がパソコン上で日常的に行っている作業を、人が実行するのと同じかたちで自動化すること

※3 VBA(Visual Basic for Applications)…MicrosoftがOffice製品の拡張機能として提供しているプログラミング言語

大久保:システムとExcelの使い分けのポイントを教えてください。

吉田:複数の社員が入力するツール…たとえば交通費や経費の精算を行うものはシステムにするべきです。また、複数の店舗を抱える会社において各店舗が売上実績を入力するなどの場合もExcelではなくシステムを組むべきです。

Excelは同じファイルを複数人が同時に操作すると不具合がおきがちなので、こうした業務をExcelでまかなおうとするのは得策ではありません。

「データベースは脱Excel」「資料作成・加工・修正はExcel」の二元論がシンプルで分かりやすいと思っています。

著書『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』に込めた想い

大久保:吉田さんの著書『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』のキャッチコピーは購買意欲をそそられました。吉田さんが考えたんですか?

吉田:「即戦力」「1日」「教科書」というキーワードは私が出しました。原稿も全て私が書きましたが、キャッチコピーは編集の方が考えてくれました。お陰様でたくさんの方に手に取っていただけました。

大久保:たった1日で即戦力になるというのはユーザーにとってもメリットが大きいですね。

吉田すごい改善のセミナーは1日で完結します。大手のPCスクールは数日かかりますが、セミナーに何日も出られない忙しい方々が多いと思い、弊社は1日完結のセミナーにしようと決めました。

学ぶところに時間をかけるのではなく、実際の仕事で使って慣れる方が良いので、何度もセミナーに参加する必要はないと思っています。

大久保:すごい改善のセミナーで学ぶメリットを教えてください。

吉田セミナーでは10名の受講者に対して4人がサポートします。私が講師として前で説明や実践を行い、つまずいた方には残りの3人でサポートするという体制です。

また、受講後も「生涯無期限サポート」として無料で質問を受け付けています。すごい改善で学んだのに解決できないことがあるのはこちらの力不足だと思うので、いつでもサポートする体制を作りました。

私たちはExcelに関するセミナーや社員教育だけでなく、クライアントからご依頼いただきExcelマクロや経営資料、データの作成も行っています。セミナー専業ではなく、普段からExcelを使いこなしている講師が教えるので、実務で役立つ「解決力」には自信があります。

Excelを使いこなすには「前向きな怠惰」がキーワード

大久保:セミナーを実施する際に、大切にしている考え方などあれば教えてください。

吉田:1番大切にしているキーワードは「前向きな怠惰」です。面倒臭いことを放置せずに「いかにサボるか」を考えましょうと伝えています。

時間がかかりそうな作業に直面した時には「何か方法があるはずだ」という発想をセミナーでお伝えして、困った時にどうしたら良いかを探す癖をつけてもらいます。

一般的によく使われている機能や関数をセミナーでは集中して学んでいただき、それ以外のものが必要になった時は自分で調べたり、困った時には生涯無期限サポートに相談したりして解決できるようにしています。

大久保:大企業ではできない、少数精鋭の会社だからこそできる戦略を取られているんですね。

吉田:大企業は社名がブランド名になりますが、少数精鋭の会社は個人のキャラクターを売り出す必要があると思います。すごい改善の場合は、私が発信したブログや本が信頼の獲得につながり、セミナー受講者が4000人を突破しました。

大久保:本やスクールで知名度が上がったことで仕事の依頼はありましたか?

吉田:本を出版したことは多くの人に知ってもらうきっかけになりました。5〜6年続いている経済産業省の仕事も、若手官僚の方が本を読んでくれたことがきっかけでご依頼をいただきました。

大久保:企業研修で多くの社員に向けて解説をすることもありますか?

吉田:以前は企業に出向いて7時間のセミナーを開催していましたが、社員の方々の負担を考え、現在は現地でのセミナーは2時間に短縮し、事前に受けられるオンライン動画講義を提供しています。

1日で完結する7時間のセミナーは、週末に銀座の事務所で開催しています。

起業家はサービス開発や課題解決に集中できる環境を整えるべき

大久保:最後に読者に伝えたいことを教えてください。

吉田起業家が事務作業に時間を割くのはもったいないです。

できる限り税理士、弁護士、社労士の3士業と顧問契約を結べるくらいの資金力を持ってから起業しないと、起業した後に商品作りにかける時間が限られてしまいます。資金力に不安があれば、創業融資や投資家からの出資も検討すべきですね。

起業家は資金繰りで1度は苦労すると思います。すごい改善は初年度黒字になり、次の年にかかる法人税や消費税を支払うのに苦労しました。

法人口座を分けて作れる銀行で、法人税用の口座、消費税用の口座、運転資金用の口座など毎月資金を振り分けることも便利です。

節税に興味を持たれる起業家も多いですが、あまりそこは考えないことを推奨します。起業家であれば「節税」よりも「サービス構築や課題解決」について考える時間を増やすべきだと思います。

すごい改善のセミナーでは一日でExcelの基礎的な操作ができるようになります。最低限の基礎があれば、業務の効率化も含めその先の商売で困ることはないと思います。

ぜひすごい改善のセミナーを受講していただいたり、『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』を読んで業務の効率化を測ってください。資料作成などExcelでお困りのことがあれば、ぜひ「すごい改善」にご相談ください。

編集者
シリーズ累計40万部を誇る、吉田さんの著書「たった1日で即戦力になるExcelの教科書」は、最小限の時間でExcelの知識を得ることができるビジネスマン必携の一冊。ぜひお手にとって業務改善の参考にしてください。
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(取材協力: 株式会社すごい改善 代表取締役 吉田 拳
(編集: 創業手帳編集部)



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