MOSH 籔 和弥|簡単にネットでサービスが売れるMOSHで「好き」を仕事に

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年04月に行われた取材時点のものです。

サイト作成や予約受付、決済などの全てをスマホで完結!サービス業のオンライン展開をサポート

今まではオフラインが中心だったヨガやコーチング、理美容などのサービス業のオンライン展開をサポートしているのが、サービス業に特化したECプラットフォーム「MOSH」を運営する籔和弥さんです。

MOSHの創業ストーリーやECプラットフォーム業界における差別化戦略などについて、創業手帳代表の大久保が聞きました。

籔 和弥(やぶ かずや)
MOSH株式会社 CEO
福井県出身。学生時代に自分でサービスを始める。2014年、Retty株式会社に社員7人目で新卒入社。Rettyアプリのリーダーなどを担当し、2017年に退職。その後、企業準備も兼ねてアジア・インド・アフリカなど世界一周を行い、現在のMOSHを着想し創業に至る。オウンドメディア 『MOSH Magazine』を配信中。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

Retty、ジェネシア・ベンチャーズから出資を受け「MOSH」を創業

大久保:最初にMOSHの企業概要を教えていただけますか。

:MOSHは「情熱がめぐる経済をつくる」をミッションに2017年8月に創業しました。

創業のタイミングで私が以前勤めていたRettyさんに加え、ジェネシア・ベンチャーズさんからも資金調達を実施しました。

2018年2月には「スマホで作れるサイト作成サービス」としてMOSHβ版をリリースしました。

さらに2020年10月にはBASEさんをリード投資家として3億円の資金調達を実施しました。

MOSHはサービス業界に特化したECプラットフォームですので、サービス業界版のBASEやShopifyというような位置付けでサービスを提供しています。

具体的には、ヨガやコーチング、理美容、クリエイターなどのサイト制作や予約決済、デジタルコンテンツ販売などを簡単に始められるサービスとして運営しています。

2022年1月現在で約45,000名のクリエイターの方々が登録をして下さっていまして、流通額も順調に伸びています。

MOSHのCEOを務めるのが私で、前職は2014年にRettyというグルメサービスの立ち上げのタイミングでジョインしまして、主にPdM(プロダクトマネージャー)を担当していました。

その後、2017年にRettyを退職し、アジア、インド、アフリカなど世界一周を行い、同年MOSH株式会社を創業しました。

もう1人のボードメンバーであるCTOの村井は、前職のRettyでグローバル開発リーダーをしていたメンバーで、MOSHはこの2名を中心に経営をしています。

チームメンバーはメガベンチャーやスタートアップ出身の方が多く、現在約15名のフルコミットのメンバーがいます。

Retty退職後に世界一周に出発

大久保:MOSH創業前に世界一周に行ったとのことですが、その理由を教えていただけますか。

:元々海外でのビジネスも視野に入れていたので、積極的に世界各地の起業家や投資家とコミュニケーションを取ることが目的でした。

また、Rettyでの経験で起業することの大変さを感じていたので、今後自分で起業する際に長期的に軸として据えられる“強烈な原体験”を求めて行った意味合いもあります。

世界一周中には、アジア、インド、アフリカの国々を中心に、留学時に滞在していたアメリカ西海岸も訪問しました。

大久保:どの国が印象に残っていますか。

:サービスを作る上で刺激を得たのはアジアの国々です。アジアの国々にはUberやGrabなどのCtoC分野のサービスがかなり普及しており、インフラ化していたのが印象的でした。

サービス業界に特化したECプラットフォーム「MOSH」

大久保:Rettyの創業時にジョインしたことで、ベンチャー企業の立ち上げ経験があると思いますが、MOSHの立ち上げはスムーズにいきましたか?

:2018年2月にMOSHのβ版をリリースして、2020年3月までは創業メンバー3名と業務委託のメンバーで経営していました。

2021年に10名ほど採用させていただいたという流れですので、最初の立ち上げには時間がかかるビジネスだったと思います。

外部環境の変化としてデジタル化促進の流れもあり、このタイミングでメンバーも増やして事業拡大に向けてアクセルを踏みました。

大久保:Rettyでの経験がMOSHの起業に役立った部分はありますか。

:Rettyには3年半ほど在籍しまして、私がジョインしたタイミングで社員は7名だったのが100名ほどに増えましたし、ユーザー数も30万人から4,000万人に増えました。

BtoC向けのサービスの立ち上げから成長までの時期を経験できたのは、今の起業に役立つとてもいい経験になりました。

競合の多いECプラットフォーム分野での差別化戦略とは

大久保:MOSHのサービス分野は競合が多い分野ですか。

:コロナ禍の影響もあり、BASEさんやShopifyさんの伸び率に比例して、弊社の競合となるサービス業に特化したECサービスも増えています。

お店のキャッシュレス化などの支援をしている「STORES (ストアーズ) デジタルストアプラットフォーム」の開発・運営を行うheyさんが買収したオンライン予約システム「Coubic (クービック)」さんなどが競合に当たります。

大久保:他のサービスとの機能的な差別化のポイントを教えていただけますか。

:まず1つ目にサービスの作成から運用までをスマホ完結でできることが大きな強みだと思います。

2つ目にオンライン・オフラインの両方のサービスの予約管理が可能な点です。

今まではオフラインで提供されるサービスの予約管理を便利にするサービスが多いような印象がありました。しかし、MOSHはzoomを連携させてアーカイブ動画の限定視聴ができる機能などもあり、オンラインでの提供されるサービスの運用にも対応しています。

大久保:同じECサービス分野にBASEやShopifyなど高い株価がついている企業があることで、MOSHの評価が高くなったり、資金調達がしやすいという影響がありますか。

:投資家の方々はかなりシビアに見られるのですが、現状MOSHが先行できている部分はしっかりと評価していただいている印象です。

大久保:ECサービスとして重視している数字は売上か流通総額のどちらですか。

:現状では、流通総額を重要視しています。

MOSHは初期費用・月額費用「0円」のサービスですので、流通総額を増やして手数料収益を増やすビジネスモデルです。

そのためにもロングテールと呼ばれる、ニッチでも安定して売れ続ける分野のサービスを伸ばしていく必要があると思っています。

コロナ禍によりデジタルサービスのニーズが高まる

大久保:コロナ禍の影響で、サービス利用者から求められる機能に変化がありましたか。

:今までオフラインが中心だったサービス業界のデジタル化という分野にはすごく注目が集まっています。

サービス業のオンラインサービス分野は物販と比べると遅れてはいるものの、ニーズは確実に高まっていると実感しています。

コロナ禍が後押しとなり、サービス業界におけるオンライン完結型サービスも独自に進化をしている印象です。

大久保:ECサービス業界ではユーザーを「店舗」や「企業」と呼ぶことが一般的だと思いますが、あえて「クリエイター」と表現しているのには理由がありますか。

:ECサービスの多くはSaaSとして大きな店舗から比較的高額な月額費用をいただくビジネスモデルが多い印象です。しかしMOSHはBASEさんが取られている戦略のように、小規模なユーザーを中心に、登録者の数を増やして売り上げや取引額の総額を上げる戦略を取っています。

このためMOSHの登録ユーザーも大きな意味で「クリエイター」と表現しています。

具体的にMOSHに登録して下さっているクリエイターの業種としては、ヨガやコーチング、理美容をはじめに約200種類ほどあります。

時代の変化に伴い生まれたECサービスの新しい形

大久保:EC業界はシェアの多くを上位の企業が占めている印象ですが、そのシェアを獲得するために取り組んでいることなどはありますか。

:物販のECサービスであれば在庫を積むことで販売数を伸ばせます。しかし、サービス業界の場合はどうしてもクリエイターの時間が限られるので、販売を伸ばしにくくなります。

そこでMOSHではデジタルコンテンツの販売機能の拡充にも力を入れており、ロングテールでの売り上げ向上につながる工夫をしています。

また、最近はクリエイターがチームを組んで、オンラインの販売サイトを持つことも増えています。

吉本興業さんに所属しているお笑い芸人さんがMOSHで販売サイトを持ち、オンラインサロンなどを運営しているケースも増えています。

元々は各種販売サイトで法人や個人がオンラインストアを作ることが一般的でしたが、今は法人に所属しているクリエイター同士がチームを組む形が徐々に普及していることが新しいオンラインビジネスの新しい形になっています。

日本発のECプラットフォームの強みとは

大久保:予約決済システムなどを行う海外のサービスも多く日本に入って来ていますが、日本初のサービスならではの強みや役割を教えていただけますか。

:MOSHのような経済圏が普及することで、今まで企業が担ってきた集客や店舗管理、マネジメントなどの様々な業務が欠落する可能性があると考えています。

そうなるとクリエイターが孤独感を感じることも増える可能性があるため、ソフト面でのコミュニティやネットワークの構築という意味では国内初の企業の強みが発揮できると思います。

これに加えて、決済や予約の機能的な部分だけでなく、サイトを運営する際の日本語でのサポートやバックオフィス、法律に関わる業務をカバーできる点でも日本発の企業ならではの強みとなると考えています。

大久保:MOSHには定期課金の機能もありますね。

:サービス業の多くは定期的にリピート開催されるので、MOSHの取引額の約7割はサブスクリプション形式が占めています。

大久保:どれくらいの事業規模のユーザーが多いですか。

:多くは個人ですね、数名程度のチームの割合も増えています。

日本のクリエイターのグローバル展開を「MOSH」がサポート

大久保:MOSHの次の展望を教えていただけますか。

:まずは2030年を見据えて、情熱あるクリエイターがグローバルで活躍できるように、ECプラットフォームとしてMOSHが支援していきたいと思っています。

具体的にはオンラインで完結できるeコマースシステムの強化を進めていきます。

また国内だけでなくグローバルでの利用者も増やしていき、MOSHへ登録するクリエイター数もさらに増やしていきたいと考えています。

大久保:起業したばかりの方にメッセージをいただけますか。

:起業と一言にいってもその形は多種多様です。MOSHはその多様な起業の形の最初のハードルを下げて、誰でも簡単にビジネスを始められるプラットフォームを運営しています。

自分で立ち上げたビジネスを続けていくには、「できること」「やりたいこと」「経済合理性」の3つ全てを考慮する必要があります。これをMOSHでは「自分が持つ情熱とマーケットが求めている間を探す」と言っています。

それを探し続けてチャレンジし続けることが、ビジネスを成功させる秘訣だと考えています。

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: MOSH株式会社 CEO 籔 和弥
(編集: 創業手帳編集部)



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