ネットワークを作り、発信し、自分にタグづけをしよう【村上氏連載その2】

創業手帳
※このインタビュー内容は2021年07月に行われた取材時点のものです。

キャリアに対する考え方をアップデートせよ。リンクトイン村上氏に聞くこれからの転職に求められる思考・行動様式とは

世界200以上の国と地域に7億5,600万人のメンバーを有する、世界最大のビジネス特化型SNSを提供するリンクトインの日本代表村上 臣氏は、著書『転職2.0』で、日本人はキャリアの常識をアップデートする必要があると提言しています。日本人のキャリアの新ルールについて、創業手帳代表大久保が伺います。3回にわたる連載第2回では、SNSをどう使いこなすべきか、リンクトインの特長とは何かを村上氏にレクチャーいただきます。

村上 臣(むらかみ しん)Linkedin(リンクトイン)日本代表
青山学院大学卒業。在学中に現ヤフーCEO川邊健太郎らとともに有限会社電脳隊を設立。日本のインターネット普及に貢献する。2000年にヤフーの合併に従いヤフーに入社。2012年にヤフーの執行役員兼CMOに就任。2017年に米国・人材系ビジネスの最前線企業、リンクトインの日本代表に就任。国内外の雇用事情に精通した「キャリアのプロ」として、NewsPicksアカデミア講師を務めるなどメディアにも多数登場し、転職や働き方について発信している。複数のスタートアップ企業で戦略・技術顧問も務める。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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起業家や経営者は、SNSを使いこなそう

大久保:起業家は、リンクトインや他のSNSをどのように使いこなすべきでしょうか?

村上:そうですね、経営者や起業家で言えば、SNSを使いこなさない人は経営者として終わっていくのだと思います。無料で使えるわけですし、やらない手はないですよね。特にスタートアップやこれから頑張ろうという人は、SNSは自分で無料でPRできる絶好の場所なので、フル活用することをぜひ検討していただきたいです。

また、SNSの浸透によって綺麗ごとが通じなくなりました。公にはいいことを言っていても、現役社員が匿名の口コミで会社の文句を書き込んでいたりするので、本当の姿が分かってしまいます。

逆に言えば、経営者がSNSでオープンで正直にメッセージを伝えることは、会社のパーソナリティや社内カルチャーを伝える上で良いことです。求職者はそれを見て、カルチャーに合う合わないを判断できます。企業側もカルチャーフィットしやすい人を採用でき、採用のミスマッチが減るという面もあります。

大久保:昔は過大に仕事の実績をアピールするようなこともあったと思いますが、今はSNSのおかげで透明性も増してきているという話ですね。

求職者の経歴が分からなくて採用側に不利な状況があったと思いますが、それがフェアになってきました。リンクトインは、多くの目があって、“関所”というか、トレーサビリティがあって面白いなと思います。

SNSの特性をつかんだ上で活用しよう

村上:ありがとうございます。リンクトインのいいところは、現実のプロフィールが載っているところです。

その信頼性を担保するためのネットワークがリンクトインのプラットフォームにあるので、必要があればその人のつながりをたどって直接聞くことができます。

例えば、Twitterは本名での登録ではないので、掲載されているプロフィールが本当に正しいかどうかは分からないですよね。GAFA(IT企業の雄であるGoogle、Amazon、Facebook、Appleの4社のこと)勤務ですと言っている人も多いですが、全員が本当に勤務されているのかどうかは分かりません。とにかく、バズることを言った人がフォロワーが増えて偉い!という文化はTwitter独特だと思います。SNSを使う時には、それぞれの特性を分かった上で使い分ける時代だと思います。

大久保:InstagramとTwitterのように発信者に匿名性があり、気軽に発信できるというSNSがある一方、リンクトインはその対極で、アカウントを作る際は実名登録できちんと入れるべき項目があります。だからこそ担保できる世界があるということですね。

村上:そうですね。リンクトインは完全に仕事モードで使うSNSです。営業の人は営業らしいつながり方をしていますし、登録者はコミュニティに貢献しようとする意識がとても強いです。

「自分が持っている情報を周りにgiveしよう」「周りに貢献していこう」という意識が強いので、それを見て「この人はすごくいいことを言っているから、ミーティングしてみよう」「このプロダクトは面白そうだから、話を聞いてみよう」というように、具体的なビジネスチャンスにつながる構造になっています。

大久保:先ほどおっしゃったTwitterはバズった発言が拡散されることを狙いがちですが、もう少しクローズドで仲間内に情報をgiveをしてあげるというSNSなんですね。

村上:そうですね。Twitterとはネットワークの質が違います。今仕事をしている人に加えて、今後仕事をしそうな人とも広くつながる文化があります。

ゆるいつながりを広範囲に広げていこう

大久保:すごく密な関係の人とだけのつながりでは世界が広がっていきませんが、「仕事を今後しそうな人」というゆるめの、コアのやや外側の人々とつながりを持つことは重要ですよね。

村上:そうですね。広く浅く知り合いの知り合いぐらいまで広げていって、それがビジネスにつながっていくようなことを、皆さんが求めていると思います。

これからはゆるいつながりを広範囲に広げていくこと、つまりネットワーク作りが大切です。つながりを広げていく場合は、他社で働く同業の人や関連する業界の人からつなげていくとよいでしょう。それによって、自分の仕事を客観視したり、会社自体を俯瞰することができるようになります。

慣れてきたら、同じ職種で異業界の人にネットワークを広げてみましょう。新たな発見や、自分のスキルが他の業界でも生かせることに気づくかもしれません。仕事で情報収集する際には、インターネットで調べたり本を読んだりするよりも、直接働いている人に聞くことで効率的に良質な情報が得られます。

SNSで自分の情報を流せば、学びにつながる情報や転職のチャンス、転職先候補の会社の実像を知る機会も得られるので、ネットワークを構築していくことを意識していくとよいでしょう。

ビジネスSNS、リンクトインの使い方

プロフィールを充実させるとビジネスチャンスが広がる

村上:リンクトインでは出会いが生まれるように設計しているので、プロフィールを書けば書くほど分析が進んで、同じような業界を飛び越えて、「この人とつながったらどうですか?」というおすすめが来ます。我々はデータから、この会社とこの会社はよく仕事をしているというのは分かりますので。すべてがそういうふうに設計されているのが特徴ですね。

大久保:今おっしゃられた、データ分析はワクワクする仕事ですね。

村上:フェイスブックではソーシャルグラフと言っているものを、我々はエコノミックグラフと言っていますが、経済のマップをデジタル化しているイメージです。採用企業と求職者がいて、デマンド、サプライの両方を持っているからこそ分析ができます。

スカウトが来たり、営業や転職がうまくいったり、皆さんがそれぞれの目的を果たせるようにSNSがお手伝いしているというのは、非常にユニークだと思いますね。

人のプロフィールから学ぶことができる

村上:また、無料で他の人たちのプロフィールが見られますので、自分がプロフィールを書く時にお手本には困らないわけです。この人はいいことを言っているなとか、こういう経歴で現在はこうなっているんだなとか、キャリアの道筋も分かります。書き方も勉強になりますし、人から学べるのがいいところだと思っています。

大久保:ロールモデルが無いというお話を前回されていたと思いますが、サラリーマンだといわゆる「10年後に課長」のようなイメージが崩壊してきています。そうなると、もしかしたらリンクトインでつながっている人の中から、自分なりにロールモデルを見つけていくのも手かもしれませんね。

村上:そうですね。面白いと思う人がいたら、実際にメッセージを送って話を聞くこともできます。メッセージのやりとりは頻繁に行われていますので、自分が次になりたい理想像を見つけて、どうやってそうなれたのかを聞けば、アドバイスが得られるかもしれません。

大久保:つながりを作るというのは、売上を上げる、ネットワークを広げるなどのいい面があると思いますが、リスクヘッジの面もありますよね。例えば、ある人のSNSのつながりを見た時に、不安を感じて回避するといった判断材料になったり。

村上:なるほど。違和感に気づくといったことですね。人間ですから、合う合わないもありますし、そのあたりの感覚も、つながりを広げていく上では大事かもしれません。

「発信」と「タグづけ」の重要性

自ら「発信」をすることで得られるメリット

大久保:リンクトイン日本代表として、ぜひリンクトインをこう使ってほしいというものはありますか?

村上:やはり発信をしていただきたいですね。圧倒的に読んでいる人が多いのですが、自分で発信すればするほど、人に見つけてもらいやすくなるので、いいネットワークが向こうからやってくるようになります。

キャリアアップを考えている人には特に非常に効率が良いです。だいたい良いポジションはリファラルを中心に採用するので、求人に出る前に決まるものです。

何を隠そう、僕も今のポジションに就いたのはリンクトイン経由です(笑)。表に出ていない求人が本社のリクルーターの人から人づてに回ってきて、僕が興味を持って始まったので、僕自身もリンクトインのパワーを体感していますね。

「タグづけ」で個人の希少価値を高める

村上:『転職2.0』にも書いたことですが、転職に向けた行動としては、これからは「タグ付けと発信」をしていく時代です。転職サイトや転職エージェントから情報収集はできますが、今現在その会社で働いている人から得られる一次情報に比べると、正確性や質の面では劣ることを否めません。

「タグ」は「インスタグラムにタグ(ハッシュタグ)をつける」など、一般的な言葉になりました。「タグづけ」とは、働く個人に「ポジション」「スキル」「業種」「経験」「コンピテンシー(行動特性)」のタグをつけることです。タグづけによって、「こういう人材が必要だ」という時に、想起されやすい人物となるのです。

大久保:タグが多ければ多いほど、その人の希少価値は高まりますね。

村上:そうですね。多くの人が持っているスキルは、単体では市場価値が生まれません。しかし多くのタグと掛け合わせていくことで希少性は高くなり、それがイコールその人の市場価値となります。

実際にリンクトインでもリクルーターが人材を探す時にはタグで検索して候補者を絞り、面談に結び付けています。

1つのタグを強化し続けていくのは、将来それを生かす場所がなくなった時にリスクが大きいと言えます。今持っているタグの強みを生かせるようなタグを選んで、掛け合わせていくことを目指しましょう。


転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール 村上 臣 SBクリエイティブ
終身雇用が崩壊しつつある今、日本人のキャリアは新時代に突入しようとしています。転職の新常識を知り、「我慢しない自由な働き方」を手に入れたい人は必見の書。

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(取材協力: Linkedin(リンクトイン)日本代表 村上臣
(編集: 創業手帳編集部)



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