ビッグデータ活用で注目ー「データの規約」がもつ意味とは?専門家がポイントを解説

創業手帳

GAFAやメガベンチャーなどIT業界が重要視する「データ」の取り扱いについて弁護士が解説

データの契約・規約

(2020/10/26更新)

近年では、IT業界のスタートアップがしのぎを削る「ビッグデータ」の活用が進んでいます。

政府でも行政手続きのオンライン化などを実現するため、デジタル庁の新設へ向けて動き出しています。

このデジタル時代への変革の中で鍵を握るのが、データに関わる契約や規約です。

今回は、データの契約・規約がもつ意味やポイントについて、スタートアップ専門弁護士の高橋知洋氏に聞きました。

高橋 知洋(たかはし ともひろ)
AZX Professionals Group (AZX総合法律事務所)弁護士
2004年 東京大学文学部 卒業
2008年 東京大学法科大学院 卒業
2009年 司法試験合格 司法研修所 入所
2011年 麒麟麦酒株式会社 法務部 入社
2014年 AZX Professionals Group 入所
2017年 株式会社ブリッジインターナショナル 社外監査役 就任
2019年 AZX Professionals Group パートナー 就任
2020年 株式会社日本データサイエンス研究所 社外監査役 就任

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スタートアップ企業からデータの契約・規約に関する問い合わせが増加!


ースタートアップ企業からデータの取扱や契約・規約についての問い合わせは多いのでしょうか


高橋:最近はスタートアップでも、ただサービスを提供するだけではなく、取得したデータを活用した新サービスや、初めから大手にデータ販売することを想定してサービスを開始する例が多く、問い合わせも増えています。

また、グループ会社内でデータをもっと有効に活用したいといったニーズもあります。

データから新サービスが生まれたりと、データが価値に直結する時代となりつつあるのですね!

データの契約・規約がもつ意味と重要性とは?


ーデータの契約・規約がもつ意味や注意点について教えていただけますか


高橋:まず前提として、データ全般を網羅する法律はなく、特許のように独占的な権利というものもありません

だからこそ、契約で帰属や利用範囲をしっかりと決めておくことが重要になります。

この点は経済産業省から出ている「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」でも強調されています。

データは無体物であり、民法上、所有権や占有権、用益物権、担保物権
の対象とはならないため、所有権や占有権の概念に基づいてデータに係
る権利の有無を定めることはできない(民法 206 条、同法 85 条参照)。
そして、知的財産権として保護される場合や、不正競争防止法上の営業秘密として法的に保護される場合は、後記第3-2-⑵で述べるように限定的であることから、データの保護は原則として利害関係者間の契約を通じて図られることになる。
AI・データの利用に関する契約ガイドラインより引用

データは「形が無く見えない」ため、規約内容によって価値や可能性、リスクが大きく変化するのですね。知恵比べの領域ともいえます。

ーデータの規約・契約によって可能性が制限されてしまう、または可能性が広がることはありますか


高橋:可能性が制限されてしまうのは、利用範囲が狭すぎたり、利用できる相手が限定されているようなパターンです。また、競業避止義務(※)を課せられることにより、間接的にデータ利用の範囲が限定されることもあります。

反対に、利用範囲を広げたり、利用できる相手を増やすことで可能性は広がっていくと考えます。

※競合避止義務・・・自社と同様のサービスや商品を提供することを行わないよう義務付けること

データの取得範囲や利用目的をチェックしておくことが大切なのですね。データの契約・規約によっては、事業が限定されてしまう可能性もあります。

データ活用の可能性は無限大!今後の利用方法とは?


ーデータには今後どのような利用方法がありますか


高橋:データの利用方法には大きく2つあると考えています。1つは、データを活用してより精度の高いターゲット広告を打つといった個人の行動や趣向に焦点を当てた活用です。

もう1つは、AIにビックデータを学習させて統計化したり、新商品の開発に繋げるといったトレンドを分析したり作り出したりすることを目的とした活用です。

データは広告の技術進化(パーソナライズ、アドテク分野)や、AI・深層学習の分野で資産に化ける可能性を秘めているのですね!

ー最後に、創業手帳の読者にコメントをお願いします


高橋:データと一口にいっても、個人情報に該当するか否か、公開されている情報であるか否か、などにより取り扱いが変わってきます。

また、今後は個人情報保護法改正によって、個人関連情報や仮名加工情報などの新たな定義が入り、さらに複雑さを増しています。

それぞれの情報の性質をふまえた上で、適切な対応を行っていくことが重要です。

スタートアップ企業もデータの契約・規約は慎重に対応しよう!

法律が関わることは複雑なので、忙しいスタートアップ企業の現場で対応することを面倒に感じる方もいるかもしれません。

プロダクト作りや営業活動、マーケティング、採用・・・やらなければならない業務が多いことから、忙しくて「データの契約・規約」を後回しにしてしまう気持ちは分かります。

しかし、データ規約の一言や用語の違いで、苦労して育てた事業の将来の可能性を左右する可能性もあります。

たとえば、規約に1つ利用目的を入れるか入れないかで、エグジットできるか否かが変わるということも。データを活用して成功している会社ほど、規約やデータの扱いには慎重になっています。

忙しいからといって後回しにせず、頑張って対応していくようにしましょう!

まとめ

今回は、データに関する契約・規約がもつ意味や重要性、データ活用の可能性について専門家に解説していただきました。

高橋氏が言っていたように、データは個人情報だけではなく、統計情報や広告IDも含まれています。データ=個人情報と結びつけるのではなく、全体を網羅した内容の規約を検討しておきましょう。

冒頭でもお話ししましたが、今後データの活用はより広がっていきます。いち早く時代の潮流に乗り、データの扱い方を知っておきましょう。

そうすることで、あなたの事業の可能性も広がり、大きなビジネスチャンスとなるかもしれません。

また、こういった規約は法律が関わってくるため、素人が作成するよりも専門家に依頼するのがよいでしょう。一度、弁護士に相談することをおすすめします。

創業手帳では、弁護士や税理士などの専門家紹介を無料で行っています。データの契約・規約に関してご相談したい方は、ぜひ活用してみてください。

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(監修: AZX Professionals Group AZX総合法律事務所/高橋 知洋弁護士
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