飲食業に必須!食品衛生責任者の取り方と注意点
しっかり確認してスムーズに取得しよう
(2018/10/18更新)
飲食店を開業する上で必須となる許認可は2つあります。一つは、開業する施設に関して保健所の営業許可を取得すること。もう一つは、開業する施設に食品衛生責任者を置くことです。
今回は、これから飲食業を開業することを目指している方に向けて、食品衛生責任者の概要と取り方、取る前と取った後の注意点について、専門家がわかりやすく解説します。取得する都道府県により若干取り扱いが違う点についても何点かピックアップされているので、こちらも併せてチェックしておきましょう。
この記事の目次
なぜ食品衛生責任者を置く必要があるの?
食品衛生法により、公衆衛生に与える影響が著しい営業(調理を主体とする飲食店や喫茶店、製造を主体とする菓子やアイスクリーム等の各種食品製造業、処理を主体とする乳や食肉処理業、販売を主体とする乳類や食肉、魚介類等販売業の34業種)では、施設ごとに都道府県知事等の営業許可を取得することが必要です。
この営業許可が義務付けられている営業者(以下「営業者」と称します)は、食品衛生管理者(全粉乳、食肉製品、食用油脂等の食品衛生法施行令第13条の食品、添加物を製造や加工を行う施設に置かなければならない国家資格者)を置く必要がない施設であっても、都道府県が定める基準によって施設ごとに食品衛生責任者を置く必要があります。
食品衛生責任者の設置と義務
営業者は各都道府県の食品衛生法施行条例等により、以下の食品衛生責任者の設置と義務が定められています。各都道府県により若干の表現の違いはありますが、主旨は概ね同じです。
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- 営業者は、許可施設ごとに自ら食品衛生に関する責任者となるか、又は当該施設における従事者のうちから食品衛生責任者1名を定めて置かなければならない
- 食品衛生責任者は、営業者の指示に従い食品衛生上の管理運営に当たるものとする
- 食品衛生責任者は、食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が必要な場合は、営業者に対して改善を進言し、その促進を図らなければならない
- 食品衛生責任者は、法令の改廃等に留意し、違反行為のないように努めなければならない
(東京都福祉保健局のホームページより抜粋)
食品衛生責任者になれる者
食品衛生責任者になれる者は以下の通りです。
養成講習会を受講した者
食品衛生責任者になるためには、各都道府県食品衛生協会や大都市の特定の市が指定した市食品衛生協会が実施している「養成講習会」を受講しなければなりません。
講習会では以下の要領で講義が行われます。
- 公衆衛生学(伝染病、疾病予防、環境衛生、労働衛生等):1時間
- 衛生法規(食品衛生法、施設基準、管理運営基準、規格基準、公衆衛生法規等):2時間
- 食品衛生学(食品事故、食品の取扱い、施設の衛生管理、自主管理等):3時間
講習会の日程、受講方法は各食品衛生協会のホームページ等を参考にしてください。
日程は協会により異なりますが、費用は1万円となっているところが大半です。講習会は1日で終了し、終了時に修了証書が交付されます。
特定の資格を満たしている者
また、次の資格を満たしていれば養成講習会を受講しなくても食品衛生責任者になることができます。以下の資格を満たしていなくても自治体によって受講を免除される場合があるので、気になる方は自治体に問い合わせてみるのがいいでしょう。
- 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師ならびに大学等において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学又は農芸化学の課程を修めて卒業した者など
- 栄養士、管理栄養士(条文には記載がありませんが、管理栄養士資格保持者は全員栄養士資格も持つため)
- 調理師
- 船舶料理士
- 製菓衛生師
- 食鳥処理衛生管理者
- 食品衛生管理者
食品衛生責任者になるための届出も忘れずに!
もちろん、養成講習会を終了しただけや、食品衛生責任者となれる資格を持っているだけでは食品衛生者となれません。営業者が各自治体や保健所等に食品衛生責任者となる資格を証する書類(原本)を添えて、届け出が完了して初めて食品衛生責任者となります。
届出が完了したら「食品衛生責任者プレート」を掲示することが可能になります。各食品衛生協会で販売していますが、規定のサイズを守っていれば自作でも問題ありません。
取る前と取った後の注意点
食品衛生責任者の資格を取る前と取った後の注意点は以下の通りです。
取る前の注意点
当然ながら、養成講習会の資格要件を満たさなければ受講できません。事前に受講資格があるかどうか、直接確認しておいた方がいいでしょう。
同様に、上記で説明した「受講しなくてもなれる者」に該当しなくても、食品衛生責任者になれるケースがあります。もし食品関係の資格を取得していたら、事前に確認しておいたほうがいいでしょう。
ちなみに、平成9年4月1日以降に他県(政令市)の養成講習会を修了した者は、あらためて受講する必要はありません。
取った後の注意点
晴れて食品衛生責任者となった後にも注意すべき点がいくつかあります。
現段階では食品衛生責任者の資格自体に有効期限はないのですが、実務についている者に対して「食品衛生責任者実務講習会」という講習会の受講を事実上義務付けている自治体があります。
食品衛生法施行条例に定めた「営業者が食品衛生責任者に最新知識の習得に努めなければならない」とした義務の一つとして位置付けられていますが、営業許可の更新時には実務講習の受講が必須条件となっています。実質、法令で義務化しているのと変わりませんので、注意しましょう。
主催者は養成講習会と同じく各食品衛生協会で、施設や業種により1年に1回や3年に1回とする等地域によって様々です。努力目標と義務としているかで大きな違いがありますので、必ず該当する食品衛生協会で確認して下さい。
また、食品衛生責任者は複数の施設の食品衛生責任者を兼任することは出来ません。この点にも注意が必要です。
地域によって違う取り扱いの例
地域によって取り扱いが違うケースを例示しておきます。こちらもご参考までにどうぞ。
受講資格に関わるもの
- 東京都の場合、年齢17歳以上(現役の高校生は不可、外国人の場合日本語が理解でき在留カードまたは特別永住者証明書所持者に限る)
- 神戸市の場合、日本語が理解できる方
実務講習会に関わるもの
- 東京都の場合、飲食店営業(仕出し屋、弁当屋、すし屋、集団給食)や許可を要しない集団給食施設(食品製造業等取締条例に基づく届出義務のある施設)や大量調理施設(飲食店営業及びそうざい製造業等であって1回300食以上又は1日750食以上を提供する施設)は各年度内に1回以上。上記以外の食品関係施設は前回の受講日から3年に満たない期間内に1回以上。
- 埼玉県の場合、翌年度に営業許可の有効期間が満了する営業施設の食品衛生責任者や.「その他の製造業」、「給食施設」の食品衛生責任者、上記の食品衛生責任者で過去5年以上実務講習会を受講していない方
- 京都府の場合、概ね3年ごと
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は飲食店営業における二大許認可の一つ、食品衛生責任者について解説しました。許認可は違法営業に直結するポイントですので、トラブルの無いようにしっかり確認して進めていきましょう。
(監修:杉町行政書士総合経営事務所 特定行政書士 杉町 徹(すぎまち とおる) )
(編集:創業手帳編集部)