IEYASU 川島寛貴|無料で利用できるクラウド勤怠管理システム「HRMOS勤怠 by IEYASU」の1点突破ビジネス

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年10月に行われた取材時点のものです。

IPOモデルの創業経験を経て、資金調達をしない創業を選んだ理由

3万社以上が導入するクラウド勤怠管理システム「HRMOS(ハーモス)勤怠 by IEYASU(イエヤス)」は、無料でベンチャー企業に必要な機能を利用できるのが魅力です。

今回は、「HRMOS勤怠 by IEYASU」を提供するIEYASU代表取締役の川島さんに創業手帳代表の大久保がインタビュー。みんかぶ(現:MINKABU)の創業メンバーを経て、資金調達をしない創業を決意した理由や、事業を大きく育てるための注意点について伺いました。

川島 寛貴(かわしま ひろたか)
IEYASU株式会社 代表取締役

2002年電通国際情報サービスに入社し、大手企業の基幹系システム構築や人事システムの導入に携わる。2006年、株式投資のSNSサイト「みんなの株式」を運営する株式会社マスチューン(現:株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド)の創業メンバーとして参画し、2019年3月に東証マザーズ市場に上場。2016年、IEYASU株式会社を設立、代表取締役に就任。2022年2月より クラウド勤怠管理システム「HRMOS勤怠 by IEYASU」を提供中。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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アレコレ詰め込まない「1点突破ビジネス」


大久保:起業までの流れを教えてください。

川島:2002年に新卒で電通国際情報サービスに入社し、大手航空会社や大手飲食チェーンへの基幹システムの営業を4年半ほど担当しました。2006年にWEB2.0が流行り、mixiやGREEが出てきたタイミングで、元ゴールドマン・サックス証券株式会社の瓜生憲氏と出会い、2006年にみんかぶ(現:MINKABU)の立ち上げメンバーとして参画しました。株式投資や為替(FX)、不動産投資といった資産形成のための口コミメディアを作ろうと10年間全力投球した後、2016年に退職してIEYASUを創業しました。

大久保:MINKABUでは、創業メンバーとして起業を経験されたのですね。

川島:はい。取締役ではないものの、いわゆるファウンダーの一員として創業期から会社を育ててきました。MINKABUでは最初からVCが入り、リーマンショックも経験し、何十億円も調達しながら様々なことを乗り越えてきた10年だったので、2社目では1社目でできなかったことをやりたいと思い「1社目は資金調達するIPOモデルだったから、今回は自分の資本で着実にやっていこう」「B to Bの領域でやろう」と、1社目とは逆の経営方針で創業しました。

大久保:資金調達するIPOモデルと、ご自身の資本だけでやっていくのとでは事業モデルが大きく変わりますね。

川島:そうなんです。1社目では「資金調達をしたからには、成長のために一気に開発を走らせる」という方針だったので、振り返ってみると「あったらいいな」を次々と開発してしまったことにより、上手くコントロールできなかった時期もありました。

大久保:小さくトライして、だんだん増やしていくのではなく、最初から走らせていったのですね。

川島:はい。「資金調達したからには駆け抜けたい」という、時間を買っている感覚でした。

大久保:我々も「創業手帳アプリ」という、多種多様な要望に対応するアプリを作った結果、ターゲットがボヤけてしまい利用者数が全く伸びませんでした。今は機能を絞って事業計画アプリにしたのですが、要素を絞り込まないのは問題ですよね。そういう落とし穴があるのは周知の事実なはずなのに、ハマってしまうという。

川島:そうなんですよね。特に創業期は「あったらいいねをやらない」という相当強い意志を持って取り組まないと、ターゲットや事業のポイントが広く浅くなり「結局、何をやりたかったんだっけ?」という誰にも刺さらないビジネスになってしまうケースがあります。なのでIEYASUでは、創業期から「マーケティングコストをかけない」「不要な機能は作らない」とやらないことを明確にして要素をそぎ落とし、1点突破を常に意識していました。

大久保:なるほど。事業のモデルが異なっても、1社目での様々な経験が2社目に活きているのですね。

川島:そう思います。マーケティングでSEOに力を入れ「勤怠管理 無料」などで検索結果を上位に上げていく方法も、MINKABUでのノウハウが活かされているので、1社目でやってきた経験で無駄になったことは1つもないですね。

ココ重要!
  • 調達した資金をすべて開発につぎ込むのではなく、小さく始めて大きく育てる方法も視野に入れる。
  • 新たに事業をスタートさせる際は、内容やターゲットを厳選し、1点突破を目指す。

自身の経験から働き方改革にいち早く取り組む


大久保:IEYASUを創業されたきっかけは何だったのでしょうか。

川島:1社目の時は立ち上げからずっと働き詰めで、結婚して子どもが生まれてからも多くの時間を仕事に費やし、育児を妻に任せきりにしてしまった結果、家庭が崩壊寸前になってしまったんです。それで「家族との時間を作るために働き方改革をしなければ」と考えたのが、創業のきっかけです。「きっと、様々な理由によって働き方改革を必要としている人は全国にいっぱいあるんだろうな」と思い、長時間労働を是正し、多様化する働き方に対応できる環境を作りたいと考え、勤怠管理システムを作りました。

ただ、先ほどお話ししたように自己資金だけで始めたので、ベンチャーの常である「お金がない&人もいない」という状況でした。それを上手く効率的に乗り越えるためにリモートワークを導入しました。なので、弊社はコロナ禍以前からリモートワークを導入していて、フランスやオランダに在住するライターが書いた記事を沖縄で編集するといったこともやっています。莫大なコストをかけることなく、様々な方の力を借りることができて非常に助かりました。

大久保:海外在住のライターの方は、アウトソーシングという形で働かれているのでしょうか。

川島:そうです。元々、人事労務担当の社労士として働いていた海外在住の日本人の方などに、育児の合間などスキマ時間を利用して働いていただいています。ほかにも、アナウンサーや舞台俳優などを積極的に採用し、空いている時間に働けるようにしています。長期間の撮影などで、まとまった休みが必要となる方たちも活躍できる新しい働き方をサポートしていきたいと考えています。

大久保:リモートワークを導入されたのは、働き方改革という言葉が生まれたのと同じくらいのタイミングだったのでしょうか。

川島:そうですね。ちょうど同じぐらいのタイミングでした。働き方改革という言葉が少しずつ出始めてはいるものの、まだ本格的には始まっていないタイミングだったので、当時は「勤怠 無料」や「勤怠 管理」の検索ワードで上位に入りやすかったんです。今はもう「勤怠」で検索上位を目指すのは結構大変になりましたが、まだ新しいマーケットはたくさんあると思うので、SEOで検索上位を目指せる分野であれば白地があるんだろうなと思います

ココ重要!
  • SEOで検索上位を目指せるニッチマーケットでありながら、マスマーケットへ成長する兆しがある分野を狙う。

2021年にビズリーチグループにジョイン


大久保:ちなみに、社名をIEYASUにされた理由は何ですか?

川島:社名を聞いた時に誰もがパッと頭の中でイメージできるものがいいと思ったのと、人事システムなので「みなさんの会社が永く続くように」という思いを込め、約260年続く太平の世を築いた徳川家康にあやかりIEYASUにしました。

大久保:以前は勤怠管理システム自体も「IEYASU」だったのが、「HRMOS勤怠」へ名称を変更されました。リニューアルされたきっかけは何でしょうか。

川島:2021年11月にビズリーチなどを運営するVisionalグループにジョインしたのがきっかけです。当時、勤怠管理システムを扱っているのが100社ほどあり、さらにSaaSが群雄割拠していて、まさにレッドオーシャンでした。その中でも、IEYASUは無料で利用できたり、スマホで完結できるなど、機能に特化して一点突破していれば伸びることを証明できたとは思いつつも、次のフェーズに入ったと感じていたことから、資本力もブランド力もあるビズリーチ・Visionalにジョインして事業を成長させることで、より良いサービスにできると考えました。特に「勤怠データを採用や人事データと繋ぐことで、新たな価値を創りたい」という思いを最短かつ最高の状態で叶えるため、ジョインすることを決意しました。

大久保:グループに入ってみて、どのようなシナジー効果がありましたか?

川島:紹介という形での取引先が増えましたし、認知度の高い「ビズリーチ」を運営しているVisionalという資本力がある会社のグループ企業ということで信用を得られ、大企業のお客様も増えました。

大久保:上場すると大企業との取引が増えるといいますが、グループ会社になったことで同じようなメリットが得られたのですね。

川島:そう思います。Visionalにグループジョインして数カ月後にはCMを出稿することができ、大企業の方からもお問い合わせいただくことが、ここ半年ほどで一気に増えました。

大久保:PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション/M&A後の統合プロセス)で苦労されたことはありますか?

川島:Visionalの皆さんが、買収前のデューデリジェンス(事前調査)の段階から本当に良い方ばかりで、お会いする前は圧迫面接的なこともあるのかなと思っていたのですが、それが全然なくて。入ってからも「IEYASUの良さを活かしつつ、マーケティングはしっかりサポートしていきます」といったスタンスで受け入れてもらえたので、「しっかりvalueを出していこう」とさらに気合いが入りました。

迷っているなら、まずやってみる!


大久保:今後の展望を教えてください。

川島:企業において、勤怠管理のように全社員が使うシステムって、実はあまりないんですよね。HRMOS勤怠なら、勤怠管理はもちろん、Web給与明細、年末調整、日報管理、契約・請求管理などもできるので、利便性も業務効率も高まります。これまでタイムカードやエクセルで集計していた時間を他の業務に回せるなど、HRMOS勤怠を使ってもらうことで、働く人みんなが少しずつ便利になり、幸せになればいいなと考えています。

大久保:これまでを振り返り、起業されていかがでしたか。

川島:家族との時間が増えて本当によかったです。夕食を一緒に食べたり、土日はしっかり休んだりと家庭を大切にしながら経営できるスタイルにした結果、妻と3人の子どもと楽しい家庭を築けています。1社目の時も含め、お金がなくて苦しい時はありましたが、起業したことを後悔したことは1度もありません。きっと、100回人生をやり直せるとしたら100回起業するなと思うぐらい、「起業」という選択肢を選んでよかったと思っています。

大久保:それでは最後に、これから起業される方に向けてメッセージをお願いします。

川島:起業をすると、お金も時間もなく、あるのはやりがいと夢と希望だけという場面も出てくると思います。私がまさにそうでした。でも、起業しなかった時の後悔は取り返せないですし、やった分は必ず返ってきて次の起業にも繋がります。また、仮に廃業して再就職することになったとしても、起業した経験は必ず活きるので、起業するか迷っている方がいるなら、ぜひ「GO!」と言いたいです。

また、私は常に「お金がなくても、アルバイトしたり再就職すればいい。どうやってでも生きていける!」と思うようにしていました。その感覚があるとメンタルを強く保てます。気合いで頑張れるのは3年ほどだといわれているので、メンタルを保つためにも、「起業してダメだったら、いつでも再就職できる」という気持ちで挑戦してもらえたらと思います。

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(取材協力: IEYASU株式会社 代表取締役 川島 寛貴
(編集: 創業手帳編集部)



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