起業ってリスクはないの?有限責任と無限責任の違いをやさしく解説

創業手帳

もし会社が倒産したら、経営者はどこまで責任を負えばいいのか?

(2020/04/15更新)

起業を考え始めると心配なことがあります。「もし事業に失敗し倒産したらどうなるのだろう」。
もし会社が倒産したら、経営者は債権者に対して負債を支払う義務があります。無限責任・有限責任は、会社が倒産したときなどに経営者(株主)が負うべき責任の範囲の違いを意味します。設立する法人の形態で有限責任か無限責任かが変わってきます。今回は、起業を検討している方に向けて、有限責任と無限責任の違いをやさしく解説します。

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経営者の負う責任は、範囲の違いで2種類ある

あまり考えたくはありませんが、万が一経営している会社が倒産したら、経営者(出資者)はどこまで負債に対しての責任を負うのでしょうか。債権者に支払う義務には、大きく2種類あります。「有限責任」と「無限責任」です。

「有限責任」とは

「有限責任」とは、会社が倒産したときなどに、会社の債権者に対して出資額を限度として、責任を負うということを意味します。会社が倒産した場合には、出資したお金は戻ってきませんが、それ以上は責任を負わないということです。

例えば、出資額500万円で会社を設立し、経営者(株主)となりました。残念なことに事業に失敗し1,000万円の負債を負うことになりました。この場合、経営者(株主)は、1,000万円全額を返済する義務はなく、出資額500万円を支払う、つまり出資額が戻ってこないだけで済みます。

債権者に直接責任を負うわけではなく、出資額だけの責任を負うことになりますので、債権者に対して「間接的に」責任を負うことになります。このような責任を「間接責任」と言います。

「無限責任」とは

「無限責任」とは、会社が倒産したときなどに、負債のすべてを支払う責任を負うことを指します。会社がすべての債権を払いきれない場合は、無限責任を負う人は個人の財産をもち出してでも弁済しなければなりません。

例えば、出資額500万円で会社を設立し、経営者(株主)となりました。残念なことに事業に失敗し1,000万円の負債を負うことになりました。この場合、経営者(株主)は、自宅などを処分するなどお金を工面して、1,000万円全額を債権者に返済する義務があります。

無限責は、直接債権者に対して全額支払いを行う責任があります。このような責任を「直接責任」と言います。

しかし実際には、「銀行など融資元に損をさせるか、株主に損をさせるかのどちらかで会社を解散させる」というようなことは、それほど多くありません。
というのも、中小企業の場合、信用力が小さく、融資の際に役員の個人保証をつけるように要求されるケースがほとんどだからです。役員は、連帯保証人になる、あるいは所有している不動産に抵当権を会社のために設定するなどの保証を行います。これで融資元も事業に対して安心して融資を行うことができるようになります。

社員が有限責任を負う会社と、無限責任を負う会社がある

法人には、株式会社など色々な形態があります。法人の形態によって、出資者である社員が有限責任か無限責任か決められています。

社員が有限責任となる法人

会社の形態が「株式会社」か「合同会社」である場合、その会社は間接有限責任を負う人(株主)だけで構成されていることになります。出資者である自分は、有限責任なのか無限責任なのかがわからない場合は、このように会社の形態から判断できます。

社員が無限責任となる法人

無限責任を負う者(無限責任社員)がいる会社形態は、「合名会社」と「合資会社」の2つです。
「合名会社」は直接無限責任社員だけで作られる会社のことです。
「合資会社」は、直接無限責任社員と直接有限責任社員の両方がいる会社のことを言います。

注意が必要なのは、個人事業で起業する場合。個人事業主も無限責任を負うことになりますので、万が一の時は私財を処分してでも負債を返済する必要があります。

デメリットが大きいのに「無限責任」が残っている理由

無限責任という大きなリスクがある合名会社・合資会社は、なぜ設立され今も残っているのでしょうか。会社設立に関する法律が改正されてきたことにその理由があります。最近新たに設立される会社のほとんどは、株式会社・合同会社です。
2006年に会社法が改正されるまでは、合同会社という会社形態は存在しておらず、代わりに「有限会社」という形態が存在していました。

改正前は、株式会社・有限会社ともに資本金の最低額が定められており、株式会社で1,000万円以上、有限会社では300万円以上という資本金がなければ、会社を設立することができませんでした。
一方で、合名会社・合資会社は、資本金の最低額に規定がなく、手続きも簡単で、設立することがとてもハードルが低くなっていました。
設立にお金をかけたくない人などが、合名・合資会社を設立していたのです。会社法が改正されたあとは、事業さえ順調であれば廃止する理由もありませんので、現在も形態が生き残っているというわけです。

有限責任・無限責任の違いを表で確認!

最後に、有限責任・無限責任の違いと、会社の形態・経営者の責任について表にまとめました。似た用語が出てきていますので、混乱しがちです。参考にしてください。

責任の形式 責任の意味 会社の形態 経営者の個人財産との分離
有限責任 株式 株主が会社に株式の価格だけ出資する 株式会社・合同会社 あり。
経営者も株式の分だけ責任を負う
無限責任 債務=借金 役員が会社に対して債務=借金の連帯責任を負う 合名会社・合資会社 原則なし。
会社債権者は、会社経営者(業務執行社員)の個人財産を引き当てにできる(合資会社の有限責任社員を除く)

まとめ

起業を考える場合、株式会社・合同会社・個人事業の実質3択になります。個人事業の場合、無限責任ですし、株式会社・合同会社も私財を担保に入れますので、実質的に無限責任です。無限責任とは負った負債は全額返済しなければいけないということ。
起業を志す場合には、「事業に失敗すると最悪は個人破産の可能性もある」と心構えがあらためて必要となります。

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(編集:創業手帳編集部)

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