新規事業家 守屋 実×タイガーモブ 菊地 恵理子|「信念」を持つ若者を育てるために必要なこととは?

創業手帳

海外インターンシップを通じて「信念」を育み「変化をチャンス」と捉えられるようになると可能性が広がる


コロナ禍の影響を大きく受けた業界と言えば「海外関連事業」ですが、海外向けインターンシップを提供しているタイガーモブもその一つです。しかし、早々にオンラインでのサービス提供にも注力し、見事に事業拡大に導いたのが代表の菊地さんです。

そこで今回は海外インターンシップ事業の展開や、若者の「信念」を育てるに必要なことについて、大手企業からベンチャー企業まで多種多様な新規事業の立ち上げに関わっている守屋実さんと菊地恵理子さんをお迎えし、創業手帳の大久保が鼎談しました。

守屋 実(もりや みのる)
新規事業家
1969年生まれ。1992年ミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室でメディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社エムアウトを、ミスミ創業オーナーの田口弘氏とともに創業、複数の事業の立上げおよび売却を実施。2010年に守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの立上げに参画し副社長に就任した後、2018年4月にブティックスを、5月にラクスルを、2カ月連続で上場に導く。

菊地 恵理子(きくち えりこ)
タイガーモブ株式会社 CEO
関西学院大学総合政策学部、Lee Kuan Yew School of Public Policy “ASEAN地政学プログラム”卒。中国留学・インターンシップやバックパッカー、前職での海外事業部立ち上げを経て、2016年に未来を担う「次世代リーダーの創出」をミッションに掲げ、タイガーモブ株式会社を立ち上げる。二児の母であり、北海道と東京の2拠点生活。阿寒摩周国立公園の大自然の中でリモート&子育てしながら地球規模での実践・探求の機会を提供している。インフィニティ国際学院ナビゲーター、情報経営イノベーション専門職大学【iU】客員教授。内閣府国際交流事業の在り方検討会検討委員。2017年全国商工会議所女性会連合会主催女性起業家大賞スタートアップ部門特別賞、 EY Winning Women 2018ファイナリスト受賞。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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海外留学やバックパッカーの経験を生かしてタイガーモブを創業

大久保:菊地さんの起業までの経緯を教えてください。

菊地大学時代は中国へ留学に行ったり、インターンシップやバックパッカーをしていたりと海外によく行っていました。

大学卒業後は、ジョブウェブという就活支援の会社に入社し、2年目に海外事業部を立ち上げました。そして、6年前に独立し、タイガーモブを創業したという流れです。

大久保:タイガーモブとはどんな会社ですか?

菊地:タイガーモブは「次世代リーダーの創出」をミッションに掲げて、小さな一歩から大きな挑戦まで地球規模で自分のらしさを追求して、自分はこれだ!という旗を立てる人を増やす事業を展開しています。

コンセプトとしては「Learning by Doing」つまり、「実践による学び」をオンラインとオフラインを融合させ、地球規模の「実践型の学び」として提供しています。

大久保:海外インターンシップはコロナ禍の影響を受けたんじゃないですか?

菊地:コロナ禍以前は、海外インターンシップとして世界45ヶ国、350件以上の実践機会を提供していまして、主にアジア新興国を中心としたアフリカや南米など成長スピードが著しい地域のベンチャー企業やスタートアップ企業に送り出しをしていました。

しかし、コロナ禍になり海外渡航が厳しくなった為、早々に全てオンライン中心に切り替えて、教育機関向けのカリキュラムを提供するサービスを開始しました。

今はこの教育機関向け事業を柱としつつ、個人や法人向けの探求・実践機会の提供を行っています。

ミスミとエムアウトで合計17もの新規事業の立ち上げを経験し独立

大久保:次に守屋さんの起業までの経緯を教えてください。

守屋初めて起業に関わったのは、19才の時に大学の先輩が作った会社に誘ってもらったことでした。事業は上手くいっていましたが、大学4年の時にその先輩から一度は一般企業に就職して社会人としての基礎をちゃんと学べ、とアドバイスをもらったので、金型部品商社のミスミに就職しました。そこで10年間、新規事業の立ち上げを経験しました。

その後、ミスミの創業オーナーである田口さんと、ミスミとは全く別の会社として、エムアウトという会社を作りました。この会社は田口さん個人の資金を使って、様々な新規事業を行う会社でした。

ミスミでの10年とエムアウトでの10年の合計20年のサラリーマン人生で、「17回連続、新規事業のみにアサインされ続ける」というかなり珍しい経験をさせていただきました。

この後に独立して、ラクスルやケアプロの立ち上げに参画、副社長に就かせてもらったのを皮切りに、この2社と合わせて累計で21社のスタートアップの参画をさせてもらいました。

この他にも、板橋区での病院の建設やフィリピンでの小学校の建設など15個のプロジェクトに個人的な活動としても関わらせてもらいました

スタートアップ以外にもJAXAやJR、OKI、博報堂などでも働かせていただいています。

自分のアイデンティティを考えざるを得ない環境が海外にはある

大久保:海外インターンシップの良さは何ですか?

菊地:アウェイな環境に行くことによって「自分のアイデンティティを見直さざるを得ない」というのが一番の利点かなと思います。

アウェイな環境に身を置けるのであれば、海外でなくても良いとは思いますが、日本だと逃げ道がたくさんあると思うんです。想定外の出来事を真正面から受けて、時にはどん底まで落ちて、そこから這い上がる経験ができるのは海外ならではだと思っています。

大久保:累計の参加者は何名くらいですか?

菊地:1度に300名ほど参加する高校や大学のカリキュラムもありますが、オンラインでの実践含め今までに約7,000人くらいの方々にご参加いただいています。

特に高校生向けのカリキュラムでは、世界中の社会課題について学び、それについてのプレゼンテーションをしてもらったり、オンラインでインターンシップに参加いただいたりしています。

海外インターンシップはやりたいことが明確な方にエントリーいただくことが多いですが、まだ自分自身の将来のことを考える機会が少ない中高生に世界中の現状や実践機会を提供することで、志の原点になる火種作りをしています。

大久保:タイガーモブの過去の実績を見ると、かなりエッジが立っているインターンシップ先が多いですが、あえて日本とのギャップが多そうな環境を選んでいますか?

菊地:あえて選んでいます。

タイガーモブの創業当初は、自らバックパッカー営業をして開拓したので、自分でも行きたい場所や参加する学生も成長できて、学生が頑張ることでインターン先の企業も成長しそうなところを選んでいます。

せっかく海外インターンシップに参加してもらうので、単純作業ばかりやるのではなく、猫の手も借りたい!という成長真っ只中な企業に行ってほしいと思い、面白い!と思った企業のみを掲載しています。

インターンに参加する学生と企業の両者にメリットが出るプログラムを構築

大久保:印象に残っているインターン先はありますか?

菊地:かなり前の話ですけど、ケニアで水ビジネスを行う現地企業へのインターンシップが特に印象に残っています。

インターン生が現地でケニアのリアルな状況を見て、自分たちでクラウドファンディングを立ち上げて資金を集め、ウォーターキヨスクを作りました

このプロジェクトが成功した背景には、色々な人たちに騙されたり怖い思いをしたりして波瀾万丈でしたが、涙しながら最後は笑顔で終えることができたので、今でも鮮明に覚えています。

これまで水道管がなくて定価の20倍以上の値段で水を購入せざるをえなかったり、20リットルの水をかついで運ばざるを得なかったのでウォーターキオスクが出来たことで村人たちからも多くの感謝の言葉がよせられていました。

守屋:ウォーターキヨスクは今でもありますか?

菊地:ウォーターキオスクの存続の有無はわかりませんが、インターン先としては残念ながら選択肢からは外れてしまいました。

「日本人が来る」=「お金が入る」という風に当てにされるようになってしまったので、インターンシップ先としてそのケニアの企業は取りやめることにしました。

守屋:発展途上国の支援に繋がることをすると、その線引きが難しいですよね。

僕もフィリピンのサマールノース州ヒパラヤン村に小学校を立てるプロジェクトを仲間と立ち上げたことがあるのですが、小学校が完成して少しした後に、次は中学校を立ててほしいと言われました。

僕たちとしては、その小学校の卒業生が立派に育って、自分たちで自立する方向に進んでほしいと期待していましたが、ここのバランスがとても難しいと思いました。

菊地:発展途上国でのインターンシップでは、現地に住んでいる日本人の方が代表で、他のスタッフが現地の方々というパターンは比較的上手くいっていることが多く、お互いの良さを生かして自分たちで何とかしようという勢いが生まれているような印象があります。

守屋:現地確認も含めて、インターンシップとしての品質管理も大切ですよね。「日本人=お金」と思い込んでいるインターン先の企業はリストから外すという仕組みも必要になりますね。

菊地:インターンシップをうまく活用できる企業は、オンラインでインターンシップを実施しても上手くいっています。

自宅から世界中の社会課題に参画できる機会として提供できていて、学校や子育てなどの理由で今までは海外インターンシップに参加できなかった方でも参加できるようになりました。

新規事業立ち上げのプロに聞く「信念を育てる方法とは?」

菊地:守屋さんの『起業は意志が10割(講談社)』という著書にも、「信念が重要」と書かれていますが、信念を育てるポイントは何だと思われますか?

守屋信念が勝手に芽生えてくれれば楽なんだけれども、現実は必ずしもそうではないと思います。

例えば、半沢直樹みたいに親の仇を取りたいというような信念を持つ人は滅多にいないので、結果的にぼんやりとしてしまっている人がほとんどだと思います。

ただ一方で、信念を持っている人がいるのも確かで、近くに信念を持つ人がいると、それが伝染して周りの人も信念を持つようになると思っています。

なので、タイガーモブみたいに信念を持ってすでに行動している人が集まる場所は、激しい上昇気流が吹き上がっているはずです。このような場所に加わると、自然と信念が芽生えてくると思いますね。

菊地:守屋さんが信念を持つようになったきっかけはミスミの田口さんですか?それとももっと前に別の方がいましたか?

守屋大学1年生の時に一緒に会社を作った1年上の先輩である「小幡さん」ですね。小幡さんと色々なことに挑戦して、たまたまその時世の中がバブル時代で、当時立ち上げた会社の年商が1億円くらいあったんです。

その時に成功も失敗も色々と経験して「2連敗したら3連勝すれば良い」「諦めずに動き続ければ必ず前に進むことが出来る」という風に思えるようになったんですよね。やると決めたら即行動する癖を大学時代につけられたのは、僕の信念の目覚めに強く影響していると思います。

行動からインパクトを出すまでの秘訣

菊地:海外インターンシップを経験した学生たちが「社会的インパクト」を起こせるかどうかが今後重要になってくると考えているのですが、社会的インパクトを起こす秘訣があれば教えてください。

守屋社会的インパクトを出すことに焦りすぎると、逆に遠ざかってしまうと思います。

「インパクトを出したい」と言ってしまうと、その時点で主語が自分になってしまいますが、本来、主語はお客様や地球環境であるべきですよね。

個人のために社会があるわけではないので、ボタンの掛け違いが起こらないように、学生たちが良い方向に成長できる手助けが必要ですね。

菊地:ユーザーの方々にとってベストな環境を作りたいです。

守屋:ボタンの掛け違いが起きているかどうかは、周りから見ていると気づけるはずです。周りの人が気づいた時に上手く軌道修正してくれるようなコミュニティは貴重な存在ですよね。

例えば、スタートアップの界隈でもすでに上場している先輩たちが大勢いるので、そういう先輩起業家から成功したコツや失敗談を聞くことで学びが深まります。

つまり、社会的インパクトを出すためには、色々な人たちに会って影響を受けたり、助けてもらったりしながら成長できる環境に身を置くことが良いと思いますね。

菊地:タイガーモブでは、100年先をつくる生態系として、タイモブマフィア(公認サポーター)を増やしています。何かやりたい!と思った時にロールモデルに会える、最先端で取り組んでいる人に相談できるなど、彼らが立てる旗をより加速するためのサポートができればと思っています。

「変化はチャンス」だと捉え変化を楽しめる人を増やしたい

菊地:守屋さんがそんなにも成果を出し続けられる背景には何があるんですか?

守屋:僕の場合は、過去にある絶対的な成功体験だと思います。

27歳の時にミスミの新規事業として、動物病院向けのカタログ通販事業を立ち上げました。その事業はたった2人で立ち上げた事業だったのですが、当時国内約8,000件の動物病院のうち約6,000件で採用してもらえたんです。

僕自身がその事業から外れた後も、毎年約250件の新規開業する動物病院のうち約240件が採用してくれたそうで、今では、約12,000件の動物病院のうち約11,000件が採用をしてくれているそうです。

この事業は、動物病院の資材流通をガラッと変えたと自覚することができて、この成功体験が今でも僕のエンジンになっていると思います。

どんなに苦しいことがあっても、あの頑張れたのだから、今回も頑張れるはずと、最後の最後まであの成功体験が自分の支えになってくれていますね。

大久保:最後に読者の方々にメッセージをお願いします。

菊地:世の中には「変化」を恐れている方も多くいると思います。しかし、「変化はチャンス」でしかありません。

守屋さんの著書にも「逆説的な言い方になるが、『変わらないためには、変わり続けないとダメ』なのだ。変わることを恐れ嫌っていると、留まることも出来ずに押し流されてしまい、結果、意図しない方向に変わってしまうのである。」と書かれていて、まさにその通りだと思っています。

私たちタイガーモブは、コロナの影響で事業も転換しましたし、フルリモートにもなって、結果的にすごくよかったんです。なので、何かをやってみることの積み重ねで、変化が楽しくなるし、変化を起こす側になる楽しさを多くの方々に知っていただきたいと思います。

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