ストーンスープ 村田信之|20年間「大隈塾」でネクストリーダーを輩出。起業家に必要なリーダーシップの3要素

創業手帳

リーダーシップを身につけることで、人生100年時代を生き抜く


ストーンスープ代表の村田さんは、2002年から2022年3月までの20年間、早稲田大学で大隈塾を開講。リーダーシップの講義を担当されてきました。

たくましい知性を鍛え、自ら考え行動できるリーダーを生み出してきた大隈塾。村田さんは、その塾頭を務める田原総一朗さんのアシスタントを務めていた経験もあります。

今回は、起業家や管理職だけではなく、すべての人間にとって必要となるリーダーシップを育む方法について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

村田 信之(むらた のぶゆき)
一般社団法人ストーンスープ 代表理事
早稲田大学政治経済学部卒業後、1994年よりジャーナリスト田原総一朗氏のスタッフに。2003年大隈塾ゼミ(高野孟ゼミ、岸井成格ゼミ)の教員に就任。京都芸術大学客員教授、内閣官房内閣総務官室専門調査員、早稲田大学客員准教授を歴任。2016年には立教大学経営学部兼任講師としてBLP(ビジネスリーダーシッププログラム)を担当。
2020年、岩手県釜石市に移住。2021年には大隈塾のコミュニティハウス「クマラボ」を立ち上げ、岩手・東京の2拠生活に。ワークウェルネス(ワーケーション)、リーダーシップ、公共経営、地域再生を研究分野とする。著書に『ひまわり弁護士』(講談社文庫/2006年)。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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田原総一朗のアシスタントを経て、大隈塾をスタート

大久保:村田さんは田原総一朗さんのアシスタントを務められていたのですよね。得られたものが多かったのではないでしょうか。

村田:そうですね。27~45歳くらいまでずっと一緒に仕事をしてきたので、田原総一朗流の取材の仕方は十分見てきましたし、いろんな方にお会いすることができました。誰に会っても緊張しない度胸もつきましたね。

大久保:どういう経緯でアシスタントになられたのですか?

村田:僕は元々、学生時代から『インサイダー』の編集長を務める高野孟さんの下にいました。田原総一朗さんが出演する「朝まで生テレビ!」や「サンデープロジェクト」にも出演していたジャーナリストなのですが、大学を卒業し、僕が蓮舫と結婚した頃、田原さんから高野さんに「ちょっと村田くんを貸してほしい」と打診があり、雑誌のアシスタントとしていきなり大きな連載を担当することになりました

「日本の官僚」というシリーズだったのですが、担当するスタッフ3人のうち、僕以外の2人はバリバリのフリージャーナリストだったんです。僕は当時、ライターと言っても雑誌で小さな記事を書くくらいで、フリーライターとして霞が関で各省庁を取材したり、政治家に取材に行ったり、どこにも出ていないネタを探したりということをやったことがなかったんですね。それなのに、いきなり「外務省担当ね」と言われて、最初はすごく大変でした。

大久保:取材力に加え、知識も必要ですしね。

村田:とにかく勉強、勉強でしたね。まずは「どうやってネタを探すか」というところからのスタートで。最初は、新聞記者に「教えてください」と取材をする日々でした。当然、「何か情報はありますか?」と聞いたところで何も教えてくれないので、ネタを持ち込んで「こういう話について、もう少し情報を知りたいんですが」といって情報を収集していきました。

そうして外務省を当たっていくうちに、イラク戦争が開戦する際、それを最初に日本に知らせたのがジャーナリストの手嶋龍一さんで、その回線をキャッチしたのが当時防衛庁から外務省に出向していた森本敏さんだったということを知りました。森本敏さんは防衛大臣も務めた方なのですが、そういう方の話を発掘し、記事にするという仕事をいろんな方に助けてもらいながらやっていきましたね。

大久保:早稲田大学で講義されていた「大隈塾」の塾頭も田原総一朗さんが務めていらっしゃいましたね。

村田:はい。ずっと一緒に仕事をしてきた流れで、「今度、早稲田大学で大隈塾を作るから手伝ってほしい」と声をかけてもらいまして、当時早稲田大学の総長を務めていた奥島孝康さんとともに『リーダーの中のリーダーを作る』をテーマに大隈塾をスタートさせたのが2002年のことでした。

リーダーシップに必要な3要素

大久保:大隈塾では、どのようなことを教えられていたのでしょうか。

村田:大隈塾の正式名称は「たくましい知性を鍛える」なのですが、リーダーシップをテーマにした講座を学部生と社会人向けに開講していました。社会人は35~40歳ぐらいのマネージャーレベルの人たちを対象に、企業派遣という形で講義していました。

大久保:現代の日本において「社長になりたい」と答える若者の数は、外国に比べて極端に少ないといわれていますが、こういう時代にこそ「リーダーになる人材を育てていこう」という取り組みなのですよね。

村田:当初は「リーダーになる人を育てる」という目的で始めたのですが、だんだんと「リーダーシップを身に付ける」という方向にシフトチェンジしました。リーダーになるかどうかはそれほど問題ではなく、リーダーシップを身につけた人が数多くいる社会とそうではない社会では、どっちの方がいい社会になるかというと、当然リーダーシップを身につけた人がたくさんいる社会の方ですよね。そのために、多くの人がリーダーシップを身につけられるよう講義とワークショップを行ってきました。

また、リーダーシップと聞いて皆さんが思い浮かべるのは、カリスマ性のあるリーダーや、引っ張っていく力が強い人だと思います。しかし、リーダーシップの中には「サーバントリーダーシップ」といって、縁の下の力持ちとしてメンバーを下から支えていくリーダーシップもあるんです。このように、いろんなタイプのリーダーシップがある中で、僕たちは「権限を持たない人がどうリーダーシップを発揮するのか」その手法を伝えています。

大久保:国でも会社でもリーダーシップを発揮できる人が少なく、人材が不足している中からリーダーを選ぶと、どうしても質も下がってしまう。だからこそ、リーダーシップを発揮できる人をたくさん作り、リーダーのレベルを上げていこうということですね。

村田:はい。この「権限を持たないリーダーシップ(リーダーシップwithout authority)」には3要素があって、一つ目が目標設定と共有。二つ目が率先垂範。三つ目が相互支援です。この3要素があればリーダーシップは取れます。そのため、この3要素を身につけた人が会社や組織の中にどれくらいいるかが、組織が成長していくためのカギになります。

大久保:管理職やリーダー職だけでなく、平社員にも当てはまる要素ということでしょうか。

村田:そうです。むしろ平社員にこそ必要だと思います。

大久保:起業家がこの3要素を実行していく中で、気を付けるべきポイントはありますか?

村田:起業家の方は、「まず自分でやってみよう」「自分の手を動かしてやってみよう」という意識が強い方も多いとは思いますが、起業家が率先垂範ばかりして部下や仲間に仕事を振らなくなってしまうのは問題なので、そこは注意した方がいいですね。

大久保:率先垂範だけでなく、目標設定と相互支援を意識することが大事ですね。

「場」を設定することで積極性を引き出す

大久保:私も明治大学でMBAの講師をしているのですが、自ら勉強に励み、インターンシップにも積極的に参加している学生もいれば、なかなか行動に移せない学生もいます。これまで20年間、様々な学生を教えられてきた中で大切にされてきたことは何ですか?

村田:学生たちは、権限を移譲すればものすごく喜んで、自由にのびのびといろんなことを自主的にやっていきます。大隈塾には、スチューデントアシスタントという講座の運営を手伝う学生が4人いて、その学生たちと僕とで話し合って授業内容を決めていました。また、講座は、各界の著名人などを外部から招いて行う講義とワークショップを行っていたので、学年も学部も異なる学生がわいわいダイアログする時間も多かったんですよね。「場」を設定してあげれば、ものすごく積極性が出てくるので、モジモジしてなかなか行動に移せない学生は、そういう場がないんじゃないかなと思います。特にコロナ禍では、そういう場が減った学生も多かったように思います。

大久保:「場」という意味では、スチューデントアシスタントの方は、単に受講するだけの学生よりも成長が見られたのではないでしょうか。

村田:めちゃくちゃ成長しましたね。

大久保:そうですよね。単に聴衆の一人として講義を聞いていると傍観者になりがちですが、運営に参加することでより主体的に学べますよね。

これからは大都市で稼ぎ、地方に住む時代

大久保:村田さんは、岩手県釜石市に移住されて2年目なのですよね。

村田:はい。東京で稼いで、釜石に納税するという生活を送っています。

大久保:地元にとっては一番ありがたい形ですね。

村田:今後、こういう働き方は増えてくると思います。ちなみに、今僕がいるのは鹿児島県の与論島です。ワーケーションをする場所として、もう20年ほど通っています。数日後には、沖縄県に移動し、那覇から東京に行って、東京に着いた翌日には釜石に帰る予定です。何が言いたいかというと、住んでいる地域と稼ぐ場所がイコールでなくてもいいと思うんです。大都市圏など稼げる地域で稼ぎ、それを使いたい場所で使えばいいと思っています。

こういう働き方が増えると、東京への税収が減ると指摘される方もいますが、税収は減ったとしても住み心地は良くなりますよね。人が少なくなるわけですから満員電車も解消されるでしょうし、住環境も変わってきますよね。WEB上で会議も行える便利な世の中なのだから、便利を便利として使うべきだと思います

大久保:移住とまではいかなくても、定期的に地方に行き、リモートで仕事を行うと気分転換にもなりますし、新たな発見もあるでしょうね。

村田:そうなんです。早稲田大学に在籍している学生の中にも、熊本や福島でインターンをしながらオンラインで授業を受けている学生もいます。そうすることによって、見聞が広がり、物の見方も広がっていきますし、人脈もできますよね。働き方って、一つじゃないと思うので、自分に合った働き方を模索していくといいと思います。

また、起業するということがすごく手近になりましたよね。「起業してお金儲けをしよう」「会社を大きくしよう」と考える人もいますが、何か人の役に立つような、ちょっとした小商いを2つ3つ、副業的にパラレルでやる学生起業家たちも出てきています。大隈塾の卒業生にもそういう起業の仕方をしている人たちがいて、これからますます面白いことが起きていく予感がします。

大久保:スマホやZOOMが普及した現代では、考え方次第でいろんなことができますから、リーダーシップを身につけて、どんどん挑戦していくことが大切ですね。

村田:はい。リーダーシップを身につけたら人の役に立ちますから。人の役に立つということは、いろんな人から認められるということです。マネーが大切なのか、信頼が大切なのかを考えたら、これからは「マネーはそこそこ、信頼はたくさん」という考え方が必要になるんじゃないかなと思います。

大久保:実際に釜石に住み、長年与論島にもワーケーションに行かれている村田さんから見て、地域活性化のためには何が必要だと思いますか?

村田:先日、釜石にあるイカの加工販売会社の企業説明会を見学した際、地方の中小企業ながらもしっかりとパーパスを掲げ、社員研修もきちんと行い、売り上げも伸ばしている会社があることを知り、釜石の魅力を再発見するとともに、この街はもっと良くなると思いました。SNSなどで情報をどんどん発信し、情報を受け取れるようなシステムにしていけば、もっと人が集まってくると思います。そして、そのためにはまず、自分が行ってみることですね。例えば、東京の人だったら、近郊の鎌倉ではなく、もう少し先の静岡まで行き、週に2回程度リモートで働いてみるとか。そういうことをやってみるのも良いんじゃないでしょうか。

地方創生には、地域と関わりをもつ「関係人口」が大切だとよく言われますが、移住となるとハードルが高くなってしまうので、最近では、観光客などの「交流人口」に加え、「関心人口」という言葉も生まれています。その街に関心を持ってさえいてくれれば、その地域のことを全く知らないより良いという考え方なのですが、確かにそうですよね。地域の活性化に関しては、いろんなカウントの仕方がありますが、その地域がどうしたら元気になるかといえば、知ってもらうことが一番ですから

人生においてもリーダーシップは重要

大久保:以前、蓮舫さんとの結婚生活について「すごく素晴らしい期間でした」と答えられているのを拝見しました。

村田:最高に楽しかったですよ。蓮舫とは、高野孟さんの下で働いているときにテレビ番組の制作現場で知り合ったのですが、お互い価値観は違うものの、人生観はバッチリ合っていました。しかし、ライフスタイルの変化とともに、人生観も変わっていきますよね。ずっと子どもと一緒だったのが、子どもたちが巣立ち、これから自分たちがどう生きていきたいかと考えたときに、人生観が今までと変わるのは当然ですから。もちろんお別れをすることもありますけど、人生観が同じなら、まずは目標を設定し、それから相互支援していく。人生においても、会社の組織においても、リーダーシップの要素は同じだと思っています。

大久保:ステージが変わったら変化はあるかもしれないけれども、まずは相互支援していくことが重要。確かにそうですよね。

村田:はい。会社も規模が小さいときの目標設定と、従業員が200人、300人と増えていったときの設定の仕方では違いがありますよね。それと同じで、人間もライフステージに合わせて変わっていくのがライフシフトだと思います。

大久保:今は人生100年時代ですからね。自由に考え、自由に生きるために、たくましい知性がいるし、自分で考えるためのリーダーシップが必要になってきますね。

村田:そうなんです。この3月で大隈塾は20年の幕を下ろしましたが、受講していた学生やOG・OBでコミュニティを構築し、旅をしたり、ワークショップを開催しています。これからはキャンパスを飛び出し、ワーケーションを続けながら次のライフステージに進んでいきたいと思います。

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: 一般社団法人ストーンスープ 代表理事 村田 信之
(編集: 創業手帳編集部)

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