個人事業税がかからない業種は?勘違いしやすいケースや課税対象の業種も紹介
個人事業税がかからない業種やケースを調べておこう
個人事業主になる時には、これからどのような税金がかかるのか事前に調べておくことが重要です。個人事業税は、業種によって課せられるケースがあります。
どういった業種だと課税されるのか、税率は何%なのか、事前にコストを把握してください。
ここでは、個人事業税がかからない業種や混同しやすいケースを紹介します。
創業手帳では、様々ある税金についていつ支払えばいいのかを予め把握しておけるための「税金カレンダー」をご用意致しました。個人事業主向けと法人用と分かれていて、法人用については自身の会社の決算月の設定によって使い分けられるようにそれぞれカレンダーをご用意。税金の支払い忘れによる余計な支出を増やさないためにも、是非こちらをご活用ください。無料でご利用いただけます。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
個人事業税とは
個人事業主に課せられる税金のひとつに個人事業税があります。個人事業税は、各都道府県にある地方税です。個人事業税の税率は3%〜5%で、業種によって異なります。
また、非課税となる業種もあり、個人事業税がかかるものを法定業種、個人事業税がかからないものを非課税業種と呼びます。
法定業種は70種類あり、法定業種以外であれば個人事業税を払う必要はありません。
一方で、法定業種に該当すれば開業届を出していない場合や副業の場合でも個人事業税を支払います。
個人事業主として働く時には、自分の業種が個人事業税の課税対象になるのかどうかを
事前に確認してください。
個人事業税がかからない非課税業種
個人事業税の課税対象は、法定業種と呼ばれる70の業種です。ここでは、個人事業税が課税されない非課税業種について紹介します。
画家・漫画家などの業種
画家や漫画家、イラストレーターなど、絵を描くことにかかわる業種は個人事業税の対象外です。
漫画家として活動していたり、絵やイラストを販売したりしている人は個人事業税の納付は必要ありません。
作詞・作曲などの業種
作詞家や作曲家など、音楽にかかわる業種も個人事業税が課税されません。
楽曲や作詞した文章を提供して報酬を受け取っている場合は、音楽関係の業種として非課税業種に該当します。
農業や林業などの業種
個人が行う農業や畜産業は個人事業税の課税対象外です。また、土地に苗を植えて、造林し伐採するような林業にも個人事業税は課税されません。
通訳・翻訳などの業種
通訳や翻訳など、言語を扱っている業種にも個人事業税は課税されません。外国人の通訳や書籍の翻訳を仕事にしている場合は非課税業種に該当します。
国外で通訳や翻訳をした場合も同様で、個人事業税は課せられません。
プロスポーツ選手などの業種
プロスポーツ選手などのスポーツ選手は、プロ選手としてクラブと契約を締結して試合に参加することで報酬を受け取っています。
プロスポーツ選手などの業種も個人事業税は課税されません。
エンジニア・プログラマーなどの業種
エンジニア・プログラマーといったIT関係の業種も個人事業税は課税されないケースがあります。
業務委託契約や準委任契約によって仕事をしているIT業種は、基本的に個人事業税が課税されません。
しかし、具体的な成果を求められる契約形態の場合は、請負業や製造業とみなされ個人事業税が課税される可能性があります。
個人事業税がかかる法定業種
個人事業税がかかる法定業種は70種類あり、さらに第一種から第三種までに分けられています。それぞれの業種を確認してください。
第1種事業に含まれる業種
第1種事業に含まれる業種は以下のとおりです。以下の業種に当てはまる個人事業主は、条件を満たすことで個人事業税の対象になります。
-
- 物品販売業
- 運送取扱業
- 料理店業
- 遊覧所業
- 保険業
- 船舶定係場業
- 飲食店業
- 商品取引業
- 金銭貸付業
- 倉庫業
- 周旋業
- 不動産売買業
- 物品貸付業
- 駐車場業代理業
- 広告業
- 不動産貸付業
- 請負業
- 仲立業
- 興信所業
- 製造業
- 印刷業
- 問屋業
- 案内業
- 電気供給業
- 出版業
- 両替業
- 冠婚葬祭業
- 土石採取業
- 写真業
- 公衆浴場業(むし風呂等)
- 電気通信事業
- 席貸業演劇興行業
- 運送業
- 旅館業
- 遊技場業
第1種事業に含まれる業種の税率は5%で計算されます。
上記の業種に該当している場合には条件を満たすことで個人事業税の対象となるので、納税の準備を忘れないようにしてください。
第2種事業に含まれる業種
第2種事業に含まれる業種は以下のとおりです。
-
- 畜産業
- 水産業
- 薪炭製造業
上記の3つに該当する業種の場合、個人事業税の対象になるかもしれません。第2種事業に該当する場合の個人事業税は4%の税率で計算されます。
第3種事業に含まれる業種
第3種事業に含まれる業種は以下のとおりで、30種類あります。
-
- 医業
- 公証人業
- 設計監督者業
- 公衆浴場業(銭湯)
- 歯科医業
- 弁理士業
- 不動産鑑定業
- 歯科衛生士業
- 薬剤師業
- 税理士業
- デザイン業
- 歯科技工士業
- 獣医業
- 公認会計士業
- 諸芸師匠業
- 測量士業
- 弁護士業
- 計理士業
- 理容業
- 土地家屋調査士業
- 司法書士業
- 社会保険労務士業
- 美容業
- 海事代理士業
- 行政書士業
- コンサルタント業
- クリーニング業
- 印刷製版業
- あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業
- 装蹄師業
第3種事業の税率は、主に5%と2%の2種類で計算されます。
「あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業」と「装蹄師業」のみ、3%の税率で計算します。
個人事業税対象業種であってもかからないケース
個人事業税の対象業種になっていて、今後の納税に不安がある人もいるかもしれません。しかし、個人事業税の対象業種であっても課税されないケースがあります。
以下で紹介する3つのケースでは個人事業税が課税されません。どういったケースがあるのか知っておいてください。
事業の所得が290万円以下の場合
事業主控除は、事業の所得を計算する時に290万円を控除する制度です。ただし、年度の途中で事業を開業または廃業した時には月割で計算して控除します。
つまり、営業期間が半年であれば、控除額も半分の145万円となります。
事業主控除では年間290万円の控除が受けられるため、事業所得が290万円以下であれば個人事業税が課税されることはありません。
過去3年間に赤字がある青色申告者の場合
青色申告をしている個人事業主の税制優遇に繰越損失があります。繰越損失とは、事業で赤字が出た時にその赤字を3年間繰り越して、翌年以降は所得から控除できる制度です。
つまり、赤字を繰り越して翌年以降の黒字と相殺する制度ということです。
この制度を使えば、事業で290万円より多くの所得を得た場合でも個人事業税の課税対象外にできることがあります。
例えば、前年に赤字が100万円出ていて、今年度の所得金額が380万円の場合は、前年の赤字を繰り越して課税を免れることが可能です。
青色申告を選択するためには、青色申告承認申請書が必要となります。
開業届を提出する時には、まとめて青色申告承認申請書を提出することをおすすめします。
繰越控除がほかにもある場合
繰越控除は青色申告の繰越損失だけではありません。
被災事業用資産の損失の繰越控除は、白色申告者で震災や風水害、火災などによって生じた事業用資産の損失がある時に3年間繰越控除ができる制度です。
また、譲渡損失の控除と繰越控除もあります。
直接事業に使う資産(機械や装置、車両等。土地、家屋等を除く)を譲渡したために生じた損失額を、翌年以降の3年間繰越控除できます。
個人事業税が課税される可能性がある時には、利用できる控除がないか確認してみてください。
個人事業税はかかる?かからない?わかりにくい業種や仕事内容
前述したように、法定業種70種に含まれている業種でなければ課税されることはありません。
しかし、業種の判断はあいまいになりがちで、各都道府県税事務所に判断がゆだねられます。
ここでは、個人事業税がかかるかどうかがわかりにくい業種や、仕事内容についてまとめています。
自分の業種が法定業種にあたるか判断が難しい場合には、管轄の税務署に問い合わせてください。
似ている非課税業種と法定業種
業種をうまく説明できないこともあります。仕事の内容によっては、複数の業種の側面があるかもしれません。
ここでは、似ている非課税業種と法定業種についてまとめています。
非課税業種の「画家」と法定業種の「イラストレーター」
「画家」は、法定業種に含まれず、個人事業税がかからない業種です。
しかし、「イラストレーター」や「デザイナー」はデザイン業となり課税対象になります。
画家が本業でも、イラストレーターやデザイナーは第3業種であり、個人事業税の課税対象です。
都道府県税事務所は、実際の仕事の内容によって業種を判断します。
開業届に画家と記載していたとしても、主な仕事内容がイラストを描くことであればイラストレーターと判断されます。
非課税業種の「コーディング」と法定業種の「Webデザイン」
Webにかかわる仕事は細分化されていて、仕事の内容によって業種の判定が変わります。
仕事の内容が「Webデザイン」である場合にはデザイン業にあたり、第3種事業として課税対象です。
一方、「コーディング」をメインの仕事にしている場合には法定業種に含まれないので課税されません。
また、エンジニアやプログラマーも「コーディング」に該当しているので法定業種ではありません。
ただし、業種だけでなく、契約形態によっても異なります。
契約形態が請負契約になっている時には、「請負業」として個人事業税の対象です。
インフルエンサーやアフィリエイター、YouTuberといった比較的新しい業種も、仕事の内容や契約によって判断します。
依頼を受けて商品を広告するような仕事は、広告業に該当するため課税されます。
非課税業種でも仕事内容が「請負業」
法定業種に該当しない場合であっても、仕事の内容によっては請負業として課税されることがあります。請負業かどうかを判断する基準は以下のとおりです。
-
- 仕事の完成を目的とした契約に基づき収入を得ていること
- 資本的経営を行っていること
- 仕事の計画及び遂行について独立性を有すること
- 危険負担を有すること
上記の要件をすべて満たす場合には、「請負業」として課税対象となります。
非課税業種と法定業種の兼業
本業はライターでも、副業としてコンサルタント業を行うなど、複数業種を兼業しているケースもあります。
個人事業主の開業届は主な業種だけを記載すれば問題ありません。しかし、個人事業税は税率の異なる業種に分けて税額を決めることになります。
確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄には、個人事業税の算出に必要な事項も記載します。
確定申告書の所定欄に番号と金額を記載することになるので、事前に事業ごとの所得を計算しておくようにしてください。
個人事業税の計算方法や納付方法
個人事業税の納付に不安を感じる人もいるかもしれません。ここからは、個人事業税の計算方法や納付方法について紹介します。
個人事業税の計算方法
個人事業税の金額は、以下の計算式で求められます。
(収入ー必要経費ー事業主控除)×事業税率
事業主控除は一律で290万円です。
収入から必要経費を差し引いて残る事業所得が290万円以下であれば個人事業税は発生しないこととなっています。
ただし、個人事業税は、所得税のように青色申告特別控除は適用されません。
例えば、物品販売業を営んだ収入が450万円で必要経費が60万円発生していたケースで考えてみます。
事業所得の390万円から事業主控除290万円を差し引いた100万円に対して事業税率を掛けます。
物品販売業は、第1種事業なので5%が税率です。100万円×5%で5万円が納税額と計算できます。
個人事業税の納付時期と方法
個人事業税の納付が必要な時には、8月ごろに都道府県税事務所から納税通知書が送られてきます。納税の必要がない個人事業主には納税通知書が送られてくることはありません。
納税通知書には第1期分と第2期分の納付書が添付されます。個人事業税の納付期限は、原則第1期分が8月31日、第2期分が11月30日です。
また、個人事業税には減免制度があり、条件を満たすことで減税されることもあります。詳しい内容は、管轄の都道府県税事務所に問い合わせてみてください。
まとめ・個人事業税の対象となるか仕事内容も踏まえて把握しておこう
個人事業税のように、普段あまり耳にしない税金はわかりにくく感じてしまうかもしれません。
不安な場合には税理士に相談する方法もありますが、開業して業種を選ぶ時点で個人事業税が課税されるかどうか把握しておくことをおすすめします。
個人事業税を払う必要がなくても勘違いで納税したり、反対に必要な税金を払わずに後から請求されたりするケースもあります。開業前に管轄の県税事務所に相談してください。
創業手帳では、事業主が知っておくべき税制度や節税方法に関する情報を提供しています。資金繰りを改善するうえで税制度の理解は欠かせないため、「税金カレンダー」もあわせてご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)