中小企業が利用できる賃上げの補助金・助成金や優遇措置9選

創業手帳

中小企業が賃上げをする時には補助金の活用が必須!


現状に合わせた最低賃金額の適正化を目的に、賃上げに取り組む中小企業が増えています。
労働者にとってはメリットがある一方で、賃上げには企業側の負担が大きくなることがデメリットです。
国は賃上げに取り組む企業への支援を強化しており、補助金・助成金、優遇措置などを活用して負担を軽減できます。

今回は、中小企業の賃上げを支援する補助金・助成金や融資・優遇措置をご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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中小企業の賃上げを支援する補助金・助成金4選


賃上げを行うことで、人材の採用率や定着率をアップする効果に期待できます。既存の社員も給与が上がることで、仕事に対するモチベーションを高めることが可能です。
賃上げにはこのようなメリットがあるため、中小企業が取り組めるように賃上げの際に利用できる補助金・助成金が整備されています。

補助金・助成金 概要
キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースにて、有期雇用労働者の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、適用させた場合、50,000~55,000円の助成金が支給される。
業務改善助成金 生産性を向上させるための設備投資や事業場最低賃金の引き上げなどを行った場合、投資にかかった費用か女性上限額のいずれか低いほうの金額で助成金が支給される。
事業再構築補助金 経済社会の変化に対応するための事業再構築を行う際に使える補助金制度で、最低賃金の引き上げを行うと500~1,500万円を上限に補助金が支給される。
小規模事業者持続化補助金 作成した経営計画に則って販路開拓の取組みを行う場合に使える補助金制度で、最低賃金の引き上げを行うと200万円を上限に補助金が支給される。

それでは、中小企業の賃上げを支援してくれる4つの補助金・助成金についてご紹介します。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金には複数のコースがあり、賃上げを支援する賃金規定等改定コースが設けられています。
大人数の賃金を引き上げる際にメリットのある助成金制度です。

キャリアアップ助成金の概要

キャリアアップ助成金は、派遣社員や短時間労働者など非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進することを目的にした助成金です。
非正規雇用労働者の正社員化、または処遇改善に取り組んだ事業者に助成金が支給されます。
処遇改善支援として、賃金規定等改定コースを利用できます。

このコースでは、有期雇用労働者などの基本給の賃金規定を3%以上増やすように改定し、適用させた場合に助成金を受給することが可能です。
支給申請の期間は、対象労働者の賃金規定を改定した後、6カ月分の賃金を支払った翌年日から2カ月以内です。
例えば、15日あたりが賃金支払日だと仮定します。4月1日に改定した場合、改定後6カ月目に賃金が支払われるのは10月15日になります。
この場合の申請期間は、10月16日~12月15日までです。

適用条件

賃金規定等改定コースでは、対象となる労働者・事業主、申請の適用条件が定められています。主な適用条件は以下のとおりです。

  • 賃金規定等の増額改定を行う前日までにキャリアアップ計画を作成して、労働局に提出する
  • 有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を定めている
  • 賃金規定等を3カ月以上増額改定している
  • 改定後はその規定に則って6カ月分の賃金を支給している

キャリアアップ補助金を受給するためには、対象労働者に関するキャリアアップ計画書を作成し、管轄の労働局長から受給資格の認定を受けなければなりません。
キャリアアップ計画書の申請様式は、厚生労働省の専用ページからダウンロード可能です。

ほかにも、補助金を申請するにあたり、全コース共通の要件やコースごとの対象者の条件などが細かく設定されています。
厚生労働省で掲載されているリーフレット・パンフレットから詳細を確認してください。

助成額

対象の有期雇用労働者1人につき助成額が決まっており、賃料の引き上げによって金額が変動します。中小企業の場合の助成額は以下のとおりです。

賃金引き上げ率 助成額
3%以上5%未満 5万円
5%以上 6万5,000円

職務評価手法を活用して賃金規定等の増額改定を行う場合、助成金が加算されます。1事業あたり1回のみ加算され、中小企業の加算額は20万円です。

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【令和6年度版】キャリアアップ助成金とは?条件や正社員化コースの概要をわかりやすく解説

業務改善助成金

業務改善助成金は、賃上げ額と対象人数が多くなるほど受給できる助成額を増やせます。詳しい概要や適用条件などは以下のとおりです。

業務改善助成金の概要

業務改善助成金は、生産性を向上させるための設備投資を行うと同時に、事業場内最低賃金を一定以上引き上げた場合、設備投資にかかった費用の一部が助成される制度です。
助成対象となる経費には、POSレジシステムやリフト付き特殊車両、経営コンサルティングの導入などが該当します。

この助成金は、工場や事業所など事業場ごとに申請が必要です。そのため、増額する最低賃金も事業場内となっているので注意してください。
2024年度の事業完了期間は、2024年4月1日~2025年2月28日までとなっています。
交付は2024年度内に決まるので、交付が決定する前に設備投資などを実施すると支給対象外となるので注意してください。

適用条件

業務改善助成金の適用条件は以下のとおりです。

  • 中小企業または小規模事業者である
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内である
  • 解雇や賃金引下げなどの不交付事由がない

上記の条件をすべて満たしていれば、助成金の申請が可能です。なお、中小企業・小規模事業者の定義は以下のように定められています。

業種 資本金または出資額(A) 常時使用する労働者(B)
小売業
(小売業・飲食店など)
5,000万円以下 50人以下
サービス業
(物品賃貸業・宿泊業・医療・福祉・複合サービスなど)
5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他業
(農業・林業・漁業・建築業・製造業など)
3億円以下 300人以下

※AまたはBのどちらかの条件を満たした事業者
業務改善助成金は、賃金引き上げ計画と設備投資などの計画を立てた上で、労働局に申請することになります。
交付が決定したら計画どおりに事業を行い、結果を報告することで助成金が支給される流れとなっています。

助成額

実際に支給される助成額は、「設備投資等の金額×助成率」で算出した金額と助成上限額を比較して、どちらか安いほうの金額が適用されます。
助成上限額は引き上げる事業場内最低賃金額に応じて4つのコースに分かれており、労働者の人数によって変動します。

コース 最低賃金の引き上げ額 対象労働者数 助成上限額
事業規模30人以上 事業規模30人未満
30円コース 30円以上 1人 30万円 60万円
2~3人 50万円 90万円
4~6人 70万円 100万円
7人以上 100万円 120万円
10人以上 120万円 130万円
45円コース 45円以上 1人 45万円 80万円
2~3人 70万円 110万円
4~6人 100万円 140万円
7人以上 150万円 160万円
10人以上 180万円 180万円
60円コース 60円以上 1人 60万円 110万円
2~3人 90万円 160万円
4~6人 150万円 190万円
7人以上 230万円 230万円
10人以上 300万円 300万円
90円コース 90円以上 1人 90万円 170万円
2~3人 150万円 240万円
4~6人 270万円 290万円
7人以上 450万円 450万円
10人以上 600万円 600万円
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令和6年度 業務改善助成金とは?支給金額や対象経費、申請期限、変更点などをご紹介

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金でも、賃上げに取り組む小規模事業者向けの枠を用意しています。概要や適用条件、補助額は以下のとおりです。

小規模事業者持続化補助金の概要

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者などが経営計画を作成し、その計画に則って販路開拓の取組みなどを行う場合に利用できる補助金制度です。
いくつか申請枠があり、賃金引上げ枠を用意しています。
賃金引上げ枠では、補助事業実施期間中に事業場内最低賃金を地域別最低賃金よりも一定額以上増やした場合、補助金が支給されます。

この補助金制度は、商工会議所の管轄地域か商工会の管轄地域によって、申請先が異なるため注意してください。
また、2024年3月時点で第15回公募が完了しているので、その後のスケジュールはホームページを確認してください。

適用条件

小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠に申請するためには、補助事業が終了する時点で、事業場内最低賃金が申請時の地域別最低賃金より50円以上増加していることが条件として定められています。
申請時点で事業場内最低賃金が地域別最低賃金よりも50円以上高い場合、現在支給している賃金よりも50円以上増加すれば支給の対象となります。

補助額

最低賃金引上げ枠の補助上限は200万円です。インボイス特定の対象要件を満たしている場合、200万円の上限に50万円が上乗せされます。
そのため、応募する際はインボイス特例の対象かどうか要件をチェックしてください。
補助率は2/3となっていますが、赤字事業者の場合は3/4まで引き上げられます。

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【2024年5月締切】第16回小規模事業者持続化補助金とは?スケジュールや変更点などを解説

中小企業の賃上げを支援する優遇措置や融資5選


上記の補助金制度以外にも、中小企業の賃上げを支援する優遇措置や融資があるので、各制度の概要をご紹介します。

賃上げ促進税制

賃上げ促進税制とは、青色申告書を提出している中小企業を対象にした税額控除の制度です。
一定要件を満たし、さらに前年度よりも給与の支給額を増やした場合、増額分の一部を法人税や個人事業主の所得税から控除することが可能です。
2024年4月1日~2027年3月31日まで適用される中小企業・中堅企業の税額控除率は、賃金を引き上げた割合によって以下のように設定されています。
【中小企業(資本金1億円以下の法人や従業員1000人以下の個人事業主)】

全雇用者の給料等支給額(前年度比) 控除額率
+1.5% 15%
+2.5% 30%

【中堅企業(従業員2000名以下の企業・個人事業主)】

全雇用者の給料等支給額(前年度比) 控除額率
+3% 10%
+4% 25%

教育訓練費を前年度よりも引き上げた場合や、くるみん認定(子育てと仕事を両立する支援に取り組む企業が認定される制度)または、えるぼし認定(女性活躍支援に取り組む企業が認定される制度)を受けていると、さらに控除額率が上昇します。
中小企業なら最大45%、中堅企業なら最大35%の控除税率を適用することが可能です。

ものづくり補助金

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、生産性を向上に役立つ革新的なサービスや試作品の開発、生産プロセスの改善のための設備投資を支援することを目的にした補助金制度です。
一定の賃上げを行った場合、補助上限額を引き上げる措置があります。

この補助金では、事業期間中(3~5年)に給与支給総額を年平均1.5%増加させるという内容があります。
この基本要件に追加要件を加えてさらなる賃上げを行った場合、補助上限額を最大1,000万円引き上げることが可能です。
本来の補助上限は最大4,000万円ですが、上限を5,000万円にできます。

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IT導入補助金

IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者の労働生産性を向上させるためのITツールの導入を支援する補助金制度です。最大450万円を上限に補助金が支給されます。
類型と補助金額によっては、賃上げ目標が設定されています。賃上げ目標が未達成となると、補助金の一部または全額の返還を求められるので注意してください。
賃上げ目標は以下のとおりです。

  • 事業計画期間中に給与支給総額の年率平均を1.5%以上に増加させる
  • 事業期間中に事業場内賃金を地域別最低賃金より30%以上の水準にする
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事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継をきかっけに新しい取組みを行う中小企業や、事業再編・事業統合で経営資源を引継ぐ中小企業への支援を目的にした制度です。
経営革新の取組みや経営資源の引き継ぎで発生する経費の一部が補助されます。賃金を一定額以上引き上げた場合、補助上限額を増やせます。
例えば、経営革新事業の​​補助上限額は最大600万円です。賃上げを実行した場合、上限額は最大800万円になります。

働き方改革推進支援資金

働き方改革推進支援資金は、日本政策金融公庫が実施する融資制度のひとつです。
非正規雇用の処遇改善や長時間労働の是正、賃上げなどに取り組む中小企業を支援する目的で設けられています。
調達した資金は、働き方改革実現計画を実施するための設備資金や長期運転資金として使用することが可能です。融資限度額は直接貸付で7億2,000万円となっています。
適用される利率は、利用者の該当条件によって異なるため注意してください。

返済期間は、運転資金は20年以内、運転資金は7年以内です。いずれも据置期間は2年以内となっています。
担保の設定や種類は、日本公庫と相談して決めることになります。一定要件に該当する場合は、経営責任者の個人保証が必要です。

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【令和6年度】働き方改革推進支援助成金とは。4つのコースの内容や支給額などを解説

まとめ・中小企業が賃上げをするなら補助金などを有効活用しよう

賃上げは、従業員のモチベーションや採用・定着率のアップなど、企業にとって大きなメリットがあります。
しかし、賃上げを行うことで経費の負担が大きくなってしまう可能性があります。
少しでも負担を軽くしたいのであれば、ご紹介した補助金・助成金や優遇措置の活用がおすすめです。
補助金・助成金などは、細かい要件が設けられています。
要件を満たさないと補助金・助成金が支給されないので、概要や要件をしっかり確認した上で申請してください。

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