インフレ・円安・日経平均最高値更新・マイナス金利解除でビジネスへの影響は?

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インフレ・円安・日経平均最高値更新・マイナス金利解除の要因・ビジネスへの影響などをまとめてご紹介

失われた30年がついに終わりを告げたのでしょうか。2023年から始まったドル高・円安の流れは止まらず、3月には150円を超えて推移しています。また、1989年のバブル時以来はじめて、日経平均株価が最高値を更新しました。3月21日には40,815円を記録しています。さらに、日本銀行がマイナス金利を解除しました。今後、住宅ローンはどうなっていくのでしょうか。

本記事では、最近の日経平均株価の最高値更新、円安、インフレ、マイナス金利解除など、ビジネスパーソンが知っておくべき経済全体の流れと、そのビジネスへの影響についてまとめてご紹介します。

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インフレが止まらない。そもそもインフレとは?要因は?

インフレは、一般的な物価水準が持続的に上昇する経済現象を指します。この物価の上昇により、通貨の購買力が低下するため、同じ金額で以前よりも少ない商品やサービスしか購入できなくなります。インフレにはいくつかの原因があり、大きく分けると次のようなものがあります。

需要超過インフレ:経済が過熱し、消費者の需要が供給を超える場合に起こります。企業が生産を追いつかせることができず、価格が上昇します。

コストプッシュインフレ:原材料の価格上昇や、賃金の上昇など生産コストが高まることで、企業がコスト増を商品価格に転嫁し、結果的に物価が上昇する場合があります。

構造的インフレ:経済の構造的な変化、例えば、労働市場の硬直性や市場の独占度の高さなどにより、価格が上昇する場合です。

インフレは適度であれば経済に活力を与え、企業の収益増加や雇用拡大を促すことができます。しかし、高インフレやハイパーインフレは経済に深刻な影響を及ぼす可能性があり、購買力の低下や貯蓄の目減り、投資の冷え込みなどを引き起こす恐れがあります。

中央銀行はインフレをコントロールするために金利政策などの手段を用いて、インフレ率を一定の目標範囲内に保つことを目指しています。インフレ率の目標は国や経済政策によって異なりますが、多くの国では年間2%程度のインフレ率を健全な経済成長の指標と見なしています。

今起きている世界的なインフレは、2020年に始まったコロナ禍や、2022年のロシアによるウクライナ侵攻など、さまざまな世界的な要因によって、一部の素材やエネルギー商品が供給不足になり、結果として引き起こされたものです。世界的なインフレの波は長年デフレに苦しんでいた日本にもついにやってきました。

円安も止まらない。そもそも円安とは?要因は?

さらに、日本においては円安も同時に進行しています。円安とは、外国通貨に対して日本の通貨である「円」の価値が低下することです。2023年初頭には1ドル130円程度で推移していたドル円相場でしたが、2024年3月21日には151円近くまで円安が進行しました。

この円安の要因にも、アメリカのインフレがあります。アメリカ中央銀行のFRBは、この急激なインフレを退治するために継続的に利上げを実施してきました。アメリカ国内の金利が高まり続ける一方で、日本はそれでもマイナス金利政策を維持してきました。そのため、日米の金利差が広がり、多くの人が「日本円で資産を運用するよりも、金利が高いアメリカドルで運用した方が資産が増える」と思い、円を売ってドルを買いました。その結果として、このような円安が引き起こされた、と考えられています。他にも要因はありますが、特にこの日米の金利差が主因となっている、というのが多くの識者の見方です。

インフレ・円安で伸びるビジネスは?好影響を受けるビジネス

インフレ・円安環境下で伸びるビジネスをご紹介します。

輸出ビジネス

インフレと円安の経済環境は、日本の輸出企業にとって大きなビジネスチャンスをもたらします。インフレが進行すると、国内の物価が上昇し、国際市場での競争力が影響を受ける可能性がありますが、円安はその影響を相殺し、さらには有利に働きます。円安によって、日本製品の価格は外国のバイヤーにとって魅力的になります。これにより、日本の商品やサービスへの国際的な需要が増加し、海外市場での販売拡大につながります。

外国での収入が外貨で得られるため、円安状況下では、これらの収入を円に換算する際に得られる金額が増加します。結果として、輸出企業はより多くの収益を得ることができ、利益率の向上に寄与します。さらに、円安による収益の増加は、企業が新たな投資に資金を充てる余地を生み出し、研究開発や生産設備の拡張など、長期的な成長戦略に投資する機会を提供します。このように、インフレと円安は輸出企業にとって二重のメリットをもたらし、国際競争力の強化と収益性の向上を促進する重要な要因となり得ます。

国産の食品ビジネス

インフレの影響で輸入食品の価格が上昇すると、消費者の買い物行動に変化が生じ、国産食品への関心が高まる傾向があります。これは、物価の上昇が輸入品のコストに直接影響を与え、それによって国産品が相対的に価格競争力を持つようになるためです。特に、地元で生産される新鮮な農産物や加工食品は、輸入品と比べて輸送コストが低いため、価格が安定しやすく、消費者にとって魅力的な選択肢となります。

さらに、国産食品の需要が高まると、地元経済へのプラスの影響も期待できます。地元で生産された食品の購入は、地域農家や生産者の収入を支え、地域経済の活性化に貢献します。また、地産地消の促進は食の安全性や新鮮さに対する消費者の期待に応えるとともに、環境負荷の低減にもつながります。食品の輸送距離が短くなることで、CO2排出量の削減にも寄与するのです。

このような背景から、インフレ期には、消費者は価格だけでなく品質や地域経済への貢献、環境への影響といったさまざまな観点から、国産食品を選ぶ傾向が強まります。政府や地域自治体もこの機会に、国産農産物や食品の魅力を再発見し、消費者に広く情報提供する取り組みを強化することが期待されます。結果として、インフレが進行しても、国産食品への需要が高まり、国内農業の持続可能性を高める一助となる可能性があります。

金や不動産など資産価値が保存されやすい財に関わるビジネス

インフレ期における投資戦略として、金や不動産などの価値が保存されやすい資産への関心が高まるのは、これらが価値の下落に強い傾向にあるためです。具体的には、インフレが進行すると通貨の購買力が低下し、同じ金額では以前よりも少ない商品やサービスしか購入できなくなります。このような状況の中、金は長い歴史を通じて価値保存手段としての役割を果たしてきました。金価格は一般にインフレと正の相関を示し、実質的な価値を保持する傾向にあります。

同様に、不動産もインフレ対策として注目される資産クラスです。不動産投資は、賃料収入の形で定期的なキャッシュフローを提供すると同時に、物価上昇に伴って物件価値が増加する可能性があります。また、不動産は物理的な資産であるため、通貨の価値が低下してもその実質的な価値が完全に失われることはありません。

加えて、美術品、古銭、切手などや他の実物資産も、インフレ対策として注目されることがあります。これらの資産は、限定性や希少性により、時間とともに価値が増す可能性があります。

このように、インフレ期には、単に資産を保持するだけでなく、購買力の低下に耐えうる資産へ投資することで、資産価値を守り、増やす戦略が重要となります。そのため、これらに関わるビジネスが伸びるかもしれません。

観光ビジネス

円安の時期には、外貨に比べて円の価値が下がるため、外国からの旅行者にとって日本への旅行が経済的に魅力的になります。これにより、外国人観光客が増加し、日本の観光業全体が大きな恩恵を受けることになります。円安は、航空券、宿泊、食事、土産物の購入など、旅行に伴うあらゆる費用が相対的に安くなることを意味します。特に、インバウンド需要の増加は宿泊施設から飲食業、小売業、さらには地域の観光名所やアクティビティ提供者に至るまで、幅広いビジネスセクターにプラスの影響を与えます。

このような状況は、地元経済の活性化に寄与し、特に地方都市では、新しい雇用機会の創出や地域産業の振興につながることがあります。観光客の増加は、伝統工芸品や地域特産品の需要を高めることで、これらの産業の保存と発展にも貢献します。また、外国人観光客からのフィードバックは、サービスの質の向上や新しい観光商品の開発を促すこともあり、長期的な観光業の成長と持続可能性につながります。

観光業界は、インバウンド需要の増加を最大限に活用するために、多言語対応のサービスの強化、文化的な違いへの配慮、観光インフラの改善など、さまざまな取り組みを行う必要があります。これにより、日本への訪問者に忘れがたい旅行体験を提供し、リピーターを増やすと同時に、新たな観光客を惹きつけることができます。このプロセス全体が、観光業だけでなく日本経済全体にとっても有益な影響をもたらします。

日経平均株価が最高値を更新。その要因は?

2024年2月22日、日経平均株価が1989年以来はじめて最高値を更新しました。その後、さらに高値を更新し続け、4万円台突破。一時的に3万円台に落ち込んだものの、3月21日にはまた40,815円に乗せています。

日経平均株価が最高値を更新した要因は複合的なものです。日本企業の株主還元の姿勢が強まったことや、アメリカ市場の株高、円安で日本株に割安感を感じた投資家が日本株に投資していることなど、さまざまな要因が考えられます。また、2024年1月1日には新NISAもスタートしました。その影響も、多分にあるでしょう。

もちろん、根本にあるのは、日本企業の業績が好調であることです。コロナ禍が終わり、そこから業績が戻ってきている企業が多いこともあるでしょう。

株式・金融に関連するビジネスをしている企業や、広告業など好況時に好調になるようなビジネスを展開している企業は、この恩恵を受けられるはずです。

日銀がマイナス金利を解除。住宅ローンはどうなる?

日銀は3月19日、ついにマイナス金利政策の解除を決めました。実に17年ぶりの利上げだったと言います。これによって、段階的な利上げが始まり、ビジネス界全体にその影響が波及していくことが考えられます。

特に注目されるのは、金融ビジネス、並びに不動産ビジネスの動向です。銀行は、政策金利が上がれば、それに合わせて金利を変更し、利益を上げやすくなります。一方で、変動金利型の住宅ローンについても金利が上がるので、高い住宅ローンを借りてまで不動産を購入しよう、と考える消費者は減ってしまう可能性があり、不動産販売業者などにはマイナスの影響が出る可能性もあります。

ただし、日銀は3月19日「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」という声明を発表しており、市中銀行もそこまで急に変動金利を上げることはないと思われます。ただし、数年後、あるいは中長期的には住宅ローンの変動金利が上がることも想定されます。

また、事業者の方々にとって気になる企業の借入金利は、住宅ローンよりも政策金利により敏感に反応しやすく、政策金利が0.1%でも上がれば、それと連動して変動金利が0.1%かそれ以上に上がることもあります。長期金利が上昇した場合には、固定金利も上がる可能性があり、注意が必要です。

経済環境の変化をビジネスの追い風にしよう

以上、インフレ・円安や日経平均最高更新、日銀マイナス金利解除などの影響についてまとめてご紹介しました。

ぜひこれらの変化をビジネスの追い風にできるよう、考えてみてください。

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