ワークスタイルテック ドレ・グスタボ・ロドリゲス|業界唯一!スマホ完結型のクラウド労務管理「WelcomeHR」で家族との時間を大切にできる人を増やす

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年10月に行われた取材時点のものです。

日本人の多くは「仕事」がアイデンティティになっていて「家族」や「趣味」の時間を大切にできている人が少ない

ブラジルでは「家族」や「趣味」の時間を一番大切にしている人が多く、仕事はその時間を楽しむためにやらなければいけないことと捉えている人が多いと言われています。

日本では「仕事」中心の生活になっている方が多く、もっと家族との時間を大切にできる人を増やしたいという思いから、スマホ完結型のクラウド労務管理システム「WelcomeHR」を運営しているのがブラジル出身の起業家ドリーさんです。

そこで今回は、「WelcomeHR」をリリースするまでの経緯や、サービスの特徴について、創業手帳の大久保が聞きました。

ドレ・グスタボ・ロドリゲス
ワークスタイルテック株式会社 代表取締役CEO
1985年生まれ、ブラジル出身。ブラジルの大学、UFJFと幕張の神田大学外国人研究センターの交換プログラムで来日後、奨学金を受け、慶應メディアデザイン大学院に入学。卒業後はSONYに入社し、デバイスのユーザーエクスペリエンスを担当。IT企業でのビジネスを学ぶためにリクルートに転職。2016年に日本人が仕事に不満を抱いている現状を解決したいと思い「Motify」をリリース。その後、スマホ完結型のクラウド労務管理サービス「WelcomeHR」を2020年1月からリリースし、今では約40万ユーザー、約750社が導入している。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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慶應義塾大学を卒業後、SONY、リクルートを経て独立

大久保:起業までの流れを教えてください。

ドリー:まずはブラジル人の私が来日したきっかけについてお話しします。

最初は交換留学で来日して、その後、文部科学省の奨学金の存在を知り、慶應義塾大学でデザインを勉強するために改めて来日しました。

大学卒業後はSONYに就職し、バイオの商品企画をしておりました。

3年ほど従事した後、バイオ事業がSONYから離れるタイミングで、やりたいことを見つめ直しました。当時、起業に興味があったものの、SONYが副業NGだったため、起業家が多くITの知識も学べるリクルートに転職しました。

そしてこの1年後に、ワークスタイルテックを起業することとなります。

大久保:どのような分野で起業しましたか?

ドリー:私が起業を考え始めたのは2015年頃で、当時の日本では仕事に不満を持っている人が多くいました。この現状を解決したいと思ったのが、起業のきっかけです。

では、誰が社員のモチベーション管理をするのかと考えたところ「人事」や「マネージャー」になると思いますが、しっかりとトレーニングされたマネージャーは少ない状況でした。年齢で昇格したり、OJTで覚えたりする方が多かったためです。この状況を解決するために、モチベーションクラウド(社員育成サービス)事業を企画しました。

「WelcomeHR」で労務管理の課題解決に着手

大久保:それはリクルートに在職中のことですか?

ドリー:はい。2016年にMotify(モティファイ)というサービスでフル活動していくために、リクルートを退職しました。

当初、リクルートを始めとした大手企業も何社か顧客になっていただいたものの、利益としては大きく伸ばすことができませんでした。

要因としては、サービスを作ったものの商品だけを渡した場合では離脱率が高かったことがあげられます。コンサル要素を含めて導入した企業のほうが離脱率が低く、このサービスは商品ビジネスではなく、コンサルビジネスなのだと分かりました。ですが、コンサルを強化するためにはメンバーを増やす必要があり、それはリスクが高いと判断したので、最終的には事業譲渡しました。

大久保:その後、今やられている事業を始めるという流れですか?

ドリー:Motifyを運営している当時の顧客へのヒアリングで、労務管理の分野のデジタル化が進んでないという課題が明らかになっていました。日本は「仕事」中心の生活になっている方が多いため、働き方を変えてもっと家族との時間を大切にできる人を増やしたいという思いから、クラウド労務管理サービス「WelcomeHR」を立ち上げました。

2020年1月からリリースし、今では約40万ユーザー、約750社ほどにご利用いただいております。

大久保:なぜ日本では「仕事」中心の生活で、幸せに働けている人が少ないと思いますか?

ドリー:約15年間日本にいて感じるのは、正しく完璧にしなければいけない、というプレッシャーを感じ過ぎているからだと思います。逆にブラジルでは、ある程度は曖昧でも許されます。

もう一つは、仕事の立ち位置です。

ブラジルでは、家族や趣味など仕事以外の何かを一番大切なものとして捉えている人が多いです。つまり、仕事は家族との時間や趣味を楽しむためにやらなければいけないこと、という捉え方なのです。

日本では、初めて会う方に必ず何の仕事をしているかを聞くほど、仕事が個人のアイデンティティになっているという方が多い印象です。

ITが苦手な方でも使いやすい「WelcomeHR」が示す解決策

大久保:効率化という点でも日本は課題が多いですよね。

ドリー:日本では決裁者が商談に同席しないことが多く、その場で判断をせず持ち帰ることが多いのも、お互いにとって非効率的だと思います。

アメリカのある企業と商談をした際に、決裁者の方に同席していただくことができました。結果的には、導入していただけなかったのですが、その場で判断していただけたので、次の商談にすぐに進めました。

大久保:判断を持ち帰ることは多々ありますね。

ドリー:効率化という点では、テクノロジーを入れることで様々なシーンで時間を有効活用できるようになります。

日本の社労士の平均年齢は61〜62歳前後です。主に、総務や人事を経験した方が社労士の資格を取得して、独立するケースが多いようです。

平均年齢が高い分、テクノロジーを導入して、業務を効率化しようとする流れができにくい業界とも言われています。

この課題を解決するために、わかりやすくシンプルな操作を意識して、スマホで完結できるように作ったのが「WelcomeHR」です。

【スマホ完結型】クラウド労務管理サービス「WelcomeHR」の特徴

大久保:WelcomeHRのサービスについて、詳しく伺えますでしょうか?

ドリー:WelcomeHRは、店舗・アルバイト向けのクラウド人事労務システムを提供しております。

1つ目の特徴として挙げられるのは、競合と比較した際の「価格の低さ」です。

ターゲットを絞っているため、導入コストが他社と比べて、3分の1〜4分の1ほどの費用に抑えられることもあります。

これまで、時給800〜900円ほどのアルバイトの方のために、月額1000円のテクノロジーを導入したくない、という企業が多かったため、導入コストを大幅に抑えることで、多くの企業にご利用いただいております。

2つ目の特徴として「システムの手軽さ」にあります。

労務知識やITリテラシーが低い人でも扱えるシステムであるのはもちろんですが、WelcomeHRは店舗の「店長の業務を減らすこと」を主軸にしています。

このシステムの重要なポイントは、店長が人事に頼みたいことをスマホですぐに依頼できる仕組みにしている点です。

さらに、他社の労務管理システムでは、管理画面を見るにはPCを使わないといけません。意外に思われるかもしれませんが、スマホで管理画面を見れるクラウド型労務管理システムはWelcomeHRだけなのです。

PCを置くスペースのないラーメン屋さんでも、店長が空き時間にスマホ作業できると、好評いただいております。

3つ目の特徴としては、忙しくてセットアップができない企業に対して、システム導入サービスも提供しています。各企業が使っている業務フローを共有してもらい、それに合わせてカスタムを行うことも可能です。

さらにこの先は、アルバイトのデータベースを活用して、アルバイトに特化した履歴書作成アプリをリリースする予定です。

ココ重要!WelcomeHRの3つの特徴
  • 1:他社と比べて導入コストを抑えやすい。
  • 2:スマホで管理画面を見れるのはWelcomeHRだけ。
  • 3:カスタマイズの自由度が高くサポートも充実。

日本の特徴である「正確さ」はメリットにもデメリットにもなりえる

大久保:日本のビジネスにおいて、良い点と悪い点を伺えますでしょうか?

ドリー良い点としては「正確さ」にあります。

指示を細かく出してくれるため、作業のズレも少ないです。

進行が遅れたとしても、それすら計画に入れているため、ビジネスを回す際には信頼度が高いです。ブラジルでは不安になることが多いのですが、日本ではその水準が一定担保されているように感じます。

悪い点としては、「考えが固すぎる」と感じることが多々あります。

若手から良いアイディアが出ても、若いからという理由で採用されないこともあると思うので、その点はもっと柔軟に受け入れる文化があるとより良いと思いますね。

大久保:日本でビジネスをしていて、やりづらいと感じたことはありますか?

ドリー:商談時には私がメインで話していたとしても、質問の時や契約の時には、日本人とやり取りをしたがる人が多いです。

自国の文化を知っている人と話したいと思う方は海外にも多いので、日本だけの問題ではないですが、私にとっては少しやりづらいと感じます。なので今は商談には日本人のメンバーに必ず同席してもらっています。

スタートアップにおける共同創業者との関係性の築き方

大久保:起業において、大変だったことを教えてください。

ドリー1回目の起業時は、アドバイザー的なポジションの方を共同創業者に入れており、私と同じ熱量で実務を一緒にしてくれる仲間が欲しいと思っていました。

実務を牽引できるのが私1人だったので、これ以上伸ばすことが困難だと判断し、事業譲渡した理由に繋がってきます。

大久保:株が絡むと、揉めるケースが多いですよね。

ドリー:まさにそういった話になり、資金調達などのお金周りも進めづらくなりました。

その人自身は悪い人ではなく、私の想像でコミットメント(稼働量)を決めつけてしまっていたため、そことのギャップが生まれてしまいました。最初に明確に役割分担や、お互いに求めることを話し合っておくことが大事だと学びました。

ココ重要!スタートアップにおける共同創業者の関係性の築き方
  • 1:事前に互いのコミットメント(稼働量)を決めておく。
  • 2:株の保有率は慎重に決める。
  • 3:共同創業者はアドバイザーよりも実行者が望ましい。

サービスの軸を絞ることで売上拡大を実現

大久保:2回目の起業時はどうでしょうか?

ドリー:2回目のWelcomeHRの起業時に大変だったことは、サービスの大枠を作ったにも関わらず、最初の6ヶ月間で売上がゼロだったことです。

これ以上は継続が厳しいと、撤退の準備をし始めたところで、ようやく1社だけ契約が決まりました。それがラーメン店だったため、試しにターゲットを飲食業に絞ってみたところ契約が増えていき、大手カラオケ企業との契約が決まり、徐々に拡大していきました。

大久保:売り上げを伸ばせた要因は何だと思いますか?

ドリー:当時を振り返ると、サービスの軸を定めることができていなかったという点が反省点です。

起業家に対してのアドバイスをするなら、軸を絞ることでマーケットが狭まると思いがちですが、そこでの立ち位置を確立することで、売り上げの拡大に繋がるため、思い切って軸を絞ることも時には必要です。

大久保:では反対に、起業して良かったと感じることを教えてください。

ドリー:全社員がモチベーション高く、元気に働けている姿を見ると嬉しくなります。

長い付き合いになればなるほど嬉しいですし、例え一度辞めたとしても出戻りでまた一緒に働いている社員もいます。

会社によってはトップダウンで指示を出すところもありますが、私はみんなの意見に耳を傾けながら一緒に進めるスタイルなので、今後もメンバーと一緒に楽しく働きたいと思っています。

ブラジル人起業家が考えるワークライフバランスとは

大久保:ドリーさん個人のお話もお伺いしても良いですか?

ドリー:私には日本人の奥さんと、3歳と6歳の子どもがいます。家族との時間を大切にしていて、特に子どもの成長に関しては一番大切にしています。

朝5時に起きて、18時ごろには仕事を終えるようにして、夜は子どもにポルトガル語やプログラミングを教えています。

自分の趣味の時間もありますが、子どものために使える時間をより多く取れるようにしています。

大久保:日本ではいわゆる「イクメン」と呼ばれる方ですね。

ドリー:ブラジルでは普通のことですけどね。負担に思っている訳ではなく、純粋に子どもとの時間が楽しいのです。

私がこのような考え方なので、社員にも家族との時間を大切にしてほしいといつも伝えています。

大久保:最後に今後の展望を教えてください。

ドリー:日本には、少子高齢化や人手不足などの問題があります。それらの解決に寄与するべく、店舗の業務効率化を実現し、日本のビジネスを元気にしたいと考えています。

それに伴い、ブラジルでも代理店を立て、フィリピン・タイなどでも試験的に運用をスタートさせています。それによって、海外から日本でアルバイトをしたい人材を連れてくるなど、上手く海外とも連携できる形を取ることができればと考えています。

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(取材協力: ワークスタイルテック株式会社 代表取締役CEO ドレ・グスタボ・ロドリゲス
(編集: 創業手帳編集部)



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