【2024年3月最新】2024年4月に行われる制度変更とは?経営者が知っておくべき内容を解説

創業手帳

制度改正に対応しないと、節税による経済的恩恵を受けられず社会的信用を失うリスクも


2024年4月より、経営者や事業主が知っておくべき法改正がいくつか行われます。会計や税制、雇用などさまざまな観点から改正が行われるため、きちんと把握しておきましょう。

制度改正について知らず、対応できないと本来であれば納めなくても済む税金を納めたり、労働者とトラブルが起きたりするリスクが高まります。社会的信用を失わないためにも、制度改正について把握することは欠かせません。

こちらの記事では、2024年4月に行われる制度改正の内容について解説します。経営者や事業主が知っておくべき内容を厳選したので、ぜひ参考にしてみてください。

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【経営者必見】2024年4月に実施予定の制度変更とは


法改正は毎年のように行われていますが、2024年4月から予定されている主な制度改正を解説します。

賃上げ促進税制の拡充

2024年4月以降、「賃上げ促進税制」が拡充されます。賃上げ促進税制とは、従業員への賃上げを行ったとき、賃上げ分の一部を法人税から控除できる制度です。

賃上げ促進税制は、賃上げを行う経営者や事業主の人件費負担を抑制し、賃上げが広く行われることを期待されて設けられています。2024年4月以降は制度が拡充され、控除額が以下のようになっています。

【大企業向け】

継続雇用者の給与等支給額(前年度比) 税額控除額
+3% 10%
+4% 15%
+5% 20%
+7% 25%
上乗せ要件①
教育訓練費が前年度比+10%
税額控除率を5%上乗せ
上乗せ要件②
「プラチナくるみん」または「プラチナえるぼし」認定企業
税額控除率を5%上乗せ

【中堅企業向け】

継続雇用者の給与等支給額(前年度比) 税額控除額
+3% 10%
+4% 25%
上乗せ要件①
教育訓練費が前年度比+10%
税額控除率を5%上乗せ
上乗せ要件②
「プラチナくるみん」または「えるぼしえるぼし三段階目以上」認定企業
税額控除率を5%上乗せ

【中小企業向け】

継続雇用者の給与等支給額(前年度比) 税額控除額
+1.5% 15%
+2.5% 30%
上乗せ要件①
教育訓練費が前年度比+10%
税額控除率を10%上乗せ
上乗せ要件②
「プラチナくるみん」または「えるぼしえるぼし二段階目以上」認定企業
税額控除率を5%上乗せ

2024年4月の変更に伴って、中小企業は賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額を、5年間にわたって繰り越せます。翌年度や翌々年度が赤字でも、賃上げを行って5年を経過するまでは税額控除の恩恵を受けることが可能です。

補助金によっては賃上げをすることが要件に加わっていたり、加点措置になるものもあります。補助金・助成金の活用をご検討中の方は、是非「補助金ガイド」もあわせてお読みください。


補助金ガイド

接待交際費の経費上限が5,000円から10,000円に拡充

2024年4月以降、接待交際費を経費として計上できる上限額が、1人当たり5,000円から10,000円に拡充されます。より多くの接待交際費を計上できることから、利益を圧縮して税負担を軽減できる効果が見込めるでしょう。

具体的に、接待交際費に該当するのは以下のようなケースです。

  • 取引先など事業と関わっている人との会食費用
  • 取引先など事業と関わっている人への贈るお中元・お歳暮などの費用
  • 取引先など事業と関わっている人を旅行やゴルフに招待する費用

いずれも、事業を営むうえで発生する機会が多い支出です。経費計上できる金額が5,000円から10,000円に拡充されたことで、より上質なおもてなしができるようになり、営業機会の拡大やビジネスチャンスの獲得につながる可能性があります。

2024年4月1日以降に取引先やクライアントを接待する機会があれば、必ず領収書を保管して新しい制度に沿って記帳を行いましょう。

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労働条件明示ルールの改正

2024年4月から、労働条件明示ルールが変わります。具体的に、労働契約を締結する際や労働契約を更新する際に、以下の内容を明示しなければなりません。

  • 就業場所・業務の変更の範囲
  • 有期契約労働者の更新上限に関する事項
  • 有期契約労働者の無期転換に関する事項

各内容を労働者に伝えるべきタイミングや対象となる労働者をまとめると、以下のようになります。

明示のタイミング 新しく追加される明示事項 対象者
全ての労働契約の締結時
有期労働契約の更新時
就業場所・業務の変更の範囲 すべての労働者
有期労働契約の締結時と更新時 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容
(あわせて、最初の労働契約の締結より後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を労働者にあらかじめ説明する)
パート
アルバイト
契約社員
派遣労働者
定年後再雇用労働者
(すべての有期契約労働者)
無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時 無期転換申込機会
無期転換後の労働条件
(あわせて、無期転換後の労働条件を決定するにあたって、就業実態に応じて正社員等とのバランスを考慮した事項について説明するよう努めなければならない)
無期転換申込権が発生する有期契約労働者

2024年4月以降は、全ての労働者に対して「就業場所・業務の変更の範囲」を明示しなければなりません。転勤を命じる可能性や将来的に業務の範囲を変更する可能性がある場合、具体的に明示する必要があります。

なお、就業場所や業務を限定していない場合(ジョブローテーションですべての業務を任せるケースなど)は、すべての就業場所と業務を明示しなければなりません。

有期契約労働者を雇用している場合、雇い入れるときと契約更新のタイミングごとに、更新上限の有無と内容の明示が求められます。また、有期労働契約者に「無期転換申込権」が発生するタイミングで、無期転換を申し込める旨を書面で明示する必要があります。

無期転換とは、同じ使用者との間での有期労働契約が通算5年を超えたとき、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるように申し込める制度です。有期雇用の労働者を雇用している経営者や事業主の方は、知っておくべき内容と言えるでしょう。

建設業界、物流業界における時間外労働規制の変更

よく2024年問題とニュースなどで取り上げられていますが、2024年4月以降は建設業界と物流業界において、時間外労働の上限規制が変わります(厳密には時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた期間が終了する)。建設業と物流業の事業主は、以下の時間外労働時間規定を遵守しなければなりません。

建設の事業(建設業) 原則、月45時間以内・年360時間以内
1カ月45時間を超える残業は年間6回まで
残業の時間の上限は1年720時間まで
休日労働と合わせても1カ月100時間未満、2~6カ月間で平均して80時間以内
(災害の復旧・復興の事業を行う場合は除く)
自動車運転の業務(トラックドライバー・バス、タクシー運転手など) 原則、月45時間以内・年360時間以内
臨時的にこれを超える必要がある場合でも年960時間以内

労働時間を適切に管理するだけでなく、効率的に業務を進める事業体制の構築が求められるでしょう。建設業界と物流業界は人手不足が深刻な状況にあり、労働者1人当たりの負担が過重になりがちです。

もし上記の法令を遵守していないと「コンプライアンス的に問題がある」というレッテルを貼られ、さらに人が離れかねません。限られた人員で時間外労働時間を法令の範囲内に収めるためにも、事業主同士の協力や効率的な業務運営が重要になるでしょう。

あわせて、自動車運転者の労働時間や拘束時間に関する改善基準も、以下のように改正されます。
【タクシー・ハイヤー運転手】

1カ月の拘束時間 日勤:288時間以内
隔勤:262時間以内
1日の最大拘束時間 日勤:13時間以内とし、延長する場合であっても上限は15時間
隔勤:2暦日について22時間以内かつ、2回の隔日勤務を平均して隔日勤務1回当たり21時間以内
休息時間 日勤:継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ってはならない
隔勤:継続24時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続22時間を下回ってはならない

【トラック運転手の場合】

1カ月・1年間の拘束時間 1年の拘束時間は3,300時間以内、かつ1カ月の拘束時間は284時間以内
1日の最大拘束時間 13時間以内とし、延長する場合であっても上限は15時間
休息時間 日勤:継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ってはならない
連続運転時間 4時間以内

【バス運転手の場合】

1カ月・1年間の拘束時間 1年の拘束時間は3,300時間以内、かつ1カ月の拘束時間は281時間以内
(貸し切りバス運転手の場合は、労使協定により1年の拘束時間は3,400時間以内、かつ1カ月の拘束時間は294時間以内)
4週平均1週当たり拘束時間 52週間の拘束時間は3,300時間以内、かつ4週間を平均した1週間当たりの拘束時間は65時間以内
(貸し切りバス運転手の場合は、労使協定により52週中24週までは4週平均1週当たり68時間まで、かつ52週において3,400時間まで)
1日の最大拘束時間 13時間以内とし、延長する場合であっても上限は15時間
休息時間 継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ってはならない
連続運転時間 4時間以内

2024年は、建設業界と物流業界に大きな変化が起こる年と言えます。労働者の心身の健康を守るためにも、これまで以上に労務管理を厳格に行う必要性が出てくるでしょう。

障害者雇用の法定雇用率が2.5%に引き上げ

2024年4月より、障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%へ引き上げられます。以下のように対象事業主の範囲も広がるため、40人以上の労働者を雇用している経営者や事業主は、障害者雇用を推進しましょう。

法定雇用率 対象事業主の範囲
現行 2.3% 43.5人以上
2024年4月~ 2.5% 40.0人以上
2026年7月~ 2.7% 37.5人以上

2026年7月には、さらなる引き上げが予定されています。また、2024年4月以降は週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者を「0.5人」としてカウントできます。

なお、障害者の雇用義務がある事業主は、毎年6月1日時点における障害者の雇用状況をハローワークへ報告しなければなりません。法定雇用率を下回っていると、ハローワークから「障害者の雇入れに関する計画」の作成を命じられることがあります。

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介護報酬の改定

介護報酬は3年に1回改定されますが、2024年は改定の年です。例えば、居宅介護支援における特定事業所加算の見直しが、以下のように行われる予定です。

改定前 改定後
特定事業所加算(Ⅰ)505単位/月 特定事業所加算(Ⅰ)519単位/月
特定事業所加算(Ⅱ) 407単位/月 特定事業所加算(Ⅱ)421単位/月
特定事業所加算(Ⅲ) 309単位/月 特定事業所加算(Ⅲ)323単位/月
特定事業所加算(A) 100単位/月 特定事業所加算(A)114単位/月

ほかにも、居宅介護支援事業者が市町村から指定を受けて行う介護予防支援や訪問介護における特定事業所加算に関しても、改定が行われます。総じて単位が上昇しており、介護保険サービス利用者の自己負担が増えると見込まれます。

近年は介護職員の不足が話題です。2024年の介護報酬改定では、介護職員の処遇改善も盛り込まれているため、介護職員の人手不足を問題視している背景が見て取れるでしょう。

介護事業者の方にとって、介護報酬の改定は国保連への介護保険請求や介護職員への賃上げに影響します。事業運営や雇用している介護職員にどのような影響があるのか、確認しておきましょう。

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ライドシェアが一部地域で解禁

2024年4月より、一般ドライバーが有料で利用者を運ぶ「ライドシェア」が一部地域で解禁されます。本来、有料で利用者を運ぶには第二種運転免許が必要です。しかし、新しい制度では、普通免許を持つ一般のドライバーが有償で乗客を運ぶ行為を限定的に認めています。

ライドシェアを解禁していく動きの背景としては、地方部における路線バスの廃止やタクシードライバーの人手不足などの理由から、交通空白地域が生まれている現状があります。その問題解決のため、ライドシェアを解禁して輸送力を確保しようとしているのです。

しかし、ライドシェアの普及に伴って、タクシー業界は不利益を被る可能性があります。競合となる存在が増えると収益の減少につながる恐れがあるため、死活問題になりかねません。

ただ、ライドシェアの普及は都市部の混雑緩和や交通空白地域における移動手段の確保というメリットがあります。今後、ライドシェアがどのように広がっていくのか、政府・自治体はどのような指針を掲げるのか要注目です。

タクシー業界の事業主だけでなく、ライドシェアのドライバーとして独立を検討している方は、ライドシェアに関するニュースにアンテナを張っておくとよいでしょう。

経営者が制度変更・法改正を知らないことで起こるリスク


経営者が最新の制度変更・法改正を知らないことで、さまざまな不利益を被るリスクがあります。

以下で、具体的に被る可能性があるリスクを解説します。

節税の機会を逃す

接待交際費の経費上限が引き上げられたことを知らないと、本来であれば納めずに済む税金を納めることになりかねません。経費計上できる支出はきちんと計上し、税負担を軽減しましょう。

税金は利益を削るコストである以上、負担を抑えられるに越したことはありません。きちんと税制面の変更点を把握し、帳簿をつけることが大切です。

従業員満足度が下がる

最新の制度変更・法改正を知らないことで、従業員満足度が下がる恐れがあります。

接待交際費の上限拡充を通じて節税できれば、余剰資金を賃上げに回す余力が生まれます。しかし、制度改正を知らずに節税ができず、経済的余力が生まれなければ賃上げは難しいでしょう。

競合で賃上げに積極的な企業があれば、自社の従業員満足度が下がり人材流出につながる恐れがあります。また、賃上げ促進税制の拡充や介護報酬の改定を知らないと、賃上げを行う機会を逃す事態も考えられるでしょう。

人材不足や人材確保で悩んでいる経営者ほど、最新の制度を理解し、必要に応じて活用する意義は大きいと言えます。

社会的制裁を受けるリスクがある

最新の法改正を把握していないと、社会的制裁を受けるリスクが高まるでしょう。例えば、障害者の雇用義務を遵守しなかったり、建設業界・物流業界で法定上限を超えて時間外労働を強いたりすると、法令違反となります。

法令違反を犯すと、行政機関から指導を受け、悪質な場合は公表されるという社会的制裁を受けます。社会的制裁を受けると、経営者としての信頼を失ってしまい、事業運営の継続が困難になりかねません。

まとめ:最新の制度変更を確認して円滑な事業運営を行おう

2024年4月には、さまざまな法改正が行われます。税制面や雇用面におけるルールが変わるため、事業主・経営者は必ず確認しましょう。

最新の法改正や制度変更を把握しておかないと、経済的な不利益を被ったり、社会的制裁を受けたりするリスクが高まります。信頼を損なわないためにも、最新の情報を集めて、変化に対応することが大切です。

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(編集:創業手帳編集部)

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