ダメな組織を変えたいあなたへ。「絶対達成バイブル」著者 横山信弘氏が起業家に贈るメッセージ(インタビュー後編)
目標達成は起業では死活問題!2倍仕込むための考え方
(2018/01/29更新)
前編では、営業を行っていく上での心構えなどを中心に解説していただいた、「全ての営業のための絶対達成バイブル」著者 横山信弘氏。後編では、自身の著書でも触れている「予材管理」の基本的な考え方や実行方法、経営で重要な「商品価格の決め方」について、お話を伺いました。
前編はこちら→起業家が知っておきたい「営業」の超基本!「絶対達成バイブル」著者 横山信弘氏インタビュー(前編)
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長
企業の現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。支援先は、NTTドコモ、ソフトバンク、サントリー等の大企業から中小企業にいたるまで。3大メガバンク、野村證券等でも研修実績がある。企業研修は、基本的に価格がつけられず「時価」。にもかかわらず、研修依頼はあとを絶たない。現場でのコンサルティング支援を続けながらも、年間100回以上の講演実績は6年以上を継続。
ベストセラー「絶対達成シリーズ」の著者であり、メルマガ「草創花伝」は3.7万人の経営者、管理者が購読する。コラムニストとしても人気で、日経ビジネスオンライン、Yahoo!ニュースのコラムは年間2000万以上のPVを記録する。著書『絶対達成マインドのつくり方』『「空気」で人を動かす』など著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。2017年12月7日に、横山信弘著「最強の経営を実現する予材管理のすべて」が発売され好評を博している。
「ダメな組織を変えたい」という社長へ。原因はあなた自身ですよ!
横山:まず、その悪い状態は100%トップの責任です。つまりその人の責任という自覚を最初に持つべきです。
たまに、業績が上がらない理由で「みんなが」ちゃんとやらない、という人がいますが、そんな人はトップ失格です。
「みんな」という曖昧な主語を使うと、無責任になり、他人に依存していくことになります。あいまいなメッセージを言えば言うほど、責任があいまいになり、風土が悪くなるという悪循環になるのです。
その状況を打破するには、「自分はこう思う」という、社長自身を主語にした強い意思、メッセージを伝え続けることが大事です。
靴ひもと同じで、組織は緩んできます。緩んできたら締めなおすことです。
「社長変わってきたな」、「社長がこれくらい本気になっているなら」と思わせないとダメなんです。
では、成果の出ない起業家、経営者に対して、まずどういうアドバイスをしますか?
横山:レベルによっても違うのですが、上手くいっていない起業家は「向いていない」というケースもあります。
経営者の向き不向きは、覚悟で決まります。覚悟がない人は起業家には向いていません。サラリーマンなら良いというケースもあるのですが、起業する人はこの覚悟を持たなければいけないのです。
あとはやはり「雇用を創出する」ということが大事です。
一人で個人事業主的にやっていくという方法もありますが、会社にするのであれば、一人で食っていければ良いという考え方は捨てましょう。会社を伸ばして、雇用を作っていくという覚悟が必要だと思います。
起業家は「こう決めたらこうやる!」というような、いわば「超わがまま」ともとれる人も多いです。ですが、それで会社が雇用を生むことができるなら、立派な社会貢献です。そして、レベルが上がってくれば、視野が広くなって、気が付くこともあると思います。
併せて、起業家はバランスを考えてくれる、参謀役、COO、専務といったNo.2の役割を持つ人を置くことです。良いNo2を置けると会社の安定性がぐっと増します。
さらに、「最低努力投入量」という考え方を持つと良いと思います。「この実績を出すためには、これくらいの時間を投入しないといけない」という時間を決めることです。
例えば、1000時間勉強しなければ取れない資格があるとしたら、まずは謙虚に1000時間やる時間を確保してやってみます。
最低限の時間投入をした上で、どのように改善していけば良いのか、を考えていくのが良いと思います。
2倍仕込んで計画的に達成する「予材管理」の方法
横山:弊社では、「予材管理」という考え方を提唱しています。「予材」とは、今後の成果になりそうな予定材料を準備することで、「予材管理」とは「目標の2倍の予材を仕込むことで、はじめて計画的に目標を達成できる」という考え方です。
ですが、これは軌道に乗っている会社だから2倍です。起業だと何もないので、10倍は仕込みべきだと思います。
横山:起業直後の営業活動の場合、可能性の種まきからなので、不確実性が高いからです。それを埋めていくには2倍の仕込みでは足りず、桁違いの努力が必要です。そのため、起業や社内ベンチャーの場合は、目標「ちょうど」を狙うとまず失敗します。
予材管理は種まき→水やり→収穫の考え方
横山:前述した通り、「予材」とは今後の成果になるために準備しておく材料のことです。
例えば、あるお客様と接触することがあったとします。その場合、「このお客様と接していたら、今後何かの成果に結びつくのではないか?」といった、お客様が秘めている可能性を見出して、「予材」があるかどうかを判断します。
営業では、予材のあるお客様と接することが大事です。出来ない営業ほど、今期に数字が上がるかどうかを考えてしまいます。
数字ができるのは今期ではないかもしれません。ですが、先の予材を見て接触するということで計画的に数字が上がってきます。
そのため、常に予材に結びつきそうな案件を探して、アプローチや提案をし続けることが大事です。それを繰り返していきます。種をまいて、水をやり続けるということですね。
以前、社員100名ほどの企業のコンサルをしたことがありました。
会計系のコンサルは「もうダメだから畳んだ方が良い」と言っているほどの状況でした。ですが、社長がどうしても続けたいということで、引き受けました。
「潰れそうな会社を復活させる」という難しい状況でしたが、先ほどお話した、「予材管理」の基本を徹底的に行って、営業部門の立て直しをしたら、会社が再建できました。
横山:そうです。市場と顧客の把握、営業がしっかりしていなければ、市況が悪くなれば潰れるのは当たり前です。ですが、当たり前のことをやれば立ち直る会社は多いんです。
問い合わせや紹介だけでしか営業していないと、分析を怠ってしまいます。波が来ている間は良いですが、永久に波が続くわけではありません。仕事が押し寄せてくる波が来ているときでも、分析をして、足腰を鍛えておかないと危ないのです。
経営は値決めである
横山:次に、お客様がどんな金額の商品を買ってくれるのかを考えます。
例えば、車の営業で目標が3,000万円だった場合、まずは「車をまとめて買ってくれるところはどこだろう?」と考えると思います。そうすると、車をまとめて買ってくれそうなところ、つまり法人にアプローチするということになり、そもそもの行動の前提が変わります。
このように、その商品に対して、お客様にどういうポテンシャルがあるかを見極めることが必要です。弊社では「予材ポテンシャル分析」と呼んでいて、お客様のポテンシャルとともに、市場の状況も把握できます。
横山:そうです。起業家向けの話で言うと、創業数年のAI関連の会社がありました。その会社の社長は、元々別の事業でうまくいってAI業界に進出したアイディアマンでした。大手と契約してメディアに出たり、派手に展開していたのですが、残念ながら契約が取れていない状況でした。
その社長は成熟した業界で実行した価格破壊で成功した人で、AI業界でも同じ発想でやろうとしていました。でも、中小企業のAI市場は、価格破壊を行う市場がありませんでした。契約が取れていなかった原因はそこにあったんです。
そこで、価格設定を見直しました。「気持ちのある会社に相当な金額を出してもらうしかない」と考え、5,000万円や1億円という単位で価格設定のケタを引き上げました。その結果、業績を上げることができました。
価格設定は経営戦略上、非常に重要で、安売りはダメです。付加価値が高いものを自信をもって売るべきなのです。
まず価格を決めて、それに合った製品を計画する
横山:コンサルタントや経営者が使うマーケティング戦略の一つに「4P分析」というものがあります。
- 4P分析
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- 1.「Product:製品」
- 2.「Price:価格」
- 3.「Place:流通」
- 4.「Promotion:プロモーション」
「Product:製品」、「Price:価格」、「Place:流通」、「Promotion:プロモーション」という4つの視点からターゲット市場を分析し、課題や強みを発見し、戦略を練るというものです。
通常は、まず製品から考えることが多いですが、この考え方で言うと、まず「Price(価格)」から考えましょう。
「Price(価格)」を最初に検討して「価格帯に合う製品を戦略的に作る」という流れを作ることで、狙っている市場に合った適正な価格で製品を作ることができます。
トップセールスマンが必ずしも名経営者ではない理由
横山:「鈍感力」と言いますか、ネガティブワードに動じない、ということですね。そういう人は営業では天才的だったりします。
ですが、そういう人はブルドーザーみたいに突き進むので、他人の痛みとかは分かりません。そういう人がブラック企業を作りがちです。
天才は常人の痛みが分からないから天才だし、部下がマネすることもできません。天才的な営業方法を教えようとしても、往々にしてうまくいかないのはそういう理由です。そして本人も営業マンとして働く方が楽しく、経営者だと成果が出ないので苦しいということが起こります。
起業家に向いているのは、鈍感ではなくて、自分の心を強く持てる人です。
強いと鈍いは違います。営業、特に起業での営業は良い話などそうそう無いですから、相手の言う事をちゃんと受け止める、強い精神力が必要です。
会社を作るということは絶対的な社会貢献
横山:「目標を達成してツラい」という人はいません。ツラいのは「目標を達成しないだろうなと思ってやっている」状態です。
実は、「目標を達成できるかもしれない」と思っている状態が、一番良い状態です。そのため、まずは目標達成まで行かなくても、「これいけるのでは?」と思う状態にいかに早く到達するかが重要です。そうすると、自分もチームも乗ってきます。
「成功に向かっている」と実感できた方が楽しい、というわけです。マラソンや登山と一緒ですね。
横山:嬉しいことは、お客様が成果を出すことですね。満足していただいても、成果が出ないと意味がありませんから。
例えば、先ほどお話した「もうダメだ」という会社が復活した時のように、「自分達がいなくても大丈夫」、「目標達成が当たり前にできる」という状態になるのが一番嬉しいです。
極意は、自分に強くなるということですね。
若い20代、30代のコンサルタントでも、50代、60代の経営者や営業部長と対峙しないといけません。その時に自分自身をいかに強く持てるかと言うことが大事です。
ブレている人の言うことは受け入れてくれません。「自分自身を強く持ち」、「内容が正しく」、「自信があれば」、経験がはるかに上の経営者にも堂々と意見を述べることができます。投資家や顧客にプレゼンしないといけない起業家にも同じことが言えると思います。
横山:起業家は、雇用を生み出す人であり、絶対的な社会貢献をしている人です。そして、社会システムを創り出しています。そのことに誇りを持って欲しいと思います。
例えば小さなお店をやる、フリーランスなど、小さくても良い起業というのも中にはありますが、やはり会社でやるのであれば組織を大きくする、ということ考えて欲しいと思います。「社長が働けなくなったらアウト」ということだと周りに迷惑がかかってしまうからです。
だから組織を作って、安定して5年10年生き残って、体制に一刻も早く持って行って欲しいと思います。
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(取材協力:株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ/横山信弘)
(編集:創業手帳編集部)