ベンチャーキャピタリストは「起業家」のココを見る

創業手帳

ベンチャーキャピタリストが考える「良い起業家」の条件とベンチャーキャピタルから出資を受ける3つのメリット

ベンチャーキャピタルとは何だろうか。ベンチャーキャピタル(以下VC)とは、創業間もないベンチャー企業に対して投資を行う投資会社をさす。多くの場合、出資を受けたベンチャー企業は、返済の必要がない多大な資金を無償で調達することができる。

では、VCがベンチャー企業に出資する目的は何か。それには「株式公開」が関わっている。VCが出資するのは、通常今後の急成長が見込まれるベンチャー企業である。VCは出資した企業の株式公開により手持ちの株式を売却することで利益を得ているのである。

そのため創業間もない企業が出資を受けるためには「成長性のある将来有望なベンチャー企業であること」が最低条件になる。逆にいえば、これから急拡大する市場を狙ったビジネスや、大きな夢を描いている起業家にはうってつけの資金調達の仕組みだ。

ここでは、ベンチャーキャピタリストが考える「良い起業家」の条件や、VCから出資を受けるメリットなど、起業家が気になるポイントについて、現在多くのベンチャー企業投資に携わっている サイバーエージェント・ベンチャーズ ヴァイスプレジデントの竹川氏にお話を伺った。

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竹川 祐也
1975年広島県広島市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。証券会社のリテール営業、人材紹介会社勤務から人材紹介会社立ち上げ、証券会社VC部門、ベンチャー企業CFO/CEOを経て2012年サイバーエージェント・ベンチャーズへ入社。ベンチャーキャピタリストとして主に日本国内及び米国・東南アジアのシードステージの投資に携わる傍ら、事業会社とスタートアップのオープンイノベーションコミュニティ”CROSSOVER”の立ち上げ、シリーズA以降のスタートアップ向けピッチイベント”RISING EXPO”のプロデューサー等を経て、2014年シード特化型ファンドSeed Generator Fund(シード・ジェネレーター・ファンド)を創設、主に起業/創業前〜起業直後のシードステージ起業家への出資・ハンズオン支援を行っている。Blog:https://www.venturising.com/
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ベンチャーキャピタルから出資を受ける3つのメリット

― 大きく成長するために資金が必要な場合、VCからの資金調達が向いているといえると思います。一方で、資金調達の方法は他に融資などの方法もあると思いますが、その中で「VCからの資金調達」を選ぶとよい理由とは何でしょうか?

竹川:VCから出資を受けると良い点は大きく3つあります。

第一に交渉の過程で「良い“壁うち相手”になる」ということです。私たちベンチャーキャピタリストは、多くのベンチャー経営者の失敗や成功を目の当たりにしてきました。ですので、起業家の方が問題に直面した時、これまでの経験を元に一緒に考えることができます。これは出資後もそうですが、たとえ出資に至らなくても価値のあるフィードバックを得られるのではないかと思います。

第二に、諸条件をクリアすれば、事業がスタートしていなくても資金調達できる場合があるということです。当社でもいまはある程度名の知られた有名なベンチャー企業が事業を開始する前に資金提供することを決定していた事例があります。以前ベンチャー企業の幹部として働いていた、もしくは大企業の新規事業を担当していた、など腕に覚えがある方や、また狙っているマーケットが明らかに大きく、かつ成長していきそうな事業を、明確な動機をもって取り組める方であれば、スタート前からの出資も十分ありえます

第三に、これはベンチャーキャピタルの特徴によって異なる部分もありますが、提供される資金の大きさです。私たちサイバーエージェント・ベンチャーズでは創業一年未満の会社であっても数千万円の出資を行っています。もちろん私たちキャピタリストが成長を確信でき、ともに事業を作り上げていけると思える企業に限ってというお話ではありますが。

ベンチャーキャピタリストは起業家のココを評価する

― 具体的に出資を決めるにあたって、起業家の何を見ているのでしょうか?

竹川:私はベンチャーキャピタリスとして「起業の動機が自分自身や身近な方の原体験に基づいているか」「ユーザーの視点でものごとをみることができているか」の2点をみています。良い起業家は、これらの点で他の起業家とは異なっているように思います。

― 起業の動機が原体験に基づいているとはどういうことなのでしょうか?

竹川:「起業の動機」は、意志の源泉がどこにあるかです。ベンチャー企業の経営は大小さまざまな失敗の連続で、ときには本当に投げ出したくなるほど苦しいものです。そのときに大事になるのが「なぜこの事業をやっているのか」という動機です。原体験に基づいた動機をもっている人は強いですが、単に「目先で儲かるから」というだけの動機で始めた人はいざというときに事業を投げ出してしまう可能性が高いと感じています。

例えば、ある起業家の話です。彼は実家が洋服屋さんで、もともとアパレル分野で起業をしたいと考えていました。ある日、日本で売られている洋服はタグを見るとほとんどが「Made in China」である一方で、海外の有名ブランドの製品をつくっている日本の職人さんがいることを知って疑問に思ったそうです。

海外の有名ブランドも、もとは工場だったものが大きくなった結果。でも日本にも優秀な職人さんもいる。条件は同じなのに、なぜ世界的に有名なアパレルブランドが日本から出てこないのだろう? と。

そこで “日本初、世界に誇れる「Made in Japan」のブランドをつくろう”と決意したそうです。その後は自分の足で日本各地の職人さんをさがし、月に数十もの工場をまわって有力な提携先の発掘をしています。彼のような原体験や強い動機があり、そのために泥臭く行動できることが、優れた起業家の資質のひとつだと思います。

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― ユーザー視点の考え方というは一般的にもよく言われるポイントですね。

竹川:「ユーザーの視点でものごとをみることができているか」というのは、言い換えれば、起業家自身がユーザーの視点に立って、そのサービスやプロダクトを「本当にお金を払ってまで買うのかどうか」をとことん考えているかということです。これは意外なほどにできていないと思っています。

この対極にあるのが供給者目線であり、机上でのみものごとを考えることです。市場規模を調査会社などの算出した数値を提示して「この伸びていく市場で、3年後までに20パーセントのシェアをとります」という起業家の方もいます。しかしそれは「その会社にとって本当の市場か」どうかはわかりません。“市場”とは、そのサービスが解決する課題や満たしてくれるニーズに、きちんとお金を払ってくれるユーザーがどれくらい存在するかということです。ユーザー目線で積み上げる形でビジネスの規模を捉えられるかが肝だと思います。

これは「B to B」でも「B to C」でも同じでしょう。ユーザーになりきれない場合は、ユーザーになりうる人に話を聞いてみるとよいです。観察することも大事です。いずれにせよ、自分をユーザーと同じシチュエーションにおき「自分だったら本当に買うかな?」と想像することは最低限必要です。

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ユーザー視点から市場規模を推測し成長市場で戦う

― 最後に起業家のみなさんへアドバイスをお願いします

竹川:起業をするときにまず重要なのは「ユーザー目線から市場規模を推測し、より大きな成長や拡大が見込まれる市場で挑戦すること」だと思います。ユーザー目線で自分たちのサービスや製品が「本当に求められているか」を考えぬき、その上で「世界中にどれだけの人が自分たちのサービスのユーザーとなっていくか」を考えます。10人や20人では事業になりませんが、何千万人、何億人が自分たちのサービスを使っているかどうか。この視点で事業を考えるとわくわくしませんか?

そして、解決されていない課題や満たされていないニーズは、世界中にまだたくさんあります。これからも環境の変化で生まれ続けてくるでしょう。それらを発見するためにも、日々の洞察も大事ですし、忘れていた「自分自身の原体験」を思い出してみるのもよいと思います。それらのアイデアの事業化を私たちがお手伝いできれば最高ですね。



起業家とベンチャーキャピタリストや大企業をつなぐ交流会

最後に、竹川氏も運営に参画しているサイバーエージェントベンチャーズが主催の創業者向けのイベント(一部招待制)を紹介する。これらのイベントは、ベンチャー起業家とベンチャーに投資を考えているベンチャーキャピタリストや大企業の投資事業担当者が参加する。

RISING EXPO:日本最大級の起業家と投資家のマッチングイベント

RISING EXPOは、国内外の有力ベンチャーキャピタル・大手事業会社など、各国のベンチャー業界を支える有志が一堂に会するアジア最大級の資金調達・事業提携の場。事前選考を通過したベンチャー企業が、100名以上のエグゼクティブやキーマンに対するプレゼンテーションやネットワーキングを行うことができる。

>>RISING EXPO

CROSSOVER:大企業とベンチャー企業の共創を目指すコミュニティ

CROSSOVERは、大手事業会社の事業提携・資本提携のキーマンと、スタートアップ企業経営者が一堂に会する事業提携イベント。『事業会社とベンチャーの共創で日本を、世界を変える』をテーマに掲げている。

>>CROSSOVER:2014年3月のイベントの報告

(インタビュー・編集 田中 嘉)

ココ重要!
  • 一般的な融資と異なり、起業初期に大規模な出資を受けることも可能。「大きく成長するために資金が必要」な起業家はVCからの資金調達が向いている。
  • 「良い‟壁うち”相手」として課題解決のアドバイザーとしての資金調達以外の観点からもメリットあり。
  • 良い起業家の共通点は、起業の動機が自身や身近な人の原体験に基づいていることと、真剣にユーザーの視点でものごとを考えていること。
  • ユーザー目線から市場規模を推測し、成長が見込まれる市場で事業を立ち上げることが重要。
  • 解決されていない課題や満たされていないニーズを発見するためには、日々の洞察を大切にしたり、忘れていた「自分自身の原体験」を思い出してみるのもよい。
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