僕と私と 今瀧 健登|Z世代の企画屋!新しい時代のマーケティング手法を切り開く

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年12月に行われた取材時点のものです。

Z世代とそれ以外の世代には大きな違いがある!メンバー8割がZ世代だからこそできるマーケティングとは

Z世代はテレビも観ないし、新聞も読まない。さらには、「Z世代といえば○○」という風に世代を一括りにすることもできません。そのため、Z世代を対象とする場合、今までのマーケティング手法が通用しないと言われています。

このような時代の変化を機会と捉え、メンバー8割がZ世代の企画屋さん「僕と私と株式会社」を経営しているのが今瀧さんです。

そこで今回は、Z世代のマーケティングの特徴や、メンバー8割がZ世代の会社のチームビルディングの工夫について、創業手帳の大久保が聞きました。

今瀧 健登(いまたき けんと)
僕と私と株式会社 CEO
1997年生まれ。Z世代へのマーケティング・企画UXを専門とし、ネイルサロン『KANGOL NAIL』、食べられるお茶『咲茶』などを企画するヒットメーカー。Z世代代表として多数のメディアに出演し、”サウナ採用”などのユニークな働き方を提案するZ世代経営者。一般社団法人Z世代の代表も務める。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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最初の起業は学生時代に立ち上げた「お花×映像制作」の事業

大久保:起業までの流れを伺えますでしょうか?

今瀧:実は「僕と私と株式会社」は2回目の起業となります。

大久保:1社目の起業はどのような事業内容でしたか?

今瀧お花を贈る人を増やすために「お花×映像制作」の事業を行っていました。

AAAの宇野美彩子さんの楽曲を用いて、縦型動画制作をしたり、お花のイベントを企画したりしていました。

大久保:なぜ学生プロジェクトではなく、法人として実施したのでしょうか?

今瀧株式会社にするメリットは3つあると思います。

1つ目は、資金調達ができること。
2つ目は、税金面の対策。
3つ目は、人と会うときに会社の代表として会えるため、信頼を得やすいことです。

この2、3つ目のポイントを重視し、法人として立ち上げました。

大久保:おっしゃる通り、会社としか取引してくれない企業もありますよね。

コンサルへ就職した後に、2社目の起業として「僕と私と」を創業

大久保:2社目の起業に至った経緯を伺えますでしょうか?

今瀧1社目は大学卒業時に離れ、新卒で組織コンサル系の企業に入社しました。

その会社で働いている期間に、働き方がコロナによってリモートワークに代わり、時間に余裕ができまして……

そこで、副業としてYouTuberのプロデュース、D2Cブランドを立ち上げたんです。

半年くらい副業で行っていましたが、自分へのプレゼントという意味で、私の誕生日に「僕と私と」を起業しました。

Z世代マーケティングを行う「僕と私と」の3つの強み

大久保:「僕と私と」の事業内容など伺えますか?

今瀧:事業内容は「Z世代」と言われる、1990年後半から2010年代までに生まれた方をターゲットにしたマーケティングを行なっています。

具体的には、Z世代向けの商品のリブランディングやSNSの運用、インサイト調査、新規事業の開発などです。

その中で、我々の強みとしていることが3つあります。

1つ目は、当社のクリエイター自身が「Z世代」であること。なので、同じ目線でマーケティング対象を捉えられます。

2つ目は、メンバーの約3分の1がインフルエンサーであること。

SNSに精通しているメンバーを集めていたら、結果的にSNSアカウントを伸ばしているメンバーが多くなりました。

3つ目は、潜在的マーケティングに力を入れていることです。

例えば、コーヒーを飲みたいと思っている人に対してアプローチするのは顕在的マーケティングという広告の領域です。しかし我々は、飲みたいと思っていなかった潜在的顧客に対して、どう魅力を伝えるかという企画を得意としています。

ココ重要!「僕と私と」の3つの強み
  • 強み1:メンバー全員が「Z世代」
  • 強み2:メンバーの3分の1が「インフルエンサー」
  • 強み3:潜在的マーケティング

Z世代には今までのマーケティング手法が通用しない

大久保:なぜ「Z世代マーケテング」に注目したのでしょうか?

今瀧:僕自身と同世代で、これからキーとなる世代だと考えているためです。

今から30年後・50年後と長期的に考えた時には、今のZ世代が消費の中心となってきます。

Z世代は、テレビも新聞も見る人が少ない傾向にあるので、これまでのマーケティングが通用しなくなることが考えられます。

そのため、今のうちからSNSで情報収集する世代に注目しておかなければいけません。

大久保:マーケティング手法がガラッと変わりますよね。

今瀧:また、単純にこれからの時間を考えると、LTV(Life Time Value/顧客生涯価値)が圧倒的に高くなる可能性が高いという点も挙げられます。

そして、Z世代は「拡散力」が強いことも、マーケティングを行う上で重要なポイントです。

Z世代はSNSを通じて情報が拡散されて行くため、Z世代以外の方々にも広がりやすく、そこからミレニアル世代(1981年〜1990年代なかばごろまでに生まれた世代)や、親世代にも知ってもらえる可能性が高いです。

日本では少子高齢化が進んでいますが、グローバル基準ではZ世代がメインのボリュームゾーン。そのため、マーケティングとしてはキーとなる世代と考えています。

Z世代とそれ以外の世代にある決定的な違いは「SNSの存在」

大久保:Z世代とそれ以外の世代の間にある、決定的な違いを教えてください。

今瀧「生活にSNSがあるかどうか」です。そこを起点にして、価値観のズレが生まれていると考えています。

従来、情報のインプットは新聞やテレビがメインだった上、そこで起業家が取り上げられたとしても、有名起業家だけでした。

現代においては、生活の中にSNSがあることで、走り出したばかりの起業家や、田舎に引っ越して幸せそうにしている人、上京したけどしんどい思いをしている人など、様々な人の価値観をSNSを通じて知ることができます。

それによって、消費行動が大きく変わったと考えています。

大久保:「成功」に対するモチベーションも、変わってきているのでしょうか?

今瀧:おっしゃる通り、成功の軸は一つではなく、バラバラになっていると思います。

例えば、「僕と私と」は上場を目指してはおらず、「どれだけ楽しいことを生み出せるか」を「成功」の判断軸にしています。

大久保:その他、特徴的な点などはありますか?

今瀧:個性的な考え方を持っていることで。

自分自身に「正解」を持っている、SNSネイティブ、ジェンダーレス的な考え方をしている人が多い、SDGs/ESGに関心を持っている、といった点でしょうか。

社内起業を積極的に行うことで社員の起業家マインドを育む

大久保:メンバーの個性が生きる組織は強いですね。

今瀧:他にも、当社はこの半年で社内起業で4、5社立ち上げていますが、それらは子会社ではなく、独立した企業にして、それぞれ代表がメイン株を持って運用してもらっています。

目的は、株をメインで持つことで自分自身に責任を持って、自分ごと化できるためです。独立したメンバーには身を持って学んでもらおうとこのような形にしました。

大久保:基本的に、社内起業は独立しても株を渡さないことが多いのですが、独立に近い立ち位置にしてあげ、運用をサポートしてあげているということですね。

今瀧:私自身、一番学びが多かったのは、やはり独立して起業したときでした。

私の元で働いてくれている人にも、失敗したらまた「僕と私と」に戻って来れるという、保険付きで学んでほしいと思っています。

大久保:25歳だと、いつでもやり直しが効く年齢ですしね。

今瀧:今の私たちの年齢の期間は無敵状態と捉えており、失敗しても糧として何度でもやり直せます。

そのため、何でもどんどん挑戦していきたいです。

学級経営をベースとした「僕と私と流のチームビルディング」

大久保:社内起業のお話など、すごく特徴的な体制を取られているようですが、その他意識している組織作りの工夫などはございますか?

今瀧:私は学級経営の経験を元に、「40人のクラスをどのようにすれば、チームとしてよくなるか」という観点で考えてきました。

係別に役割があったり、話し方、グループ編成など、組織のためのノウハウが詰まっているため、ビジネスに落とし込むようにしています。

大久保:学級経営とはZ世代ならではの進め方のように感じますね。

今瀧もう一つは、ルール化です。

サークルのように見られることが多いのですが、実は全く違います。

例えば、社内では全員敬語で会話をする、話すときは結論から言う、エビデンスを持って話す、否定はせずGood・Moreで話す……と「話すこと」だけでも細かいルールを決めていて。

だからこそ、「フルリモート・フルフレックスで、サークルのような遊びもしている」という会社が成り立っています。

さらに、この「ルール化」には「成長を自動化させる」というメリットがあります。

「失敗しても良い」というルールがあり、それによって挑戦しやすい風潮ができるため、ある程度の成長を担保できるのです。

ココ重要!成長を自動化させる「僕と私と」の独自ルール(一例)
  • ルール1:社内では全員敬語で会話をする
  • ルール2:話すときは結論から言う
  • ルール3:エビデンスを持って話す
  • ルール4:否定はせずGood・Moreで話す

成長を自動化する「能動的な教育」とは

大久保:「成長の自動化」はとても良い考え方ですね。

今瀧:当社の場合、教えるという文化はなく「能動的な教育」しかできません。

わからないことがあったら、まずはGoogleで調べる。5秒考えてもわからなければ聞く。手取り足取り教えるようなことはないですね。

さらに、3ヶ月に1回行っている「フィードバック会」では、チームメンバーから良いことも悪いこともすべて忖度なく共有するなど、能動的に成長できる環境を整える工夫もしています。

大久保:昭和世代の会社のように、課長などの管理職がいて、その傘下でマネジメントが行われるような体制とは全く異なっているように思えますが、その点はいかがでしょうか?

今瀧一人ひとりが、伸び伸びと活躍できるような体制作りをしています。

そのため、マネジメント方法も全く違うはずです。

ミーティングは、1on1で週に1回30分だけ。

プロジェクトマネジメントも同様です。

1on1では成長を促進する・アドバイスをするだけでなく、人間関係などの悩みを聞き出すこともあります。

オフィスはなくてカフェがある?フルリモート経営ならではの工夫

大久保:リアルワークとリモートワークにおいて、マネジメントで気をつけている点などありますか?

今瀧:オフラインだと作業している姿すら見えるため、細かいことに気づくことができて、マネジメントがしやすいと思います。

一方、リモートワークだと、サボろうと思えばいくらでもサボれます。

そこで、能動的に動ける仕組みを作ることで、完全成果主義ではありませんが、働いた分だけ結果に反映されるような工夫をしています。

大久保:コミュニケーションの違いについてはどのような工夫をしていますか?

今瀧フルリモートだからこそ、話をフランクにできるような機会を増やすようにしています。

例えば、私とのミーティングでは、最初の5分間を雑談の場にしていたり、朝活部、サウナ部といった部活動など仕事以外でも会える場を作ったりしています。

そして、普通のフルリモートの会社と違う点は、オフィスがない代わりにカフェがあるところです。

出社という概念はないので、どこで仕事をしてもOK。

ですが、人と関わりたい人はカフェに行って、社内のメンバーとコミュニケーションを取りながら働くことができます。

さらに、そこで注文した飲み物や食事代は、会社に付けて良いという福利厚生にしています。

大久保:リモートワークだからこそ、自分から仕事のモチベーションをあげる仕組みを作るということですね。

今瀧:そういった意味で、時間軸で働く方ではなく、成果軸で働く方が当社には合っていると思います。

特に若い起業家に失敗という概念はない!全て経験になる!

大久保:Z世代マーケティングとして、ポイントとはどういうところになるのでしょうか?

今瀧Z世代は「型にハマりたくない」という思いが強いです。

なので、「Z世代は〇〇だ」という傾向が見えてきても、その直後には変わっている可能性があります。

そういう生き物だという理解と捉え方が必要です。

さらに特徴としては、周りに合わせるよりも、自分軸で消費行動が目まぐるしく変わる点。

これを私は「金魚すくいマーケティング」と例えており、大きい網で一気に囲うのではなく、小さいポイで一匹ずつ捕まえて行くという考え方が必要です。

大久保:最後に読者にメッセージをお願いします。

今瀧:すでに起業した方は、まずおめでとうございます。

まだ起業していない方は、これから楽しいことが待っているので、ぜひ挑戦してほしいと考えています。

そして、起業した時の失敗は、失敗に止まることはありません。

仮に、私が採用面接の際に、過去に起業して失敗した経験がある方がいたら、真っ先に採用したいと思うでしょう。

起業は、大変で答えのないことだと思いますが、勉強になる上、いろんな視点で物事を考えられるようになります。

起業した時には、世の中や市場など大きい観点で考えすぎずに、目の前の人や周りの人を幸せにできるように挑戦してほしいです。

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(取材協力: 僕と私と株式会社 CEO 今瀧 健登
(編集: 創業手帳編集部)



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