Re.muse 勝友美|顧客様に迎合せず本音で向き合うことが大事

創業手帳woman

「100年先も愛されるブランドを作る」を目標に掲げ、オーダースーツを販売する勝友美氏にインタビュー

20万円以上もする高級オーダースーツを1年間で500着売った凄腕の女性社長ということで話題となり、自身の書籍も発売した勝氏。創業手帳では2017年に取材させていただき、前後編で記事を掲載させていただきました。YouTubeチャンネルも絶好調の勝さんに、今回再度インタビューに応じていただき、顧客への向き合い方や起業ストーリー、人材育成などについて詳しくお聞きしました。

創業手帳Womanでは、勝さんはじめ、多くの女性起業家インタビュー記事を掲載。他にも女性起業ならではのライフスタイルにあわせたオフィスについてや、資金調達方法などについてのノウハウ記事も多数掲載しています。無料でお届けします。ご活用ください。

勝 友美(かつ ともみ)
株式会社muse代表取締役
アパレルメーカーに入社後、トップセールスとなる。その後、スタイリストとして中国でのポータルサイト新規事業の立ち上げを経験したのち、オーダースーツ業界へ転身。最高峰の技術を習得し、2013年muse style labを大阪・淀屋橋にて創業(現在のRe.muse/レ・ミューズ)。現在は東京と大阪に店舗を構える。2018年より、テーラー業界では日本初となるミラノコレクションへの出場を3度果たしている。
日本初の女性テーラーであり、女性起業家として業界の枠を越えて、経済界始め幅広いメディアに取り上げられている。SNS総フォロワーは50万人を超える。
著書:『営業は「バカ正直」になればすべてうまくいく!』(SBクリエイティブ刊)

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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「このスーツを着たい」と思ってもらえるためのブランド作り

大久保:久しぶりのインタビューですが、本日はよろしくお願いします。ヴィクトリークラブの噂を聞きましたが、面白い取り組みですね。

:こちらこそよろしくお願いします。はい、弊社でスーツをお仕立てされた方、クラブの理念に賛同してくださる方、VICTORYカードを受け取った方が入っていただけるクラブで、東京と大阪で年に一度イベントもやっています。

大久保:勝さんのお店で仕立てるスーツは「ヴィクトリースーツ」と呼ばれているんですか?

:そうなんです。起業当初は仕事で結果を出したいという営業マンの方がスーツを作りに来られるケースが多かったのですが、弊社のスーツを着るたびに自信が生まれ、結果がついてくるということからお客様に「ヴィクトリースーツ」と呼ばれるようになりました。

また、スーツを着ることで目標を叶えるという順番だったのが、最近では「ヴィクトリースーツを着ることが目標でした」と言っていただけることも多くなりました。例えば某高級ホテルチェーンやテーマパークのように、「ここに行くのが夢」というような存在になるのが昔からの目標でしたので、非常に嬉しく思っています。

大久保:それは素晴らしいですね。そこまで思わせるスーツはどのように作られていくのでしょうか。

:オーダーメイドのスーツとして、クオリティや技術に関しては最高峰だと自負しております。でもそれだけではなくて、大切にしているのはなぜそのスーツを作るのかという目的の共有ですね。お客様の要望ありきの作成なので、カウンセリングの中ではスーツの話はもちろんですが、今どんな仕事をしていて、将来どのようになりたいのかということをお聞きしています。

大久保:オーダースーツのカウンセリングなのに、仕事や将来の話を聞かれるなんて、驚かれる方もいるのではないですか?

:「こんなスーツ屋さんははじめてだ!」一体、何度この言葉を聞いたかわかりません(笑)。必ず聞くのは「スーツを仕立てる目的」です。細かい営業マニュアルを覚える必要もありませんし、無理に季節や時事の話をすることもありません。

スーツ作りに人一倍情熱を傾けているわけですから、スーツそのものをアピールするのは簡単です。でも「当店のスーツは約400の工程で作られています。縫製はすべて国内で行い、その半分以上は手縫いです」などと熱弁しても、お客様はそんなことを聞きたいと思っているでしょうか。

誤解を恐れずに言わせていただけるなら、どんな業種でも、商品の話しかできない人は営業ができないと思っているんです。

例えば家電のスペックを事細かに説明されるよりも、この家電を買うことでどんなメリットがあるのか、どう生活が変わるのかという話を聞く方が夢がありますし、ワクワクします。

同じように、私はスーツを通して、お客様とともに夢を共有し、その夢を叶えるためのスーツを作りたいと思っています。ですからお客様の現在の仕事、そしてこれから思い描く未来について話す時間が、どんなスーツを作るべきかを考えるための非常に重要な時間だと考えているんです。

大久保:スーツをただ売ろうというのではなく、お客様の人生をスーツによって変えようという気持ちでカウンセリングしてらっしゃるのですね。

:はい。未来に希望を持っていらっしゃる方が我々のターゲットと考えていますので、その方々の未来を、我々が作るスーツで応援したいと思っています。VICTORY CLUBに加入していただく際にVICTORY CLUBカードというカードをお渡しするのですが、そのカードにはお名前と人生の目的地を書いていただいています。みなさん最初は「目的地?」とびっくりされますが、お互いの人生で目指しているところを知り、応援しあうことで夢や目標が広がっていくと考えています。

大久保:どんなお客様が来られるのでしょうか。

:単に「スーツが必要だから買いに来る」のではなく、「スーツを着ることで自己啓発になる」と思う方がスーツを仕立てに来られます。自分に対しての投資ですね。

会社として社員にヴィクトリースーツをプレゼントしているというケースもありますし、父親から息子へ、娘から父親へという例もあります。

若い女性たちにとってのブランドバッグもそうですが、人間にはどこかで自信を持つためのお守りのようなものが必要だと思うんです。

ヴィクトリースーツは、様々な職業の方々にとって、「これに袖を通せば自信が持てる」というような、一種のメンタル保持のためのお守りやゲン担ぎのようなものかもしれないと思っています。

こちらとしては、一貫して「人を自信で包み、夢を叶えるヴィクトリースーツ」という明確なコンセプトを打ち出していて、それに共感してくださる方々に来ていただいているということです。

世の中に合わせていると優位性がなくなります。自分が何をしたいか、誰に何を提供できるのかを信念を持って言い続けられるかが大事だと考えています。理念やビジョンとは、本心であることも大事ですし、ただ掲げるだけでもダメで、それをどれだけ顧客様に届けられるかが重要と考えています。

例えば弊社では回転率をあげることはしていません。ひとりひとりに時間を割いて寄り添います。言っていることと行動を一致させることが大事です。

自分に「もうやめる?」と問いかけた六本木時代

大久保:顧客も大勢いて、SNSでも熱烈なファンがいる勝さんは昔から順風満帆だったように思いますが、実際のところ起業はスムーズだったのでしょうか。

:いえいえ。大阪で独立したときは小さなビルの3階で、立地も大通り沿いではなかったので本当に大変でした。資金もなかったので内装工事を手伝ってその分工賃をまけてもらったり、インテリアに関しても、妥協はしなかったですけれど、お安いものを少しずつ集めていいものを1点だけ買うなどの工夫をしましたね。

自然に人が来る立地ではなかったため、物件を契約した不動産の方やウォーターサーバーの営業に来た方など、とにかく会う人全員に営業していました(笑)。人の紹介や交流会に出かけて行って、そこで知り合った方などに1日10件、1週間で100件電話するなどと自分にノルマを課していましたね。営業なんてしたこともなかったので大変でしたが、とにかくやらないと会社がつぶれてしまうので必死でした。

途中からは紹介もあり、半年でようやく予約がいっぱいになったのですが、カウンセリングをして服を作っていると営業する時間がないので、常に不安がつきまとっていましたね。今月は大丈夫だったけど来月はどうなるんだろう?というように。その不安から解放されたのはつい最近かもしれません。

大久保:そうだったんですね。成功された経営者の方に聞くと、1店舗目は自分が奮起して成功したけど、2店舗目以降が大変だったという話もけっこう聞きますが、勝さんはいかがでしたか。

:それが本当に大変だったんですよ。もう2度としたくない苦労でしたね。まず六本木の一等地に店舗を借りたので、ランニングコストは今までの5〜6倍。立ち上げ時には東京の店舗にかかりっきりだったのですが、そうなったら大阪の売上げががくっと落ちました。

売上げを戻すのにも一苦労でしたし、大阪の社員とのコミュニケーションも取れず育成もできない。そんな中、東京の店舗がオープンして2週間で雨が浸水してしまって新商品がダメになってしまったんです。保険の申請をしようと思いましたが、そうなると審査などに時間がかかり、その間営業ができません。苦渋の決断で申請はせず、ブルーシートをかけたまま営業を続けました。その時は本当に、自分が夢への階段を登って行っているのか、それとも人生どん底なのかわからなくなりました

大久保:それは大変でしたね。普通はそこまでいったらもうアウトな気がしますが、そこから立て直されたのがすごいです。

:当時は毎日朝4時まで六本木で仕事していました。大阪の店舗はオフィス街だったから静かだったんですが、六本木は毎晩騒いでいる酔っ払いの声や救急車の音が聞こえてきて、経営が傾いている中タクシーで帰るのも気がひけて毎日徒歩で帰宅していたんですが、精神的に疲弊しましたね。自分が世界でひとりきりという気がして、とにかく孤独でした。

目にうつる人全てが敵に思えて、もう東京では無理かと思い、自分に「もうやめる?」と初めて問いかけました。そのとき「やめるぐらいなら死ぬ!」と自分の中で答えが出たんです。そんなときにはっと気づいたことがあります。

大阪ではいつも本音で仕事していましたが、東京に来てから、とにかく売ろうという気持ちが先行して行動してしまっていたんです。売上の為だけの行動は心を貧しくしている事に気が付き、そこから、行きたくない交流会に出るのもやめました。レディースのオーダースーツを仕立てているお店がほぼないとか、このままだとスーツ業界はどうなるんだろうとか、さまざまな問題をひとりで抱えていた孤独な私には、仲間が必要だったんです。

「会社が潰れる時は、私が諦めたとき!」と覚悟を決めました。そこから仲間を見つけたんです。彼らはアパレル未経験だったのですが、半年間一緒に仕事していたら、横でわたしの話し方などを見ていてくれて、半年後には本領を発揮してくれました。

大久保:キャッシュが本当になくて、もう倒産しそうという時はなかったんですか?

:ありましたよ。今ならそれはマズいと思いますが、当時は何も思わなかったです。六本木時代は、もう普通の勝ちパターンではうまくいかず、自分だけのやり方でやらないと潰れてしまうというところまで追い詰められました。5万円のスーツも売れない時代だったので、20〜30万円もするスーツは売れないと普通は思いますし、当時のメンバーからは批判もありました。ここまでついてきてくれた人は信頼してついてきてくれたと思いますし、彼らには感謝しています。

今だからネタにできることではありますが、六本木時代に社員から「大変です、社長。通帳に1万円しかありません」という電話がかかってきたこともありました。

初対面のお客様に「1万円ですよ!かなりやばいですよね?」とこの話をすると、驚いて「よくそんな話を包み隠さず話してくれるものだ」というような表情になります。

しかし、気取った話だけではなく、弱みともいえるような話をすることで、一気に親近感をもっていただけますし、面白いやつだな、と関心を示していただけるのです。

その後にそれまで何百人ものスーツを作ったことなどの実績をお話しすると、皆さん熱心に耳を傾けてくださいます。

これは私の実体験ですが、人が聞いたら驚くようなエピソードや、思わず笑ってしまうような出来事などを経験されている方も多いのではないでしょうか?

一度や二度会った人からすぐに信頼してもらうのは、誰にとっても難しいものですが、ときにはこのようなスモールトークが有効なこともあることを知っていただきたいと思います。

人材採用は「方向性が一致しているか」を見ることが大事

大久保:前職のときから売るということは得意だったんですよね。
:そうですね。20歳のときに既製服の販売を始めたんですが、飛ぶように売れました。自分で言うのはおこがましいですが、一切教えてもらったりしていないので、天性なんでしょうね。

でも接客が楽しくて大好きで、「昔ながらの親友が本音で言ってくれる」というような状況を作り出すのが得意なんだと思います。顧客様とは、迎合せずに本音で向き合うのが大事だと思っているので、今も例えば「髪型が似合ってないので、切ってからじゃないとスーツは作れません」って言っちゃうこともあるんですよ。人はそういった付き合い方を求めていると思うんです。

自己分析するなら、要点把握力、口頭表現力が高いのだと思います。相手の反応を見て自然と適応した言葉を使っているので、自分のことをわかってくれている、感覚が一緒だと思っていただけるんです。買ったときのイメージを抱かせたり、行動のハードルを下げるなどのスキルが最初から備わっていたんですよね。

大久保:天性のものだったら、人に教えるということは難しくないですか?
自分のやり方をそっくりそのまま真似してほしいとは思っていないんです。もともと、自分の本音が言えない人は実力が発揮できていないというのが私の考えです。だから社員にはどんどん自分らしくやって欲しいと思っています。
大企業からうちに入ってきたような人は、笑顔やお辞儀のしかたなど、すべてが訓練されたものという感じで、いつ仮面が取れるのかなと思いながら見ているんです。

お客様との関係というのはもちろん難しくて、本音で向き合うのも大事な反面、入り込みすぎてしまう時もあります。ただ、それは経験してみないとわからないことなので、入り込んだり遠のいたりの加減を掴めるまで待ってあげられるかが経営者としては大事だと思っています。

大久保:人を採用するときはどのような基準で見ていますか?
単にオーダースーツの仕事がしたいという人は採用していません。そうであれば、うちよりももっと大きな企業はたくさんあります。もちろんアパレルや洋服に関連する経験があれば歓迎しますが、100年先も残るブランドといううちの理念に共感してくれる人ということを大事にしています。

売るものがスーツでも例えば家具であっても、ブランド価値の向上を目指して働けるという気持ち、お客様にスーツを着た瞬間の感動を届けたいという気持ちが一致していることが社員として大切だと思っています。

実際にどのようなトークをするかというのは人それぞれでいいんです。20代の社員の接客も勉強になります。社員の個性もそれぞれですが、そのそれぞれの個性ゆえにさまざまな顧客様がついてくれていると思っています。

ヴィクトリースーツをもっと多くの人に知って欲しい


登録者が35万人を超える勝氏のYoutubeチャンネル

大久保:今の課題はありますか?
ヴィクトリースーツや弊社の理念について、もっとたくさんの方に知っていただくことが課題ですね。スーツのことだけではなく夢を持って生きる事の素晴らしさなどについて語っているYouTubeチャンネル(登録者数35.2万人)があるので、そちらもぜひ見ていただきたいです!

大久保:本日はありがとうございました。

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(取材協力: 株式会社muse 代表取締役 勝友美
(編集: 創業手帳編集部)

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