高木三四郎氏に聞く、サイバーエージェントグループ入りしたことで感じた変化【後編】

創業手帳

トライアル・アンド・エラーでいろいろやってみること、スピード感が大事


1997年に旗揚げしたDDTプロレスリング(以下、DDT)。2017年9月にサイバーエージェントグループに参画し、現在はノア・グローバルエンタテイメント株式会社、飲食部門を運営するDDTフーズと経営統合をして株式会社CyberFightとして活動をしています。
そのCyberFightの代表を務めるのが高木三四郎(本名:高木規)さんです。

経営者とプロレスラー、二足のわらじを履く”大社長”高木三四郎さんに、サイバーエージェントにグループ入りをして感じたことを創業手帳株式会社創業者の大久保が聞きました。

高木三四郎(たかぎ さんしろう)
株式会社CyberFight 代表取締役社長
1970年1月13日生まれ。大阪府豊中市出身。株式会社CyberFight代表取締役社長であり、現役プロレスラー。文化系と言われるエンタメ性の高い興行で日本武道館や両国国技館での大会を成功させアイデアマンとして有名。2017年9月、サイバーエージェントグループに参画。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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ナンバーワンの団体を目指している

大久保:DDTの場合、広く浅くというよりは、狭く深い濃密なファンが集まっていると感じるのですが、いかがでしょうか?

高木:イメージ的にはそう思われがちなんですよね。ただ、狭く深い層だけを狙っているわけではないです。もともと国内だけではなく、世界でナンバーワンの団体を作ろうと思っているので、多くの方に伝えることに注力してます。

大久保:世界でナンバーワンの団体を作ろうと思っているということですが、おっしゃるとおりDDTは海外進出もしていますよね。

高木:もともと海外志向は強いんです。台湾やニューヨークで興行したことがあります。プロレスって、言葉がわからなくても伝わるエンターテイメントですから。世界に通用するビジネスだと思うので、アメリカ・ヨーロッパ・アジア圏に広げていきたい気持ちはずっと持っています。

アメリカやヨーロッパに行くと、町に根付いたプロレス団体があちこちにあるんですよ。いまでこそ日本でも地方でローカル団体ができてきましたが、アメリカでは聞いたことのないような町にプロレス団体があって、聞いたことのない選手たちが、リングを作って試合しています。

大久保:プロレスの場合、試合までのストーリーが重要なことがあると思うのですが、その辺りは海外でも伝わるものなんでしょうか?

高木:僕も最初はそこが不安でした。DDTの場合は日本のバラエティー要素を取り入れていますし、日本のサブカル的要素が多いので、海外で伝わるかな? と思っていました。ただ、やってみたらビックリすることに、海外の方もちゃんと学習しているんですよね。

大久保:日本は海外と比べて、芸の細かさがあると思います。これは武器になりますか?

高木:日本のプロレスは団体ごとにコーチがいますし、徒弟制度がきっちりしていて、技術の伝承がされています。アメリカの場合は授業料を払ってプロレスの技術を教えるレスリングスクールが全米各地にあるのですが、スクールによっては授業料が入るので、生徒を辞めさせない様に派手な技だけを練習するような所もあるので、技術的に怪しい部分も多いのです。
日本は技術がすごく細かいですね。たとえば、受け身をとってからの立ち上がり方や、手のとり方の指の角度まで指導することがあります。

でも、アメリカにはハングリー精神を持っている選手が結構いますね。僕のFacebookに売り込みのメッセージがたくさんきますから。コロナ以前は1日に2,3人から連絡が来てましたよ。トータルで700人くらいは売り込みの連絡が来てるんじゃないですかね。実際、売り込みがきっかけで日本に呼んだ選手もいます。

サイバーエージェントグループ入りして感じたメリット・デメリット

大久保:サイバーエージェントグループ入りしたことも、世界でナンバーワンのプロレス団体になるという目的を達成するための手段だと思います。大手企業のグループ入りして感じたメリット、デメリットはなんでしょうか。

高木メリットは、ブランド力が強くなったことです。サイバーエージェントのグループシナジーを得られることはすごく助かっています。たとえば、広報を自社だけでやる場合、どうしても限界があります。そこでサイバーエージェント本社の広報と連動できると、これまでとは全然違う層にアピールできるんです。グループ入りしても、方向性は変わらずに好きにいろいろなことをやらせてもらっていますね。

プロレスというのは、サッカーや野球のようなコミッション機関がないんです。その分、世間からすると、怪しい業態に見られることがあります。でも、サイバーエージェントのグループ会社になったことで、昔より信用されるようになりました。

デメリットというか大変なことは、上場企業の勤怠基準に合わせることですかね。今はもちろん、本社にすべて合わせています。
たとえば、プロレスの地方巡業の場合、移動時間も勤務時間にあたるのか。東京から大阪までバス移動すると7時間くらいかかってしまうので、それを全部勤務時間としたら超過してしまうんです。
そうしたところは本社ともやりとりしましたね。結果的に移動中(運転手以外)は勤務時間にはあたらないという結論が出ました。

コロナ禍における新しい取り組み

大久保:コロナ禍で経営する飲食店のオンライン営業や、選手のリモートサイン会など柔軟に対応していますが、これはどういった流れで始めたのでしょうか?

高木:プグラビアアイドルの方が、オンラインバーをやっているのを見たことがきっかけですね。Zoomを使って、オンライン上でファンの方と交流するというものです。これはすごいなと思って、いろいろと調べてすぐに始めました。オンラインサイン会は、うちの東京女子プロレス代表の甲田が詳しかったので任せました。

現在、飲食店事業は「エビスコ酒場」「ドロップキック」「Bar Lounge SWANDIVE」の3店舗を経営していますが、今後はゴーストレストランをいくつか作っていこうと思っています。ゴーストレストランを見据えて、Uber Eatsも始めました。本当はもう少し早く始めたかったんですけどね。

新しい情報を拾ってきては、まずはやってみる。これは良くない部分もあると思いますが、フットワークは軽くないといけないと思っています。ジャンル関係なしにいろいろなところに網を張っていて、ヒントを得るようにしています。そこで見つけたおもしろい業態や面白いビジネスは、すぐに取り入れるようにしているんです。スピード感は大事にしてますね。

大手と戦うために正攻法ではなく、奇襲を仕掛けた

大久保:起業も同じだと思うのですが、「隙間を狙う」ことは大事です。高木さんもその辺りを狙っていたと思うのですが、同業他社からはどのように見られていたのでしょうか。

高木:多分ですが、内心では「面白いことをやっている」と思われていたんじゃないですかね。ただ、メジャーな団体がうちと同じようなことをやるわけにはいかないので、ほぼ接点はなかったです。私たちは、ほかがやらないことをやっていましたから。だって、リングがない場所でプロレスやるなんてありえなかったですからね。正攻法ではなく、メジャー団体がやらない様な奇策を仕掛けるイメージです。

大久保:ほかの団体を見たときに、自分だったらこうするのにと考えることはありますか?

高木:それはありますね。以前、WRESTLE-1の代表になってくれというお話がきました。そのときは赤字だったので、黒字にしてくれと言われたんです。
単純な話ですけど、コストカットして、売上を増やすことをやりました。実際、黒字化には成功したんです。具体的な施策としては、巡業にかかる無駄な経費を省いたこと、外注を減らして自社でおこなうようにしたこと、別の売上を作るためにスクール事業を始めたことです。

大社長 高木三四郎さんから起業家・経営者に向けてメッセージ

 

大久保:スポーツビジネスで食べていきたいと思っている方に向けてメッセージをください。

高木:スポーツの場合、最初の動機はそのスポーツが「好き」という人が圧倒的に多いと思うんです。経営者は別ですけど、プレーヤーでスポーツすれば儲かるからやろうと考える人はいないですよ。

小さい頃からの積み重ねで、プロになってるわけじゃないですか。プロレスも同じなんですよね。
だけど、どんなスポーツでもどこかのタイミングで「向いている・向いていない」ということをしっかりと判断することが必要です。
自分がこのスポーツで本当に食べていけるか。そこを見極めることが大事だと思います。

夢のない話になってしまいますが、無理だと判断したらすぐに違うことやったほうがいいです。
いろいろな業態や仕事にトライしていくうちに、自分に合ったものが見つかると思います。僕はそれが大事だと思っているんです。

僕自身もクラブイベントなどのイベント業をやっていた時期がありますが、その方面だったら多分うまくいかなかったと思うんですよね。プロセスの世界でこれまでに経験してきたエッセンスを取り入れて、ほかとは違うことをやったから、うまくいったんだと思います。

大久保:最後に起業家・経営者に向けてメッセージをお願いします。

高木:日本はあまり積極性がなく、何事もネガティブに捉えてしまう傾向があります。なにか始めたいけど、炎上したらどうしようとか、これをやって失敗したらどうしようと思っている方も多いかもしれません。
だけど、トライアル・アンド・エラーでいろいろやってみることが大事です。やってみてダメだったら、ダメな原因を研究して、次は成功に持っていく。または止めるという判断もあります。

自分で起業をした創業社長と、あとを継いだ社長って違うじゃないですか。起業する人は開拓心がないと絶対できないですよ。だから常にいろいろなところにアンテナを張って、「うまくいかないかも」と思わずに、まずはやってみる。ものすごく投資が必要なものはあまりおすすめしないですが、できる範囲内であればやったほうがいいと思います。

僕自身、飲食業もやったことなかったですからね。手探りで始めました。まずはやってみる! これが大事です。

大久保:今日は貴重なお話をありがとうございました。

創業手帳(冊子版・無料)は、多くの起業家のインタビューを掲載しています。起業経験者による体験談をご覧いただき、ぜひ今後にお役立てください。

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(取材協力: 株式会社CyberFight 代表取締役社長 高木三四郎
(編集: 創業手帳編集部)

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