Radiotalk 井上佳央里|自分のサービスに熱狂することの重要性

創業手帳

配信者とリスナーがグループで盛り上がれる「話すエンタメ」Radiotalk

最近盛り上がっているのが音声コンテンツです。Radiotalkの代表、井上さんはもともとラジオが好きで、配信することのハードルの高さから、なぜもっとシンプルに配信ができるシステムがないのかと考えていたことが起業につながったといいます。

創業手帳代表の大久保が、サービスの内容や起業の経緯、音声コンテンツの魅力などについてお聞きしてきました。

井上佳央里(いのうえ かおり)
Radiotalk代表取締役
1990年生まれ。東京都出身。Radiotalk代表取締役。大学で放送を専攻し、卒業後、エキサイト株式会社へ。2017年8月に社内ベンチャー制度を利用しRadiotalk(β版)をリリース。その後2019年3月にRadiotalk社をXTechグループの子会社として設立し、代表取締役に就任。最近では、2021年2月「ICC スタートアップ・カタパルト」、6月「IVS LAUNCHPAD」の決勝に出場。2021年、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSの選考委員も務める。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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中立的な6割をいかに巻き込むか?


大久保:まずは、起業の経緯を聞かせていただけますか。

井上:わたしが高校生の頃にニコニコ動画やYouTubeがでてきたんです。スタジオなどを使わずに、ネットを通してトークだけで成り立つエンタメコンテンツがあるんだということに気づいたのがその時ですね。もともとラジオも好きだったので、将来はラジオに関係する仕事ができたらと漠然と思っていました。

大学では放送学科に入ってラジオの制作などを学んだのですが、いざ就職活動というときにラジオを産業として見ると、広告収益で成り立っていて、ネット産業に押されてシュリンクから横這いといった状況だったんですね。わたしは産業としてのラジオではなく、トークコンテンツをインターネット上で楽しむというところに魅力を感じていたので、一般の人々がコミュニティを通してつながれる点に魅力を感じ、新卒でエキサイトという会社に就職しました。そこで、レシピの投稿サイトやブログなど、ユーザー投稿型サービスのプロデューサーを担当することになります。

当時、エキサイトには社内ベンチャー制度というものがあり、審査制なんですが誰でも応募して、新規事業を立案することができたんです。ちょうどその頃、AirPodsやスマートスピーカーなどの音のデバイスが出てきて、市場としてもプラットフォームが整ってきたので、ゲームチェンジが起きる可能性を感じ、2017年に自分がもともと目指していた音声という領域でインターネットサービスを立ち上げてみようと、Radiotalkをスタートさせました

大久保:最初はエキサイトの新規事業としてスタートしたわけですね。その後は?

井上:そうですね。しばらくして会社の1事業ではなく、「これを産業としてもっと大きくし、トーカーという存在を世の中に根付かせたい」という気持ちが強くなり、2019年に外部資本を入れてカーブアウトという形で会社を設立しました。

大久保:動機としては、どういう気持ちが強かったのでしょうか。

井上:プロダクトを作った部分で言うと、もともとエキサイト自体が新しいものを生み出す会社だったので、先輩方の背中を見たという部分はあります。わたしが入社した2010年から2012年頃って、ブームもあって年間100本を超えるスマートフォンのアプリを作っていたんですよね。
ユーザー体験を企画してスピーディーに開発していくことが面白いと思っていた背景はありました。

また、一消費者として「なんでこういったサービスがないんだろう?」という思いも強かったですね。2017年の時点では、ポッドキャストをやろうと思ったら、自分でサーバーを立てて実装したRSSを飛ばすという、エンジニアレベルの高度な知識が必要でした。わたしは毎日ポッドキャストやラジオを聞いていて、満員電車の中はこの上ない娯楽の時間だったのに、なぜもっとシンプルに配信ができないのかという思いが起業につながったという感じです。

大久保:起業でもっとも苦労した点はなんでしょうか?

井上:音声の市場自体が新しいので、「本当に音声市場が来るの?」とか「一時的にバズっているだけでは」と斜に構えているタイプの方達が一定数いらっしゃいます。2:6:2とよく言うんですが、世の中の自然なバランスとして、だいたい好意的な方が2割、どちらでもない方が6割、否定的な方が2割という反応です。その中立的な6割をどう巻き込むかには苦労していますね。

大久保:具体的にどう巻き込むかという点については、どのような努力をされていますか。

井上:そうですね。もともとラジオがすごく好きで、「リスナーとして自分が投稿したネタが読まれるとすごく嬉しい」というような体験があるぐらいにはコアなリスナーだったこともあり、自分がRadiotalkというコンテンツに熱狂していること、その炎を絶やさないことは意識しています。そこに巻き込まれていかれた方たちが、最初のメンバーになってくれたという経緯がありますね。プロダクトは自分が一番使うようにしていますし、100人以上のユーザーの顔と名前は一致していると思います。

大久保:実際にオフラインでユーザーの方と会う機会もあるのですか。

井上コロナの前は週に1回会社に来ていただいてました。ユーザーを目で見て、話を聞いてプロダクトに生かしていましたね。マーケティングという硬い雰囲気にするのではなく、例えばお題ガチャで自由にトークしてもらったり、ゲームしてもらったりして、どういうことを楽しいと思うのかというところを見ていました。今でもオンラインで月に一回は配信者の方に会うようにしています。

大久保:コロナでどんな影響がありましたか。

井上:世間的には観光や旅行などが一切ストップしましたけど、2020年の3月〜4月にユーザー数が倍増したんです。配信者側で言うと、一人暮らしでフルリモートになると、1日誰とも話さないという状況が生まれるわけです。そこで「誰かと話すことってこんなに重要だったんだ」ということに気づいた方が多かったということですね。

リモートワークが増えたことで、可処分時間が増え、それに伴ってリスナーも増えましたし、ユーザー課金も増えました。Radiotalkがスタートした当初は、投げ銭のようなシステムって下品というような言われ方もしていたんです。

ただ「クリエイターエコノミー」といってクリエイターに対価を払うのは当然という考え方も浸透してきて、コロナでおうち時間のエンタメが見直されたことが、リスナーのユーザー課金に対する抵抗が減少してきたことにつながるのかなと考えています。

音声コンテンツに加え、チャットやリアクションが大きな魅力


Radiotalkの実際の画面。リスナーは音声と共に、投げ銭と呼ばれるリアクションやチャットなどを楽しむことができる

大久保:具体的に音声のどのような点が映像よりも良いと思われますか?

井上:配信者側としては、やはり映像がないことで、先天的な美醜であるとか、国籍、髪や肌の色で判断されることがないということですね。また、人に見られているというプレッシャーがない状態で話せることも大きいです。匿名性があるから話せる内容もありますし、安心感があるゆえに口がすべるということもあると思います。外見は関係なく、純粋に内面のみで判断してもらえるということですね。

リスナーとしては、配信者が見られていない状態で話をすることで深みが出たり、内容がある話をしっかり楽しめるということでしょうか。Radiotalkのアプリ画面を見ていただくとわかると思うんですが、実際に聞いているのは音声だけですが、聞くだけではなくチャットもできるんですね。チャットがあることで一方通行ではなく交流が生まれますし、例えばこのコロナ禍でひとり暮らしでテレワークの方なども、孤独感を感じずに他の方と交流ができるのではないかと感じています。

大久保:おっしゃる通り、顔が見えないと音声に集中できますよね。RadioTalkって音声だけだけれど、音声だけでなくチャットもあるというところが人と人がつながるという意味で非常にいいなと思いました。

昔、ラジオに出たことがあるんですが、知り合いから聞いてましたよーとけっこう言われて、ラジオの反響ってすごいなと思いました。耳しか必要ではないので、運転しながら、家事をしながらなど、ながら聞きができるのも強みですよね。強制的に浸透するメディアと言いますか。

井上:SpotifyやAmazonなど、音声市場に次々と巨大企業が参入してAmazon EchoやGoogle Nestなどのデバイスを作っているのは、まさにながら聞きができるという点が魅力なのだと思います。私たちRadiotalkは、広がっていく音声市場の中で、特にエンゲージメントが高いユーザーさんと一緒にコンテンツを作っていける空間を提供できたらと思っています。音声だけではなく、チャット機能や投げ銭をすることで画面いっぱいにリスナーのリアクションが広がるので、その点も楽しんでいただければと思います。

大久保:クラブハウスってイメージとしては偉い人が上でしゃべっていて、偉い人とその仲間とリスナーがいるというような構造ですけど、Radiotalkはわりとフラットなのかなという印象を持ちました。

井上:はい、そこはすごく意識したところですね。音声の競合他社は、わりとクラブハウスに近いというか、もともと数字を持っている人を出しているのが現状です。それに対して我々は、ヒカキンさんやはじめしゃちょーさんも、もともとは一般の方だったように「一般人からRadiotalkで有名になる人を出したい」という思いでやっています。もちろん時間はかかると思いますが。

「音声配信といえばあの人だよね」というように世の中の認知をとれるトーカーを生み出したいですね。今は年間売上1000万円を超えた方も出てきています。クリエイターエコノミーという言葉がありますが、大きい目標としてはクリエイターがきちんと生み出したものに対して対価をもらえるそんな産業にしていきたいです。

大久保:テレビなどのメディアをうまく使って存在を発信し、有名になった人は今までもいましたが、Radiotalkでもスターのような人が生まれるといいですよね。最近はテレビ芸人とYouTuberは、収入や地位が逆転したなんていう声もあるみたいですけど。

井上:配信者の中からロールモデルが生まれ、それに憧れて配信を始める人が増えてくれたらいいなと思っています。

大久保:マネタイズはどのようにされているのですか。

井上:基本的には、リスナーの方が投げ銭をする際に手数料が入ります。最近では、配信者が投げ銭機能を使いながらライブコマースをしているような例もあるんです。例えば「投げ銭の”草”を10個以上くれた人にはオリジナルステッカーをあげるよ」というように。運営側としても、できるだけそういった動きに対応して機能拡充していこうとしています。

また、企業と組んで新しい試みも進めていまして、ひとつは企業と配信者を結ぶタイアップですね。

例えばグノシーさんでは、ニュース記事を読みながら音声コンテンツも聞けるんですが、その音声コンテンツを作る人をRadiotalkの配信者さんからオーディション形式で選出しました。

また、ラジオトークでコンテンツを出すというところで付加価値をつけるプロジェクトですと、自治体や鉄道会社と組んでいたりします。Radiotalkはスマホアプリなので、位置情報を取得できるんです。

例えば、関西の南海電鉄を使った旅のしおりを作り、しおりに従って地図上のあるポイントに行くと、NMB48さんが話しているRadiotalkのコンテンツを聞くことができるというプロジェクトも実施しました。誰でも聞けるわけではなく、位置情報にたどりついた人しか聞けないのと、NMB48さんのおしゃべりが散歩の副音声になっているので、ファンに好評でした。コロナ禍で、なかなか集団で移動が難しいところ、これならひとりでも移動していて楽しいですし。

大久保:例えばどうやったらグーグルで上位にくるのかという疑問に対してSEOという施策がありますが、どうすればRadiotalkの中で成功できるんでしょうか?

井上:大きく3つの工夫が挙げられると考えています。まず1つ目は、Radiotalkで配信したトークはポッドキャストやスポティファイ、Amazonミュージックなどにも流すことができるんです。そこで流入を増やし、存在に気づいてもらうということですね。スポティファイでランキング1位になった人もいます。Radiotalkの特徴として、囲い込みはしていないので、どんどん他社も使ってくださいという姿勢でやっています。

また次に挙げられるのはタイトルです。今までのウェブメディアの記事では、「どういう情報を吸収できるか」が重要だったんですが、音声は必ずしも情報収集のために聞くわけではないんですよね。「話している人が好きになる」「笑っちゃう」「聞いていると明るくなる」というエンタメ的なところだったりします。見て聞きたくなるような、キャッチーなタイトルが重要です。テレビ番組のタイトルと似ているかもしれませんね。

3番目に挙げられるのはアイコンの画像です。少なくとも不快感を与えないような画像は当たり前ですが、おすすめなのはなるべく人間の顔で、動物やキャラクターでもいいんですが、目や口があって、生き物がしゃべっているということが伝わるようにすることが大事ですね。

「作りたい未来がどんなものか」をブレずに持ち続けよう

大久保:やりがいを感じるときはどんな時でしょうか?

井上:やはり、ユーザーの人生を変えてしまったときでしょうか。リスナーが配信者から背中を押されることで人生を変えることもありますし、「Radiotalkで食べていく」と言って、仕事や学校を辞めていかれる配信者もいらっしゃいます。

ただ「お金が入ったから辞めまーす」ではなく、「ここまで来たら、自分にリスクを負って本気出します」ということなので、ロールモデルになるべき存在が本気を出しているというのは「自分も頑張って、事業を大きくしなきゃな」と気が引き締まりますね。

大久保:難しいと感じているところはありますか。

井上:わたしはもともと「社長になろう」という気持ちは全然なかったんです。「いいプロダクトを作って大きくするためにはどうすればいいのか」という逆算で代表になったので、経営経験があったわけでもないですし。それまで得意だったプロダクト開発から、自分がやるべき主軸は経営や全体を見ることに移ったわけです。

明らかに自分が得意ではないものも、いったんはやらなくてはいけないというのが難しいと感じるところといえばそうかもしれません。最近は人にまかせることができるようになったので、乗り越えつつある部分ですが。

大久保:ほかとの差別化という点ではどんなふうに考えてらっしゃいますか。

井上:他社のサービスがどちらかと言えば聞く専門であるのに比べ、Radiotalkではリスナーが配信者と対等になれ、コンテンツに参加することができる、グループで盛り上がることができるということが大きな違いかなと考えています。例えば、配信者がトークバトルのような企画をすると盛り上がりやすいです。「どっち派?」といった2択の選択肢で配信者たちが話し合い、リスナーは投票やコメントすることはもちろん、配信者に呼ばれて上に上がり、一緒にしゃべることもできます。

大久保:今後の展望は。

井上配信者にとって、話すことがちゃんと稼げることなんだというエンタメにしていくことが大きな目標です。

ラジオ産業だと、パーソナリティってそんなに儲からない仕組みになっているんですね。スポンサーをつけなければいけないし、スポンサーをつけたところで電波料や人件費、事務所や代理店手数料など様々な費用がかかります。そこからゲームチェンジを起こそうと思って立ち上げたRadiotalkですので、今は投げ銭をそのための仕組みとしていますが、今後は話す人が一番稼げる仕組みをほかにも作っていきたいです。

大久保:最後に、読者へのメッセージをお願いします。

井上:これまでの学びとして、実現したい未来のためなら、多少のこだわりを変えてみてもいいということです。もともとプロダクトを作るのが好きで、資金調達の方法なんてひとつもわからない状態だったんですが、プロダクト作りだけにこだわっていたら今のRadiotalkはなかったですし、自分のこだわりやエゴのようなところは微細な問題だな、と今なら思います。自分を変えて一歩踏み出してみてよかったと感じますね。

プロダクトで言うと、Radiotalkって初期の頃は収録しかなかったんです。ライブをしてしまうと承認欲求が多くなるかな、という心配があって収録にこだわっていたんですが、そのこだわりを捨ててライブをやってみたら、トークバトルなどの非常に盛り上がるコンテンツが出てきたんです。作りたい未来がどんなものなのか、というところがブレなければ、変なこだわりは捨ててみるのもひとつの手段だと感じましたね。

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(取材協力: RadioTalk代表取締役 井上佳央里
(編集: 創業手帳編集部)

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