創業支援貸付利率特例制度で利率軽減!創業時に使える融資や申し込みの流れも解説

資金調達手帳

創業支援貸付利率特例制度の活用で融資の金利負担を軽減させよう


日本政策金融公庫では、創業時でも運転資金や設備資金を調達できる融資制度を用意しています。
利用する融資制度によっては、創業支援貸付利率特例制度を併用できます。創業支援貸付利率特例制度は、簡単にいえば融資の金利負担を軽減できる制度です。

そこで今回は、日本政策金融公庫の創業支援貸付利率特例制度について詳しく解説します。日本政策金融公庫で融資を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

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日本政策金融公庫の創業支援貸付利率特例制度とは?


創業支援貸付利率特例制度は、日本政策金融公庫が提供する各融資制度で定められた利率を軽減できる制度です。
創業支援貸付利率特例制度の概要は以下のとおりです。(2023年7月時点)

対象者 創業前の方、または創業後税務申告を2期終えてない方
融資限度額 各融資制度が定める上限
返済期間 各融資制度が定める期間以内
年利 各融資制度の利率-0.65%
雇用拡大を図る場合は、各融資制度の利率-0.9%

金利によって、実際の総返済額は大きく変わってきます。
金利が高いほど返済の負担は大きくなるため、少しでも金利を下げられることは創業時の起業家や個人事業主にとって大きなメリットです。

創業・開業時に使える日本政策金融公庫の融資制度例


創業支援貸付利率特例制度は、各融資制度の金利を軽減するための処置であるため、単独ではなく、ほかの融資制度と併用する必要があります。
ただし、すべての融資制度と併用できるわけではないため、支店に確認した上で申し込んでください。

この章では、創業・開業時に利用でき、さらに創業支援貸付利率特例制度と併用させられる融資制度の例をご紹介します。

新規開業資金

新規開業資金は、事業を始める人や事業を始めて間もない人に向けて実施されている融資制度です。

利用できる人・資金の使い道

新規開業資金を利用できる人は以下のとおりです。

  • 新規で事業を始める方
  • 事業を始めておおむね7年以内の方

なお、後者は新規で営む事業の事業計画を策定し、計画を遂行できる能力があることも条件です。
審査時に事業計画の内容をチェックされるので、創業計画書を提出する必要があります。

資金の使い道は、新規事業を始めるため、もしくは事業を始めて必要となる設備資金・運転資金に限られています。

融資限度額

融資できる上限額は7,200万円までですが、そのうち運転資金として利用できる上限額は4,800万円までです。
運転資金を上限額まで使う場合、設備資金に充てられる上限額は2,400万円までです。
運転資金は上限額以上で使用することはできないので、設備資金に充てる資金が多くなれば、運転資金で使える分は少なくなります。

ただし、実際に融資される金額は人によって異なり、上限額まで借りられるとは限りません。なお、無担保で借りる場合は、300万~700万円での融資が一般的です。

返済期間

返済期間は、資金の使い道によって最長期間が変わってきます。

  • 運転資金:7年以内(据置期間は最長2年以内)
  • 設備資金:20年以内(据置期間は最長2年以内)

あくまでも最長期間であるため、任意で返済期間を短くすることが可能です。
返済期間を短くすると毎月の返済額が大きくなりますが、総返済額を抑えられるメリットがあります。

年利

利率(年)は基準利率が適用されます。基準金利は、担保の有無や融資期間といった条件によって変動するので注意してください。

対象要件 基準利率(年利)
1.担保を不要とする融資を利用する場合(税務申告を2期終えている方) 1.92~2.80%
2.新創業融資制度を利用する場合(税務申告を2期終えていない方) 2.22~3.10%
3.担保提供で融資を利用する場合 0.97~2.45%

※2023年7月3日時点

また、一定の要件に当てはまる場合は特別利率A~Dが適用され、基準利率と同じく条件によって年利は変動します。
日本政策金融公庫の利率は複雑であるため、制度の概要をしっかりと確認してください。
定期的に変動しているので、融資制度の概要や金利情報はこまめにチェックすることをおすすめします。

担保・保証人

融資金額次第では、担保の提供や保証人を求められることがあります。
新規開業資金では、新創業融資制度や担保を不要とする融資制度などを併用し、無担保・無保証人で融資を受けることも可能です。
併用できる制度にも要件があるので、支店に併用可能か相談してみてください。

女性、若者/シニア起業家支援資金(新規開業資金)

女性や若者、シニアの創業家はより有利な条件で、新規開業資金を利用することが可能です。

利用できる人・資金の使い道

女性、若者/シニア起業家支援資金が利用できるのは、新規で事業を始める人、または事業を開始しておおむね7年以内で、以下いずれかの条件に当てはまる方です。

  • 女性(年齢制限なし)
  • 35歳未満の男性
  • 55歳以上の男性

女性に年齢制限はありませんが、35歳以上55歳以下の男性は通常の新規開業融資における条件が適用されます。

女性、若者/シニア起業家支援資金は新規開業資金の一種であるため、資金の使い道は新規で事業を始めるため、もしくは事業を開始してから必要となる設備資金・運転資金に限られます。

融資限度額

融資限度額は7,200万円まで、そのうち運転資金として使える上限は4,800万円までです。
この上限は通常の新規開業資金と同様で、上限以上の金額を運用資金に充てることはできません。また、実際の融資金額は申込み状況によって変わります。

返済期間

女性、若者/シニア起業家支援資金でも最長返済期間が設けられており、自分に合った返済期間を設定できます。資金の用途ごとの最長返済期間は以下のとおりです。

  • 運転資金:最長7年以内(据置期間は2年以内)
  • 設備資金:最長20年以内(据置期間は2年以内)

年利

女性、若者/シニア起業家支援資金の場合、特別利率が適用されます。
特別利率は基準利率よりも少し低いため、この支援資金は通常の新規開業資金よりもお得に利用できます。
ただし、土地にかかる資金に対しては基準金利が適用されるので注意してください。

適用される特別利率はAが基本で、年利は以下のとおりです。

対象要件 年利
1.担保を不要とする融資を利用する場合(税務申告を2期終えている方) 1.52~2.40%
2.新創業融資制度を利用する場合(税務申告を2期終えていない方) 1.82~2.70%
3.担保提供で融資を利用する場合 0.57~2.05%

※2023年7月3日時点

技術やノウハウに新規性が見られる、デジタル田園都市国家構想交付金を活用するなど、一定の要件に当てはまる場合はA以外の特別利率が適用されます。
その場合、金利面はより有利になるので、制度の概要や金利情報を確認して申し込んでください。

担保・保証人

融資額が高額になる場合、担保の提供や連帯保証人が必要になる場合があるので、支店と相談してください。
一般的に1,500万円以上の融資となると、担保や保証人が必要になるとされています。

女性、若者/シニア起業家支援資金でも、無担保・無保証人で融資を受けられる新創業融資制度や担保を不要とする融資制度を併用可能です。

生活衛生新企業育成資金

生活衛生関係の事業を創業する場合、生活衛生新企業育成資金という特例貸付を利用可能です。

利用できる人・資金の使い道

生活衛生新企業育成資金を利用できるのは、生活衛生関係の事業を新しく始める人、または事業を始めておおむね7年以内の人です。
生活衛生関係の事業とは、衛生法に定められる以下18種類の営業が該当します。

サービス業 販売業 飲食業
・理容店
・美容店
・興行場(映画館)
・クリーニング店
・公衆浴場(銭湯)
・ホテルや旅館
・簡易宿泊所
・下宿営業
・食肉販売店
・食鳥肉販売店
・氷雪販売業(氷屋)
・すし店
・めん類店(そば・うどん店)
・中華料理店
・社交業(スナックやバーなど)
・料理店(料亭など)
・喫茶店
・そのほかの飲食店(食堂やレストランなど)

資金の使い道は、厚生労働大臣の認可で設立されている振興計画認定組合に加入しているかどうかで、変わってきます。
振興計画認定組合の組合員であれば、運転資金と設備資金の両方に充てることが可能です。しかし、未加入の場合は設備資金のみに限られます。

融資限度額

融資限度額も振興計画認定組合に加入しているかどうかで変わってきます。

振興計画認定組合の組合員 設備資金:1億5,000万円~7億2,000万円まで
運転資金:5,700万円まで
未加入の場合 設備資金:7,200万円~4億8,000万円まで

振興計画認定組合に加入している場合、通常よりも上限額が高く設定されています。
ただし、実際に借りられる金額は業種や融資状況に応じて異なるため、上限まで確実に借りられるわけではない点に注意してください。

返済期間

資金の用途に応じて最長の返済期間は異なります。運転資金は最長7年以内、設備資金は最長20年以内です。
設備資金は、振興計画認定組合の加入状況に関係なく同じ期間に設定されています。なお、設備資金も運転資金も最長2年以内の据置期間が設けられています。

年利

生活衛生新企業育成資金では、基本的に基準利率が適用されます。
ただし、一定の要件に該当する場合は特別利率A~D、創業後目標達成金利が適用され、少し低い金利で利用することが可能です。
なお、利率は資金の使い道や返済期間、担保提供の有無といった条件によって変わってきます。

担保・保証人

ほかの融資制度と同じく融資金額に応じて、担保の提供や連帯保証人を求められます。
生活衛生新企業育成資金でも、新創業融資制度や担保を不要とする融資制度などを併用することが可能です。

創業支援貸付利率特例制度を利用する流れ


創業支援貸付利率特例制度は、利用した融資制度と共に日本政策金融公庫に申し込むことになります。ここで、申込みの流れや申請に必要な書類をご紹介します。

支店に相談

まずは、日本政策金融公庫の支店窓口や「Microsoft Teams」を使ってオンラインから融資について相談してください。
窓口やオンラインから相談する場合、事前に相談予約が必要です。事業資金相談ダイヤルでも、融資制度や手続きに関する問い合わせに対応しています。

ほかにも、商工会議所・商工会・生活衛生同業組合・都道府県の生活衛生営業指導センターなども相談先となっています。

必要書類を用意して申込み

相談後に申込みとなりますが、必要書類の提出が求められます。申請に必要な書類と借入申込書に記入する内容を確認して、準備を進めてください。

創業時の融資で必要な書類

初めて申し込む方が必要な書類は、以下のとおりです。

  • 借入申請書(国民生活事業用)※郵送の場合のみ提出が必要
  • 創業計画書
  • 企業概要書
  • 身分証明書(運転免許証(両面)かパスポートの写し)
  • 登記簿謄本、もしくは履歴事項全部証明書(法人のみ)
  • 許認可証(飲食店など一部業種)

まだ創業前である場合、実績がないため実現可能な事業計画なのか審査でチェックされます。
特に資金計画や収支予想・売上げ、原価や経費が判断材料となるので、実現性の高い創業計画書を作成することがポイントです。

支店に提出する借入申込書の記入内容

借入申込書は、日本政策金融公庫の支店窓口で入手するか、公式サイトのホームページからダウンロードして印刷して用意してください。主な記入内容は以下のとおりです。

  • 申請者の氏名、住所、連絡先(電話・メールアドレス)
  • 借入れの希望金額・返済期間・毎月の希望返済日
  • 資金の使用用途
  • 返済用の銀行口座の情報
  • 創業の年月日、業種
  • 申請者か法人代表者の家族の氏名、年齢、職業

支店に行けない時はインターネットからも申込み可能

支店窓口に借入申込書と必要書類を提出することで、申込みは完了です。忙しくて支店に訪問できない場合は、インターネットから申し込むこともできます。
24時間いつでも申請可能で、営業時間外や休業日も手続きができます。
手続きの際に書類をアップロードする工程があるので、必要書類はデジタルデータで用意してください。

日本政策金融公庫の担当者と面談

融資審査の前に、申込み内容や事業計画の内容を確認するための面談が実施されます。面談日は調整してもらえるので、都合の良い日時を伝えてください。

面談の際に、事業を始める動機や事業内容、営業状況の計画など創業計画書に基づいた質問が行われます。
そのため、計画書の内容を言葉で説明できるように準備することが大切です。

審査後に融資の決定・銀行口座に送金

審査後、担当者から融資実施の可否を知らせる連絡があります。
融資実施となれば、借用証書といった契約に必要な書類が同封された融資通知が届くので、必要事項を記入し、不備がないか確認した上で返送してください。

契約手続きがすべて終了すると、指定した銀行口座の資金が送金されます。一般的には、日本政策金融公庫に借用証書が届いてから3営業以内に振り込まれます。
なお、申込みから着金まで1カ月程度が目安です。

返済の開始

日本政策金融公庫の融資は、原則月賦払いです。
元金均等返済・元利均等返済・ステップ返済など複数の返済方法があり、自分に合った方法を選べます。
日本政策金融公庫の融資制度では、据置期間を設定できます。据置期間とは、金利だけ払えば良い期間のことです。
創業時の場合、融資を受けた翌月から元本と金利の両方を返済するとなると、大きな負担になってしまいます。

しかし、据置期間を設定することで、一定期間は返済の負担を軽減できます。
創業支援貸付利率特例制度を利用していれば、通常よりも金利が下がっているため、より返済の負担は軽減されるでしょう。
据置期間の最長期間は、融資制度によって異なります。自動的に適用される措置ではないため、申込書に希望の据置期間を記入しなければなりません。
実際に適用される期間は、審査結果をもとに決められます。

まとめ

日本政策金融公庫では様々な融資制度を用意しているので、自分の状況に合わせて選択できます。
一部の創業融資では創業支援貸付利率特例制度を併用でき、金利の負担を軽減できます。
金利はわずかな数値でも総返済額に大きな影響を与えるので、創業支援貸付利率特例制度を活用して賢く資金調達をしてみてください。


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(編集:創業手帳編集部)

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