話題沸騰中【SlushTokyo】代表アンティ氏が語る「成功する起業家の必要条件」(後編)

創業手帳
※このインタビュー内容は2017年04月に行われた取材時点のものです。

「次の大企業を作らないといけない」という発想をもっとみんなに持ってほしい

(2015/01/01更新)

ロックコンサートのようなダイナミックな演出が特徴の、フィンランド発・国際的なスタートアップ・カンファレンス『Slush』。2017年3月29日~3月30日に開催された『SlushTokyo』など、今や日本でもスタートアップ界で知らないものはないイベントになっています。

その仕掛人、アンティ・ソンニネン氏は、約30の協力企業と200人を超えるボランティアを統括し、「アンティさん」とSlushのメンバーから慕われています。

前編はこちら>>話題沸騰中【SlushTokyo】代表アンティ氏が語る「成功する起業家の必要条件」(前編)

後編では、スタンフォード大や東大でも学び、日本でビジネスをしてきたアンティさんが、世界・フィンランド・日本の経験を元に、成功する起業家の条件を語ってくれました。

アンティ・ソンニネン
フィンランド出身。2007年に東京大学への留学生として初来日。米スタンフォード大学でのインストラクター従事を経て、2012年から、「アングリ―バード」を世に出したRovio Entertainmentの日本担当カントリーマネジャーを務める。2015年よりSlush AsiaのCEOを務める。

フィンランドの相互扶助の考え方「タルコ」を広めたい

-ご出身のフィンランドと比べると日本の状況はいかがですか?

アンティ:真逆といえるでしょう。
フィンランドは投資家があまりいないからこそ、Slushが生まれました。

フィンランドでは、みんなが抱えている問題をみんなで解決する行動を「タルコ」と表現します。それはみんなが一緒になって、報酬を期待せずにみんなで頑張ろうというものです。

Slushも同じような感じで、いろいろな起業家が「じゃあ俺はこの投資家を呼ぶから」と助け合ううちに生まれたイベントです。

-フィンランドには「タルコ」という考え方があるのですね。例えばどんな風に使いますか?

アンティ:例えば自分が引っ越しするとき、友達との間で「タルコで引っ越しをすませよう」ということがあります。

住民が集まって、みんなで家具をトラックに運びます。友だちに報酬を払う必要がないことは、みんな分かっています。お金はもらえないけど、タルコを主催する人はご飯を用意します。みんなで楽しく引っ越しして、終わったらみんなで楽しくピザとビールを楽しむというものです。

-Slushの次は日本でタルコの精神を育成するのでしょうか?

アンティ:実はすでにやっているんですよ。
Slush Asia開催の2~3週間前にタルコを開催しました。今回は木材のパレットを使ってイスなどを作ったりしました。

タルコは、Slushの考え方とも繋がってきます。起業家同士が助け合ってスタートアップをはじめようという精神や、実際にタルコを通して様々なコミュニティーを作っていくというところに意義があると思います。

ファンドよりも「起業OK!」の空気作りを

-先ほど、日本とフィンランドの状況の比較を伺いました。フィンランドでは投資家があまりいないということでしたが、日本の方が起業家にとって良い環境なのでしょうか。

アンティ:長所と短所のどちらもあるのですが、日本は一回起業家になってその事業を極めたら、競争率はそれほど高くないと感じています。そもそも起業家になりたい人が少ないのです。毎回、資金調達のニュースがあったら「またあの人だね」という感じですよね。

みんな資金が足りないと言っていますが、お金より先に改善しないといけないことがあります。それは、新しくファンドを作ることより「起業家というキャリアでもOK」という空気をつくることでしょう。

-日本は、起業するには良い環境ですが、まだ「起業すること」に対する周囲の理解が足りない。

アンティ:そうです。
特に、「起業してもいいけれども、失敗しちゃダメ」というような雰囲気を感じますね。それは以前のフィンランドでもまさに同じでした。

投資家のウィリアムサイトという人がいます。彼は失敗した起業家にしか投資しないという人なんですが、彼は「日本の投資家は、”失敗した人には”絶対に投資しない」と言っています。

真偽のほどはわかりませんが、外からそう見えていることは日本人に理解してほしいと思います。

「安定」を求める日本の風潮に危機感を持って欲しい

-日本でのスタートアップの状況について、思うところはありますか?

アンティ:大きな夢を掲げてほしいですね。
台湾やシンガポールなどの人はもっとグローバルで野心的です。「いろいろな国で成功したい」というスタートアップが多く居ます。

「日本人は英語ができない」と思いこんでいる人も多いですが、実際褒めるとすごく伸びる人もいる。僕らが良いロールモデルを作って「ほら、この人もできたでしょ。あなたもできない理由はないよね。」と思ってもらえるように、後押しをしたいです。

日本において、なぜスタートアップが少ないかというと、大企業勤めがベストだと思っている人が多いからでしょう。家族がそれでは「起業リスキーだし、やめよう」となるはずです。

-日本では、学生起業家も少ないように感じますね。

アンティ:そうですね。
起業したい若者に対して「君は若すぎるでしょ」「まず大企業に入って、そこで数年経験を積んでから起業したらいい」と周囲がアドバイスすることも多い。
けれども、大企業で4年間働いた人は、もうその時点で起業しようという覇気がなくなっている場合もあります。

大企業も今や「永遠不滅の存在」ではありません。誰かが次の成長企業、大企業を作らないといけないという発想をもっとみんなに持ってほしいですね。

成功する起業家の必要条件

-うまくいく起業家の必要条件とは何でしょうか。

アンティ諦めないことです。
それから世の中の動きをきちんと見て、社会が必要としているものをちゃんと作っているかどうか、というのも大事です。

-注目している起業家はいますか?

アンティ:たくさんいますが、あえて一人だけ言うと、2~3年前に自分が憧れていたのは、Slushアジアのパートナー企業にもなっているスーパーセルの社長イルッカ・パーナネンという人です。

彼はよくメディアに向けて「世界で一番弱い社長になりたい」と言っていました。プロだけを雇って現場をそのプロに丸ごと任せるということを言っています。多くの社長たちは「自分で全部やりたい」と言うのですが、この人のスタンスはユニークで面白いなと思いました。

日本でいえば、孫正義さんですね。日本人は周りの目を気にしすぎて空気を読みすぎてしまうのですが、Slush Asiaに出ていた厚切りジェイソンは「空気を読むな、自分で考えろ」と言っていました。孫正義さんにはそんな日本人離れした思考の大きさを感じますね。

(取材協力:Slush Asia CEO アンティ・ソンニネン)
(編集:創業手帳編集部)



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