大手コンビニの商品開発の専門家が教える!起業家のための商品開発のコツ

創業手帳

創業手帳代表の大久保が、中山香織氏に商品開発の秘訣を聞きました

(2019/10/02更新)

「商品が売れるかどうか」

プロダクトを作る事業を展開する起業家が必ず直面する課題です。営業や販促、広告などでPRする戦略を立てる前に、「そもそもちゃんと売れる商品を作れているか」が重要なのは、言うまでもありません。特に起業の段階では、場合によっては商品の方向性が定まっておらず、テストしながら改良やピボット(方向転換)していく必要も出てくるでしょう。

商品開発の圧倒的なノウハウを持っている企業と言えば、コンビニ大手が浮かびます。コンビニは、オリジナルのアイテム数が多く、各社熾烈な商品開発競争を繰り広げています。そんなコンビニ業界では、どんな考えで数々の売れる商品を生み出しているのでしょうか。創業手帳代表の大久保が、某大手コンビニチェーンで商品開発に携わってきた中山香織氏に、起業家に向けた商品開発のコツを聞きました。

中山 香織(なかやま かおり)
大手コンビニエンスストア本部に入社し、現場で5年間店長や事務を経て、その後商品開発の部署に配属。マーチャンダイザーとして食品や日用品を担当。マーチャンダイザーを10年勤めた後退社し、現在はコンサルタントとして、商品開発の業務に携わる。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役

大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき、会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。無料創業相談も受付中。

創業手帳紙面(無料)では、ビジネス各界の第一線で活躍する方々へのインタビューを多数掲載しています。併せて参考にしてみてください。

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ひらめきよりも、論理的に說明できるかどうかが大事

大久保:自分が講師を担当した明治大学のMBAの授業で、中山さんにも登壇いただきました。起業の段階は、立ち上げの推進も大事ですが、そもそも商品を作る段階でもあります。

中山さんがコンビニの一線で商品開発をされていたと聞き、起業家のために商品開発のノウハウを提供していただきたいと思っていました。よろしくおねがいします。

中山:よろしくおねがいします。

大久保:最初に、ご経歴を教えていただけますか

中山:大手コンビニエンスストア本部に入社し、最初の5年間は現場で店長業務や事務に携わりました。

その後商品開発の部署に配属になり、1年のアシスタント業務を経て、マーチャンダイザーとして食品や日用品の開発を担当しました。マーチャンダイザーを10年勤めた後退社し、現在はコンサルタントとして、商品開発の業務に関わっています。

大久保:コンビニ大手では、どのような流れで商品の開発を行っていたのでしょうか

中山商品開発は会社の政策そのものなので、まず会社の政策を理解します。その上で自分が担当するカテゴリーで会社政策を具現化していくのか、年間の計画を立てます。そして、コンビニは毎週のように新規商品を発売するので、週ごとの実績データを確認し、実際どの時期にどのような商品が必要かということを考え、お取引様と打ち合わせをして商品を完成させていきます。

大久保:商品開発の現場の様子について教えて下さい

中山:社長も入る役員試食の際は、緊張が溢れていましたね。社長が直々に試食されて、ズバズバ指摘がある。データも頭の中に入っていて手強かったです。気に入った良いものでも「いいんじゃないか」というのが最大の褒め言葉でした。鋭い指摘で鍛えられましたね。

例えば、自分は女性ですが、ひげそりの開発をしたことがあります。顧客の男性が重視する要素、たとえばジェルのたれにくさ、といったポイントについてアンケートを取り、ベンチマークを置いて商品を作っていました。

商品コンセプトは「誰に対して何を提供するか」を明確にし、「自分たちの商品はどこに達しているか」を考えるというプロセスで商品開発に活かしていました。例えばお菓子のフィナンシェの場合、キーとなる素材はバターですが、バターが溶ける温度の時間軸を全て表に表して、どれがベストなのかといった細かな改善もしていきました。

ひらめきよりも、論理的に説明することをポイントに商品開発を行っていました。そのためには、「価値を感じるポイントの整理と精査」が大事だと思いました。この開発プロセスを辿ると、PRの際に「誰にこういうメッセージを届けたい」というポイントを考えるときにも役立ちます。

商品開発プロの視点

誰にどういう価値を届けるのかを明確にしよう

商品を手に取るお客様をいかに鮮やかにイメージできるかどうか

大久保:商品開発のためにはどんな能力・資質 が大事だと思いますか

中山:作っているモノに対してのこだわりだけでなく、「お客様が最終的にその商品を通じてどう思うのか」という視点を持つ必要があります。商品コンセプトを作る上で一番大事な要素ですね。

食品を例にとると、価値やイメージは味と品質以外にも、商品の分量、売り方、色、ロゴの書体、受け手が女性か男性かなどによって違ってきます。なので「身近なところで誰が喜ぶのかを鮮やかにイメージする」ことが必要になってきます。

例えば子供が喜んでいる姿がカチッと想像できる商品のほうがお客様にしっかり届きます。
ぼやっとした誰かではなく、具体的な誰を喜ばせるのか考えましょう。ここがちゃんとできているかいないかで、商品も売れ行きも変わってきます。

あとは、「自分はおじさんだけれど、開発する商品は若者層を狙ったもの」といった形で、開発者自身がターゲットと異なるパターンも出てきます。この場合、開発者が自分の色をだすことよりも、「いかに若者(購入者)にとって価値があるのか」を考える必要があります。優秀な商品開発の担当者ほど、この視点が優れていて、徹底しています。

ほかにも、製品開発に関わる優秀なデザイナーはヒアリング力が飛び抜けていると感じました。「会社がどれであればGOを出せるか」というラインの見極めがすごい。現場の声を会社にしっかり伝えてくれることもあります。

商品開発プロの視点

特定の1人の顧客を鮮やかにイメージしよう

大久保:データの分析やアンケート・ヒアリングのコツを教えて下さい

中山:データの分析で言うと、販売数の降順、つまり多い順に並べてみましょう。JANコードや、五十音順といったあまり本質的でない並べ方をするのではなく、売れている順に並べる。それだけでも気付きがぐっと増えます。他にも、エリア別、分野別といった切り口で多い順に並べるのも効果的で価値あるデータになります。

アンケートやヒアリングでは、その商品をものすごく好きな一人の意見が大事だと思います。手書きのアンケート回答をくれた方には直接意見を聞きに行ったりしていました。

一方で、お客様の言うとおりに意見を取り入れるだけでは、良いものはできません。お客様の要望を踏まえて、その斜め上をいく答えが出せるかどうかですね。ここから先はセンスの話にもなってきますが、お客様の要望のその先に気づくために、開発のプロは知恵を絞っています。AIが出した統計以上の何を読み取るかですね。商品開発の領域は、AIである程度効率化できても、最後の「人の要素」は残ると思います。

商品開発プロの視点

データは漫然と見るのではなく、まず多い順に並べると気づきがある
お客様の要望の先を読む力

売上の8割を生む「定番商品」を作る

大久保:ご自身も起業されていますよね。なぜ起業したんですか?

中山:社内外で商品開発に悩む人の姿をたくさん見てきました。商品開発をやりたい人は多いのに、実際担当すると新しいニーズを捉えるのはなかなか難しく、数値責任も大きいので悩んでしまう方が多いのです。もっとダイナミックにマーチャンダイジングに関われないかと思い、コンサルタントの道を選びました。

大久保:起業直後や、中小規模での商品開発はどういう点に留意したら良いと考えますか?

中山大事なのは「商品コンセプト」だと思います。「どんな原材料を使っている」とか「いくらで売る」ということではなく、「誰にどんな価値を提供する商品なのか」ということです。

例えばプリンだったら、「小腹満たし」のために食べる商品なのか、「食後のデザート」なのかといった視点で考えると、全く違う商品になります。小腹満たしであれば食べた時の満足感が必要でしょうし、食後のデザートであれば量は多くなくて良いといった違いが出てきます。

そこから、その商品とお客様が出会う場所を考え、どういった商品名をつけるのか、いくらにするのかということを決めていきます。商品コンセプトが決まっていれば、販促手段も明確になります。商品について外部に伝えるときも、商品の狙いを確実に伝えやすくなるのです。

大久保:ヒット商品に共通する作り方のコツや法則はあるのでしょうか

中山自分がお客様になって売り場に行った時に「買いたい」と思えるかが勝負です。自分の周りの一番厳しい人に聞いてもいいかもしれません。

私がお取引先と会議をする時にやっていたのは「最近、売り場で感動した商品を発表する」ということです。自分が開発している商品やコンビニに並んでいる商品に関わらず、お客様目線で感動してつい買ってしまった商品を毎週発表してもらいました。ある人は「コンビニに鳥の餌が売っていた」(本当かどうかはわかりませんが)、「カロリーの低いものを探していたら、おでんのパックが最強だった」など、とても面白い発見がありました。

カロリーを気にかける人がいるのであれば、カロリー表示を商品の後ろではなく、前に印字するよう変更したことがありました。お客様として「何に商品価値を感じているのか」を知ることは、自身が商品開発する上でとても役に立ちました。先に説明した商品コンセプトが間違っていないか、妄想ではないか確かめる方法にもなります。

大久保:スター的な商品や、息の長い定番、テスト中など、商品の価値も売れ行きによって色々なものがありますよね。商品全体として、どういう構成や比率になっていると良いのでしょうか

中山:コンビニもそうですが、その業界で長く続く専門店は「定番商品」の売上比率が高く、製造、販売においても利益の源泉になっている場合が多いです。この店ならこの商品!とお客様に認識してもらえる商品があると、リピーターが増え、トップブランドになります。

例えばamazonなど、「なんでも売っていること」を価値としている企業では、ロングテール商品(売れ筋ではない、ニッチな商品)も重要になりますが、実際商品開発をするメーカーや実店舗であれば「定番商品」が肝です。起業家は定番商品を作ると良いと思います。

一時業績が悪かった銀座の老舗が、「看板商品の磨き直し」をしたことで復活した話があります。量より質でこだわって、小さくして質を徹底的に上げ、店頭で食べてくださいと、試食してもらいました。お客様に感動を提供し、看板商品の復活に影響される形で業績が回復したのです。

定番が売れると効率も上がる、単価が下がる、業績が上がるという良いサイクルになります。
パレートの法則(2:8の法則=2割の成果が全体の利益の8割を占める法則)は、どの商品でも当てはまります。利益を牽引する看板商品をいかに作れるかが、起業では特に大事です。

あと、面白いのが、有名な老舗の看板商品は実は、気づかない程度に、わずかに味を少しづつ変えているところが多いです。美味しいものほどあきる、なぜかという食べる頻度が高いからです。

人はなれてくると、味が落ちているように感じてしまう。だから、味を少しずつ気づかない程度に変えていきます。そうやって看板商品の実質的な価値を維持しています。

商品開発プロの視点

大きな利益を生む看板商品をいかに作るかを考える

商品コンセプトと事業コンセプトは似ている

大久保:今まで見てきて、どういう作り方や経緯のものが売れるという傾向はありますか?

中山:食品に長く関わってきたのですが、商品名や商品の顔(見た目)から味が想像できるものが売れていました。現代の消費者の傾向を鑑みると、なんでも手に入るが故に「失敗したくない」という心理が働くのでしょう。あと食感を伝えるものもキャッチーですね。

少し価格の高い商品は「ストーリーがある商品」が支持されています。どこでどのように育てられた作物で、どういう製法で作られたのか。インターネットの普及で販売の手法も変わってきました。こうしたストーリーのあるブランドづくりや商品のこだわりを伝えられるのはいいことだと思います。

大久保:商品開発で陥りがちな失敗ってなんでしょう

中山お客様を置き去りにしてしまうことです。どうしても商品自体に惚れ込んでしまうことってあるんですよね。冷静になってお客様がその商品を手にとってカゴに入れてもらえるのか、よく考える必要があります。例えばホームページ制作を外注して、かっこいいホームページ作って満足したが、商品とお客様が繋がらない場合など。案外、身近でよくある例です。

大久保:商品を出してから、さらに広げる戦略を打つタイミングのコツはありますか

中山:最近は狭いエリアで販売しても、SNSなどでコメントが盛り上がることもあります。売り場でお客様におすすめ販売している店員さんたちの声も参考になります。

狭い商圏で販売しても、売れたお店と売れなかったお店があると思います。思い切って拡大する時は、売れたお店の事例を参考にするといいでしょう。逆に、売れる理由がつかめないのに、売る場所だけ増やしたら失敗する可能性があります。きちんと検証をすることが大事です。

やはり、経営資源をぎゅっと集中して一点集中するのが良いでしょう。いろいろやりたくなるものですが、アイテムが増えると経営がきつくなる傾向があります。

大久保:さらに商品開発を加速させるポイントはありますか

中山:商品開発は不安の連続だと思います。1人で考えるのではなく、社内外にアドバイスをもらえる相手がいると心強いと思います。家族でも、社員さんでも、製造ラインのパートさんでも誰でもいいです。お客様の立場に立って、ぜひ恐れずに議論してください。

例えば売れる商品を工場の製造ラインで流すと、現場のパートさんたちがざわざわするんですよ。「この商品いいわー」っていいながらパートさんが作ってくれている時は、本当に商品評価が高いです。自分なりの価値で分析しているのですよね、重たいとか、値段が思ったより安いとか。アドバイスをもらえる相手がいることが大事です。

大久保:起業家や商品開発の担当者に向けてメッセージをお願いします

中山:その商品を手に取ったお客様が喜ぶ姿が目に浮かんでいれば、その商品は成功したも同然だと思います。これを実現するためにも、商品コンセプトはとても重要です。

有名な起業家の方とお話ししていたら、この「商品コンセプト」の考え方は「事業コンセプト」そのものではないかというご意見をいただきました。自分のお客様がどこにいるのか、どんな課題解決を求めているのか、一度言葉で整理してみてください

商品開発プロの視点

商品コンセプトは事業コンセプト。

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(取材協力: 株式会社Hosta/中山香織)
(編集: 創業手帳編集部)

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