住民税とは?支払うべき人が押さえておきたいポイント
住民税の仕組みを解説!支払対象者と支払方法・計算方法・注意点とは
住民税は所得税とともに収入が一定以上ある人にかかる税金のひとつです。
ただし、住民税は所得税とは違った計算方法や支払方法を取るもので、節税方法や払い忘れ防止に注意が必要となります。
住民税の仕組みと計算方法を知り、それを今後の節税に生かしましょう。
その人の立場や働き方によって支払い方のルールが違うため、それぞれの人が自分に必要な方法を知ることが必要です。
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この記事の目次
住民税とは
住民税とは、個人と法人に課せられる税金であり、所得税とともに収入に応じて金額が決まります。
会社に勤めるサラリーマンは天引きされるため特に意識せずに納めていることもありますが、個人事業主・フリーランスになったら自分で支払うことになります。
独立起業を目指している方は、会社員時代から住民税について意識を持ち、仕組みについてもしっかりと把握しておくことが大切です。
住民税は「地方税」
住民税は、地方公共団体の住民に課せられる地方税に当たります。一方、所得税は国に対して納める国税です。
どちらも同じように収入によって金額が変わる税金ですが、納める先や計算方法、納税の時期も所得税とは異なります。
地方税とは、地方公共団体の住民として受けているであろう公的サービスのために払うものです。
住民はどこかの都道府県や市町村に暮らしていると、その提供するサービスを使用します。
普段はあまり意識しませんが、公的なサービスには教育や福祉、消防や救急といった、様々なものがあります。
それらサービスは国と地方で行っており、その費用をまかなうものが地方税です。
住民税の対象者
住民税は、地方税としてその住所地で課税されます。
住民税には、個人住民税と法人税があり、課税の基準日となる1月1日の時点で住所のある個人や事務所などがある個人が対象となるのが個人住民税です。
法人住民税も事務所のある地方自治体に対して納めます。
住民税の基準日は1月1日なので、その年の1月1日に住んでいる、もしくは事務所がある土地が納付先です。
海外勤務している人も、同様の理論で1月1日にどこに居住していたかによって納付の必要性が変わります。
1月1日に海外に居住していた場合には対象外です。ただし、海外に1年以上滞在していない場合には住所地に居住しているとみなされます。
また、住民税の対象となるのは、一定以上の所得がある人のみです。所得が基準に満たない人や生活保護を受けている人は対象となりません。
個人事業主・フリーランスになった人も初年度など、収入が少ないと対象外になる可能性があります。
住民税の計算期間
住民税の計算期間は、前年の1月1日から12月31日までです。その期間の所得に対して税率がかけられて計算され、6月ごろに納税額の通知が送られます。
前年の所得から算出
住民税の税額は、前年の所得から算出します。そのため、その年には収入がない、一定の基準に満たない場合でも、前年の所得が高ければ住民税は発生するということです。
会社を辞めて個人事業主・フリーランスになる際には、辞めた翌年に会社員時代の住民税が発生することを忘れないようにしましょう。
事業が軌道に乗る前に、高額な住民税の通知が来て驚くこともあります。
税率は税制改正などによって変わる
住民税の税率は、ずっと同じではありません。税制改正などによってたびたび変わることがあります。
住民税は所得割と均等割の二つのものがあり、それを合算して請求されますが、自治体によって金額や割合が若干異なることもあります。
住民税の払い方
住民税は、働き方や働き始めたタイミングによって、納付の仕方が変わるものです。
サラリーマンや個人事業主など、自分の状況に応じた支払方法で忘れずに納付しましょう。
住民税は、厳密には都道府県民税と市区町村民税に分れていますが、納付の際には一緒に払います。
計算では分けて考える必要がありますが、納付の際に意識することはあまりありません。
給与所得者は天引き
会社から給料をもらって働くサラリーマンの住民税は、基本的には天引きされています。
これは給与所得者や公的年金受給者が対象の特別徴収と呼ばれる住民税徴収方法です。
毎月の給料から12分割した税額を、会社や日本年金機構などが給料から天引きし、まとめて納税します。
そのため、住民税を納付している意識があまりなかったという人もいるかもしれません。
所得税もサラリーマンは天引きですが、年末調整や還付金などがあるため、住民税よりは意識する人が多いようです。
個人事業主は納税通知書が送付される
個人事業主といった会社に勤めていない人は、納税通知書で住民税を納付します。これを特別徴収に対して普通徴収と呼びます。
市区町村が住民税の算出が終わった6月ごろに、納税者本人の元へ納税通知書を発送し、納税者が直接通知書で納税する方法です。
納付は一括、または年4回の分割払いができます。年4回の場合、通常は6月、8月、10月、翌1月が支払期限です。
新入社員は1年目は住民税はかからない
4月に入社したばかりの新卒の新入社員は前年の収入がないため、その年の6月に住民税はかかりません。天引きが始まるのは、入社年の翌年6月からです。
そのため、2年目以降は天引きによって給料の手取りが減ったと慌てる人も多くみられます。
また、2年目は前年度の給料が4月からの9カ月分ですが、3年目は丸1年分となるため、さらに手取りが減ったと感じることもあるようです。
退職した場合
会社勤めのサラリーマンが退職した場合には、天引きできなくなった分を自分で納付することが必要です。
退職後に収入がなくなった場合でも、前年度に収入があれば関係なしに納める必要があります。そのため、退職の際は、その後の住民税の徴収に備えておきましょう。
ただし、次の転職先が決まっている場合には、引き続き特別徴収で天引きしてもらい、自分で納める必要がないこともあります。
また、退職する会社で退職金から一括徴収してもらう方法もあります。
退職後に事業を起こすなど会社勤めをしない人は、普通徴収に切り替わるため、忘れずに納付することが大切です。
長くサラリーマンをしてきた人が独立した際には、住民税への意識が薄いことも多いため、注意してください。
住民税の計算方法
住民税では、所得金額と控除額をもとに、均等割と所得割の二つの税額を計算します。計算の手順としては所得税と重なる点もあるため、混同しないように注意が必要です。
実際に自分で計算して納付する訳ではありませんが、通知された税額を理解するために計算の流れを知っておきましょう。
所得金額を確認する
所得金額は、住民税の算出のもとになる金額です。収入ではなく、必要経費を引いた所得がもとになります。給料の場合には給与所得控除を差し引きます。
所得控除額を計算する
さらに所得からそれぞれの事情に合わせて控除できるものをすべて計算します。所得控除には、「基礎控除」「生命保険料控除」「扶養控除」など、様々な控除があります。
保険料を払っている、扶養している家族がいるといった事情に合わせて税額の基準になる所得を減らしてくれる仕組みです。
控除の種類は以下の通りです。種類は所得税と変わりませんが、住民税と所得税で控除される限度額が異なるものもあります。
例えば、6の地震保険料控除では、住民税の限度額最高は25,000円ですが、所得税では限度額最高が5万円となっています。
1.雑損控除
2.医療費控除
3.社会保険料控除
4.小規模企業共済等掛金控除
5.生命保険料控除
6.地震保険料控除
7.障害者控除
8.寡婦(夫)控除・特定寡婦控除
9.勤労学生控除
10.配偶者控除
11.配偶者特別控除
12.扶養控除
13.基礎控除
控除は、サラリーマンの場合には年末調整で、個人事業主や年末調整できなかった控除がある人は確定申告で行います。
課税標準額を計算する
課税標準額は、給与所得から所得控除合計を差し引いたものです。千円未満は切り捨てとなります。
この金額が住民税の決定通知書にある総所得の項目に乗っているものです。住民税の計算に使われます。
所得割額を計算する
所得割額は、定められた税率をかけて算出します。所得の額にかかわらず税率は一定です。
都道府県税と市区町村民税に分かれており、都道府県税は4%、市区町村民税は6%、計10%となっています。また、指定都市については、道府県民税2%・市町村民税8%です。
調整控除を計算する
税率改定で負担が増えた年は、差額調整を行う調整控除があります。また、税金から直接その金額を控除できる税額控除も行います。
均等割額を調べる
住民税の均等割額は、計算の必要はありません。自治体のホームページなどで調べることができます。均等割額を調べたら、二つの税額を足して住民税の金額が出ます。
住民税の注意点
住民税の計算や納税、節税方法にはいくつかの注意点があります。住民税の納税義務のある人は、自分の働き方や申告方法に応じて慎重に対応してください。
住民税の復興特別税の期間
住民税には復興特別税と呼ばれる税金が上乗せされています。その上乗せは平成26年度から10年間、1,000円とされていますが、その期限が令和5年と迫ってきています。
一方で、新たに令和6年から「森林環境税」という税金が住民税均等割と合わせて課税されることになりました。
復興特別税と同額でなので、減額することはなくなってしまいましたが、一応内訳に変化があることは知っておいたほうが良いでしょう。
パート/アルバイトは労働時間に注意
パートアルバイトで働いている人は、労働時間によって住民税の課税と非課税を分ける結果になることがあります。
1時間の労働時間の差で非課税になるかならないかを決めることもあるため、働き方には注意しましょう。
気をつけておきたいのが、年収100万円前後の人です。この非課税限度額は、自治体によって若干の差があります。
100万円前後の年収の人は、自分の住んでいる自治体の限度額をチェックしておくことをおすすめします。
住民税の税率は例外がある
住民税の税率は、基本的には横並びではありますが、自治体独自の財政上の理由などで必要と認められた際には条例で税率が変わることもあります。
所得控除で節税
住民税の節税は、年末調整か確定申告の際に、所得控除で行うことが可能です。年末調整と確定申告では所得税を計算しますが、そのデータは住民税の計算にも用いられます。
しかし、住民税と所得税では所得控除のやり方が少し違うため注意が必要です。また、住民税の給与所得控除は上限があります。
税額控除で節税
住民税は所得控除のほかに、税額控除でも節税効果を高められます。税額控除は、所得控除とは異なり、直接税額を控除できるため、所得控除以上の節税が期待できそうです。
ただし、税額控除の種類は所得控除ほど多くはありません。
税額控除には「寄附金税額控除」や「住宅ローン控除」などがあります。寄附金控除とは、「ふるさと納税」といった寄付を行った際に使える控除です。
ふるさと納税は、自分の故郷や応援したい地方自治体へ寄付できる制度で、お礼の品を受け取れるため、節税のために使う人が多くなっています。
また、住宅ローン控除は住宅ローンを利用して住宅を取得した人などの控除です。
まとめ
住民税は、所得金額によって算出される税金です。国税である所得税と似ている点もありますが、住民税は地方税となります。
住民税の支払方法は会社員や個人事業主で違いがあり、税率も自治体によって異なることもあります。
また、働き方や個人の事情で押さえておきたいポイントも違うため、節税したい場合には個々に注意が必要です。
住民税の仕組みや計算方法を理解して、上手に節税して、正しく納税しましょう。
(編集:創業手帳編集部)