住民税はいつから納める?支払いの時期や納付方法、税額の計算方法などを解説

資金調達手帳

住民税とはどういうものなのか。いつからどう収めるのかをケース別にわかりやすく解説します。


国民に納付義務がある税金のひとつに、住民税があります。
住民税は、一定以上の収入を得る人に課せられるものであり、いつから納付するかは法人・個人また就業形態などによって異なります。

事業主は、住民税をいつから納付するかをしっかりと把握しておかなければ、資金繰りに影響が出るかもしれません。
今回は、住民税はいつから納付するのか、また、納付方法や税額の計算方法などについて紹介します。

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住民税の概要について


住民税は、地方自治体に納めるべき税金です。一定以上の収入がある法人や個人は、指定した納税地に住民税を納める必要があります。
まずは、住民税とはどのようなものかを知りましょう。

住民税とは何か

住民税とは、毎年1月1日の時点の住所地がある都道府県および市町村に、それぞれ納付するもの
前者は、都民税もしくは道府県民税、後者は市町村民税(東京23区では特別区民税)と呼ばれ、これらを合わせたものが住民税です。

住民税は、公共事業や福祉などの行政サービス充実のために供されます。
そして、居住・事業展開している人々が安全な生活を享受するために、サービスにかかる費用を税金として負担します。

一定以上の収入がある国民には住民税の支払い義務がある

住民税の支払い義務が生じるのは、一定以上の所得を得ている法人または個人です。
法人や個人事業主で所得が低い場合、住民税納付の有無に関しては自治体に直接問い合わせることをおすすめします。
ただし、給与所得者については所得の合計が35万円以下であれば、住民税は課税されません。

法人住民税は個人住民税と区別される

住民税は法人と個人で区別されていて、法人住民税は、個人住民税とは計算や納付方法、時期などに違いがあります。
法人税は法人税割と均等割で計算し、個人住民税の計算は、所得割と均等割で行います。
所得割と法人税割には掛け率が設定されており、均等割については個人住民税は一律の金額、法人住民税では事業規模や従業員数によって金額が異なってくるでしょう。

個人住民税の徴収方法は2種類

個人住民税は、個人事業主をはじめ法人ではない個人に課せられるものです。その徴収方法には、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類が存在しています。
普通徴収とは、給与所得者以外の納税者に対し、確定申告時に計算した所得金額をもとに住民税額を計算して、納税者が納付通知書をもとに住民税を納付するものです。

普通徴収が適用される人とは、以下のケースを指します。

  • 個人事業主
  • 退職し転職先が決まっていない
  • 転職先が決定しているが就業前である

上記の普通徴収対象者に当てはまらない場合、特別徴収の方法で納税を求められます。特別徴収の対象者は、以下のとおりです。

※給与所得者
基本的に、給与所得者は特別徴収の対象者です。
勤務先の事業主は、給与支払報告書を自治体に提出し、住民税額が計算された後、事業主は「特別徴収税額の決定通知書」を受け取ります。
ただし、勤務先の従業員数が2名以下、給与が年間100万円以下などの条件に当てはまれば、普通徴収の範疇(はんちゅう)とされます。

※公的年金受給者
4月1日時点で65歳以上、かつ前年より前に公的年金を受給している人も、特別徴収の対象者です。この場合、公的年金の受給金額から住民税額が決定されます。
ただし、公的年金の受給金額が一定ラインを超えない場合は、普通徴収での納付となります。

住民税はいつから徴収されるか


個人住民税は、前述した普通徴収と特別徴収によって、いつから徴収されるかが異なります。
また、退職や転職をして異なる徴収方法が適用される場合は、注意が必要でしょう。

以下では、法人住民税と個人住民税について、徴収の分類による納付時期はいつからなのかを見ていきます。

法人住民税の納付時期とは

法人住民税は、課税対象となる事業年度が終了した次の日から2カ月以内とされています。
つまり、事業年度の終了が3月31日であった場合、4月1日から起算して2カ月後の5月31日が納付期限です。

上記は、事業年度終了時の決算完了を前提に適用されますが、事業年度終了時に決算が完了しない時は、納付期限を1カ月まで延ばすことが認められています。

普通徴収の納付時期とは

普通徴収は、確定申告書により計算された所得金額に基づき、毎年6月に住民税額が確定し納税通知書が送付されます。
この書類では、6月・8月・10月・翌年の1月の計4回にわたり納付するように指定されています。これに従い、普通徴収の対象者は個人住民税を分納します。

特別徴収の納付時期とは

給与所得者は、6月から次の年の5月まで、勤務先を通して住民税を毎月支払う形です。
公的年金受給者については、同様に6月から次の年の5月まで、住民税を年6回に分けて年金から納付します。
あらかじめ住民税が天引きされた額を、年金として受け取る仕組みです。

住民税をいつから、どう納めるのかをケース別に見る


住民税をいつから納めるのかに加え、どのようにして納めるのかについては、ケースごとに違いがあります。
法人・個人もしくは就業形態によって違いがあり、同じではありません。
こちらでは、ケースによる違い、また、特殊なケースの納税方法を紹介します。

法人の場合は事業年度終了日によりいつから納付するかが異なる

前述のように、法人住民税の納付期限は、事業年度終了日の翌日から起算して2カ月後となります。
法人によっては事業年度終了日が異なるため、その法人によって法人住民税の納付期限に違いが出ます。
8月31日を事業年度終了日とする法人の場合は、法人住民税の納付期限は10月31日までです。
同様に、12月31日に事業年度を終了する時は、納付期限が2月28日(29日)となるでしょう。

個人事業主は所得が一定額を超えた次の年に普通徴収が開始

個人事業主などについては、個人住民税の納付時期は、住民税額が確定する6月からとなります。この6月とは、確定申告により所得を申告した年の翌年です。
申告した所得が非課税限度額(単身者では、控除適用後の所得が35万円以下である場合)を超過していれば、その金額から住民税を算出され、普通徴収が開始となります。

送付される納税通知書に、納める額や納付期限が記載されています。納税通知書の案内を読み、住民税を納めましょう。

ちなみに、普通徴収の場合は口座振替やクレジットカードなどでの納付も認められていることがあります。

退職・転職した場合には注意が必要

特殊なケースとして、退職や転職した時があげられます。これらの場合、個人住民税の徴収方法が変則的になるため、注意が必要でしょう。

・退職した時
退職し、次の転職先が決まっていない場合や準備期間中の場合、退職した時期によって対応が変わります。
1月1日から5月31日までに退職した場合、前年の個人住民税の特別徴収がまだ終わっていません。そのため、一般的には退職月に残りの税額を一括徴収されます。

個人住民税の徴収が開始される6月1日から12月31日までに退職した場合、退職月の給与から毎月の税額を徴収された後、勤務先に申し出て普通徴収に切り替えてもらえます。
いずれの場合も、納め残した個人住民税を退職金から一括徴収してもらうことも可能です。

ただし、この時に徴収されるのは前年分の税額であり、退職月から12月31日に発生した所得から算出した個人住民税額は、翌年6月以降に納めなければなりません。
これらの点について、退職後の資金繰りを考えるにあたっては、十分考慮する必要があるでしょう。

・転職した時
転職した時は、新しい勤務先で引き続き特別徴収を受けられます。
注意が必要な点は、前の勤務先から新しい勤務先に徴収の手続きが引き継がれるまでに、時間がかかること。一般的には、引き継ぎに2カ月程度を要します。

その間に特別徴収がされない場合、一時的に普通徴収に切り替えるか、前の勤務先から引き継ぎ期間中の個人住民税を一括徴収してもらう方法があります。

給与所得者は給与から天引きされている

前述のように、給与所得者の特別徴収では、個人住民税を毎月分納する形となり、税額は毎月の給与から天引きされます。
給与所得に加えて副業での雑所得などを得ている場合は、後者に発生する個人住民税に対しても勤務先から特別徴収を受けることが認められています。

しかし、勤務先に副業を伏せておきたい時は、給与所得以外の所得を確定申告し、普通徴収としなければなりません。

・新入社員1年目には基本的に住民税納付が発生しない
前述で説明しているように、住民税は前年の所得が非課税限度額を超えている場合に、その所得金額から算出されます。
つまり、前年に所得がない、もしくは所得が非課税限度額内に収まっていれば、その年の住民税は発生しません。

この仕組みから、所得がない学生から新卒で新入社員として入社した場合、1年目は給与からの特別徴収がないことになります。
そして、入社した年の4月1日から12月31日までの所得に対して、初めて住民税が課せられ、給与から住民税が天引きされるのは翌年6月からです。

公的年金を受給している人のケース

公的年金を受給している人の特別徴収は、2カ月に1度支給される年金受給額からの天引きで行われます。
個人住民税を支払うタイミングは、年金額の支給月ごとです。

ただし、1年間に受給する年金額が特別徴収の年間税額を超える場合などに関しては、受給額からの天引きではなく、普通徴収に切り替えが可能となります。

住所地を移転した時にはどうなるのか

事業所の移転や引っ越しを行った場合、住民税を納める自治体はどこになるか迷うかもしれません。この場合は、その年の1月1日に住所があった自治体に納税します。

例えば、1月2日に事業所の移転を行って12月31日まで課税所得があった場合、その課税所得に対する住民税は以前の住所地の自治体へ納めます。
そして、住民税は前年の所得金額をもとに算出されるため、前出のケースでは移転前の住所地に住民税を納めるのは、翌年です。

自治体の役所に正しく転出および転入届の手続きを行っていれば、引き継ぎを請け負うのは役所です。
前の住所地と新しい住所地から、二重に住民税を徴収されることはありません。

ただし、正しく引き継ぎがされるためには、転出および転入届は移転から14日以内に行う必要があります。

住民税の計算方法を解説


住民税には、所得に応じた計算方法が存在しており、それによって求められた金額を納めなければなりません。
では、住民税の金額はどのようにして決定されるのか、計算方法を見ていきます。

法人住民税の計算方法について

法人住民税は、法人税割と均等割の2種類の計算方法を用いて住民税額が決定します。それぞれの計算方法で算出された数値を合計した金額が、法人住民税です。

法人税割

法人税割は、前年の所得から算出した法人税額から計算されます。そして、法人税割の税率は決められています。
2019年10月1日以降に事業年度を開始した時、標準税率は道府県民税で1.0%、市町村民税で6.0%です。

東京23区では市町村民税が発生しないため、都民税としてこれらの税率を合わせた7.0%の標準税率が適用されます。
なお、税率の上限を示す制限税率は、道府県民税で2.0%、市町村民税で8.4%です。

東京都では、基本的に制限税率の規定がなく、標準税率を採用する代わりに、資本金1億円超もしくは1年の法人税額1,000万円超の法人に、超過税率を課しています。
その税率は、前述の制限税率を合計した10.4%。
上記を踏まえ、東京都以外の地方における法人税割の税額を標準税率で計算すると、前年の所得に対する法人税額×(1.0%+6.0%)で求められます。

均等割

均等割とは、法人の資本金額および従業員数で事業規模を測り、定められた基準に応じて税額が決められるものです。
法人住民税の均等割による税額は、自治体によって変動があります。
東京都を例にすると、特別区(東京23区)・市町村それぞれに均等割額が異なっているため、注意が必要でしょう。

なお、法人住民税の均等割は、非営利法人をはじめ、収益を目的とした事業でない場合や、事業活動をストップしている場合など、自治体ごとの条件を満たせば免除されるケースもあります。

個人住民税の計算方法について

個人住民税については、所得割と均等割の2つの方法で税額を計算します。そして、所得割で求めた金額と均等割額を合計することで、個人住民税額が求められます。

所得割は所得額に一定の税率を掛ける

所得割には、一律の税率が設定されており、道府県民税で4%、市町村民税で6%です。法人住民税のように、標準税率や制限税率の設定はありません。
この税率は前年の所得金額から所得控除を適用した金額に対して適用されるため、個人住民税の税額を求めるには、(前年の所得金額-所得控除額)×(4%+6%)の式を使用します。

均等割は一律で課されるもの

個人住民税の均等割は、法人住民税と違って規模を問わないため、金額そのものが固定されています。ただし、固定された税額は自治体によって違いがあります。
一例として、神奈川県横浜市では、県民税の均等割は1,800円、市町村民税の均等割は4,400円です。

所得には所得控除が適用される

個人住民税を計算するとき、前年の所得金額には所得控除が適用されます。個人住民税計算における所得控除は、所得税計算で用いるものと少し異なっています。
所得控除の種類としては、以下のようなものがあげられます。

  • 基礎控除
  • 障害者控除
  • 配偶者控除
  • 扶養控除
  • 寡婦、寡夫控除
  • など

 

これらの所得控除の適用には、細かな条件が設定されています。その金額は、所得税計算の際の控除額と異なるため、確認してください。
基礎控除については、2020年分より前は一律33万円でしたが、2020年分からは下記の表のように所得金額の段階により金額に変動が出ています。

前年の所得金額 基礎控除額
改正前 改正後
2,400万円以下 330,000円(所得制限なし) 430,000円
2,400万円超
2,450万円以下
290,000円
2,450万円超
2,500万円以下
150,000円
2,500万円超 0円

住民税を節税する方法がある


住民税は、基本的に上記で説明した方法で計算されます。しかし、場合によっては税額控除の適用を受けることで節税も可能です。
こちらでは、住民税をより節税できる方法を紹介します。

ふるさと納税を行った際には寄附金控除が受けられる

国や自治体、非営利法人などへ一定の条件を満たした寄附を行った場合、住民税および所得税では、寄附金額に応じた寄附金控除(所得控除の一種)を受けられます。
この寄附金には、近年身近になったふるさと納税も含まれています。住民税からの控除額のみを求めるとき、計算方法は2種類です。

・基本控除額の計算
こちらは、基本的な寄付金控除額の計算方法で、(課税対象年内のふるさと納税の総額-2,000円)×10%で求められる金額を、住民税および所得税から控除されます。
ただし、年間の寄附金額は、年間所得金額の3割までとなっています。

・特例控除額の計算
特例控除とは、ふるさと納税にのみ適用されます。
特例控除額が住民税の所得割額の20%未満である時の計算式は、(課税対象年内のふるさと納税の総額-2,000円)×(90%-所得税率)です。

・給与所得者にはワンストップ特例が適用される
通常、寄付金控除を行った場合は、給与所得者であっても別途確定申告が必要です。
しかし、上記のふるさと納税などを給与所得者が行った場合は、年内に行ったふるさと納税先が5自治体以内であれば、確定申告不要の「ワンストップ特例制度」が利用可能です。
そして、「ワンストップ特例」を受ける際、税額控除は住民税からのみとなっています。

医療費控除を活用する

所得控除のひとつとして、一定条件を満たした場合の医療費控除もあげられます。
適用の条件とは、納税者本人および生計を同一にする家族に支払った年間医療費の総額から、保険金などを差し引いた金額が10万円を超える場合です。
なお、医療費控除の上限は200万円まで、年間の所得金額が200万円を超えない場合の医療費控除の上限は、年間所得金額の5%までとされています。

生命保険料控除も忘れずに

この場合の生命保険とは、以下のものを指します。

  • 入院・死亡保険
  • 介護医療保険
  • 個人年金保険

これらの保険料に対し、合計で最大7万円を住民税額から控除できる制度です。生命保険料控除も、節税のためにはぜひ利用しておきましょう。

住宅ローン控除についても知ろう

住宅ローン控除とは、正式には住宅借入金等特別控除と呼ばれるものです。10年以上のローンを組んで住宅を購入・リフォーム・増築した際に適用されます。

住宅に関して一定の条件を満たした時、住宅ローンの年末残高と実際に居住した年数をもとにして、控除額を計算します。
通常は、所得税額控除に利用されるものですが、住宅ローン控除額が所得税額より多い場合に、住民税から控除されます。

まとめ

住民税は、法人と個人ではいつから支払うかなどの仕組みが異なっています。個人住民税でも普通徴収と特別徴収では、支払いの形態はケースバイケースです。

また、住民税額がどのように決定されるかは、住民税ならではの計算方法によります。これについても、法人と個人では異なるため、注意が必要でしょう。
事業を始める人にとっては、住民税をいつから、いくら支払うのかは資金繰りにも関わる問題であるため、きちんと把握しておくことが必要です。

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(編集:創業手帳編集部)

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