ペライチ新社長 安井 一浩×新規事業家 守屋 実|平社員から社長へ!スタートアップで勝負する面白さ

創業手帳

スタートアップで平社員から社長へ!

誰でも簡単に素早くホームページを作れるサービス「ペライチ」を通じて、中小企業のビジネスをサポートしている株式会社ペライチ。前社長の橋田氏が創業し、急成長している会社だ。
2020年に、印刷や物流領域のデジタル化を推し進めるラクスル株式会社から資金調達をしたニュースも記憶に新しい。
ともに日本全国の中小企業を顧客基盤とするビジネスを展開する会社であり、今後のさらなるシナジーに期待が寄せられている。

そしてこの度、株式会社ペライチの新社長に就任したのが、2020年9月にラクスルからペライチに出向し、取締役COOを務めていた安井氏である。
新社長はどういう人なのか、そしてすでに圧倒的なユーザー数を誇るペライチが新社長のもとでどう変わっていくのか、気になるところだ。
安井氏は2014年12月にラクスルに入社し、数々のプロジェクトの立ち上げや立て直しを行ってきた、まさに社内起業家とも言える人物である。

今回はその安井氏に加え、ラクスルの元副社長でもあり投資家の守屋実氏、そして創業手帳の大久保による対談を通じて、スタートアップだからこそ得られるキャリア、そしてペライチの今後について掘り下げていく。

安井 一浩(やすいくにひろ)
株式会社ペライチ代表取締役CEO
岐阜県出身。東京工業大学大学院卒。リクルートコミュニケーションズを経て、2014年12月よりラクスルに入社。メルマガ担当→紙広告事業責任者→デザイン事業責任者→マーケティング部長を担当。ペライチの取締役COOを経験したのち、2022年6月にペライチの代表取締役CEOに就任。

守屋 実(もりやみのる)
新規事業家
1969年生まれ。明治学院大学卒。1992年に株式会社ミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室で、新規事業の開発に従事。メディカル、フード、オフィスの3分野への参入を提案後、自らは、メディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社、株式会社エムアウトを、ミスミ創業オーナーの田口氏とともに創業。複数の事業の立上げおよび売却を実施後、2010年、守屋実事務所を設立。設立前、および設立間もないベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。投資を実行し、役員に就任して、自ら事業責任を負うスタイルを基本とする。著書に「起業は意思が10割」、「新しい一歩を踏み出そう」などがある。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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ペライチ新社長の修行時代。事業のボトルネックを解消せよ!ラクスルでは印刷の前後工程のデザインとポスティングに力を入れた


ペライチは手軽にホームページができる大人気サービス

大久保:ペライチの新社長への就任おめでとうございます。上場前のラクスルに入社して、スタートアップの一社員から業界で有名なペライチの社長になった、というキャリアには夢があります。社長を目指す人のモデルケースとして、まずは安井さんの今までのキャリアについて教えてください。

安井:東工大で土木について学んだ後、新卒でリクルートコミュニケーションズ(現・株式会社リクルート)に就職しました。事業側に深く関わりたいとの思いからラクスルに転職したのが2014年ですね。

最初はメールマガジンを担当していて、次に集客支援(ポスティング・新聞折込)、その次にオンラインデザイン領域のサービスを立ち上げました。

オンラインデザイン事業は他社が作ったデザインソフトを買い上げて立ち上げました。デザインの知識を持っていないようなリテラシーが低い人でも印刷物を簡単に作成することができる無料のオンラインデザインサービスです。このサービスを継続的に改善したことによって、サービスの利用率は1年半でラクスルで受けた印刷物全体の15%を占めるまでに成長しました。

守屋:2015年頃、上場前のラクスルは、印刷工場をシェアすることによって、印刷の価格を安くすることには成功しましたが、その前工程としてのデザイン、また後工程としてのポスティングについては事業として磨かれていなかったんです。

そこを磨き上げてくれたのが安井さんですね。新しい印刷会社として印刷工程を変革するに留まらず、印刷の前後の工程も含めた「顧客の便利」に合わせてサービスを磨き込んでくれたのです。

大久保:具体的にはどんなことをされていたのですか。

安井:まずやったのが徹底的なお客様と現場の理解です。ポスティングや新聞折込については素人でした。業界を理解するために、折込の業者の方とは一緒にご飯を食べに行って仲良くなり、業界の課題を聞いたり、状況を把握するところから始めました顧客と業界の解像度を高めることが重要だったと思います。

また、ポスティングのサービスはスタート当初は東京、大阪、福岡でしか対応していなかったのですが、全国対応に踏み切りました。

守屋:デジタルのスタートアップというと、どこか空中戦になりがちなんですよね。でも安井さんは知らないことを知らないままにしないですし、現場に通い詰めてきちんと人間関係を築く。

与えられた課題を本当にやりきるというのは、実は限られた人しかできないことです。人間力があるからこそ取引先からも信用され、社内でも信頼を勝ち得てきたことが今回の社長就任にもつながったのだと思います。

大久保:ペライチへの出向後、取締役COOになったときは、どんなことに着手されましたか。

安井:もちろん戦略なども大事ですが、まずやったことは社員全員と面談して、課題を洗い出し、その課題に対してアプローチして改善していくことです。地道ですね。

大久保:事業の本質を理解するために大切なことはなんでしょうか。

安井数字を数字で終わらせないことですね。数字などのデータは、自分が具体的な事例レベルで説明できると思えるまで理解するようにしています。例えば「Aさんがここで頑張ったから数字がこう伸びている」というように、数字が動いている理由を自分が納得するまで深く理解することですね。

マネージャーなどのポジションは、実際に事業を伸ばすこととは連動していない場合もあるので、ポジションや組織がどうあるべきかということをもゼロベースで毎回ちゃんと把握するようにしています。

誰かから聞く報告はその人の目に見えている景色なので、きちんと自分で確かめることが重要だと考えています。

事業を立ち上げても、必ずしも最後まで自分でやらなくてもいい


印刷通販の雄ラクスルとの連携・シナジーが注目される

大久保:いきなり社長交代したわけではないですよね?
事業承継で創業者からのバトンタッチに苦戦する会社も多いです。どのような経緯で社長交代に至ったのですか?

安井:私がラクスルから出向するという形で、ペライチの経営陣と一緒に戦略を考え形にしてきました。

大久保:ラクスルの松本社長のように規模に合わせてステップアップする人もいますけど、ペライチの前社長である橋田さんのように、ゼロから作って、それを誰かにバトンタッチするというのもアリですよね。

安井:0から1にするのが得意な人もいれば、1から10にするのが得意な人もいます。そこは脳の使い方の違いもあるので、向いている人がやったほうがいいですし、組織を大きくしていくためには必要だと思います。

守屋:安井さんが磨き上げて、ラクスルのサービスとして定着した折込やポスティングの0→1をやったメンバーの一人が実は僕だったんですよ。ある大口のお客様の要望を満たすために、まずは首都圏で実現させた。でもそれ以降のドライブは手に余った。

その後、安井さんが「1→10→100」と成長させてくれました。そういったバトンタッチの方法も有効だということは創業手帳の読者の皆さんにお伝えしたいです。

大久保:なるほど。「0→1」、「1→10」、「10→100」だと、それぞれどんな違いがあるのでしょうか。

安井「0→1」が得意な人は、「世の中にないものを作りたい」という思いが強い人ですね。ただ、同時に飽きっぽい面もあるので、1になったらすぐにほかの課題を探しにいってしまうイメージがあります(笑)。

「1→10」が得意な人は、「サービスとして世の中にインパクトを与えたい」と考えている方が多く、気持ち先行型といえます。

「10→100」が得意な人は、事業を効率化したり、仕組みを作ってまわるようにしていくことを考えるのが好きな方です。過去の成功事例などを参考にして考える、冷静で合理的な人が多い印象ですね。

守屋:3つに分かれる場合もあるけれど、くっきり分かれずにグラデーションになっている場合も多い気がします。「0→1」の人が「骨格つくりまーす!」といって作るけれどまだ穴があいていて、他の人がそれを埋めてくれるような。それぞれに得意な人がいたら渡してもいいし、自分ができるならできるところまでやればいい。

「事業を立ち上げたから最後までやらなければダメというよりも、得意な人に渡すほうがいい」ということを事例として伝えられたらいいなと思います。

大久保:創業者から社長をバトンタッチされる側として、気をつけたいことはありますか。

安井:経験や実績を積み重ねて、階段を登ってきた感覚なので、ある日突然という感じではなかったんですが、橋田には社長を続けてほしいと思っていたので最初は戸惑いました。

受け継いだからには、このフェーズの組織の社長として何が求められているかを見極めて、できる/できないを自覚することが大事だと思っています。

スタートアップということでまだサークルの感覚に近い部分もあったので、改めて会社とは何かを自覚した上で、マインドチェンジしていくことが必要だと感じました。

大久保:ラクスルの創業者である松本さんはその点、「0→1」で会社を作り、その後進化、脱皮していきましたよね。

安井:松本さん自身が「変わらなければ」と自分を追い込んでいたような部分がありましたね。社外のメンターと会ったり、どんどん優秀な人を採用したり、自らが進むべき先にある姿を見て、できるだけそこに近づこうと努力している方だと思います。

大久保:起業を考えているサラリーマンの方にアドバイスはありますか。

安井:サラリーマンとして働くことと、経営は別のものと考えがちですが、例えばメンバーマネジメントなど、意識の問題で経営に応用できる部分はたくさんあります。

組織を会社ととらえて、起業前から起業を考えて向き合っていく。日頃から、自分が経営者の立場ならどうするかという意識を持って働くだけでも得るものは大きいのではないかと思いますね。

また、やりたいことを周りに伝えることも大事だと思います。例えば「起業したい」という気持ちを発信していれば、その人物が優秀で外に出したくないなら似たようなポジションに就かせてくれることもあるかもしれません。

個人事業主をトータルで支援できるような存在に

大久保:ペライチは、純国産のCMS(※)として貴重な存在だと思います。海外発の競合他社との戦い方はありますか。

※Contents Management System (コンテンツ マネジメント システム)の略。Webサイト運営にあたり、HTMLやCSSの書き換えなど面倒で手間のかかる作業をしなくても、管理画面を通して記事や画像を登録・更新できるシステムのこと。

安井:そうですね、SaaSからの脱却がポイントになると考えています。ペライチはソフトウェアですが、ユーザーが求めているのはサービスです。メインのお客様は個人事業主なので、彼らが求めるサービスを提供したいと考えています。

今は、効果的なホームページの作成の仕方や集客をするにはどうすればいいか、などといった様々なテーマのセミナー開催や情報提供を通じた支援にも力を入れています。ペライチというブランドは維持しつも、ツールの提供に留まらず、個人事業主の方々をトータルで支援できるような存在になりたいですね。

大久保:たしかに海外勢と比べると、日本向けのコミュニティ活動やサポートといった面は、国産のペライチに分がありそうですね。

安井:彼らはグローバルな思想で動いているという違いもあります。日本人のお客様からしたら、やはり日本の会社である我々のほうが、要望や意見を言いやすいということもあると思います。そういったご要望に応える機能を開発していきたいですね。 

具体的には、1ページを作るような使用感で、どうやったらバラエティに富む複数ページで構成されたサイトを作ることができるかということを考えています。

今後はペライチに関わらず、様々なプロダクトで、個人事業主や小規模な事業者をより応援していきたいと思っています。

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(取材協力: 株式会社ペライチ 代表取締役CEO 安井 一浩
(編集: 創業手帳編集部)

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