Luup 岡井大輝│電動小型モビリティのシェアリング事業で新しい公共インフラを目指す

創業手帳人気インタビュー

理想の電動小型モビリティが開発できれば、電動キックボードにはこだわらない


「いかに早く、これからの日本に必要な新しい交通インフラをつくるか」を実現するために立ち上げたのがLUUPです。駅と駅から離れた場所をつなぐことで、どこに住んでいても駅前かのような便利な暮らしができる電動小型モビリティのシェアリング事業をスタートしました。

LUUPを立ち上げた思いや役割、目指していることなどについて、創業手帳代表の大久保がLuupの岡井氏に聞きました。

岡井大輝(おかい だいき)
株式会社Luup 代表取締役社長兼CEO
東京大学農学部卒業。その後、戦略系コンサルティングファームにて上場企業のPMI、PEファンドのビジネスDDを主に担当。その後、株式会社Luupを創業。代表取締役社長兼CEOを務める。2019年5月には国内の主要電動キックボード事業者を中心に、新たなマイクロモビリティ技術の社会実装促進を目的とする「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、会長に就任。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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「鉄道」に乗じた電動小型モビリティという公共交通手段を考案


大久保:ヨーロッパでは自転車よりも電動キックボードが多く走っている国もあります。岡井さんが、日本で電動小型モビリティのシェアリング事業を始めようと考えたきっかけはなんでしょう。

岡井:起業しようと考えたとき、日本で問題になっている課題の解決に貢献したいということが前提にありました。日本の大きな課題は一言で言ってしまうと「人口減少」「高齢化」だと思っており、この2つを解決し、30年後、50年後に社会インフラになっているような事業を立ち上げたいと考えました。

最初は、介護を求めているお宅に介護士をスポット派遣するようなマッチングサービスを作ろうと考えました。ただ、日本の都市部の場合、ほとんどの移動が徒歩か鉄道で行われています。介護士のように1日に何件も訪問するという回転率を意識して事業を行うような場合には移動時間でロスが発生してペイしなくなってしまいます。

そこで、日本の優れたインフラである「鉄道」に乗じる新しい公共交通インフラを模索し、駅から離れた場所から駅前への移動を効率化できる、電動小型モビリティという公共交通手段を考えたのです。

大久保:海外で流行っている電動キックボードの輸入がスタートというわけではないのですね。

岡井:そうですね。最初、投資家にプレゼンする際には、電動キックボードだけに絞っておらず、電動アシスト自転車や電動ではないキックボード、三輪バイク、小型自動車など、さまざまなモビリティを幅広く残したままでした。その後、投資家とコミュニケーションをし、電動キックボードや自転車のシェアサービスを使っているアメリカのユーザーなどにもヒアリングした結果、単価と利便性と安全性の3つの観点で「電動小型モビリティ」でないと日本では普及しないという考えに至りました。まずは電動アシスト自転車のシェアリングサービスとしてスタートしたのですが、現在は電動キックボードも導入し、サービスを展開しています。

大久保:そもそも、Luupは電動キックボードを製造して貸し出す会社なのですか。それとも、ハードウェアはまったく別の会社なのでしょうか。

岡井ハードウェアとアプリケーションとデータベースに加えて、実際に電動キックボードが走る街や自治体、警察との対話を進めるアライアンス、この4つを絶妙なバランスでつなぎ込んでいる会社だと思っています。どれか1つ欠けたとしてもLUUPのプロダクトは作れません。当社は全体のバランスを取ることに特化をした企業だと考えています。

「電動キックボードを駐車するポートをどこにおいて、時間帯による需給バランスを考えてどう配置するか、どうメンテナンスして、利用者にはこのように乗って欲しいのでこういうソフトウェアにして」というように、LUUPでは全てが有機的に結合されていて、すべてのバランスがとれていることが強みです。Luupのようなスタートアップは、ある意味で大きい組織よりも優れていると思っています。例えば、大企業だったとしてもハードウェアやソフトウェアとデータベースの知見が少ないような場合もあるので、僕らが間に立った方がより良いプロダクトが出来上がる可能性があります。

街中の人々や企業、モビリティのハードウェアレイヤーと、自治体、警察のような街の安全性を担保する組織を最適につなぐ役割が当社であり、つなぐこと自体に価値があるのです。会社の源泉はこれらの絶妙なバランスを考えて良いものを作る組織だと考えています。私たちスタートアップは、プロダクトやビジネスを作るために最適な組織をゼロから作りあげていける、そこに強みがあるんじゃないかなと思っています。

「安全性と利便性」両方を担保するためのプロダクトを作ることに注力


大久保:2022年4月19日に、一定要件を満たす電動キックボードは新たな車両区分である「特定小型原動機付自転車」に位置づける道路交通法改正案が可決されました。法規制を変えていくには相当なパワーが必要だったのではないですか。

岡井:前提として、言うまでもない話なのですがLuupのような創業間もない小さい会社が政府に対して何か要望して変えてもらったということはありません。Luupができたのは「こういう法律に変えて欲しい」と言うことではなく、保安部品がついていないような違法電動キックボードが家電量販店やECサイトで大々的に売られていることを「どうにかしてほしい」、そして「電動キックボードのルールがまだないので、それを新しく整備してほしい」という要望を出すことのみでした。

現行法では、電動キックボードは原動機付自転車に分類されていて、1種の制限時速30キロ、もしくは2種の制限時速60キロで走行できるのです。立ち乗りの電動キックボードを高速で走行できることに対する危険性が問題提起されていましたので、政府が適切なルールをきちんと定義してくれた後にビジネスを始めたいという思いがありました。

Luupの事業は公共交通インフラを目指していますので、販売事業のように売れればそれでOKという世界ではありません。「将来的に法令が変わるかもしれないけれども、とりあえずビジネスをスタートしよう」というスタンスではなく、正しい着地点を模索した後に、街の人々に納得してもらってからスタートしたいという思いがありました。そうでないと、30年後、50年後のインフラにならないということで、政府に回答を出してもらった後にスタートしたかったのです。

電動キックボードと電動アシスト自転車をサービス内で同等に扱った上で、電動キックボードに対してどんなルールが定められるか全くわからなかったので、どんなパーツがついてもいいように、もしくは二輪、三輪、四輪、どんな形になっても対応できるように、工場と連携してODMで製造も行うという形で進めてきました。

このような経緯から、安全性と利便性の両方を担保するためのプロダクトを作ることに注力してきました。例えば、LUUPでは利用者がモビリティに乗る時に目的地を予約しなければいけないようになってます。これは日本国内のあらゆるシェアサイクルの中で唯一の試みです。

既存のシェアサイクルでは、10台、20台とキャパシティが決められたポートにそれを超える台数、例えば50台の自転車が返されてしまうという問題が発生していました。目的地を予約することでこれが解決できるのです。同様に、乗り終わった後にモビリティを綺麗に停めたことを写真撮影して報告していただく形をとっています。また、位置情報を常に計測し、警察と連携して電動キックボードに関する重大な違反行為が確認できた利用者に対してはアカウントを凍結処分にするというような安全性を担保する取り組みも行っています。

ただ、このような決まりが増えすぎると利用者が押さなければいけないボタンが増え利便性の低下につながります。利用者が許してくれるギリギリまで安全性を最大限に担保した上で、利用しやすいシームレスなプロダクトを作るということが大変でした。

LUUPは“街じゅうを「駅前化」するインフラを作る”というミッションから生まれた企業


大久保:岡井さんが起業してもっとも大変だったことはなんですか。

岡井:安全性を第一にプロダクトを作ると、利用者は「あれもこれもやらなければいけない」となって不便なものになります。とはいっても、安全性を第一に考えて作っていかなければなりません。ステークホルダーに安全性を感じていただいた上で利便性も持つプロダクトづくりというのがもっとも大変だったと思います。反面、それがこのプロダクトの面白いところでもあると思ってます。

現在、保安基準を満たしていない違法電動キックボードも数多く走っています。LUUPの利用者は、電動キックボードに乗る前にスマートフォン上で交通ルールテストを受けて満点合格する必要がありますが、悪質な利用をされる方がごく一部いるのは事実です。それらをどれだけ撲滅していけるかは、安全性の担保という意味で重要だと思っています。利便性よりもまずは安全性の方を突き詰めていくことが大事だと考えています。

大久保:起業家や起業志望の方に「LUUPをこのように使ってほしい」という要望はありますか。

岡井:全国各地への展開に向け、先日コンビニエンスストア事業を展開する「ファミリーマート」との資本業務提携も発表させていただきました。まずは皆さんの周りでLUUPのポートを設置してほしい場所の希望を教えていただけると嬉しいですね。例えば、営業先の会社の近くにLUUPのポートが置かれればその会社の社員にも乗っていただけると思います。このように使いたい場所を率先して教えてほしいです。

日本中で展開していくにあたり、ハードウェアは優れたメーカーと組んだ方が早く展開が進んでいきますし、地場企業と組んだ方がより良いプロダクトが作れる可能性が高いと思っています。また、その地域で事故が起きやすい場所などを把握するために、地元の人たちの知見を借りたいと思っています。

大久保:Luupの将来の目標はなんでしょうか。

岡井:中長期的には、若者だけでなく高齢者も安心して乗れるような電動小型モビリティの展開を理想として掲げています。鉄道もバスも年齢層にかかわらず乗れることで採算が取れているので、「若者向け」「高齢者向け」という形でセグメントしてしまうとそれが取れなくなってしまいます。

LUUPでは今現在、電動キックボードを扱っていますが、理想の電動小型モビリティが開発できたときには電動キックボードにはこだわっていません

大久保:最後に、起業家や起業志望の方に対してメッセージをお願いします。

岡井:既存の公共交通をアップデートしようと考えたとき、大手企業ではできないような、最適化した組織で最適なプロダクト作りをした方が、より良いものが作れると思ったことが私の起業理由でした。そういう意味では、自分たちがゼロから作った方が良いと思うことを研ぎ澄ませていくと、社会にとっても良いものが生まれるのではないでしょうか。

Luupはミッションファーストで生まれた企業です。ミッションは“街じゅうを「駅前化」するインフラを作る”としていますが、駅と駅から離れた場所をつなぐことで、どこに住んでいても駅前かのような便利な暮らしができるような未来に向けた最適なプロダクトを作っていくことを目的としています。

目的に合わせて最適化できるかどうかを見極めて、創業してからも「これは大手がやった方がいいかも」と思ったら売却するのも一手段だと思います。これから新しく起業される人たちへのメッセージでもありますが、自分たちだからこそできることを探していけたら、人生をかけてその事業に取り組んでいけると思います。

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