オトバンク 上田渉|「audiobook.jp」で実現する「聴く文化」の創造!学習にも娯楽にも活用できるオーディオブックとは

創業手帳

誰もが楽しめる「本を耳で聴く」体験!オーディオブック市場を牽引するパイオニアに迫る

近年サブスク導入やワイヤレスイヤホンの急速な普及、さらにコロナ禍により在宅時間が増えた影響で、音声コンテンツの利用者が増加。なかでも耳のスキマ時間を有効に使えるオーディオブックが人気を集め、効率的な勉強法としても脚光を浴びています。

そのオーディオブック市場を牽引するのが、2007年に日本初のオーディオブックプラットフォームのローンチ以降、成長を続けるオトバンクです。オーディオブック書籍ラインナップ数、およびビジネス書籍ラインナップ数でそれぞれ日本1位の2冠*を獲得しています。
※日本マーケティングリサーチ機構2021年11月調べ。日本語オーディオブック書籍ラインナップ数調査。

業界の先駆者である同社の代表取締役を務める上田さんの起業までの経緯や、「聴く文化」の創造について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

上田 渉(うえだ わたる)
株式会社オトバンク 代表取締役会長 日本オーディオブック協議会常任理事 耳活アドバイザー
1980年神奈川生まれ。東京大学経済学部経営学科中退。在学中から複数のNPOの立ち上げ・IT企業の経営を経て、2004年にオトバンクを創業し、代表取締役に就任。2012年3月より現職。緑内障で失明していた祖父の影響で、目の不自由な人のためにもなる仕事をやりたいと強く思うようになる。自身が受験時代の勉強法として活用した音声学習もヒントに、オトバンクを創業。日本一のオーディオブック書籍ラインナップ数を配信する「audiobook.jp」を運営。「聞き入る文化」の普及に日々奔走している。耳からの学びについてまとめた新著『超効率耳勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を7月に刊行。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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幼少期からの体験を通し、「目の不自由な方々のお役に立ちたい」を実現

大久保:まずは起業のきっかけについてお聞かせ願えますか。

上田:オトバンク設立の大きな原動力となったのは、幼少期から抱いていた「祖父の力になりたい!」という想いです。

私の祖父は60歳くらいから亡くなるまでの約20年もの間、緑内障の影響で目が不自由な生活を送っていました。専用の書斎を設けるほど本が好きな人だったのですが、目の病気を患って以降は大好きな読書を楽しむこともできなくなってしまいまして。そんな祖父の寂しさを常に感じながら「おじいちゃんのために何かしてあげたいな」と思っていました。

祖父が亡くなったのは大学に入学する直前で、結果として力になれなかったことがずっと心残りだったんですね。そんなモヤモヤした想いから、大学3年生の就職活動時に「祖父と同じように目が不自由な方々のお役に立てる仕事がしたい」という決断に至りました。

大久保:幼少期から抱いてらっしゃった「なんとかしたい!」という想いを起業で実現されたんですね。オトバンク創業までの経緯をお教えください。

上田:当初は企業で働きながら、本の朗読を提供するNPOを立ち上げようと考えました。ただ、その方向性だと根本的な問題解決にはならないなと。

これは経験談でもあるのですが、たとえば視覚障害者向けの朗読音源を届ける障害福祉サービスなどの存在を私たち家族は誰ひとりとして知らないまま、祖父が亡くなってから後悔したんですね。「知っていたら活用したのにな」と痛感しました。

なぜこうした問題が起こるのかというと、障害福祉サービスは対象の範囲がどうしても狭くなるため、一般的に認知されにくく、結果として肝心の当事者に届きづらいからです。

それならばサービス対象を広げ、障害の有無を問わず誰もが楽しめる「聴く文化」を浸透させるのが最良ではないかなと。「聴く文化」を実現するオーディオブックを開発し、当事者の周囲にいる家族や友人に愛用してもらえるサービスになれば、自然と当事者の方々にも届けることができるはずだと考えました。

こうした着想から、東京大学在籍時の2004年にオトバンクを創業しました。

大久保:お祖父様の日常生活を通して、当事者やご家族が味わうご不便やデメリットをクリアにしたかったという動機が素晴らしいですね。障害福祉サービスの盲点から発想を転換させる必要があったと。

上田:はい。オトバンクのオーディオブックサービスを当事者に知ってもらうためには、ご家族から勧めていただくのが理想かなと思っています。

たとえば、お祖父様のご自宅に遊びに行って「最近、目が見えづらくなってね」と聞かされたお孫さんが、「おじいちゃん、今は耳で本を読むことができるんだよ。今度持ってきてあげるね!」といった感じでオーディオブックをプレゼントする。

自然とこんなやりとりが交わされるような、本を耳でも読むことができる社会を広げていきたいです。

ココ重要!
  • 障害福祉は、NPOだけではなくサービス事業としての展開も検討する
  • サービス対象者に確実に届けるためには、適用範囲を広げて普及させる

大きなターニングポイントは、大手企業のサービス導入を勝ち取った経験

大久保:学生起業でスタートした後、オーディオブック事業が軌道に乗るきっかけとなったターニングポイントをお教えください。

上田:当初は苦労の連続でした。一学生が各出版社を回って「オーディオブックを作らせてください!」と訴えても、当然のことながらなかなか相手にしてもらえません。

ただ私にとっては訪問させてもらえるだけでもありがたくて、地道にドアノックを繰り返しているうちに味方になってくださる方も出てきました。

そんな折に、JALの国際線機内サービスのコンテンツとしてオーディオブックが採用されたんですね。以降は、大手出版社がこぞって導入してくださるようになりました。本当に大きなターニングポイントでしたね。

大久保:大手企業の採用から流れが変わったわけですね。JALの採用に至るまでの経緯をお聞かせください。

上田:当時在籍していた東大のマーケティング講義で、JALの方に機内プランのプレゼンテーションを行う授業がありました。数名単位のチームに分かれたプレゼン合戦だったのですが、私が入ったチームが高い評価をいただいたんです。

この実績をもとに、同講義の教授に取り次ぎを懇願し、その先生が懇意にしていたJALのマーケティング担当者につないでいただきました。

大久保:サービス提案はスムーズに採用されたのでしょうか?

上田:いえいえ、最初は断られました(笑)。

ただ、そこでめげずに「断られたのは、僕の誠意が足りなかったからだ!」と考え、その足でJALの国内線に飛び乗って大阪まで出向きまして。搭乗口やチェックインカウンターなど、各所をすべて確認し、キャビンアテンダントの方へのインタビューも行いました。

この現地取材を写真付きの企画書にまとめ、アポイントを取り直して再訪したんです。「大阪のJALカウンターなどで取材をしてきました。空港内のこの箇所で、オーディオブックをインストールしたiPodをお客様にお渡しすれば、皆さんに楽しんでいただくことができます」と再びプレゼンしました。なんとか採用していただきたい一心でしたね。

すると「君の提案は実現が難しい側面もあるのだけれど、熱意を買って採用しよう!」というお答えをいただきました。想いが届いて本当にうれしかったです。

ココ重要!
  • 目的に合致した大手などの採用を勝ち取り、信用度を上げてサービス浸透を目指す
  • 一度断られても諦めず、あらゆる工夫を凝らして再チャレンジする
  • 取材などを通して現場を調査し、相手の立場を考えながらプレゼンする

「聴く環境」の変化と聴き放題プランのヒットによりユーザー数が急増

大久保:サービス提供までの経緯をお聞かせください。

上田:会社設立は2004年でしたが、現在の「audiobook.jp(オーディオブックドットジェーピー)」の前身となる「FeBe(フィービー)」のローンチは2007年1月です。

創業から3年間、ひたすらコンテンツ制作を行い、1,000タイトルの準備が整ったところでサービスを開始しました。

大久保:「FeBe」はリリース以降、順調に伸びていったのでしょうか?

上田:10年間はゆったりとした伸び率でしたね。2017年時点でのユーザー数は10数万人でした。

大きく成長したのは「audiobook.jp」にサービス名称を変更した2018年です。この年のユーザー数はおよそ30万人まで増えまして、そこから100万、200万と大幅に伸び、2022年7月時点で250万人を突破しました。

大久保:急激にユーザー数が伸びた理由をお聞かせください。

上田:主な理由は2つです。

まず1つ目は、ワイヤレスイヤホンやスマートフォンの普及により「聴く環境」が変化したこと。

会社を設立したのは、まだスマートフォンが市場に存在しない時代でした。そのため、弊社の事業計画を周囲に話しても「需要がないのでは?」という反応ばかりでして。

ただ、すでに携帯電話の着メロが浸透していましたので、いずれモバイルデバイスで大容量の音声コンテンツを気軽に楽しめる時代が到来すると信じていたんですね。そこでまずは事業の立ち上げと同時にスタジオを構え、オーディオブックの制作手法を研究し、継続的に良質なコンテンツが制作可能な環境を用意しました。

現在では、あの頃思い描いた「音声を気軽に楽しめる未来」が現実となり、長い年月をかけて世に送りだしてきた幅広いジャンルのオーディオブックを多くの方々にご利用いただいています。それが本当にうれしいですね。

次に2つ目は、市場にサブスクリプションサービスが登場したことです。

サブスクが広がり始めた時代の流れに合わせ、弊社では2018年に「audiobook.jp」の聴き放題プランを開始しました。

この定額プランを打ち出したことで「手頃な価格、しかも月額という形で多種多様な本を楽しむことができる」と人気が高まったんですね。「オーディオブックって、どういうサービスなのかいまいちわからない」との疑問を抱いていた方々の心理的ハードルが下がり、利用者が急増しました。

社員教育や福利厚生に最適な「audiobook.jp 法人版」が高評価を獲得

大久保:現在、BtoC向けの「audiobook.jp」とともにBtoBサービスにも力を入れてらっしゃると伺っています。詳しくお聞かせください。

上田:BtoB向けの「audiobook.jp 法人版」は、2022年1月から新たなチャレンジとして開始しました。社員教育や福利厚生にオーディオブックが活用できるサービスです。

BtoBサービスに取り組みだしたのは、経営者や人事担当者から伺った社員教育に関する悩みを、オーディオブックなら解決できると判断したことがきっかけでした。

あらゆる企業が抱える社員教育関連の問題は、主に3つに集約されています。

  • さまざまな研修を導入しているが利用率が上がらない
  • 研修プランを組んで実行しているが効果を出せていない
  • 社員教育で成長させたいが方法がわからない

なぜオーディオブックが課題解決に適しているかというと、耳で聴く形態は勉強や学習のハードルを下げる効果を持っているからです。

本を読みながら学習する行為は、脳への負担が非常に大きいんですね。人間はまず文字を頭の中で音声に変換しないと、言語として理解できない生き物だからです。

文字を読む行為や読書が苦手だったり、本を読むのが遅いという方々は、この文字の変換プロセスでつまづいています。この能力には個人差があり、読書が得意な方々は変換能力が優れているわけです。

一方、オーディオブックなら個人差がなく、スムーズに理解できます。ダイレクトに音声で聴けるため、ハードルを下げることができる学習法なんですね。

大久保:素晴らしいですね。音声で聴く学習法は、ぜひ取り入れていきたいです。

上田:おかげさまで「audiobook.jp 法人版」は、「HRアワード2022」人材開発・育成部門で入賞し、大賞候補になっています。また、法人版リリースから6ヶ月で50社以上の企業が導入してくださいました。

導入企業の内訳をみてみると、平均視聴冊数は月3.8冊です。各企業担当者の皆様を通して「オーディオブックを聴くことで知識・スキル・教養のアップデートになっている」「組織全体の生産性向上につながると期待している」「申し込み率や継続率が良く、満足度も高い」などの評価もいただいています。

起業家に欠かせない成長のために、オーディオブックはより良いパートナー

大久保:最後に、起業家に向けてのメッセージをいただけますか。

上田:起業家にとって大切な要素のひとつは、常に豊富な知識や情報を身につけようとする姿勢です。企業存続や事業拡大のためにも必須となるビジネスアイデアは、あらゆる知識や情報の組み合わせで成り立っていますので、この資質は欠かすことができません。

必然的に起業家は常時勉強を続け、その結果として成長し続ける必要があります。このとき「学ばなければ!」と身構えてしまうと、徐々に苦しくなってしまうんですね。

オーディオブックなら気軽に勉強することができるため、より良いパートナーになります。もしご自身の成長のために必要だと思ってくださった場合は、ぜひ積極的にご活用いただけるとうれしいです。

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(取材協力: 株式会社オトバンク 代表取締役会長 上田 渉
(編集: 創業手帳編集部)

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