PDCAとは?意味やメリット・サイクルの回し方
PDCAサイクルで業務プロセスを改善できる?効果的な方法と活用の注意点
PDCAは、長く親しまれてきた品質管理のフレームワークのひとつです。業務改善や目標達成にも使える手法として、多くのビジネスパーソンに使われています。
事業の改善を目指す事業者は、PDCAサイクルの活用を検討してみましょう。
PDCAとはどのようなものか、期待できる効果やメリット・デメリット、具体的な進め方を紹介します。
正しく活用することで、失敗や無駄な行動を防ぎ、本来の効果を知ることができます。
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この記事の目次
PDCAとは
PDCAとは、品質管理の父といわれるアメリカの学者、W・エドワーズ・デミングの提唱したフレームワークです。
もともと生産や業務プロセスの中で改善すべき部分を特定し、改善していくためのモデルでした。
4つのプロセスを分析し、継続的に回すことで問題解決を目指します。
PDCAにはそれぞれに意味があり、その順序も大切です。また、PDCAはその方法も定義づけられています。
PDCAの基本を知るために、意味や定義を掘り下げて知っておきましょう。
PDCAの意味
PDCAの名称は、それぞれ4つのプロセスの頭文字が由来となっています。
「Plan(計画)」・「Do(実行)」・「Check(評価)」・「Action(改善)」とそれぞれのプロセスを順番通りに実施することで、業務改善などを達成します。
PDCAの定義
PDCAは、各プロセスを測定・分析してサイクルを継続的に回すループ型のモデルです。
4つのプロセスを1サイクルとし、それを何度も循環させることによって品質を高めていきます。
ループ型とはいっても、常に同じところを回っているのではなく、サイクルを繰り返すことによって、徐々に業務の質は向上していかなければいけません。
PDCAサイクルを回すことが重要
PDCAの手法は、そのサイクルを継続的に回し続けることが重要です。サイクルの途中で中断してはならず、1サイクル限りで終わってもいけません。
また、計画して実行したら成功しても失敗しても必ず評価を行います。成功も失敗も踏まえて、何度も改善と評価を繰り返すことで業務は改善していきます。
似た言葉に「OODA」がある
PDCAに似た言葉に「OODA(ウーダ)」というものがあります。「OODA」も4つの頭文字からなる課題や問題の管理、改善のためのモデルです。
「Observe(観察)」・「Orient(状況判断や方向づけ)」・「Decide(意思決定)」・「Act(行動)」の4つのプロセスを継続的に回すことで成果を得ます。
PDCAとプロセスを繰り返す中で改善を図る点で共通していますが、概念が異なります。
OODAは個人の行動を現状に応じて管理するもので、迅速な判断や行動を求める際に有効なモデルです。
現場適合性を重視し、迅速に周囲の状況を判断します。
PDCAはプロセスをもとにした中長期的な改善に、OODAはスピーディーで市場や消費者ニーズに基づく意思決定が必要な場合に、と状況に応じて使い分けられます。
PDCAのプロセスとは
PDCAサイクルは前述の通り、4つのプロセスを実施するものです。
実際にPDCAサイクルを回す際には、プロセスごとにポイントを押さえ、必要な行動を取っていくことが必要です。
PDCAを取り入れる人のために、プロセスごとに実施すべきことを紹介します。
1.Plan(計画)
目標や目的を設定して、達成するための実行計画を立てます。計画の立案では、5W2Hをもとに仮説を立て、論理的に進めていくことが大切です。
また、目標数値を示すことで実用性の高い計画になり、スケジュールも立てやすく、目標達成の評価がしやすくなります。
2.Do(実行)
立てた計画の通りに実行に移します。PDCAでは、評価を意識して内容を記録しておく必要もあります。
十分に検証できるように、計画通りにできたことやできなかったこと、発生した問題についても記録が大切です。
3.Check(評価)
実行した内容を検証し、評価を行います。設定した目標に対しどれくらい達成できたか、計画通りにできたかを評価します。
良い点も悪い点もすべて評価し、特に計画通りにできなかったことを入念に分析することが必要です。
できなかったことの原因を分析し、課題を抽出します。
4.Action(改善)
評価でわかった結果を踏まえ、改善を行います。悪かった点でわかった課題への対処法と良かった点の強化方法を具体的に検討します。
このプロセスで仮説の検証や要因の分析を誤ると正しく改善策を立てられないため、注意が必要です。
PDCAのメリット・デメリット
PDCAサイクルには、メリットとデメリットがあります。
実施方法を正しく理解していれば多くのメリットを生むことも可能ですが、PDCAを正しく回すことは難しい場合も多く、できることに限界もあります。
PDCAを導入する際には、メリットとデメリットを知り、自社に実施できるか検討することも大切です。
PDCAのメリット
PDCAは正しくサイクルを回すことで、いくつものメリットを得られます。
もともとは生産・業務プロセスを改善するためのモデルでしたが、以下のようなメリットによって多くのシーンで活用されるようになりました。
目標・やることが明確になる
PDCAのメリットのひとつは、組織や個人の目標を明確にできる点です。目標が明確になることで、改善のための行動も起こしやすくなります。
PDCAは目標を達成するための計画の立案からスタートするため、実行の段階では目標ややるべきことが明確な状態です。
また、PDCAサイクルが1回循環すると次に解決すべき課題が明らかになり、次の目標や行動も決定しやすくなります。
目標があいまいでは、行動する間に本来の着地点とずれが生じるかもしれません。しかし、目標が明確になっていると、筋道を立てて問題解決にあたることができます。
行動に集中しやすくなる
PDCAでは、計画の段階で目標と自分のすべきことが決まっているため、迷いが生じず行動に集中しやすくなります。
目標に向かって集中力が高まることで、生産性も向上します。
課題や不足がわかりやすい
PDCAでは、目標に向けて計画的に行動し、成功や失敗も定量的に評価します。
そのため、成果や不足している部分や達成度などがわかりやすく、改善のために次の行動計画も立てやすくなります。
PDCAのデメリット
PDCAサイクルは、長年使われてきた手法であり、有名なフレームワークですが、メリットだけでなくデメリットもあります。
気付くとPDCAを回すこと自体が目的になってしまう
PDCAはサイクルを回すこと自体が目的化しやすいことがデメリットとして挙げられます。
気付くとPDCAの本来の目的を忘れ、回すことが仕事になってしまっている恐れがあります。
PDCAサイクルは、目標を達成するための手段にすぎません。目標を見失い、回していることに満足してしまうと本来の効果が得られなくなります。
無駄な会議が増える恐れがある
PDCAサイクルの実施の際には、PDCAサイクルを回すための会議が増えていくことがあります。
特に、PDCAが目的化してしまうと、本来必要な目的達成のためではなく、タスクの報告会と化してしまう恐れが高まります。
イノベーションは起こしにくい
PDCAは、原則イノベーションを生み出すためにはあまり効果的ではありません。
PDCAは、過去の前例やデータをもとにしたフレームワークであり、既存のものを改善するのに向いています。
新規事業のために斬新なアイデアを生み出す環境を作りたい場合には、ほかのフレームワークを取り入れたほうが効果的です。
OODAは、PDCAの手法よりも新規事業や新商品の開発に向いているといえます。
市場の動向や消費者ニーズを観察し、判断することで、新しい商品やサービスを生み出せるでしょう。
PDCAが失敗する要因
PDCAの手法にはメリットだけでなくデメリットもあり、やり方を誤ると失敗する恐れも出てきます。
PDCAを実施するにあたっては、事前に失敗しやすい要因を知り、回避をするよう工夫することも大切です。
PDCAサイクルが途切れる
PDCAの失敗要因のひとつが、サイクルが途中で途切れてしまうことです。
PDCAでは、各プロセスのどこかで次のステップに進めない失敗が起こり、やりっぱなしになってしまうことがあります。
従業員のモチベーションが下がったり、現場が十分に手法や重要性を認識していなかったりすることが関係しています。
継続できない
PDCAが失敗する要因としては、サイクルが1周で終わってしまい、継続できないことも挙げられます。
PDCAサイクルは、1周で終わるものではなく、継続することでらせん状に成長していくためのものです。
1回やって終わってしまうと、本来のPDCAサイクルの効果が得られません。
目標が高すぎる
PDCAサイクルが途切れたり、1周で終わったりする原因にもなるのが、目標が高すぎることです。目標設定を誤ることは、PDCAが失敗する大きな要因です。
目標が高すぎると、従業員や担当者が諦めムードになり、モチベーションも上がりません。すると、実行の精度も下がり、計画の遂行は難しくなるでしょう。
記録がずさん
PDCAでは、より正確な評価のために適切な記録が必要です。
しかし、記録をする現場担当者が記録の重要性や目的を正しく理解していないと、記録はずさんになり、正しい評価もできなくなります。
記録の管理が担当者ごとに異なる、記録すべき情報が欠けているといったことが起こると、計画と実行が適切であってもサイクルの質が落ちてしまいかねません。
評価があいまい
PDCAでは、評価をもとに次のアクションを決定するため、評価の適切さが重要です。評価があいまいではこれまでの計画や実行が台無しになってしまいます。
評価基準が定まっていないと、漠然とした評価になったり評価がバラバラになったりすることがあります。
また、第三者の目がないため、甘い評価を下し、課題や改善点を見逃しやすくなるものです。
改善に向けた行動が着実に実行されない
PDCAの最終段階で、次のサイクルにつながるアクションでも実際に改善に向けた行動が実行されず、PDCAが止まってしまうことがあります。
改善策がわかっただけで実行されなければ、PDCAの本当の成果は出ません。
PDCAの効果を高めるためには
PDCAの効果をより高め、成果を出すためには、いくつかの注意すべきポイントがあります。
PDCAの成功には時間がかかり、継続的な遂行を必要としますが、ポイントを押さえて実施すると関係者のモチベーションも維持され、効果も見えやすくなります。
目標・計画は明確に設定しておく
PDCAの効果を高めるためには、目標や計画を定量的で具体的に設定することが大切です。
目標や計画が具体的にわかりやすくなることで、アクションを起こしやすくなり、やる気もアップします。
計画通りに実行する
PDCAの成功には、計画に沿った実行が欠かせません。設定された目標や計画通りに実行すると、その後の検証・評価や次のアクションの決定がしやすくなります。
無理のない計画にする
無理のない現実的な計画にすることも、PDCAを回し続けるための大切なことです。具体的で実現できる目標や計画を立てると、諦めずに実行しやすくなります。
高すぎる目標やあいまいな計画は、モチベーションを下げるだけなので避けてください。
定期的に評価・確認する
PDCAの成功には、定期的に評価・確認を行い、常にPDCAの循環スピードを落とさないことも大切です。
日々の業務に追われて評価がおろそかになりやすい場合には、定期的な評価の時間を設定して、進捗の確認や現状分析・施策の改善などを続けます。
継続的に回し続ける
PDCAサイクルは継続的に回し続けることが大切です。ひとつの改善をゴールとするのではなく、習慣化してループが止まらないようにします。
らせん状に回す
PDCAサイクルは継続するだけでなく、らせん状に回すことが大切です。
回しているうちに計画自体がワンランクアップするように意識して、内容をブラッシュアップしていきます。
PDCAがうまくいかない場合には
PDCAサイクルがうまく回らない時には、やり方を見直し、うまく進むように対策する必要があります。問題点を見つけて、機能しない原因を解消する方法を考えてください。
4つのステップを再検証する
PDCAサイクルがうまく回らない時には、4つのステップをそれぞれ再検証してみることが必要です。
それぞれが正しく機能しているか確認し、負荷が偏り無理の生じている部分や実施内容が中途半端な部分などを抽出し、再調整します。
ツールを活用する
PDCAサイクルを回す際には、データの分析や評価、記録や共有などの作業が必要です。
しかし、通常業務の傍らでこうした作業を担うことは負担になる時もあります。その場合には、効率化ツールを活用し、作業の負担を減らすことも大切です。
まとめ
PDCAは、業務の改善や目標達成のために役立つフレームワークです。PDCAサイクルを継続的に回すことによって、課題の解決を目指せます。
PDCAのメリットを最大限活かすためには、正しい方法で実施することが大切です。
失敗する原因や理由も理解した上で、リスクを排除しつつ継続的にサイクルを回せるよう工夫しましょう。
(編集:創業手帳編集部)