市場のリアルを掴む環境分析とは?環境分析のステップと使えるフレームワークをご紹介【ウェブ解析士連載その3】

創業手帳

デジタルマーケティングでビジネスを加速させる!サイトの成功条件をプロが解説

デジタルマーケティングでビジネスを加速させる!サイトの成功条件をプロが解説
デジタルマーケティングを始めようとおもっても、なにから手を付けたらよいのかわからない方も多いですよね。

そのときに重要となるのは『マーケティング解析』です。

今回は、ビジネスを成功させるために重要な環境分析の基本や解析を進めるためのフレームワークをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

小池 昇司

小池 昇司(こいけ しょうじ)Modeart代表
経営コンサルタントとして、経営の成果に直結するWebマーケティング支援、ウェブ活用人材育成、経営戦略/ビジネスモデル見直し、経営管理、情報セキュリティ対策、ITを活用したデジタル化と経営力強化等の企業支援に従事。事業戦略、マーケテイング、ウェブ・SNS活用、ウェブ活用人材育成に一気通貫で関わる事で顧客に新境地を開くことを目指す。ウェブ解析士マスター、検索技術者検定1級、ITコーディネーター。
中田典男

中田 典男(なかた のりお)
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 プロデューサー
1957年、大阪府生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学)ロシア語学科卒業。
1979年、株式会社日本SPセンターに入社。DDB、オグルビーなどアメリカン・トラディショナルな広告づくりを範とする自社のポリシーにもとづいてイメージに流されない、「読める・わかる・伝わる」クリエイティブを目指す。主にセールスプロモ-ションの立案・新製品の市場導入、カタログやマニュアルのSPツールの企画・制作を担当。2014年以降、シニアマーケティング研究室に参画。シニア市場開発のための戦略ツールの構築、ペルソナの策定、シニア世代向けのクリエイティブ開発等に従事。

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環境分析のステップ

環境分析のステップ
環境分析とは、市場の規模やお客様のニーズ、自社の強み、弱みを分析し、事業の成功要因を見つけることです。

環境分析のステップは下記の5つに分かれています。

  • 外部環境分析
  • 内部環境分析
  • 市場機会の発見
  • 差別化の特定
  • 市場への展開

今回は、1番目の外部環境分析について詳しくご紹介していきますね。

外部環境分析

外部環境は、自社のビジネスに影響を及ぼす可能性があり、自社でコントロールできない要素です。

外部環境分析のフレームワークとして、マクロ環境分析する「PEST分析」や自社と他社を比較することで分析する「5フォース分析」があります。

PEST分析

分析している人
消費者や新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)による外出自粛など、ビジネスを進める上でコントロールできない要素があります。その外部環境を分析するためのフレームワークがPEST分析です。

PEST分析は、Politics(政治)、Economics (経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字からきています。それぞれの要素について簡単にご紹介します。

Politics(政治)

Politicsは法規制や税規制などの政治的要因のことです。たとえば、薬機法や消費税増税、GoToキャンペーン、地方自治体による外出自粛要請などがあります。

Economics(経済)

Economicsは景気などの経済的要因です。たとえば、リーマンショックなどの世界的な景気の悪化などがあります。

Society(社会)

Societyは生活様式やライフスタイルの変化など社会的要因です。たとえば、少子高齢化などによる需要の変化や新型コロナを機としたコンタクトレス決済や海外旅行へ行けない代わりの国内旅行の需要増加などがあります。

Technology(技術)

Technologyは特許や新技術の開発などの技術的要因です。たとえば、5Gの普及やZoomなどのテレワークツールの普及、スマートフォンの普及などがあります。

PEST分析を行なう際のポイントは、ビジネスに関連するエリアだけに留めることです。ご紹介したように外部要因は様々なものがあり、絞らなければ要素が無限大に広がっていってしまいます。

また、要因を洗い出す際は、ポジティブなもの、ネガティブなものどちらもリストアップするようにしましょう

5フォース分析

分析画面
5フォース分析は、マイケル・ポーターが提唱した競争環境を分析するためのフレームワークです。事業の競争環境を分析することができます。

市場における「競合他社」「買い手」「売り手」「代替品」「新規参入」のそれぞれの視点の影響力を分析します。分析することにより、新規参入や事業撤退などの経営判断やリソース投入の検討などを行えます。

競合他社

競争が激しい市場ではコストカットにつながったり、製品やサービスの差別化が難しかったり、成長の速度が遅いという課題があります。

そのため、競合他社の数や競合企業の強さなどの分析を行います。

買い手

買い手の力が強まる要因としては、供給過剰や買い手側の情報が多いことなどです。買い手の力が強まると値下げなどに影響します。

売り手

売り手の力が強まる要因は、売り手となるプレイヤーが少ない場合、自社にとって売り手が重要な場合などがあります。売り手が強まると自社の利益率に影響することになります。

代替品

市場の製品やサービスが他のサービスに代替されてしまう危険性のことです。代替品が驚異になるのは、イノベーションによって新しいサービスが開発されたり、ライフスタイルなどが変化してしまうといったケースです。

新規参入

新規参入の障壁は、業界への参入障壁の高さです。ブランド・認知度や法規制、流通チャネルなどが参入障壁になります。

事業分析

デジタルマーケティング
事業分析は、自社のリソースや事業の分析を行います。代表的なフレームワークとしては「3C分析」があります。

3C分析

3C分析は、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Conpany(自社)の3つの頭文字をとったものです。Custmer(顧客)は市場規模や市場の成長性、どのような顧客がいるのかなどを分析します。

Competitor(競合)は、どのような企業が市場にいるのか、競合の市場シェアなどを分析します。Company(自社)では、自社のリソースやプロダクト・サービスの強みなどを分析します。

3C分析は、顧客→競合→自社の順番に行うのがおすすめです。顧客のニーズを理解した上で、どのような競合がいてそれにどのように自社が答えられるのかを整理することでマーケティングの方向性を整理できます。

競合分析で自分のポジショニングで成功した事例の紹介ー宿泊施設斡旋専用サイトー

民泊に後発参入した中堅旅行会社の「宿泊施設斡旋専用サイト」の成功事例を紹介します。

この旅行会社は営業窓口での旅行販売が大半を占めており、ネット販売は未経験のチャンネルでした。複数の大手ポータルサイト、民泊専用サイトが市場シェアを占めている中での新規参入でした。

ウェブサイト自体の競争のほかにも、契約宿泊施設を各社が取り合う競争にも悩んでいました。

宿泊施設の獲得競争に対しては、コンテンツマーティングを駆使し、観光地の自治体や商工会のウェブサイトの検索クエリを分析し、季節毎のイベント情報、宿泊施設とその周辺の地図情報をもとに自然環境や歴史などの観光資源をコンテンツ化しました。

これによって、自社独特のコンテンツによる顧客価値を高めました

また、競合サイトの検索クエリと上位ランク検索語を調べることで、自社の広告やサイトコンテンツとの競合を避けるとともに、宿泊施設ごとのランディングページを最適化し、サイトコンテンツ、検索、広告の効果的な連動をとり、差別化につなげました

市場機会分析

マーケティングデータ
市場機会分析では、外部環境や内部環境を分析した上で、自社が戦うマーケティングの方向性を定めます。

SWOT分析

SWOT分析は、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字からきています。外部要因、内部要因を整理します。

SWOT分析は情報が膨大になるので自社に関係する情報から分析しましょう。

クロスSWOT分析

SWOT分析はただの状況の分析です。クロスSWOT分析を行うことで戦略の策定に役立てていきます。

たとえば、自社の強みと機会から自社の強みを活用し、さらに追い風に乗れるような積極化戦略、脅威と弱みからは脅威を最小化するための防衛策を検討したり、ビジネス撤退の検討などビジネス撤退、専守防衛があります。

SWOT分析は状況を分析するだけでなく、戦略の方向性を検討するために活用します。

STP分析

STP分析は、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning (ポジショニング)の頭文字からきています。

セグメンテーションで市場を細分化して把握した上で、ターゲティングによってどのような市場を狙うのかを策定し、ポジショニングで競合他社との差別化ポイントを規定します。

STP分析は環境分析を行った上で実施する、自社のマーケティングの方向性を定める上で重要なフレームワークです。STP分析を成功させるためのポイントは『6R』を意識することです。

6Rは、Realistic Scale(市場規模)・Rival(競合)・Rate of Growth(成長率)・Ripple Effect(波及効果)・Reach(到達可能性)・Response(測定)の頭文字からきています。この6Rが十分であれば効果的なSTPの可能性が高いです

ターゲット分析の考え方ーシニア市場におけるターゲットの考え方とは?

ターゲットを明確にすることは、マーケティングのかなめですが、一見ターゲットを設定しているようでいて、実はそうでないケースも見かけます。

シニアマーケティングもその一つといえます。仮に65歳以上の高齢者をシニアとするとその市場規模は、3,621万人(※)。総人口の28.8%を占めています。この巨大な市場を一つのターゲットとすることにまず無理が生じます。
※総務省「人口推計」:令和2年(2020年)11月1日(確定値)

そこで、株式会社日本SPセンターのシニアマーケティング研究室では、シニアを4つの類型に分けて考えることを提唱しています。

  • アクティブシニア
  • デフェンシブシニア
  • ギャップシニア
  • ケアシニア

元気で活動的なアクティブシニアと、その対極にある要介護等認定人口であるケアシニアが一般的なシニアのイメージでしょう。ところが、実際はその両者に属さない人たちも多く存在します。

すなわちディフェンシブシニア、ギャップシニアです。一見地味にみえるこの2つのグループが実は多数派であり、高齢者人口の過半数を占めているのです。

シニアマーケティングに成功事例が少ないといわれる理由の一つは、多数派へのアプローチができていなかったことにあるかもしれません。

シニアマーケティング

出典元:株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男

 

マーケティング・ミックス

スマートフォンを使って分析する人
市場機会分析で自社が進む方向性がみえたら、実際の施策の検討を行います。施策の検討を行なうのが「マーケティング・ミックス」です。

マーケティング・ミックスのフレームワークには4P分析、4C分析があります。

4P分析

4P分析は、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の4つの視点で施策を検討します。特徴としては、自社でコントロール可能な売り手目線での施策検討ということです。

製品戦略

製品やサービスについて検討します。製品・サービスは大きく3つの要素で分かれます。

1つ目は、顧客の本質的なニーズを満たすための機能や価値などの製品・サービスのコア。2つ目は、コアに付随するパッケージ、品質、ブランドなどの製品形態。3つ目は、アフターサービスや保証などの付随機能です。

価格戦略

価格戦略では、コスト、カスタマーバリュー、競争環境を分析したで適切な価格を設定します。価格設定は安ければいいわけではなく、自社の利益や顧客の妥当性、自社のポジショニングも含め検討しましょう。

流通戦略

流通戦略ではどのような場所で販売するのかを検討します。販売場所を検討する上でのポイントは、顧客の動線や製品のブランドの方向性や流通業者をどのように通すのかといったことです。

販売促進戦略

販促戦略は、どのように顧客に商品やサービスを認知してもらうのかなどを検討します。具体的な施策としては、広告やパブリシティーなどがあります。

4C分析

4C分析は、企業目線で検討するフレームワークとは違い、顧客目線でマーケティング・ミックスを検討します。Customer Value(顧客にとっての価値)、Customer Cost(顧客にとっての費用)、Covinience(顧客にとっての利便性)Communicaiton(顧客とのコミュニケーション)の頭文字からきています。

顧客にとっての価値は4P戦略の製品戦略、コストは価格戦略、利便性は流通戦略、コミュニケーションは販促戦略です。検討することは似ていますが、顧客視点から見てどのように感じるかを検討することが重要です。

4C分析、4P分析はどちらがいいというわけではなく、どちらの視点からも検討することでより良いマーケティング・ミックスを検討できます。

まとめ

マーケティングを検討するときには、フレームワークを活用するのがおすすめです。本稿では代表的なフレームワークをご紹介してまいりましたが、そのほかに色々なフレームワークがあります。

フレームワークは、事象を調べ、整理した上で、あなたならではの解釈を示すことが重要です。

また、一つのフレームワークだけではなく、複数のフレームワークを使い、より精度の高いマーケティング戦略の検討をします。様々なフレームワークを学び、まずは実際に使ってみることでより理解を深めてみてはいかがでしょうか。

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(監修: ウェブ解析士協会
(編集: 創業手帳編集部)

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