Sprocket 深田浩嗣|全体最適で顧客体験を向上!CROプラットフォーム「Sprocket」で目指す人と企業が高め合う関係づくり

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年01月に行われた取材時点のものです。

インターネット創世記に参入!ゆめみを経てSprocketで実現する、理想的な顧客体験の提供


部分最適ではなく全体最適でWebマーケティングを捉えながら、CVR改善を図るCRO(コンバージョン最適化)が注目されています。

その目的は、コンバージョン率を改善し最適化するための施策により、顧客体験を向上させること。結果として、ユーザーと企業のより良い関係性構築へと発展させることができます。

同分野のパイオニアとして「テクノロジーで、人と企業が高め合う関係を作る」をミッションに掲げ、高い評価を得ているのがSprocket(スプロケット)です。

コンバージョンを最適化するプラットフォーム「Sprocket」の開発・販売・運用と、長年の実践データから培われたメソッドを用いたコンサルティングを展開しています。

今回は代表取締役を務める深田さんの起業までの経緯や、インターネット創世記から活躍を続けるキャリアと現在の事業について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

深田 浩嗣(ふかだ こうじ)
株式会社Sprocket 代表取締役
15年にわたりモバイル領域でのデジタルマーケティングを提供しECを中心に300社以上のWebサイト立ち上げ・改善を実施。2014年、株式会社Sprocketを設立。コンバージョンを最適化するプラットフォームと長年の実践データから培われたメソッドを用いたコンサルティングで、ユーザーに理想的な顧客体験を提供。「テクノロジーで、人と企業が高め合う関係を作る」をミッションに、ビジネス成長に貢献することを目指している。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

シリコンバレーでの体験を経て起業!日本のインターネット産業の牽引を決意

大久保:まずはご経歴についてお聞かせ願えますか。

深田:京都大学工学部情報学科を卒業後、同大学院情報学研究科在籍中の2000年に、共同創業者の片岡と中田とともにゆめみを設立しました。

現在のようなスタートアップブームとは程遠く、インターネット産業の社会的認知度も低い時代でしたね。

大久保:インターネット創世記に学生起業されたんですね。京都大学大学院生は、中央行政機関や大手メーカーなどに進みキャリア構築される方が多いと思います。そんななかで深田さんが起業を選ばれた理由をお教えください。

深田:起業前の1999年、アメリカ・カリフォルニア州のシリコンバレーでインターン生として働いた経験が大きな転機となりました。

NECの研究所で約3ヶ月間、WEB開発業務などに従事したのですが、ちょうどグーグルが世の中に出てきたタイミングだったこともあり、本場の熱気とレベルの高さを直接肌で感じる毎日だったんです。

スタンフォード大学の学生たちが自ら産業を起こそうと、前のめりで取り組んでいるのを目の当たりにするなど、刺激を受ける日々を過ごすことができました。

大久保:院生時代にシリコンバレーで働けたというのは、ものすごい幸運に恵まれましたね。

深田:はい、何ものにも代えがたい貴重な体験だったと実感しています。

シリコンバレーで得たものはたくさんあるのですが、なかでも強烈に味わったのが「危機感」「ポジティブなポテンシャル」でした。

1つ目の危機感は、日本のインターネット産業が世界の潮流から大きく遅れを取っているという現実に直面したことです。

当時の私はコンピュータサイエンスを専攻していましたので、もちろんインターネットの可能性に期待していました。ただ、自分と年齢が変わらない人間たちが業界の牽引を目指すアメリカのような動きが日本にはほぼなかったんですね。

京大大学院は優秀な学生が集まっているとの評価が高い環境ですが、その差に愕然としました。

と同時に、「このままではいけない」という危機感を覚えたんです。自然と「日本の流れを変えるためには起業しかないだろう」と決断することができました。

大久保:シリコンバレーの同世代がアグレッシブに挑戦している姿を通して、日本の現実と向き合うことができたんですね。続いて、2つ目の「ポジティブなポテンシャル」についてもお聞かせください。

深田:あらためて「インターネットは世界を大きく変える産業に違いない」という確信とワクワクする高揚感を得て、前へ進むことができました。

もともとインターネットの力を信じていましたので、その自分の想いに間違いはないんだと自信を持てたんです。シリコンバレーでの経験は、現在につながる礎となっています。

京都大学大学院生時代に設立したゆめみを経て、新たな挑戦でSprocketを創業

大久保:2000年にゆめみを創業し、新たなビジネス展開としてSprocketを設立されました。このあたりの背景についてお聞かせください。

深田:ゆめみを設立した理由のひとつは、先ほどお話ししたグローバルにおける日本の現状や立ち位置に対する危機感を覚えたことです。「シリコンバレーをはじめとする世界の人間たちに負けないようにがんばろう」という想いで事業を継続してきました。

ただ、14年ほど運営してきたところで「新たなスキームが必要ではないか?」と考えるようになったんです。

ゆめみでは、インターネットを主とした開発・制作・コンサルティングの内製化支援などを事業の柱とし、基本として受託ビジネスを展開しています。逆境に直面することも少なくありませんでしたが、おかげさまで業績・企業規模ともに伸ばすことができました。

このビジネスを今後も推進すると同時に、自分たちでプロダクトを作り込んで勝負をかけるアプローチもありなのではないかなと。

私の性格的にも、あとあと人生を振り返ったときに「あのときやっておけばよかった!」と後悔するのが嫌なんですね。

もちろん散々悩みましたが、挑戦を選ぶほうが私の人生においてもプラスになると決意し、2014年にSprocketを設立しました。

大久保:ゆめみは共同創業者のおひとりである片岡さんに任せ、深田さんと中田さんで立ち上げたと伺っています。

深田:はい。やはり多くの苦楽を共にした仲間ですので、3人できちんと話し合い、この形がゆめみ・Sprocket両社の運営において最適だろうと判断しました。

ネガティブこそ共有!苦楽を共にした仲間と共闘し成功させるための会社経営

大久保:深田さんにとってSprocketは2社目の設立ですが、1社目のゆめみでのあらゆるご経験を通し、Sprocketの運営で大切にされていることがあればお教えください。

深田:SprocketのCTOは、ゆめみを共同運営してきた中田が務めています。私にとって彼の在籍は大きな強みです。

なにしろゆめみは初めての起業でしたので、山あり谷ありの連続だったんですね(笑)。そういう過酷な状況を一緒に乗り越えてくれた、かつ知識も経験も豊富な仲間と共闘できるのは非常にありがたいです。

企業経営はひとりでできるものではありません。だからこそ、なにかあったときに「逃げずに一緒に戦ってくれる」と全面的に信頼できる存在は大切だと実感しています。

大久保:強力な味方は、経営者にとってなにより心強いですよね。組織構築において重視されていることについてもお聞かせください。

深田:Sprocketでは「こういう組織にしたい」という明確なビジョンにもとづいて、初期の段階から組織設計をしています。

初めてづくしの1社目では、当初「組織を設計する」という発想がなかったんですね。すべてが未知の世界でしたので、手探りの連続で成長させてきました。

このゆめみでの経験を活かしながら、Sprocketの組織構築を円滑に行うことができています。

大久保:読者の起業家にとって役立つ「いまだからこそ話せる失敗談と解決法」があればお聞かせ願えますか。

深田:私の失敗談は、会社の状況が厳しいときにメンバーときちんと向き合えていなかったことです。

1社目のゆめみの運営当時、私の場合は「不安を感じさせてしまうのではないか?」と考えてしまい、どんなに大変な時期でも隠してしまう振る舞いをしていました。

でも、これは良くないなと。振り返ってみて、いまではそう思っています。隠すよりオープンにしていったほうが、むしろ信頼してくれて良い関係性を築けるケースが多いからです。

現在は意識的に対応を変え、ネガティブな状況になったときこそ、社員に正直に打ち明けるようにしています。その結果、「一緒にがんばりましょう!」と励まされて逆に勇気をもらうことも少なくないんです。ものすごくうまくいくようになりました。

これから起業される、あるいは起業後に悩んでいる方々には、ぜひ「どういうマインドセットで経営層や従業員と向き合うべきか?」を重視していただきたいなと思います。

CROプラットフォーム「Sprocket」の開発・販売・運用と、コンサルティングを提供

大久保:Sprocketの事業内容についてお教えください。

深田:弊社では、CRO(コンバージョン最適化)プラットフォーム「Sprocket」の開発・販売・運用とともに、導入サイト・アプリに最適な企画・施策を実施するコンサルティングを提供しています。

「Sprocket」の特長は、一人ひとりのユーザーの行動から最適なタイミングで、ポップアップによる「声かけ(Web接客)」を行い、実店舗のような質の高い接客をWebサイトで実現できることです。

仮説にもとづいた接客シナリオを実施して、KPI/KGIの視点からA/Bテストで検証を行うことで改善サイクルを回すための仕組みが備わっています。ユーザーの行動データの計測や細かなターゲティング、多彩な分析機能、外部連携など、成果を出し続けるための豊富な機能を揃えています。

導入企業内での運用も可能ですが、高い評価を得ているのがコンサルティングサービスです。

コンサルティングサービスでは、専任のコンサルタントが仮説の立案からシナリオの企画、設定、検証など運用を代行し、成果にコミットします。おかげさまで大手から中小企業まで、多くの企業様にご契約いただいています。

大久保:現在Webやアプリが抱えている機会損失の課題を解決する素晴らしいサービスですね。この問題点と改善策について、具体的に解説いただいてもよろしいでしょうか。

深田:標準的なコンバージョン率は1%〜2%程度ですが、弊社が開発上で注目しているのは「UI/UXの問題により、本来獲得できるはずのユーザーを逃している」という点です。

この解決を目的としたアプローチ手法は、大きく4段階に分かれています。

まず第1世代は、ページやWebサイトをすべて改善するという手法です。続いて第2世代では、A/Bテストによりページ内要素を検証・変更しながら改善サイクルを回していきます。

次の第3世代から弊社の領域に入ってくるのですが、ユーザーの行動を追いかけて「こういう動きをしているから、この方はこんな状態だろう」と推測し、こちらからアクションをとる手法です。ユーザー行動に着目して施策を実施しながら改善を目指すんですね。

この第3世代をさらに全体に広げた改善策が、弊社で実践している第4世代です。

Webサイトやアプリを横断しながら、「ユーザーの動きをトータルで判断すると、こういうマインドの変化がある」という流れをデータで検知し、ユーザーがスムーズに前に進めるようにアプローチします。総合して捉えながらアシストする手法です。

このような双方向型Web接客(RTIM)により、カスタマージャーニー全体を改善しています。

大久保:まるで実店舗の店員がサポートしてくれるようなきめ細やかさですね。

深田:弊社では「Sprocket」のことを、よく比喩として「店舗スタッフの役割」とお伝えしています。

実店舗をWebやアプリに例えると、無人のお店にお客様がいる状態なんですね。だから自分に合った商品が見つけられなかったり、購入前に納得感が得られないと帰ってしまうんです。

この状況を把握して、「この人は困っていそうだ」というふうにユーザー側のあらゆる操作画面に合わせて対応してあげれば、購入までの導線もスムーズになります。

このようにさまざまな課題を解決できるのが「Sprocket」です。

ただし、たとえば「このユーザーはカートで佇んでいるが、恐らくこんなことに困っているのではないか?」といった解釈は人為的に紐付ける必要があるんですね。

そこで弊社では、人の手や判断が必要な作業に対してコンサルテーションを提供しながらバックアップしています。

「テクノロジーで、人と企業が高め合う関係を作る」に込めた関係性強化の理念

大久保:最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますか。

深田:弊社の基本的な方針のひとつは、ユーザーと企業の関係性をより良くしていくためにはどうしたらいいか?を追求することです。「テクノロジーで、人と企業が高め合う関係を作る」をミッションに掲げています。

「金銭的インセンティブだけでは、ユーザーも企業も幸せにはなれない」という価値観のもと、サービスを提供してきました。

多くの企業様との取引を通じて感じているのは、企業規模を問わずどの企業でも「“良いもの”を“良い”と思ってくれる方に購入してほしい」との想いで運営されているということです。そして「もっとこの会社を知って、さらに良さを理解したい」といった前向きな気持ちを抱くユーザーもいます。

こうした関係性は、双方のコミュニケーションやインタラクションによって構築されていくんですね。

製品やサービスを生み出している企業の理念やビジョン、想いがあり、それらに触れて「この企業ともっと付き合いたい」と思ってくださる顧客がいる。そんなお客様に対して、「もっと良いものを提供したい」という真摯な努力で企業は成長していきます。

現在弊社では製品やサービスの購入促進に関する支援を行っていますが、今後はもっとこうした関係性をユーザーと企業との間に生み出していきたいんですね。この関係性強化を実現できるプロダクトとしても「Sprocket」を発展させたいと考えています。

弊社のプロダクトを「使い続けたい」と選んでいただけるように、さらなる研鑽を積んでいきたいです。

関連記事
Seibii 佐川 悠|自動車アフターマーケットで快適な顧客体験を創り出す
マーケティングに欠かせない顧客視点や顧客体験とは?
創業手帳別冊版「創業手帳 人気インタビュー」は、注目の若手起業家から著名実業家たちの「価値あるエピソード」が無料で読めます。リアルな成功体験談が今後のビジネスのヒントになるはず。ご活用ください。

(取材協力: 株式会社Sprocket 代表取締役 深田 浩嗣
(編集: 創業手帳編集部)



創業手帳
この記事に関連するタグ
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】