pamxy 西江 健司|テレビからSNSへの転身!エンターテックで世界を変える

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年03月に行われた取材時点のものです。

自社SNS総フォロワー数200万人超!今後のテレビ業界の展望や、SNSとコマースの可能性に迫る


SNSの隆盛に伴い、日本に限らず世界各国では若者のテレビ離れが進んでいます。
このような状況下で、テレビというプラットフォームがSNSに取って替わられるのではないか、と危惧している方も多いでしょう。

今回インタビューを行った株式会社pamxy代表取締役の西江健司氏は、テレビ業界出身でありながらSNSで起業を果たした人物です。彼は何を思い・考え、テレビからSNSの業界へと転身したのでしょうか。

SNS領域で起業した西江氏に、起業までの経緯や心構えや、今後のテレビ業界の展望、SNSとコマースの可能性などについて創業手帳の大久保が聞きました。

西江 健司(にしえ けんじ)
株式会社pamxy 代表取締役
早稲田大学卒業後、TBSに入社。制作局にて『監獄のお姫さま』『日本レコード大賞』『爆報THEフライデー』を担当。入社2年目にして自身の企画が通り、『借金、チャラにします。』の総合演出を担当。2019年6月に活躍されていたTBSを退社。同年の9月に株式会社pamxyを設立。『エンターテック で、世界中ココロ躍らす。』を 掲げIP事業、マーケティング事業、コマース事業を展開。自身出演のYouTubeチャンネル『あるごめとりい』はチャンネル登録者数110万人超。マーケティング事業では上場企業をはじめとして広範なドメインのマーケティング支援を行う。コマース事業ではオンラインギフトを中心とした新規事業開発においてPMを務める。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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TBSでの経験。理想とのギャップから「pamxy」を創業


大久保:新卒で入社した会社から起業までの経緯を教えてください。

西江:新卒でTBSテレビに入社し2年ほど務めましたが、入社当時は「起業する」というつもりはありませんでした。

しかし、2年目で目標としていた「自分で企画を通して、番組を制作する」という目標が叶いました。その際に同世代の人が全く観ていない事実を痛感したんです。この出来事から、テレビというハードに今後40年ほど、自分の時間を投資することに疑問を持ち始めました。

また、同じタイミングで父との死別を経験したことが、今後の人生を振り返る大きな転換期となり、TBSを退社することとなりました。

その後は、在職中からなりたかったエンジニアの勉強を進めつつ、ディレクター時代に作っていた企画をYouTubeにも投稿していたのですが、そのうちの1つが当たり収益が立つようになったんです。

そこで、自分がエンジニアになるのではなく、自分以外のエンジニアと手を組むという選択の方が物事が進むのが速いと思い、自社チャンネルをIP事業として起業しました。

その後、企業からYouTubeの伸ばし方について聞かれることが増えたため、マーケティング事業部として切り離し、現在のpamxyの姿になりました。

大久保:ありがとうございます。確かに、40年先もテレビが今のポジションにいるとは言い難いですよね。

西江:自分自身、エンターテイメントが好きでテレビ局に入社した背景がありますが、経験を積んだ中で、結局プラットフォーム自体が環境変数に応じて進化しないと淘汰されてしまうことを痛感しました。

テレビ自体は免許事業の優位性があるが故に進化は望みにくい事に気づいた時に、プラットフォームそのものを作り出す技術の方に興味を持ち始めました。エンジニアになりたいと思ったんですよね。

今はプロダクトを自分が作っているわけではありませんが、ミッションとしてエンタメの会社ではなく、エンターテックの会社を作りたいと思っているので僕自身も技術に触れてエンジニアを大切にしたいという想いが強いです。

SNS・コミュニティを作りたいという強い思いから新サービスをリリース予定

大久保:エンタメとテクノロジーというところで、YouTubeを持っているGoogleが海外のプラットフォーマーとして居ると思うんですが、プラットフォームを作りたいという思いもあるのでしょうか。

西江SNS・コミュニティを作りたいという思いがあります。SNSには、TwitterやYouTubeなど純粋なエンタメ型SNS、Wantedlyなどのある目的をもった目的型SNSの2種類があると思っています。

エンタメ型SNSは非常に難易度が高いですが、目的型SNSはまだ作れる、というか、実際に今作っていて今月リリース予定なんです。

大久保:今の主力事業に加えて、プラットフォームにも広げていこうと考えているのでしょうか。

西江:そうですね。今の主力はIP事業で、YouTubeチャンネルからのアドセンスやグッズ・アパレル販売に純広告、マーケティング事業の方では法人様のSNS運用を行っています。

そこから上がった利益を新規事業に投資しているという形です。

どちらも経験しているからこその視点|テレビと動画の違いとは?

大久保:面白いコンテンツを作るという点では、テレビも動画(YouTube)も似ている気がするのですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

西江:前提として「テレビと動画」という見方ではなく、「テレビにおける動画コンテンツとWebにおける動画コンテンツ」という見方を私はしています。

両者の大きな違いとして、動画を作成する際に、どの部分に力を入れるかという点があります。

たとえば、テレビでは1時間の番組を全視聴者が1秒目から見るわけではないので、どのタイミングから見始めた人でも掴めるように、全体として力を入れなければいけません。

一方、YouTubeやTikTokなどでは、よほどイレギュラーな動きがない限り、ユーザーは1秒目から動画を見るため、ファーストビューや最初の数秒に最も力を入れます。

また後者では、動画のクオリティが高いだけではバズることが難しいため、プラットフォームにおけるアルゴリズムの理解などマーケティング要素が大きい点も違いだと思います。

テレビの今後の展望

大久保:今後テレビはどうなっていくのでしょうか。

西江:テレビは正直もう伸びないと思います。ただ、「テレビ局」はまだまだやりようがあると思っています。

「Tver」などではテレビ番組も見られているのですが、結局ネット上のコンテンツとして消化されているんですよね。なので、純粋な電波放送という形のテレビはもう見られなくなってきていて、今後の伸び代もないと思います。

ただ、テレビ局は戦い方によっては、これからも生き残ることができると考えています。

普通の企業はテレビに参入することはできませんが、テレビがネットに参入することはできます。なのでテレビで育ててきたIPであったり、今までの素材や資産だったりを、適切なオペレーションの元で活用することができれば、無限に戦い方があると思います。

落ちてきているものの、まだまだテレビは強いので、本当にやり方次第ですね。それこそ、そこらのスタートアップなどよりは圧倒的に有利だとは思います。

大久保:将来的にテレビが落ちていくにしても、何か残る部分はありそうですよね。

西江:テレビはサーバーを介さないので、遅延やサーバーが落ちるといったことがない点が強みです。なので、速報やスポーツ観戦の大量配信などでは、代替されるものが出てこない限り、需要が続くとは思います。

ただ、近年ではAbemaTVなど低遅延かつ大規模ネット配信も実現できているので現在の優位性は長期では保持しつづけられないでしょう。

コマースの可能性|YouTubeやIP事業とのシナジー

大久保:通販(コマース)とコンテンツを作るのは大きな違いがあると思うのですが、動画からコマースにも手を広げた理由などはあるのでしょうか。

西江:昨年上場した「ANYCOLOR」さんのIR情報における売り上げ構成比を見ると、コマースが占める割合が大きく、重要性を感じたという点があります。

今まで行ってきたコンテンツ制作とは異なるという点がありますので、受注生産方式でミニマムからスタートしています。

また、普通のコマース企業とは異なり、動画を介して販売を行うことで、YouTubeでのアドセンス収益を得ながら、広告宣伝ができ、コマースの売り上げにもつながるという、収益性の高いモデルが実現できる点も魅力です。

YouTubeで戦う理由|背景にある大きなメリット

大久保:YouTubeというプラットフォームを重視しているのは、コマースでのチャンスがあるからなのでしょうか。

西江:そうですね。YouTubeが一番ユーザーの心を動かせる媒体だと思っています。

これは、単位時間あたりの情報量の違いだと整理していて、文字(Twitter)よりも画像(Instagram)画像よりも動画(TikTok・YouTube)の方が情報量が多く、情報量の増加とともに、購買意欲を刺激する傾向が高いです。

そして、動画の中でもより長尺のYouTubeの方が、動画を見ているうちに投稿者への信頼感が生まれるため、より購買行動に繋がりやすいという特徴があります。

立ち上がりこそほかのSNSに比べて遅いものの、立ち上がった先にあるメリットが一番大きいため、YouTubeを入口として設計しています。

起業に大切なのは思考回数と試行回数のバランス。そして、優秀人材の雇用

大久保:起業において大事にしていることはありますか。

西江:既存事業があることを前提に考えると、「既存事業とのシナジー」・「市場成長率・市場規模」・「新しい事業をやり切る覚悟があるか」という点が大事だと感じています。

最初の2つはロジックとして大切なところなのですが、3つ目の、全然ロジカルではない気持ちの面も凄く重要です。何か問題が起きたときに折れないでいられる、自分がやりたいと思う事業を選択するべきだと思います。

大久保:新しく事業を作る際に意識していることはありますか。

西江:何もない状態のときは、とにかく手数を打つことが大事だと思っています。
実は、今自社で持っているYouTubeチャンネル(登録者100万人超え)は、TBS時代に没にされた企画のうちの1つなんです。

それこそ創業期はがむしゃらに手数を打っていましたが、がむしゃらに打つ中でも、思考回数と試行回数のバランスがとても大事だったんだなと今振り返ると思います。

少し考えて行動するだけで成功率はグンと上がりますし、どちらかだけになってしまうことがよくないのだと思います。

大久保:起業するにあたって大変だったところ・やって良かったことがあれば教えてください。

西江:基本は全部大変なのですが、本当に悩んだのは「人」の部分でしたね。ビジネスにおいて収益を上げられるモデルは既存でいくつもあると思うので、それよりも一緒に推進する人がとても重要だと思っています。

今もやっていることですが、やって良かったこととしては、スタート時のコアメンバーの選定・採用を妥協しないことですね。迷ったら採用しないといったレベルで行っています。

たとえ時間がかかったとしても、コアメンバーをガッチリと固めることができれば、その後に取り返せると思いますし、固めないまま進んでしまった場合の方が大変だと思います。

また、自分よりも優秀な人を採用できれば、社内でも刺激がもらえますし、会社だけでなく、自分自身のレベルアップという面で見ても非常に大事にしている点です。

ディズニーランドのように、世界中の心を躍らせるコンテンツを

大久保:西江さんの今後の展望について教えてください。

西江:凄く長期な目線では、ディズニーを越えるエンターテックコングロマリット企業を作りたいと思っています。イメージとしては、ディズニーよりも大人向けのコンテンツ・IPを作成し、エンターテックで世界中の心を躍らせたいです。

壮大な夢としてディズニーを超えるテーマパーク建設があるので、最初はメタバースで構築し、その後にオフラインの世界で実現するといった流れは全然あると思っています。

ただ、メタバースなど技術的な進歩が実現された未来でも、企業優位性を維持するためには、IPがとても重要だと考えているので、短期・中期的な目線では、SNSを起点としてIPを作り出すことに注力しています。

現代は、映画やゲームなどのお金がかかるものを作らなくても、ライブ配信を使えば資本が0円でもIPが作れる時代ですので、スタートアップから世界を目指す立場上、SNSを起点としてIPを作り、IPの横展開としてコマースにも手を広げているような状況です。

大久保:最後に起業家へのメッセージをお願いします。

西江:代表の役割としては、どれだけ自分より優秀な人を採用し続けられるか、キャッシュフローとMVVにどのように力を入れるかという点が大事だと思います。

また、「人」の問題も含めいろいろな困難に直面することがあると思いますが、企業としてハードな状況を迎えているときに、ハッタリでもいいのでトップが一番元気であることがとても大事だと考えています。

ハードな状況を楽しめるようなスタンスであれば、大失敗や潰れることがあっても、きっとまた再起できると思います。

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(取材協力: 株式会社pamxy 代表取締役 西江 健司
(編集: 創業手帳編集部)



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