デジタリフト 百本正博|黎明期に参入して成功!デジタルマーケティングの未来を担う発想力豊かな着眼点に迫る

創業手帳

デジタルマーケティングのパイオニアが語る、業界で成功するための秘訣


多くの消費者がスマートフォンやタブレットを常時手にし、時間も場所も問わず様々な商品やサービスに触れることができる時代において、デジタルマーケティングのニーズが増加しています。

デジタルマーケティングとは、ウェブサイトやSNS、アプリなど、あらゆるチャネルを通して得られる消費者のデジタルデータを活用してマーケティングを行う手法です。テクノロジーの発展に伴い、実店舗での購買行動をビッグデータやAIなどにより分析し、潜在ニーズやトレンドの検証も実現できるようになりました。

年々注目を集めるデジタルマーケティング業界ですが、黎明期に参入したパイオニアとして大きな成功を収めているのがDIGITALIFT(以下デジタリフト)です。「カスタマーの意思決定を円滑に」をコンセプトに掲げ、トレーディングデスク事業やコンサルティング事業をはじめ、制作・アフィリエイト・SEO事業などワンストップでデジタル領域のソリューション提供を行っています。

同社の代表取締役を務める百本さんが起業するまでの経緯や、業界で成功するための秘訣について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

百本 正博(ひゃくもと まさひろ)
株式会社デジタリフト 代表取締役
1995年大学卒業後、株式会社大広に入社。営業局にて総合流通業(GMS)、通信事業、メガバンク、自動車メーカー、総合飲料メーカー、信託銀行等を担当し、ブランド開発、VI開発、コミュニケーション構造構築、メディアプランニング及びバイイング、イベント企画立案及び実施管理に従事。2005年に退社の後、IT企業のコンサルタントにて新規事業開発等を担当。同時にサラブレッドの輸入販売育成業の立ち上げに参加する。その後、2012年11月、株式会社デジタリフト(旧株式会社電子広告社)を設立、代表取締役に就任。2021年9月に東京証券取引所グロース市場(旧マザーズ)に上場を果たした。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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学生時代から抱いた起業の希望を胸に、着実にキャリアを積み会社設立

大久保:まずは起業までの経緯についてお聞かせ願えますか。

百本:大学卒業後に新卒で入社した大手広告代理店にて、AE(アカウントエグゼクティブ)として大手流通企業やメガバンク、大手通信会社、自動車メーカーなどを担当。10年ほどキャリアを積み、総合的なマーケティングの知見を得ました。

もともと学生時代から抱いていた「ゆくゆくは起業したい」という希望を実現するための土台が作れただけでなく、社会人としての人生について思いを巡らせる過程で興味を持った広告営業としてスキルを磨くことができ、今振り返っても貴重な経験だったと実感しています。

独立後は一旦マーケティングから離れまして、最初の仕事は大手インターネット広告会社での営業コンサルティングでした。同時に、アメリカ中東部にあるケンタッキー州から競走用のサラブレッドを輸入販売する事業の立ち上げに参画しています。

大久保:最初は「馬」で起業されたんですね。サラブレッド輸入でどんなことを学ばれたのかお教えください。

百本:サラブレッド関連事業は非常に奥が深いことに加え、億単位の潤沢な資金が必要です。また、独自の慣習やしきたりも色濃く存在する世界でした。そんな業界で成功している先人から学んだのは主に2つです。

まず1つ目は、決断力の重要性。

たとえばサラブレッドのオークションで、皆さんお馴染みの著名馬主の方は、予算6,000万円にもかかわらず「1億出します!」。パッとその場で即決即断されるんですね。買付に同行している私たちからすると肝を冷やすような経験でもありましたが、その鮮やかな決断姿勢から得るものが大きかったです。

そして2つ目は、資金調達の大切さ。

当時、景気が悪化して銀行がお金を貸してくれない事態に陥りました。リーマンショック直前までは「借りてください!」なんて積極的に勧められていたのが、以降はなかなか貸してくれなくなったんですね(笑)。嗜好性の極みの領域で運営する事業は、なにかと景気の影響を受けることが多いですので、致し方ないところではあるのですが。

結果として本当に資金が必要なときにスムーズな調達が難しくなり、自力で建て直さざるを得なくなってしまい時間がかかりました。だからこそ、同じように多額の資金が必要な事業をされている方はもちろんなのですが、すべての起業家に「資金調達は事業が順調なときこそやっておいたほうがいい」とお伝えしたいです。

こうした紆余曲折も経験しながらサラブレッドの輸入販売事業を7年ほど継続しましたが、その間にデジタルマーケティング分野に可能性を見出すことができました。

大久保:サラブレッド事業から、現在のデジタルマーケティング分野に挑戦されたんですね。その経緯についてお聞かせください。

百本:サラブレッドビジネスは、ニッチかつ生物の生産と育成という経験値が必須となる市場で、参入障壁が高いことが特徴です。私の場合は業界に先輩がおり、一緒に開業できたから良かったようなものの、常にチャンスを得られる分野なわけではありません。

一方、デジタルマーケティング業界は競合が多い分、比例して案件も潤沢です。そして常時ニーズがあるわりに、デジタルマーケターや関連職種といった供給サイドの人材が少ないんですね。だからこそ自然と「新卒入社から10年かけて培った知識や経験が寄与できるのではないかな」と考えることができました。

この想いをもとにデジタルマーケティング領域への参入を決意し、2012年に電子広告社を設立。その後、2020年3月1日付けで現在のデジタリフトに社名変更しました。

中小企業やベンチャーが勝つために必要となる新たな技術領域開拓

大久保:デジタルマーケティングに可能性を感じた理由について、さらに詳しくお聞かせください。

百本:私が起業した2012年より少し前の2010年頃は、まだマーケティングは総合広告代理店が担っていた分野とネット広告で分かれていました。ただ、そこからネット領域は急速な進歩を遂げ、できることがどんどん増えていったんですね。年々双方の境目もなくなっていくと感じました。

加えて、ちょうどDSP(Demand-Side Platform)が広まり始めた時期でしたので、「これだ」と。まずはDSP運用を事業の柱としてスタートしました。

大久保:ビジネスの発展を期待できる業界ではありますが、競合する大手企業と戦う必要もありますよね。競合対策のコツについてお教えください。

百本:デジタルマーケティング業界の大手企業は、サイバーエージェントやオプト、セプテーニですね。同じ領域から参入すると、当然のことながら他社とのバッティングが多くなります。

こうした環境下で重要なのは、大手との位置関係を把握した上で、自社にとってより優位な状況を作り上げることです。

私が起業したときは、マーケティングデータを活用することで実現可能な分野が加速度的に増えていた時期でした。そんな中で選んだのが、先ほどもお伝えした当時まだ普及していなかったDSPです。起業の翌年にはDSP市場の広がりも影響し、顧客もDSPを理解してくれるようになりました。

デジタルマーケティングは新しいサービスが続々と登場する世界だからこそ、企業規模がすべてにおいて有利に作用するわけではありません。つまり新たな技術領域開拓は、中小企業やベンチャー、スタートアップの勝機になります。

大久保:なるほど。現在はマーケティングだけでなく、周辺領域も含めたコンサルティングや、顧客に伴走しながら効率化を図る提案をされていると伺っています。百本さんの事業展開は、会社をより強固にするためにも必然なのですね。

百本:はい。テクノロジーが急速に進んで便利になった反面、デジタル分野はより複雑化しました。弊社ではデジタルマーケティングの専門家としての知見を活かし、多種多様な機能からその顧客に最適なプランニングを提供しています。

広告を出す前段階のマーケティング構造へのアプローチや、顧客の状況などを見極めて経営面の助言まで行う「CdMOサービス」、実際の広告運用では「アジャイル型広告運用」を行うなど、常に変化する状態を見極めながら最適化を図るのが弊社のスタイルです。

困難な時期を乗り越えたのは、部下を信頼して任せた権限移譲の決断

大久保:会社設立からあらゆる困難を乗り越え、見事に10周年を迎えられましたが、大変だった時期についてお聞かせください。

百本:いくつかあるのですが、組織面でいうと40名ほどの規模にまで成長した後、従業員のバランスが崩れまして。結果として人員の入れ替わりが発生しました。当時は大変でしたね。

大久保:入れ替わりは多くのスタートアップの通過儀礼でもあるとはいえ、渦中にいるときはきついですよね。御社の場合はどんな原因だったのか、どういう対策を取って乗り越えたのかについてお聞かせください。

百本:原因は2つありました。

まず1つ目は、IPOの観点から企業に求められる要素を担保するために組織編成や管理体制などをアジャストさせた結果、それまでのカルチャーとは異なる環境へ移行したこと。

そして2つ目は、起業当初から「みんな大人だし、常識の中できちんとやろう」と暗黙の了解で決まり事を作らずに運営できたのが、企業規模の拡大により通用しなくなったこと。

これらの対策として、まず「会社としてこういう運営方針でやっていく」という指針をあらためて明確にしました。その上で、この方針に賛同してもらえる人材の採用や、社内整備に努めましたね。2年から3年かけて試行錯誤しながら実践し、乗り越えて現在に至ります。

大久保:徐々に組織が大きくなってくると、経営者と現場とのコミュニケーションが思うようにいかなくなりますよね。

百本:はい。私とメンバーだけだったのが、私とマネージャーとメンバーの構図になり、トライアングルの多層化の影響を痛感しました。

ただ、マネージャーにもマネジメント業務や人格がありますので、「なにをどう尊重するのか?」というポイントが非常に重要なんですね。

そこで私は「社長がなんでもかんでもやるのが一番良くない」と判断しました。積極的に権限移譲し、余計な口出しは一切せずにきちんと任せたのですが、この私自身の意識の徹底も結果的に良かったと思っています。

忘れてはいけない「クライアントにもお客様がいる」という基本姿勢

大久保:創業手帳の読者には、デジタルマーケティング業界での起業を考えている方もいらっしゃると思います。そうした方々へのアドバイスとして、この業界に向いている人間の資質や、技術を身につける上でのコツについてお教えください。

百本:ウェブなどを活用し、自ら進んで学習するセルフラーニングが癖づいている方は成功しやすいですね。これは間違いなく言えることかなと思います。

それから同時に、デジタルだけではなくマーケティングの専門家が執筆した書籍での勉強を並行して行えるかどうかも大切です。

興味がある領域を積極的に調べ、深堀りしていく作業は必須なのですが、軸となるベースを構築するためにマーケティング・マネジメント論を身につけたほうがいいですね。この両軸があることで正しい方向への知識と経験の積み上げができ、しっかりとしたキャリアを築いていくことが可能です。

セルフラーニングのみで進めてしまうと、トレンドの領域や手法、ツールに偏ってしまう傾向がありますので、「基準点がどこにあり、今どこにいるのか?」の判断ができなくなってしまうんですね。この基準点を構築するためにも専門書での学習は欠かせません。

大久保:顧客に対する基本姿勢で大事なポイントがあればお教えください。

百本:当たり前のことではあるのですが、顧客に向き合い続ける姿勢は絶対条件です。その際に、「すべてのクライアントにお客様がいる」という視点をあわせて持つようにしてください。

私たちにとっては目の前の取引先が顧客ですが、そのクライアントにも同じように大切なお客様がいらっしゃいます。「顧客に向き合う」の本質は、取引先のお客様にも誠実に向き合うことなんですね。

まずは顧客に伴走する決意をきちんと持つこと。その上で、その取引先のお客様視点を忘れずにビジネスを進めること。この2点が基本姿勢です。

大久保:確かに「すべてのクライアントにお客様がいる」という視点は絶対に忘れてはいけないですよね。

百本:目の前の取引先企業に対して「この方々が一番求めている成果はどういうものだろう?」と模索する。そして同時に、取引先のお客様をイメージしながら「クライアントの顧客が望んでいる“あるべき結果”はどれだろう?」と探求する。

この両輪があってこそ、初めて質の高いサービス提供が実現できます。

大久保:昨今の業界動向についてもお聞かせいただけますか。

百本:キーワードは「原点回帰」です。

たとえばテクニカルに走ったSEOが主流でしたが、ここ数年で「積極的に良質なコンテンツを作ろう」という方向への回帰が始まっています。これはSEOのみならず広告配信でも同じような流れが起きているんですね。広告配信システムのAIは進化していますが、cookieの問題が発生するなど制限される部分も出てきています。こうした流れの中、様々な原点回帰が強まる可能性があるのではないかなと。

小手先のテクニックを駆使するのではなく、本質的な手法による質の高いサービスがユーザーにとって最も有益だと判断される時代と言っても過言ではありません。

これはデジタルマーケティング業界に限った話ではないのですが、短期的な一過性の方法や論理が通用しなくなりました。ベーシックかつオーソドックスな領域できちんと戦える盤石な強さを身に付けないと、時代に取り残されてしまうし、成果を出していくのは難しいと思います。

最後にビジネスの勝負を分けるのは、経営者自らが持つ「覚悟」

大久保:最後に、起業家に向けてのメッセージをいただけますか。

百本:勝負を分けるのは「覚悟」だということをお伝えしたいです。だからこそ、「こういう未来を実現したい」と決めたら、とことんやり抜く気持ちで奮闘していただきたいですね。

覚悟があれば、一見恥ずかしいようなことでも恥ずかしげもなくできます。そして、平気な顔をしながらやってのけてしまう方ほど成功されてらっしゃるなと。

まずは覚悟を決めて、全力で走り続けていただきたいと願っています。

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(取材協力: 株式会社デジタリフト 代表取締役 百本 正博
(編集: 創業手帳編集部)

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