ワンキャリア 北野唯我|『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』著者が語るキャリア論。成長には“開国と鎖国”が欠かせない

創業手帳

起業家にまず必要なのは「自分に価値があると信じ、コンセプトを周知していくこと」


『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』など、キャリアに関する書籍を数多く手掛けられている北野さんは、自身の著書を「働く人への応援ソング」だと語ります。

今回は、あらゆるキャリアデータを通じて企業の採用DXを実現するワンキャリアの取締役を務める北野さんに、キャリア論をはじめ、事業を展開していくためのヒントを創業手帳代表の大久保が伺いました。

北野唯我(きたの ゆいが)
株式会社ワンキャリア 取締役CSO/作家
新卒で博報堂に入社し、経営企画局・経理財務局に勤務。米国・台湾留学後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役として戦略・採用・広報部門を統括。2021年10月、同社は東京証券取引所マザーズ市場に上場(2022年4月にグロース市場に移行)。
作家としても活動し、30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が20万部、他に『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)などで、著者累計40万部。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役

大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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ビジネスの発展は「鎖国と開国の繰り返し」で決まる


大久保:北野さんは、キャリアに関する本を多数執筆されており、仕事の選び方として、新卒で入社した会社に一生勤めるだけでなく、起業も含めてもっと多様な世界があることを発信されていると思いますが、仕事の選び方やキャリア論についてお聞かせいただけますか?

北野:僕は、何かにチャレンジしているときは特に、人生のどこかで孤独になる時間が必要になると思っています。
そして、鎖国と開国を交互に繰り返していかなければ、人は本質的に進化することができないと思っています。「鎖国」とは、他の人とは全然違う選択肢を選び、自分の中で自分を掘り下げていく期間や作業のことをいいます。

一方「開国」は、鎖国の際に作り上げたものを世の中にオープンにして、いろんなものを取り入れていく段階を指します。世の中を動かすのは開国のタイミングだと思うのですが、ユニークネスや独創性を育てるのは間違いなく鎖国の時代だと思います。
例えば、日本へ観光に来た海外の方に「どこへ観光に行きたいですか?」と聞いて、世界中どこにでもあるようなビル街だと答える人はほぼいないと思うんですよね。
やはり、観光に来た海外の方が見物して面白いと感じるものは、京都など日本独自に発展していったものだと思うんです。

一方で、経済合理性とかスケーラビリティという点では、開国的なビジネスの方が強いと思っています。
例えば、世界中でチェーン展開をしているファーストフード店は、基本的にどの国や地域で食べても同じ味が提供されていますよね。そのため、事業を作る上で重要なのは、鎖国のタイミングと開国のタイミングを見極めることだと考えています。そして、人生の中のどこかで、自分が孤独になることを許すことですね。

開国だけではなく、ある期間において鎖国を行うことは、長い目で見てとても重要ですし、ビジネスパーソンだけでなく、すべての人に共通する考え方だと思います。
他の人と違う選択肢を選んだり、多くの人が進む道とは違う道を選択するということは、起業家じゃなくても、社内の中でもあると思いますし、例えば住む国を変えるなど、人生の選択をしていく上ですべての方に共通する考えだと思います。

大久保:北野さんの著書を読んでいて、すごく発想が豊かだと思っていましたが、それは「孤独を許している時間」の中でユニークネスが育まれていったのでしょうか。

北野:そうですね。完全にそうだと思います。

大久保:どのような頻度で孤独な時間を作られているのですか?

北野:小中高の孤独時間で培ったものを掘り下げることもありますが、本など最もコアとなるものは週末に一人で籠って書いています。
ビル・ゲイツ氏が定期的に「Think Week(考える週)」を作り、一人で籠って本を読んだり、自分の思考を熟成させる時間を作っている話は有名ですし、スティーブ・ジョブズ氏が禅を大切にし、自分と向き合う時間を大切にしていたのも有名な話です。だからきっと、どんな人にでも内省の時間は必要なのではないかと思います。

大久保:起業家にとっては、人と会って話すことも大事な仕事の一つではありますが、開国ばかりでは事業を拡大していくのは難しいということですよね。

北野:そうだと思います。事業拡大フェーズにおいては、会わなくてはいけない人の数が莫大に増えます。ただ、開国、開国ばかりでは、どこかのタイミングで事業の拡大や成長が厳しくなってくると思います。

ビジネスの根幹は、顧客を喜ばせるための強み


大久保:北野さんは、新卒で博報堂に入社後、ボストンコンサルティンググループを経て、ワンキャリアに参画されました。大企業の社員とスタートアップの経営者では、立場が違うので視点も違うと思いますが、それぞれの違いと共通点は何でしょうか。

北野:博報堂は、日本の大手広告代理店として国内では最も歴史の長い会社ですが、グローバルでは存在感がありません。一方、ボストンコンサルティンググループはグローバル展開している会社です。
しかし、スタートアップというのは、本当に小さな規模から始めるので、会社を運営するためのシステムや、組織がどのような仕組みで動いているのかについて、「どの程度理解していればよいのか」という点の重要性は全然違いますね。

共通点としては、価値の源泉やビジネスの根幹が「強み」であることです。
僕は、人を喜ばせることが商売の源泉だと思っています。人がお金を払うときって、その人を喜ばせたときだと思うんですよね。
では、人は何によって喜ぶかというと、基本的に強みだと思うんです。他人の「弱み」って、人を怒らすことはあっても、喜ばせることはないですよね。

ピーター・ドラッカー氏の名言の一つに「人が成果を出すのは強みによってのみである」という言葉がありますが、創業して売上を立てるためには、自社の強みを使って売上を立てるしかないと思うんです。だから強みが重要であることは、基本原則としてどの会社でも同じだと思います。

大久保:経営者になった際に、会社員時代の経験で何か役に立ったことはありますか?

北野:スタートアップの立ち上げや事業開発において、会社員時代の経験が役に立ったかというと、0→1ではないのですが、10→100の時の100のイメージがついているという意味で、経営には役に立っていると思います。
例えば、ボストンコンサルティンググループ時代に得た経験で、最も実務経営に役立っているのは、「最終的にグローバル展開をしていくためには、オペレーションはこのくらいを標準にしないといけない」とか、「グローバルで優秀な人材を獲得するために、支払うべき給与水準はこのくらい」など、グローバル展開するうえで目指すべき基準を理解できていることですね。

ボストンコンサルティンググループの規格を経営上目指すべき最終ゴールイメージだとするなら、その手前には博報堂があるので、そういう意味で、規模ごとの基準を理解できているのは経営者としてとても役に立っています。

著書は「働く人への応援ソング」


大久保:北野さんは多くの書籍を執筆されていますが、究極のチームプレイヤーである「経営者としての思考」と、究極の個人プレイヤーである「作家としての思考」は、全く違うものだと思います。上手な思考の切り替え方があれば教えてください。

北野:元々は、全然違う性格の2人がいる感覚で2つの人格が分離していましたが、最近はだんだんと融合してきました。
ご質問の通り、経営者と作家では必要とされる強みが明確に違いますし、脳の使い方も全然違うので、月曜~金曜のオフィスアワーは経営者として、それ以外の月曜~金曜の朝の時間帯と土日は作家としての人格を使い分けています。
経営者人格で書いた本は面白くなかったりするので、作業の時間帯は明確に分けていますが、人格自体はここ1~2年ほどで同一化してきましたね。

大久保:時間帯や曜日を規定すると、スイッチの切り替えがしやすいのでしょうか。

北野:そうですね。そうしないと私の場合は無理でした。
スタートアップの中には合宿を行う会社もありますが、やはりクリエイティブな究極の個人的な仕事と、組織やチームを動かす仕事は、時間や空間をある程度分けないと切り替えられないと思います。

大久保:「作家と経営者」という二足の草鞋を履いているからこそ見えてきたことがあれば教えてください。

北野:「まだ見えぬ価値」を信じる力は一緒だと思います。
起業家やクリエイター、発明家など、何か新しいものを作る人の役割は、最初のコンセプトを相手に植え付けることだと思っています。本当に価値が高いものや、将来のバリュエーションが高いものは、企業のトップや0.001%のイノベイターの脳の中にしかないと思うんです。
そこから事業や組織を作って未来を動かしていくためには、誰かの脳みその中にコンセプトをインする作業が必要なんです。

なぜコンセプトをインすることが重要かというと、人間は、目指すコンセプトとのギャップを埋めようと行動するから。例えば、「○○大学に行きたい」というコンセプトが自分自身にインされたら、その大学に行くための差分が何かを考え、行動を起こしますよね。
だから、会社においてはビジョンやミッションを描くこと自体が重要なのではなく、それを社員にインすることが重要だと思っています。

大久保:起業家にとっては、アイデアを埋め込む作業がとても重要な仕事なのですね。ちなみに、北野さんの著書に共通するテーマは何でしょうか。

北野:僕は、自分の本を「働く人への応援ソング」だと思っています。
世の中に応援ソングってたくさんありますが、その多くが恋愛やスポーツだと思うんです。
でも、一番参加している人口が多いものってビジネスだと思うんですよね。そして、本気で応援するためには、知恵と勇気が必要だと思っていて、そのためには、情報だけでなく、エモーショナルな部分やストーリーが必要になってくると思っています。

また、僕はリベラルな世界が好きなので、生まれた場所や血筋ではなく、その人の努力と頑張ってきた成果によって評価される世の中になってほしいなという思いを込めています。
個人の努力や頑張りが評価されて、自分のキャリアを変えていける世の中になることを願っています。

無性別的なアバターがトレンドに


大久保:今後の世の中の流れやトレンドについて、何かご意見をいただけますか?

北野:アバターが人々から信頼される時代になってきていると思います。
それは、アバターが無性別的だからだと思うんです。
無性別的だからこそ、その人自身の行動や発言だけで判断されるので、信頼感や好感に繋がっていくのだと思います

また、仮想空間になぜ若い人が熱中しつつあるかというと、仮想空間は勝敗が決まってないからだと思うんです。リアルの世界では、あらゆる要素によってすでに勝敗が決まっているものもありますが、仮想空間や仮想通貨はまだ勝敗が決まっていません。
だから、若い人たちは仮想空間に憧れを抱きますし、実はシニアにも相性がいいと思っています。
リアルの世界では思うように身体を動かすことができなくなっても、アバターとしてなら自由に行動することができますから。
そのため、アバターを通じたメタバース、仮想空間が次のトレンドになってくると思います。

大久保:それでは最後に、これから起業される方や、起業されたばかりの方へ向けてメッセージをお願いします。

北野「自分に価値があると信じること」を貫いてほしいですね。僕は、価値→事業KPI→財務KPIの順でビジネスが展開すると思っています。
まず、価値が先に作られますが、測ることはできないですよね。その後、事業KPIを設定し、最後にキャッシュがくるという構造だと思っています。

そのため、価値そのものを追っているときは、「それはお金にならないよ」「失敗するよ」と言われることも多いと思います。
しかし、その価値を信じて動いている時間は非常に重要だと思いますし、現在、僕自身もその価値を求めてもがいているので、一緒にもがいていけたら嬉しいなと思います。


北野唯我さんの著書『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』は、働くすべての人の成果や努力が正しく評価される世の中になってほしいという思いを込めた一冊です。
ぜひご一読ください!

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(取材協力: 株式会社ワンキャリア 取締役CSO/作家 北野唯我
(編集: 創業手帳編集部)

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