パレンテ 吉田 忠史|消費者の方が賢い。だからこそ誰よりも商品のオタクになれ

創業手帳

EC事業者だからこそのアイデアで勝ち抜ける。自然と語りたくなる商品ストーリーを作りなさい

多くの企業がリアル店舗中心のビジネスから、ECビジネスに重心を移しつつあります。
しかし、本格的にECビジネスをするとなると、Amazonや楽天などのプラットフォームや、数多いるライバルECサイトと対峙しなければならず、そう簡単に上手くいくわけでもありません。

コンタクトレンズのEC事業などを展開するパレンテの吉田忠史氏も、実は最初からECビジネスの達人だったわけではなかったそうです。
しかし現在では、外資系大手製薬会社をはじめ、大手メーカーを仕入先としたナショナルブランドコンタクトレンズの販売を中心に、競合ひしめくコンタクトレンズEC事業で、一定の存在感を獲得されています。

そんな吉田氏に、創業手帳の大久保がECビジネスにおける成功のポイントを伺いました。

吉田 忠史(よしだ ただし)
株式会社パレンテ 代表取締役
1976年生まれ。愛知県出身。不動産投資、アパレルEC事業をはじめ、TVショッピングベンダー(QVC)など、業種の垣根を超えたディレクションや販売経験を経て、2011年にパレンテ代表取締役就任。 自身のYouTubeチャンネルでは、メーカーとの折衝から自社オリジナルブランドの開発・販売、物流に至るまで、コンタクトレンズ販売の川上から川下まで知り尽くした自称「日本一コンタクトを愛し、日本一コンタクトを売りたい男」として、ユーザーの皆さまに安心・安全かつ快適・便利にコンタクトを利用いただくための情報を届けている。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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ホストで知り合った社長に才を見出される


大久保:吉田さんはもともと起業しようという志がおありだったんでしょうか。

吉田:いえ、そういった確固としたビジョンはありませんでした。東京に出て一旗あげたいという気持ちだけがあって、具体的な計画などがあったわけではありません。原宿や新宿の街中を練り歩いているような、よくいる若者といった感じでした。

アルバイトをしながらそんな生活を続けていたところに、知り合いの社長さんから「ホストをやってみないか」と声をかけられました。後にこれが大きな転機となったのですが、そこで「とりあえずやってみよう」ということで3年間のホスト生活が始まります。上京して1年が経過したときでした。

新宿歌舞伎町にある1店舗目では泣かず飛ばずだったのですが、六本木の2店舗目ではナンバー3までいきました。当時はちょうどITバブルの時期で、IT系の経営者の方々と仲よくさせていただくなか、とある経営者の方から「君、なんか面白そうだからうちの会社で働きなさい」と声をかけてもらったんです。僕は基本的に求められたことなら断らないスタンスなので、もちろんOKしました。
そこがビジネスパーソンとしての人生の始まりですね。もう20代後半になっていました。

大久保:それは珍しいご経歴をお持ちですね。それまではホストなどをされていたところからいきなりビジネスの道に進まれるとは。

吉田:こんな経歴なので、新しい会社では「人一倍頑張らないと信用を獲得できない」と思い、朝は一番早く出社し、夜は一番遅く帰るという生活をしばらく続けました。

しばらくすると、新しい不動産投資会社を作る話が出てきて、そのプロジェクトのチームリーダーを任されることになりました。出向という形ですね。

取扱金額が大きい商品なので、その後経営する立場に回ったときにも、そのときに学んだファイナンスの知識が役立ちました。

大久保:不動産のセールスをやっていたということでしょうか。

吉田:そうです。当時はテレアポやチラシなどできることは何でもやっていました。ECをやる上でも役立っているのはセールスのタイミングの考え方ですね。相手が一番買いたいタイミングで売る、ということを学びました。

iモードのブームに乗ってEC事業を始める


大久保:ECとは関係のないところからキャリアが始まっているんですね。

吉田:基本的に「頼まれた仕事は断らない」というスタンスでやってきたので、結果としていろいろなジャンルの仕事をやってきました。

ちょうどそのころ、iモードのブームが来ていたので、「携帯電話でモノを売る時代が来るから、ウチもやろう」ということで当時勤めていた会社でEC事業が立ち上がりました。「君がやってくれないか」ということでその会社で役員になります。

大久保:EC事業の具体的な内容を教えてください。

吉田:当時流行っていたアパレルECのように、ECサイトで服を販売する事業ですね。ただ服を売るだけでは面白くないので、芸能プロダクションなどと組んで女優やモデルの方々に服を着てもらい、付加価値を高めて売るということをやっていました。

大久保:なるほど。このときにEC事業に取り組まれたことは今でも役に立っていそうですね。

吉田:そうですね。今のパレンテを支えるECシステムやロジスティクスの管理のやり方など、さまざまなノウハウの基礎がこの時期に固まったと感じています。
ECの上流から下流まで自社で管理していました。仕入れ・写真撮影・商品の採寸・セールスライティング・商品選定・アップセル/クロスセルの手法など、あらゆることをこのときに自社でやっていたのがよかったですね。

大久保:全て自社でやるとはいっても、外注している部分もあったんじゃないでしょうか。

吉田:システム開発は当初は外注していました。しかし、レビューや口コミがきたときに都度システム会社を経由させなければならず、かなりの金銭ロスやタイムロスが生まれていたのでもったいなかったです。このときの教訓もあり、パレンテではシステムを内製化しています。

システムだけではありません。パレンテでは、仕入れから販売、カスタマーサポート、ロジスティクス運営など、ECのプロセス全てを内製化し、自前主義でやっています。

ベンチャー企業などでは仕方ありませんが、やはり内製化しないと規模が大きくなるほどデメリットが大きくなっていきますからね。

大久保:見極めが難しそうですね。

吉田事業を運営する上で何が自社の競争力のコアになっているのか、そこをしっかりと見極めていかなければなりません。

アパレル向けのECサイトを運営していたので、写真を撮影する必要がありました。写真は素人でしたが自分でカメラを買って実際に服を撮影し、写真をアメブロにアップしたりなどの作業を自分でやっていました。こういった地道な経験も、後に見極める力を養ってくれましたね。

その後、会社としての売上を維持するために、自分たちで営業してホームページ作成やポスター作成などの売上も立てて横展開するようになっていったんですが、そうするともう会社を起業しているようなもので会社員でいる必要がなくなったので、任期満了をもって独立することにしました。
結局、アパレルのECサイトは6年くらいやっていた計算ですね。

独立して2年半ほど経営を個人でやってから、パレンテの社長としてジョインして、11年ほど経営に携わってきました。通算で20年ほど社長業をやってきた、ということになります。

大久保:最初は会社員をされていたわけですが、会社員と社長とでやるべきことは変わるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

吉田:そうですね。私の場合、会社員時代と社長時代とで仕事への向き合い方は変わっていません。求められたことに全力で向き合う、この姿勢ですね。

ただ、経営者は「自分がやったほうが早いな」という仕事であっても、なるべくマネージャーなどのミドル層に任せるようにしなければいけません。何でもかんでも自分でやってしまっては組織が回らなくなってしまいますからね。その点は違うかもしれません。

大久保:独立してからと会社員時代とで、外からの反応についても変化があったのではないでしょうか。

吉田:そうですね。個人で独立したときは、「これまでは会社の看板で仕事を受注できていたんだな」と思わされることが何度もありました。
仕事を受注すること自体が難しく、苦労しました。ただその経験があったからこそ、「仕事をいただけるだけでありがたい」とも思えるようになりました。

誰よりも商品のオタクになりなさい


大久保:EC事業を展開されていますが、ECで商品を販売する上で重要なポイントについて教えてください。

吉田誰よりも商品のオタクになることですね。

今の消費者は賢いです。自分のほしいものについてはTwitterやInstagramなど、あらゆるメディアから調べて深く知っています。例えば、ジャニーズのファンの方であれば、ファンクラブに入らないと知らないような情報まで手にしている可能性もあります。

そういう人たち相手にモノを売るためには、オタクにならないとダメですよね。オタクレベルの知識を持たないと、どこが訴求ポイントになるのかわかりませんから。商品を提供する側の「熱」についても、消費者は気づきますしね。「好きじゃない商品を売っているな」とすぐ悟られてしまいますよ。

大久保:広告などでモノが売れなくなってきている時代とも言えますよね。

吉田:おっしゃる通りで、逆にお金をかけずとも商品のよさがちゃんと伝われば勝手に売れていく時代でもあります。商品が本物かどうか、オリジナリティがある商品であれば勝手に売れます。

消費者側の価値観の変化も大きいですね。効率性などよりも、デザイン性やアート性がある商品が評価される時代になってきている。モノが売れている世の中の流れや匂いをきちんとキャッチして、それをいかに商品に落とし込めるかが勝負です。

商品のストーリーをいかに作るか

大久保:ほかにも、商品を作る上で重要なことはありますか。

吉田人に語りたくなるような商品ストーリーがあるかどうかは大事ですね。

例えば、パレンテのプライベートブランドに「WAVE」というコンタクトレンズがあります。従来のコンタクトレンズのパッケージはポストに投函できるかたちや大きさではありませんでした。
「WAVE」では、お客様が必要とする商品を確実に自宅で受け取れるよう、箱の形状をポストで投函できるCDケースのようなかたち・大きさに変えました。コロナ禍で接触を嫌う時代になったことでより一層そのニーズは高まったように思います。

この決断が受けて、今では「WAVE」はヒット商品となっています。箱のサイズを変更することで、「通販でも確実に受け取れる」、「待たずに受け取れる」、「非接触でいい」、「ゴミも少ない」という特徴、つまりストーリーを作り出したんですね。
すると口コミでこういう情報が勝手に広まっていく。

大久保:ストーリー作り、というのはそういう意味だったんですね。どんな市場や商品でも、考え方や切り口次第で新しいストーリーを作れそうです。

吉田:日本の郵便ポスト事情が知れるのは、私たちが販売から梱包・配送、カスタマーサポートまで一気通貫で行っているEC事業者だからこそだと思います。卸売が中心の大手メーカーではなかなか知り得ない情報で、その点弊社が有利でした。

最近では女子高校生たちとワークショップをして、カラーコンタクトレンズやその商品パッケージを開発しました。女子高校生の方は自分で気に入ったものをInstagramやTikTokで発信したいらしいのですが、それにあたって顔出しを好まない方もいる、ということなんです。そのため、「思わず写真を撮りたくなる遊び心に溢れたパッケージ」をコンセプトに、大きな目がデザインされたポップなパッケージを考案してもらい、投稿アイテムとしても使いやすいデザインに仕上げました。

大久保:起業家に向けてのメッセージをお願いします。

吉田:成功されると驕りが出てきてしまうものですが、いつまでも謙虚でいることが重要だと思います。

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(取材協力: 株式会社パレンテ 代表取締役 吉田 忠史
(編集: 創業手帳編集部)

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