個人事業主がOEMを始める方法は?発注の流れや注意点、稼ぐためのポイントなどを解説
個人でもOEM企業に製造を委託することで食品や化粧品などのオリジナルブランドが作れます!
「商品開発のアイデアがある」「オリジナルブランドを立ち上げたい」といった個人事業主の方、OEMで商品化を実現しませんか。OEMであれば、生産ラインや製造販売のノウハウがない個人事業主でも、商品を開発、展開することが可能です。
この記事では、個人事業主がOEMによる商品の製造・販売を始める方法を紹介します。発注の流れや注意点、商談や販促のポイントなども解説するので参考にしてください。
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この記事の目次
個人事業主のOEMとは
個人事業主のOEMとは、商品の製造業務をほかの企業に外注することです。自分では商品企画(アイデア出し)だけを行い、その後の商品を作る過程をすべて外部のメーカーに任せられます。
OEMの製品は、自ブランドの商品として売り出すことが可能です。例えば化粧品の場合、製造販売元はOEMメーカーになりますが、発売元に自分の屋号や考案したブランド名などを載せられます。
そのため、開発したい商品のアイデアがある方、オリジナルブランドを立ち上げたい方などにOEMはおすすめです。
個人事業主がOEMを活用するメリット
個人事業主がOEMを利用するメリットは、第一に生産ラインがなくても商品を製造・販売できることです。一般的に個人事業主の経営資源では、自前の生産設備や製造スタッフでものづくりをすることは困難。この点、OEMなら製造業務を全てメーカーに委託できるため、気軽に商品化を実現できます。
また製造業務を委託することで、商品化を進めつつ、自分は製造以外の業務に専念できることも魅力です。販売業以外の本業はもちろん、ECサイトの準備や流通ルートを確保するための営業などにも力を注げます。
さらにOEMでは小ロットからの発注が可能です。製造を小規模で行えば大量に在庫を抱えることがないため、在庫管理のコストやリスクも低減されます。
OEMのメリットについては、下記の記事でも詳しく紹介しています。デメリットに関しても取り上げているので、あわせてお読みいただくと、OEMに対する理解がより深まるはずです。
個人事業主がOEMで商品を開発する流れ
個人事業主がOEMでオリジナルブランドの商品を開発、製造する流れは以下のようになります。
1. ブランディングや利益計画などを検討
OEMメーカーとの商談の前に、まずはどのような商品を作りたいのか、作るべきなのかを検討します。
例えば、商品・ブランドのコンセプトやニーズ、他社商品との差別化などについて考えるべきです。また商品の値段や単価あたりの利益率に関しても検討し、大まかに利益計画も立ててみましょう。
さらに製造した商品をどのように売るのか、顧客へのPRの仕方や流通業者への営業方法など、マーケティングについても幅広く検討すべきです。以上のような検討を踏まえ、十分な勝算が見込める場合は、次のステップにお進みください。
2. 発注するOEMメーカーを選ぶ
次に商品の製造業務を委託するOEMメーカーを探します。前掲の記事でも紹介したOEMメーカーの選定ポイントは主に以下の3つです。
1. しっかりした見積もりを出すか
2. 見積もり以外にも各種の提案があるか
3. 自社で生産ラインを持っているか
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見積もりやその他の提案に丁寧さがあるメーカーのほうが信頼度が高いといえます。加えて、自社で生産ラインを持っている企業のほうが、さまざまな要望に柔軟に対応してもらえる可能性が高く、おすすめです。
また最近は国内メーカーだけでなく、中国の工場に製造を委託するケースも増えてきています。個人事業主が輸入をするのは難しく感じられるかもしれませんが、交渉や調整等の代行業者を利用すれば、実現は比較的容易です。商品の内容や予算も踏まえ、視野を広げて検討してみましょう。
いずれにせよ、まずはGoogle等で「食品 OEM」「化粧品 OEM」などと検索し、広く情報を集めることから始めてみてください。
3. OEMメーカーとの打ち合わせ
めぼしいOEMメーカーが見つかったら、HP等から問い合わせの上、初回の打ち合わせに進みます。
打ち合わせでは、作りたい製品の内容やイメージ、想定する顧客像、ロット数、納期、予算といった希望を伝えます。打ち合わせ前にそれらを検討し、考えをまとめておくと当日のやり取りがスムーズです。
OEMメーカーはそうした希望を受けて、製品の価格や製造スケジュールなどに関する見積もりを出します。この時、見積もりの出し方が丁寧だったり、見積もり以外にさまざまな提案をしてくれたりするメーカーは、優良企業だといえます。
4. サンプル品のチェックと改良
初回の打ち合わせ後、OEMメーカーは委託者からのヒアリングをもとに仕様設計を行い、サンプル品を製造します。
サンプル品を受け取ったら、希望通りにできているか細部まで細かくチェックしましょう。不良箇所を見落としたまま量産してしまうと各種の調整や変更が面倒になります。
サンプル品が気に入らなかった場合は、修正点を指摘し、再度改良したサンプルを作ってもらうことも可能です。また容器の資材や包装紙材などについても、同様のサンプル作成やチェック、改良が行われます。
5. 最終見積もりに問題がなければ発注
容器や包装も含めて量産する製品の形が決まれば、OEMメーカーが最終的な見積もりを出します。金額や納期、ロット数など、内容を確認し、問題がなければ契約・発注するという流れです。
発注後はメーカーで製品が製造され、必要な検査等を経て出荷・納品が行われます。委託者(個人事業主)はその間、本業や製品を販売するための準備などに従事することができます。
6. アフターフォローを実施するOEMメーカーも
納品後にアフターフォローを実施するOEMメーカーもたくさんあります。アフターフォローの内容は、製造したOEM製品の販売促進に関わるものが多いです。
例えば、商品のPRポイントや仕様をまとめたマニュアル作成などです。こうしたマニュアルは、流通業者や顧客に商品を売り込むための準備や練習に役立ちます。
そのほか、商品説明に関する勉強会の実施やPOP等の作成、顧客対応の一部代行など、各社がさまざまなアフターフォローを用意しています。
個人事業主がOEMで商品を作る場合の注意点
個人事業主がOEMを利用して商品を製造・販売する場合、以下の点に注意が必要です。
低予算の場合はこだわりすぎない
低予算で商品を作ろうとする場合、あれもこれもこだわりすぎないことが大切です。こだわるポイントが多くなるほど単価が高くなり、予算内で製造できる数が少なくなってしまいます。個人事業主に対しては小ロットで受注してくれるOEMメーカーも多いですが、あまりに数が少なすぎると発注は困難です。
そのため、少ない予算で商品化を目指す場合は、こだわるポイントを絞りましょう。例えば、「成分や食材にはこだわるが容器は一般的なものを使う」「メインの材料だけ特別なものにする」といった具合がおすすめです。
OEM製品の販売に許可が必要な場合もある
ジャンルによっては、OEMで製造した商品を販売するのに都道府県等の許可が必要な場合があります。
例えば、食品の場合、販売にあたって「食品衛生責任者(資格)」及び「食品衛生法に基づく営業許可」が必要です。これらは講習の受講や届出などによって、比較的簡単に取得できます。
化粧品の場合は、製造と販売の両方をOEMメーカーに委託すれば、とくに許可を取得せずにオリジナル商品を開発することが可能です。この場合、製造販売元にはOEMメーカーが記載されますが、発売元として自分の屋号などを載せられます。「化粧品製造販売許可」を取れば、自分の屋号等だけで販売することも可能ですが、個人事業主がこの許可を取得・更新するのは比較的大変です。
OEMメーカーとの商談をうまく進めるコツ
OEMメーカーと打ち合わせする際は、以下のポイントを意識することでより良い対応や条件を引き出せる可能性があります。
商品に関する要望を具体的に伝える
OEMメーカーからより良い対応を引き出すには「こんな商品が作りたい」という要望をできるだけ具体的に伝えるべきです。例を出すと「ニキビケアに特化した中価格帯の日焼け止めが作りたい」「地元の食材を使って低価格のヴィーガンスイーツを開発したい」など。
自分がイメージしていること、望んでいることをできるだけ細かく伝えることで、メーカー側も各種の提案がしやすくなります。また商品化に対する熱意が伝われば、担当者からのより親身な対応も期待できます。
一方、「売れる商品が作りたい」「流行っている商品を教えてほしい」のように、漠然とした希望や受動的な態度はNGです。メーカーが具体的な提案がしにくいばかりか、取引相手としての信用も得にくくなってしまいます。
丁寧な対話や将来性のアピールを意識する
OEMメーカーとの商談を成功させるには、相手に優良なクライアントであると思わせることも重要です。
昨今はOEMの需要が高まりつつあり、全体的に受託数が多いため、各メーカーはある程度顧客を選べる立場にあります。つまりメーカーから信頼されなければ、発注依頼を断られたり、いい加減な対応をされたりする可能性も十分あるということです。
そのため、大前提として、丁寧な対応を心がけることが大切になります。また継続的な依頼が見込めるほうがメーカーにとって良いので、事業の展望や将来性もアピールできると理想的でしょう。
個人事業主におすすめなOEM商品の販促手法
個人事業主がOEM商品を製造したら、その販売促進のために以下のような方法を試すと良いでしょう。
ECサイト等のSEO対策
OEMで作った商品をインターネットの市場で展開するには、SEO対策が肝心です。SEOとは検索エンジン最適化、簡単にいえば、Google等の検索に商品の情報をヒットしやすくすることを指します。
ECサイトやオウンドメディア、ホームページなどのSEO対策をすれば、ネットを通じて全国のユーザーに、商品を効果的にアピールできます。小規模事業者の販促にインターネットの活用は必須と言えるので、SEO対策もまた必須でしょう。
SEO対策のポイントや具体的な方法については、以下の記事をぜひご覧ください。
Amazonのブランド登録やVine先取りプログラム
OEM商品の販売にAmazonを活用する場合は、ブランド登録とVine先取りプログラムを使いましょう。
ブランド登録とは、Amazonに商標(ブランド名やロゴ)を登録し、ブランドオーナーとしての権限を保護すること。相乗りや転売といった不正行為を抑制できるほか、販促に役立つ各種の機能も使えるようになります。
一方、Vine先取りプログラムは、実績のあるレビュアーにレビュー依頼ができる機能です。商品に信頼ある口コミがつくことで、販促につながります。
なお、Amazonでこれらの機能を利用するには、商標登録(商標権の取得)をはじめ、各種要件を満たす必要があります。商標登録については、下記の記事もぜひあわせてご覧ください。
リアル市場への売り込みや店舗開業
OEMで製造した商品をリアル市場で展開させるには、流通業者への売り込みや店舗開業などが必要です。どちらも個人事業主にはハードルが高く思われるかもしれませんが、気軽に挑戦できる仕組みもあります。
例えば、流通業者への売り込みには、商工会議所の逆商談会が便利です。ブースに待機する地域の買い手企業に、商品を売り込めます。
またチャレンジショップなら個人事業主でも気軽に出店できます。チャレンジショップとは、商店街の空き店舗などにお試し出店できる地方自治体の支援事業のこと。詳しくは各自治体のホームページ等でご確認ください。
そのほか、ソーシャルセリングや問い合わせフォーム営業、店舗の間借りなど、リアル市場への進出方法は無数にあります。
個人事業主がOEM商品で稼ぐためのポイント
個人事業主がOEM商品の販売で十分な収益を上げるには、以下のポイントを意識するのがおすすめです。
ニーズのある商品を作る
販売業で成功するには「売りたい商品」ではなく「売れる商品」を作ることが重要です。自分では「こんな商品があったらいいな」と思っていても、世間がそれに同意しなければ、残念ながら商品は売れません。市場にニーズがあることを確信したうえで商品を作ることが、OEMで稼ぐための絶対条件だといえます。
ニーズを探るには、市場の規模や動向、トレンドなどのデータを参考にするのが良いでしょう。また今は顕在化していないものの、マーケティングによって発掘できる潜在ニーズもあるため、市場に対する洞察力や先見性もフル稼働させるのが理想的です。
単価あたりの利益率を重視する
単価あたりの利益率が高い、言い換えれば商品1つあたりの儲けを大きくすることも大切です。
利益率が低ければ、一定の利益を出すために必要な数量が多くなるため、マーケティングや在庫管理が大変になります。また仮にたくさん売ったとしても単価あたりの利益率は変わらないため、事業としての危うさは本質的には変わりません。
そのため、原価や売値などを適切に調整し、利益条件が良い状態で販売することが重要です。利益率を上げるためにも、前述した「あれもこれもこだわりすぎないこと」に注意すべきでしょう。
宣伝や営業に力を入れる
商品を売るには「売り方」も重要です。同じ商品でも、いかに売り込むかによって収益が変わってきます。
とくにOEMでは製造業務を委託する分、自身は宣伝や営業の活動に注力できます。リアル・ウェブを問わず、あらゆる手を尽くして商品の情報を市場に届けましょう。
そうした売り込みの一環として、前述のSEO対策やAmazonブランド登録、逆商談会への参加などは有効です。
まとめ
個人事業主でもOEMで稼ぐことは十分に可能です。マーケティングやブランディング次第で、市場を代表するような有名ブランドも作り得ます。
商品化のアイデアがある方、オリジナルブランドを展開したい方は、ぜひこの機会にOEMの活用を検討してみてください。
創業手帳の創業者・大久保のコメント
自身でも起業して、また多くの起業家に関わった経験からコメントしますね。
OEMは自社で工場を持つことに比べると早く参入できるため起業向きと言えます。
OEMも色々あり、例えば健康食品では、ラベルを変えて、付加価値をつけているが原材料はあるメーカーで一緒、なんていうこともあります。
メーカー側からすると、販路を広げてくれる他、価格を変えやすい、という事情もあります。
変わった例ではIT製品のOEMなどもあります。同じソフトですが、ブランドを変えるような手で実は昔からあります。
他にもOEMでは資材も重要になりますが、資材専門のスタートアップのShizaiの鈴木社長に以前インタビューさせていただいた際の記事も貼っておきますね。
shizai 鈴木 暢之|梱包資材プラットフォーム「shizai」で理想のパッケージとコスト削減を実現
実際に自分がOEMで関わった際に感じた気をつけるべきポイントは
・OEMのメーカーサイドがいかに標準化しスケールを大きくするか
・OEMの販売者側はいかに付加価値をつけるか
が大事になってきます。
OEMのメーカーサイドの難しいところは、販売社側の特殊な要望を取り入れすぎると全体の競争力が落ちてしまい徐々に下請け化してしまうジレンマがあります。
OEMメーカーは全体の競争力を引き上げるような商品開発力や品質力が勝負の鍵になってきます。
一方で販売者は、製品自体では差別化しにくい一方、ユーザーのニーズに迅速に答えることができ、投資の少ない持たざる経営ができるメリットがあります。
販売側はユーザーニーズの汲み取りと見せ方、売り方が大事になってきます。
OEMは戦略として活用すると売上を増やせる武器になるので戦略上一つの方法として考慮する価値はあります。
創業手帳では事業で稼ぐためのヒントを多数掲載しています。無料ですので、ぜひご活用ください。