認定NPO法人とは?普通のNPO法人との違いを解説!

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認定NPO法人とNPO法人の違いやメリットなどを理解しよう


認定NPO法人は、NPO法人への寄付を促進するという目的で、認定されたNPO法人向けの寄付に対して税制優遇を受けられるようにした制度です。
つまり、NPO法人とは異なります。しかし、この2つの違いを理解できている方は多くありません。

そこで今回は、認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)の概要やNPO法人との違い、認定NPO法人になるメリット、なるための基準、注意点などについて詳しく解説していきます。

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認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)の概要


認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)は、NPO法人への寄付を促進するために、認定されたNPO法人向けの寄付に対して税制優遇を受けられるようにした制度のことです。
まずは、その現状からみていきます。

認定NPO法人数の現状

認定NPO法人の数は増加傾向にあり、2011年にスタートし2012年4月1日に施行されて以降、急増しています。
現在でも増加の一途をたどっているため、今後はさらに増えることが予想されます。2023年1月末の段階では、認定法人数が1,284件です。

認定NPO法人が多いのは、東京などの首都圏、大阪・愛知・福岡などの大都市圏です。
地方ではまだ認定法人の数が少ないところも多くあるので、エリアによっては浸透していないといえます。
設立する場合は情報収集のしやすさなどを加味したエリア選びをしないと、後々厳しい状況になってしまうかもしれません。

認定NPO法人とNPO法人の違いとは


認定NPO法人とNPO法人の違いについて、あまりよくわかっていない方もいるかもしれません。そこで、この2つの違いについて解説していきます。

認定NPO法人は、2011年からスタートした制度です。NPO法人は1998年からスタートしているので、特定非営利活動推進法が施行されてから3年後になります。
その後、2011年に大幅な法改正などが実施され、寄付金控除の拡充や所轄庁の地方自治体への移管といった改善が行われました。
ただし、NPO法人であればどこでも認定されるわけではありません。認定基準をクリアしなければいけないので、ハードルはかなり高めです。
2023年1月末の時点で1,284件しか認定されていないことからも、ハードルの高さがうかがえます。

認定NPO法人になるメリットとは


認定NPO法人になることで得られるメリットはいくつもあります。基準をクリアするハードルは高いですが、メリットもあるので目指す価値は大いにあります。

税制優遇によって寄付金が集めやすくなる

認定NPO法人になると、税制優遇の対象になるので寄付金が集めやすくなります。認定NPO法人に対して個人が寄付を行うと、所得税と住民税で寄付金控除を受けられます。
相続人が相続遺産を寄付した場合は、相続税が非課税となる点も大きなメリットです。
企業が寄付した場合は損金算入限度額の枠が拡大されるので、個人にとっても企業にとっても寄付をするメリットが大きくなるといえます。
このことから、認定NPO法人は寄付金を集めやすくなることがわかります。
節税に対する意識も高まっているため、より多くの寄付金を集められる可能性が高いかもしれません。

寄付金を集めやすくなることは、NPO法人としての活動を拡大するためにも役立ちます。
規模を拡大していきたいと考えているのであれば、認定NPO法人になり、より多くの寄付金を集められるようにする価値は大いにあります。

社内体制の整備が実現する

認定NPO法人を目指すには、法令などを順守することは必要不可欠です。また、適正な組織運営を行っていることも重要なポイントになります。
会計や経理なども適正に処理し、情報開示も積極的かつ徹底的に行わなければいけません。さらに、認定されてからも認定基準に合致する体制を維持し続ける必要があります。
このことから、認定NPO法人になると社内体制の整備が実現しているということがわかります。
適正な運営を行っている証でもあるので、信頼度が向上する効果が期待できるというメリットも享受できるのです。

社会的責任を意識した運営を行うことによって、信頼度だけではなく認知度も向上していきます。
社会的に意義のある活動を行うことで、寄付金を集めやすくなる相乗効果も期待できます。

社会的信頼が得やすくなる

社会的信頼が得やすくなることも、認定NPO法人になるメリットのひとつとして挙げられます。
認定NPO法人として認めてもらうには、認定基準をクリアしたり、書類に記載された内容と実態との乖離(かいり)がないようにしたりしなければいけません。
適正な運営を行っている指標になるので、社会的な信頼は得やすくなります。

認定を取得した場合、情報公開しなければいけない書類も増えます。
作業量が増えて面倒になるのでデメリットだと感じてしまうかもしれませんが、透明性を高める有効な取組みです。
手間はかかりますが、メリットのほうが大きいです。認定NPO法人として認められているのは一握りなので、一目置かれる存在にもなります。
それだけ有益な活動を行っている証にもなるため、認定NPO法人になることは前向きに検討すべきだといえます。

法人税の負担を減らせる

法人税の負担を減らせるというメリットも生まれます。なぜなら認定NPO法人になると収益事業から得た利益を非収益事業の支出に充当した場合、寄付金とみなされるからです。
一定の範囲で損金算入が可能となる「みなし寄付金制度」が利用可能となります。損金算入の限度額は、所得金額の50%もしくは200万円のいずれか多いほうです。

みなし寄付金制度は、公益社団法人や公益財団法人、学校法人、社会福祉法人なども利用できる制度です。
しかし、区分によって寄付金の損金算入限度額が異なるので注意しなければいけません。

認定NPO法人になるための基準


認定NPO法人になるためには、基準を満たす必要があります。続いては、認定NPO法人になるために知っておきたい基準について解説していきます。

認定基準は9つ

認定NPO法人になるためには、以下の9つの基準を満たす必要があります。

  • パブリック・サポート・テスト(PST)に適合している(特例認定は除く)
  • 事業活動内における共益的な活動の占める割合が50%未満
  • 運営組織や経理が適切に行われている
  • 事業活動の内容が適切に行われている
  • 情報公開を適切に行われている
  • 事業報告書などを所轄庁に提出している
  • 法令違反や不正の行為、公益に反する事実がない
  • 設立してから1年を超える期間が経過している
  • 欠格事由に該当しない

パブリックサポートテスト(PST)とは

パブリックサポートテスト(PST)は、多くの市民から支援を受けているか判断する指標です。
認定基準のポイントでもあります。PSTの判定は、以下3つのいずれかから選択可能できます。

  • 相対値基準
  • 絶対値基準
  • 条例個別指定

相対値基準は、実績判定期間の経常収入金額のうち、寄附金等収入金額の割合が5分の1以上であることを求めます。
絶対値基準は、実績判定期間となる各事業年度中の寄附金額の総額が3,000円以上である寄附者数が、1年間で平均100人以上であることを求める基準です。
条例個別指定は、認定NPO法人としての認定申請書提出日の前日までに事務所のある都道府県もしくは市区町村の条例で、個人住民税の寄附金税額控除の対象となる法人として個別指定を受けていることを求めます。

欠格事由

欠格事由には、以下の6つがあります。

①役員の中に次のいずれかに該当する方が在籍する法人
・認定もしくは特例認定を取り消された法人でその取消しの原因となった事実があった日以前1年以内に当該法人のその業務を行う理事であった者でその取消し日から5年を経過しない方
・禁固以上の刑に処せられ、その執行終了日もしくは執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない方
・NPO法や暴力団員不当行為防止法に違反、または刑法204条等もしくは暴力行為等処罰法の罪を犯し、または国税もしくは地方税に関する法律に違反したことで、罰金刑に処せられた日又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない方
・暴力団やその構成員
②認定や特例認定を取り消されてから5年を経過しない法人
③定款や事業計画書の内容が法令などに違反している法人
④国税や地方税の滞納処分の執行がされたり、滞納処分の終了した日から3年を経ったりいない法人
⑤国税や地方税の重加算税などを課せられてから3年を経過しない法人
⑥暴力団、暴力団もしくは暴力団構成員などの統制下にある法人

認定NPO法人になるためのフロー


認定NPO法人は簡単になれるものではありません。認定NPO法人になるためのフローは以下のとおりです。

設立までの流れをチェック

認定NPO法人の設立は、以下のような流れで進んでいきます。

1.所轄庁への事前相談
2.認定の申請
3.実態の確認
4.認定または不認定の決定

実績判定期間が設けられており、認定を受けていないNPO法人は過去2年、過去に認定を受けたことがあるNPO法人は過去5年の事業期間が必要となります。
この期間中に認定基準を満たしているか、欠格事由に該当していないかチェックしてください。

必要書類

認定を受けるために必要な書類は以下のとおりです。

1.認定特定非営利活動法人としての認定を受けるための申請書(認定申請書)
2.前事業年度の役員報酬又は給与の支給に関する規程
3.特定非営利活動促進法第54条第2項第3号に定められた項目を記載した書類
4.認定基準に適合している旨及び欠格事由に該当していない旨を説明する書類
・「ロ」以外を記入した認定基準等チェック表(第3表)
・役員の状況(第3表付表1)
・帳簿組織の状況(第3表付表2)
・認定基準等チェック表(第4表、第5表、第7表)
・欠格事由チェック表

認定NPO法人運営で注意すべき点


認定NPO法人を設立して運営を開始する場合、いくつか把握しておきたい注意点があります。最後に、どのような注意点があるのか解説していきます。

有効期限がある

認定には有効期限があります。有効期限は、所轄庁による認定日から5年です。
認定の有効期限が過ぎてから引き続き認定NPO法人として活動するには、有効期間満了日の6~3カ月前までに所轄庁が上映で定めている更新申請書を提出しなければいけません。
提出しないと有効期限が更新されないので注意が必要です。

認定を持続するためには、5年ごとに行われる再認定をクリアすることが条件となっています。
寄付者が減ってしまったり、不適正な組織運営を行ったりしないようにするため、努力し続けなければいけません。

事務手続きが増える

認定NPO法人になると、寄付金の管理や活動報告などの事務処理が増えてしまいます。
寄付金に関する名簿管理や優遇措置を受けるための経理庶務などが必要になるためです。
その分運営に手間がかかるので、デメリットだと感じてしまう場合もあります。また、事業年度ごとに以下のような内容を報告しなければいけません。

  • 事業年度終了した後の役員報酬規程など
  • 助成金の報告

有効期限の更新通知が来た場合や役員の変更があった場合にも、書類を提出する必要があります。適切な事務処理を行えるように体制を整えておくことが重要です。
寄付してくれた方への報告も怠ってはいけません。

情報公開の徹底が必要

認定NPO法人になったら、情報公開を徹底する必要も出てきます。以下のような情報を公開し、誰でも任意のタイミングで閲覧できるようにしておかなければいけません。

1.事業報告書など
2.役員名簿
3.定款など
4.認定などの申請書に添付した認定などの基準に適合していることを説明する書類・欠格 事由に該当しないことを説明する書類
5.認定などの申請書に添付した寄附金を充当する予定の具体的な事業内容を記した書類
6.前事業年度の役員報酬または職員給与の支給に関する規程
7.前事業年度の収益の明細など
8.7のほか、法規 32②で定められている書類
9.助成金の支給の実績を記した書類

公開すべき情報は非常に多いので、抜けがないように気を付けてください。
適切に公開されていれば、運営体制もしっかりしているとみなされるので、さらなる信頼度向上につながります。

まとめ・認定NPO法人になるには基準や注意点を理解してから目指そう

認定NPO法人を目指すには、基準や必要書類などを把握しておく必要があります。また、注意点に関しても把握しておくほうがスムーズです。
認定NPO法人になることで得られるメリットも多いため、基準をクリアしているのであれば認定NPO法人になることを目指してみる価値は大いにあります。

創業手帳(冊子版)では、認定NPO法人をはじめとしたNPO法人に関する情報も取り扱っています。NPO法人の設立を検討している方は、ぜひ創業手帳をお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)

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