注目のスタートアップ

アガサ株式会社 鎌倉千恵美|治験・臨床研究クラウドサービスの事業展開で注目の企業


治験・臨床研究クラウドサービスの事業展開で注目なのが、鎌倉千恵美さんが2015年に創業したアガサ株式会社です。

世界的なパンデミックに見舞われた現在、各国・各地で様々な対応策や新治療薬の開発が進められています。一日でも早く有効な治療法が開発され、承認され、一般的になっていくためには、病院、製薬会社、臨床・治験・研究機関、国の関係省庁など関連機関同士がスピーディ且つ安全に情報を共有し、管理・運用できる状態を整えることが必要です。

しかし、まだまだアナログな運用が根強く残っていたり、デジタル導入への心理的障壁や金銭的課題などからなかなか導入が進まなかったりしている状態の為、事務作業の時間や紙で管理される資料やデータが膨大になり、その管理運用に多大な労力と時間がかかり、結果、研究開発が遅々として進みづらく、有効な新薬や治療法が承認されるまでに10年単位の時間を要してしまうという現実があります。
また、今や国をまたいだグローバル視野での研究開発、情報共有も大事な時代になっており、なおのこと互いのスムーズなコミュニケーションやデータの安全なやり取りが肝要です。

こうした現状を変えるべく、医薬品の開発・製造に関わる事業者同士を一つのプラットフォームで結び付け、安全かつスピーディかつシンプルに医薬品開発・製造に関するデータの管理・共有が可能な仕組みを普及させようとする挑戦に、今大きな注目が集まっています。

アガサ株式会社の鎌倉千恵美さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

『Agatha』は、医薬品の開発・製造に関わる様々なステークホルダー(製薬企業、医療機関、委託会社など)が作成・使用しているあらゆる紙文書を電子化し、業務の生産性と品質の向上に貢献するクラウドサービスです。

プロダクトの特徴は、
①日米欧の規制に準拠し「治験ルール」に則った長期的な治験業務の書類(ドキュメント)文書管理ができること
②医療機関・製薬企業どちらのニーズにも対応していること
③低価格で導入しやすいこと
が挙げられます。

2016年3月のサービス開始以来、日本並びにグローバルでサービスを提供しており、約1,200団体・約20,000名の方にご利用いただいております(2022年5月現在)。

・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?

製薬会社と病院を繋ぐプラットフォームとして、両者に使っていただきたいです。薬を作るのは製薬会社ですが、患者さんに投与し、治験を実際に実施するのは病院のため、製薬会社と病院の双方を考慮する必要があります。

しかし、他国を見ても、製薬会社と病院双方を繋ぐサービスはほとんどありません。導入される国ごとにローカライズできるという『Agatha』の強みも活かし、将来的には世界中の病院・製薬会社で使われるようなサービスにしていきたいです。

・このサービスの解決する社会課題は何ですか?

治験における現場業務を圧迫している「紙」や「ハンコ文化」に対し、ITを使って効率的にアプローチしていきたいです。 
日本の医療機関においては、治験業務の6割を事務作業が占めており、デジタル化の波が広がっている現在においても、治験文書の9割が「紙」ベースです。 現状、年間10億枚もの「紙」が国内での治験に使われており、大病院では2トントラック1杯分ほどにもなるのです。

また、紙文書の直接確認やハンコ文化に伴い、現場業務が滞ってしまう問題も生じています。薬が治療で使用されるようになるには治験(臨床試験)をクリアする必要があり、日本では薬の安全性や効果、治療法を確認するため、年単位の時間を要します。

こうした現場ならではの問題から、治験現場の業務効率に特化した電子化の必要性が増しています。アガサは医療現場の電子化を進めることで、薬の開発スピードを上げるのに貢献し、薬を一日でも早く患者さんに届けることで多くの人が安心して暮らせる社会を目指しています。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

セールスが一番大変でした。2015年に4名でアガサを立ち上げてから、システム開発や営業もゼロからのスタート。日本向けのサービスにも関わらず日本人エンジニアは一人もいないという状況で、なんとかサービス開始までは漕ぎ着けたのですが、事前申し込みは1件しか入りませんでした。

そんなとき前職でお世話になった東京女子医科大学より依頼があり、デモンストレーションを行うと「シンプルで使いやすそう」と大変好評をいただきました。先生の「アガサを応援するよ。Win-winの 関係を築こう」という温かい笑顔で導入が決まり、2016年4月に第1号のお客様となりました。

現在では旧帝大など医療機関や製薬会社など計1,200件以上で使われておりますが、東京女子医科大学の方をはじめ、実際に使われたお客さんからの「従来の紙に比べ、作業が激減し、深夜や土日の残業が減り、 コスト削減もできた」というお喜びの声が、大変な時期を乗り越えられた一番の原動力だと思います。

・今後、どういう会社、サービスにしていきたいですか?

製薬会社と病院をつなぐプラットフォームとして、『Agatha』が世界中で使われるようなサービスにしていきたいです。

今はまだ日本での提供がメインで国内病院でのシェアも1割程度ですが、2021年末に日本医師会が提供する治験業務支援システム「カット・ドゥ・スクエア」との連携を開始するなど、シェアを一気に6割まで伸ばせる下地を作っています。

一方、グローバル展開では、アメリカ・ヨーロッパ・アジアで10カ国に向けてローカライズがいらない製薬会社向けのサービスを展開しており、海外売上は約3割に上ります。

今はまず日本でのトップシェアの実現を目指しながら地盤を作り、3~4年後には各国の医療機関に対してもサービスを展開し、本気で海外に打って出られるように準備を進めています。

・今の課題はなんですか?

成長のマネジメントです。まだ会社の組織や仕組みが整っていない中、お客様からのニーズが急速に増加しています。これまではメンバーひとりひとりのスキルや経験とパッションによって、アガサの成長を支えてきました。これからは、規定やルールなどの組織の基盤を整備して業務の標準化を進め、アガサのビジネスを型化し、スケールアップ可能な組織にしていくことが必要です。そしてそのアガサのビジネスの型を、スピーディに進化させていく取り組みを、日本とグローバルのチームが協力して進めていきます。アガサの成長とメンバーひとりひとりの成長がリンクし、相乗効果が発揮される組織作りを目指しています。

・読者にメッセージをお願いします。

創業してからもうすぐ7年になりますが、エキサイティングなことの連続です。大変なこともたくさんありましたが、仲間や周りの方の支えがあって、アガサのミッションの実現を信じて、乗り越えることができました。ゼロから作り上げたサービスを喜んでくださるお客様がいて、私たちのミッションを信じて実現に向けて一緒に走る仲間がいる。こんな充実感や幸福感は起業をしなければ味わえないと思います!

会社名 アガサ株式会社
代表者名 鎌倉 千恵美(かまくら ちえみ)
創業年 2015年10月
社員数 42名
資本金 8億9,300万円(資本準備金を含む)
所在地 103-0026 東京都中央区日本橋兜町7-1 Kabuto One 9階 WeWork
サービス名 Agatha(アガサ)
事業内容 治験・臨床研究クラウドサービス「Agatha(アガサ)」の提供
代表者プロフィール 1974年、愛知県音羽町生まれ、東京都在住。
趣味はマラソン(フルマラソン公式記録:3時間51分)

24歳:総務省総合通信基盤局に入省。
27歳:株式会社日立製作所へ転職。
31歳:社費で米国ライス大学に留学し、MBAを取得。
日立に戻り、大量の紙書類で事務手続きに悩んでいる治験現場の現状を知る。
37歳:日立製作所を退職。直接掛け合い、NextDocs Corporationの日本支社代表就任。
41歳:米国の親会社買収に伴い、日本支社が閉鎖し解雇。そこから起業を決意し、3ヶ月後にアガサ設立。
43歳:製薬企業から初の契約を獲得。
医療機関だけでなく製薬企業にもAghata(アガサ)製品を選んでもらえると実感。
45歳:3社から4.2億円の資金調達を完了。
47歳:「EY Winning Women 2021」のファイナリストに選出。

読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ IT アガサ ペーパーレス 文書管理SaaS 治験DX 製薬DX 鎌倉千恵美
創業手帳
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