ハエで食糧危機を救う!? ムスカ“暫定CEO”が語る驚異のリサイクルシステム

創業手帳

株式会社ムスカ 代表取締役暫定CEO 流郷 綾乃インタビュー

(2018/02/22更新)

地球が抱えている大きな課題の一つに、食糧不足があります。
国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の飢餓人口の増加は続いており、2017年には8億2100万人、実に9人に1人が飢えに苦しんでいます。

その課題を解決するために動いているのが、株式会社ムスカ。2018年に開催された日本最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2018」のピッチコンテストにおいて、最優秀賞を受賞したことでも注目を浴びているスタートアップです。

そんなムスカは、なんと「イエバエ」というハエの幼虫を活用して、課題を解決するシステムを確立したとのこと。一体どのようなシステムなのでしょうか?

株式会社ムスカ 代表取締役 暫定CEOである流郷綾乃さんに、その事業概要と信念について、お話を伺いました。

本文を読む

流郷 綾乃(りゅうごう あやの)
株式会社ムスカ 代表取締役 暫定CEO
1990年生まれ。2児の母。ベンチャー企業の広報として活躍後、フリーランスの広報として独立。スタートアップや大企業に対し、ブランディングからマーケティングまで一貫した広報戦略コンサルティングを提供し、多数の成果をあげる。2017年9月にベイシズ執行役員に就任。同11月、ベイシズの指名によりムスカ執行役員として経営参画。2018年7月、現職に就任。

究極の循環システム「MUSCAシステム」

「TechCrunch Tokyo 2018」にて、表彰を受ける流郷さん(写真向かって右)

—「TechCrunch Tokyo 2018」ピッチコンテストの最優秀賞おめでとうございます。受賞の感想を伺ってもよろしいでしょうか?

流郷:「よかったぁ〜」という感じです(笑)。
実は、「TechCrunch Tokyo」のような大きな舞台でピッチコンテストをするのは私自身にとって初めてだったので、投票してくださった皆様には感謝の思いでいっぱいです。

前回の「TechCrunch Tokyo」を拝見していると、IT系のスタートアップの受賞が多い印象でした。そんな中で、弊社のようなバイオテクノロジー系のスタートアップを表彰してくれたことが意外でしたし、本当に嬉しかったですね。

—改めて、ムスカが進めているビジネスについて教えてください。

「MUSCAシステム」の図(株式会社ムスカのホームページより引用)

流郷私たちが行なっている事業は、「イエバエ」というハエを活用したバイオマスリサイクルシステムです。

将来、肉や魚が不足する要因は、肉や魚を育てるために必要な動物性たんぱく質飼料の不足です。
「MUSCAシステム」の起源は、宇宙空間での排泄物処理と食料への転換を目指した旧ソ連の宇宙開発事業を応用した技術で、畜産の排泄物や生ゴミ等の有機廃棄物にイエバエの卵をまき、孵化した幼虫を1週間放置するだけで、それらを分解して有機肥料を作ります。
さらに、その過程で出てくる幼虫そのものが動物性たんぱく質飼料として、家畜、養殖魚の飼料となる、というシステムです。

「MUSCAシステム」から生産された肥料・飼料が世界的な肥料・飼料の供給不足を補うことによって、食糧不足の課題解決に繋がります。

—「MUSCAシステム」でどのようにして収益を生み出すのですか?

流郷:私たちの基本的なビジネスモデルは、卵工場を自社で所有する一方で、肥料と飼料を生産する幼虫飼育工場を販売しオーナー様に購入していただきます。卵の供給から幼虫飼育、肥料・飼料の販売を含めた管理・運営を私たちがオーナー様に代わって行います。市場に流通・販売する飼料・肥料に対して、その買い取り保証を行うことでオーナー様も安定的な利益が得られる仕組みです。買い取った肥料と飼料を商社に販売します。

—旧ソ連の宇宙開発事業が、MUSCAシステムによる食糧問題の解決に結びついた経緯はどのようなものだったのですか?

流郷:もともと、旧ソ連は宇宙事業において火星に行くことを目指していました。
地球と火星って往復には4年かかると言われていますが、4年分の食料を持っていくわけにはいきませんよね。なので、宇宙船の中で食物を自給の循環をさせる必要がありました。

微生物や菌も含めた様々な可能性を検討した結果、彼らが行き着いたのが排泄物などの有機廃棄物を処理できる能力があるイエバエでした。
宇宙飛行士の排泄物にイエバエの卵を撒いて肥料を作り、成長した幼虫を宇宙食にしよう、という計画だったのです。

それが元になって、弊社会長の串間を含めた関係者が、日本でさらに研究を重ねて現在の「MUSCAシステム」が誕生しました。

会社が成長するに従って、CEOが変わるのは自然なこと

—ところで、流郷さんの役職は「代表取締役 暫定CEO」となっていますよね。あまり聞かない役職だと思うのですが、その役職に就いた理由はなんですか?

流郷:会社が成長すると、それに合わせて求められる経営者の素養が変化すると考えています。ですので、成長に伴ってCEO職もその時点での適任者が担うべきだと考えています。肩書も”暫定の適任者”ということで、今後も変わる可能性があるという意味が込められています。

昨年の7月に私が暫定CEOに就任したのは、今のムスカは「ハエ」というネガティブなワードを再定義し、「ハエが食糧問題を解決するんだ!」というメッセージを伝えていくことが必要だと感じたからです。

—トップが変わっていくスタートアップというのも、珍しいですよね。

流郷:そうですね。今は私がCEOでいいと思っています。ムスカが成長し、海外展開を進めていく段階では、海外戦略を担っていく人材が適任であると思います。

マーケット環境や会社の経営方針により、経営陣が変わることがごくごく自然なことだと思うのです。今は私がCEOですが、数年後には私ではなくその時に適切な方に引き継がれなくてはいけません。そういう文化を社内に作っていきたいです。

食べたいものを食べることができる未来にしたい

—事業を行なっていく際に、一番大変なことはなんですか?

流郷:「ハエ」のネガティブなイメージが先行してしまって、そこの再定義をすることが非常に大変です。

しっかりと実績を作り、正しく伝えることにより、皆さんからの理解を得ていきたいと思っています。

—事業を行っていく上で、大切にしている信念はありますか?

流郷:それに関しては、ムスカとしての信念と私個人としての信念の2つがあります。

ムスカの根幹は、「昆虫テクノロジーで食糧危機、飢餓人口をなくす」です。「MUSCAシステム」を普及させることにより、この問題を徐々に解消していきます。

個人的には、「私の子供が80歳になった時に、この事業が必要とされているだろうか?」ということを常に考え方の軸としています。

食糧不足だけでなく、温室効果ガスや地下水の汚染といった今の地球が抱えている課題をそのまま放置しておくと、いずれは普通の生活をすることはおろか、地球に住むことすらできなくなると思っています。
また、私は、2児の母でもあります。
私たちの事業が展開されて、私の子供・孫・ひ孫、それ以降の世代が、地球が抱えている問題に困ることなく幸せに暮らせていけるようになるといいな、と思っています。

例えば、食糧不足の解決のために、国連食糧農業機関(FAO)は2013年に昆虫食を推奨していましたが、まだまだ肉・魚・野菜を食べたい人のほうが多いと思います。

先ほどもお話しましたが、肉・魚・野菜が不足する要因は飼料・肥料の不足です。私たちの事業が普及することで、食べたいものを食べることができる未来にしていきたいですね。

—最後に、経営者に向けて、メッセージをお願いします。

流郷:私の意見を経営者の方にお伝えするのはおこがましいですが、事業を始める早い段階でPR専任の人材を採用しておくことをおすすめします。もちろん事業にもよるでしょうが、新聞等に1回取り上げてもらうだけで、注目度が大きく変化します。インターネット・SNSの拡散力も利用しない手はありません。PR専任の人材の存在が、経営方針を決めるうえでも重要な要素となります。

(取材協力:株式会社ムスカ 代表取締役暫定CEO 流郷 綾乃)
(編集:創業手帳編集部)

読んで頂きありがとうございます。最新号の創業手帳(冊子版)も併せて読んで見て下さい。

この記事のコメント

この記事に関連するタグ

創業時に役立つサービス特集

リアルタイムPVランキングトップ3

カテゴリーから記事を探す

創業手帳冊子版(無料)