国産CRMで注目のマツリカ。リモートワークの鉄則は少数派に合わせること【後編】

創業手帳

リモートワークで社員が疎外感を感じたり、業務に支障が出ることはすべてなくした

リモートがワークメインになり、ちょっとしたやりにくさは多くの会社が感じているでしょう。そんなリモートワークに親和性が高いCRM(※)・SaaS業界の先進企業はどのように対処しているのでしょうか? リモートが前提となることが増えた今、新たなビジネスチャンスも生まれています。国産CRMで注目企業のマツリカ黒佐CEOに、リモート時代の組織のコツを創業手帳の代表の大久保が聞きました。

※1 CRM:「Customer Relationship Management」の略で、「顧客関係管理」を指す。

黒佐 英司(くろさ えいじ)
株式会社マツリカ 代表取締役 Co-CEO
ニューヨーク州立大学バッファロー校卒業後、積水ハウス株式会社にて個人向けの企画提案、法人・資産家向けの資産活用提案、海外事業開発において企画営業及びマネージャーに従事。2011年に株式会社ユーザベースに入社し、営業開発チーム立ち上げを担当。以来、営業部門、マーケティング部門及び顧客サポート部門の統括責任者を歴任し、SPEEDA販売促進・保守、営業・マーケティング戦略の立案及び執行を担う。2015年にマツリカを共同設立。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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コロナ禍前からリモートワークを導入

大久保:マツリカでは、リモートワークをどのように運用していますか?

黒佐:われわれは創業時からリモートワークをしていました。特に推奨してはいたわけではないのですが…。コロナ禍でいろいろな働き方が生まれて、世の中が変わったと言われましたが、われわれにとっては、働き方は何も変わりませんでした。

働く時間、働く場所は社員自身で選ぶようにしてもらっています。なぜかというと、自分にとって集中できる場所がオフィスなのか、家なのか、自分は朝型なのか夜型なのか、本人にしか分からないと思うからです。

100人いれば100通りの働き方があるので、「自分に合った働き方を自分で考えて、実行する」という方針を創業時に決めました。リモートが合う人はリモートで、オフィスが合う人はオフィスでという働き方をずっとしてきています。

大久保:リモートワークを導入して、工夫していることはありますか?

黒佐:そうですね。働く時間・場所を全部自由にした場合、基本的に多数派に合わせていかなければならない空気になりがちだと思います。つまり、働く場所が自由でオフィスとリモートの割合が7:3だとしたら、オフィスにいる人に合わせて業務が進んでしまいがちです。

マツリカでは、創業時からそれは絶対にやめようと決めています。常に少数派に合わせようという方針です。オフィスの会議室が多数で1人がリモートという時に、会議室が中心になって、リモートの人は少し聞こえにくいようなことは一切やめようと言っています。

おそらくコロナ禍で急にリモートになって苦労されている方がいらっしゃると思いますが、われわれは常に少数派に合わせようとやってきましたし、その結果として環境整備などもコロナ以前から整っていたように思います。ひとりでもリモートの人がいれば、オンラインでできる議論の場や環境を必ず準備して、業務が滞りなくできるように対処しています。

大久保:業務自体はリモートで問題ないけれど、組織の熱量が若干薄まるようなことはないですか?

黒佐:確かに人同士のコミュニケーションは、人間である以上face to faceに勝るものはないと現時点では思っています。

業務は回るけれども、人間としての深い理解やコミュニケーションは取りにくくなって、それが熱量に反映することもありますから、そういう課題はありますね。解決方法は…、たまに会うしかないでしょうね(笑)。

大久保:マツリカでは、リモート前提と、出社の割合はどのくらいですか?

黒佐コロナ前では、毎日オフィスに出社する社員はだいたい2割です。フルリモートの社員は3割ぐらいいて、半数が週に1~3回出社ですね。オフィスの占拠率で言うと、だいたい3~4割しか席が埋まっていない感じです。コロナ後は、ほぼほぼリモートになっています。また、オランダやベトナムで、フルリモートしている社員もいます。

大久保:フルリモートの社員に対して、モチベーションや業務の面でフォローしていることはありますか?

黒佐:先ほどお話ししたように、常に少数派に合わせることでフォローしています。リモートの人が少数派になる時は疎外感を感じたり、業務上支障が出るようなことはすべてなくしてきました。

基本的に業務上の問題はないですし、疎外感を感じないように、最低でも3カ月に1回は、地方でリモートしている社員を東京に呼んで、1週間ほどオフィスで仕事をしてもらうような配慮もしていましたね。

大久保:新入社員は最初からリモートでの勤務は難しい気がしますが、いかがでしょうか?

黒佐:去年はコロナ禍による影響で、新入社員が最初からリモートという会社も多かったのではないでしょうか。マツリカでも、4月に入社して、2回目の出社は11月という新入社員もいました。

新入社員へのフォローとして、Slack上でチームとは別に新入社員の個人チャンネルを作りました。そのチャンネルに先輩社員がボランティアで入って、何でも分からないことは聞いていいよと伝え、新入社員の悩みや質問に答えて、フォローする体制を取りました。

コロナ禍で変わる営業

マツリカのCRM営業支援ツール「Senses(センシーズ)」の操作画面

大久保:コロナ禍でリモートワークが増える中、営業効率化に迫られる企業は多そうですが。

黒佐:そうですね。やはり需要が高まったと思っています。口頭で上司に報告したり、社内のコミュニケーションを取ることができなくなり、「何かツールが必要だね」という大きな流れが生まれています。口頭での報告は効率が低いことも多々あるので、ただの報告ならツールの利用で効率化が早まると思います。

大久保:いずれ起こった変化なのでしょうが、コロナによってその時期が早まったということでしょうか?

黒佐:おっしゃるとおりですね。本当は3年先に検討する予定だった企業も、もう検討せざるを得ず、今のタイミングになったというケースが結構あると思います。

大久保コロナ禍で対面の営業から非対面の営業に変化した場合、気をつけるべき点は何でしょうか?

黒佐:コロナ禍によって、今までのように対面で顧客と仲良くなって、継続的にいい関係を構築して発注してもらうという方法は相当崩れると思います。コミュニケーションの質においてface to faceを超えるものは存在しませんので、コミュニケーションを使って関係性に頼る営業ではないものにどんどん変えていかなければいけません

それに代わるものが、きちんとお客様の課題に対して、ソリューションを提案する営業だと思います。コロナ禍以前からそうだったのですが、それが早まってきています。

提案をするためには、やはりお客様の課題が何で、どのように課題が変化していくのかという情報を、属人的にではなく、きちんと社内全体で共有する仕組みが必要だと思います。

そういう意味で、ソリューション営業していく上では、ツールが必要になってくると思います。

大久保:一緒に飲んで顧客と関係性を築く企業が減ると、地方の会社が東京の会社に営業したりすることも可能ですし、リモート時代はチャンスも出てくるのでしょうね。

黒佐:そうですね。おっしゃるとおりです。

CRMは「社員教育」の強力なツールになる

大久保:CRMを導入する利点はたくさんあると思いますが、特にお勧めな点は何ですか?

黒佐:他のCRMになくて弊社の製品ならではということであれば「教育」ですね。新入社員は入ったばかりでは、自社の商品の知識も、どのような顧客がいるのかも分かりません。当然どういう提案をしていけばいいのかも分かりません。

社内教育で学んでいくわけですが、結局のところ、先輩たちが何をどうやってきたかを知るのが一番の学習だと思います。つまり情報がきちんと体系的に整理されて残っていれば、新入社員は、それを見るだけで学べます

例えば、新入社員がA社に自社の商品を営業しに行く時に、どういう提案をすべきか困ったら、先輩や上司に相談すると思います。

相談された先輩や上司は、「実は1年前にA社に提案に行って、こういう理由で断られている」とか、「A社と同業種のB社に半年前に提案に行って受注しているから、この部分を提案に使える」とか、「1年前の失注理由がこれだから、ここに気を付けなければいけないね」など、アドバイスをすると思います。

CRMを導入すると、先輩に聞かずとも全部データとして残っているので、「こういう事例があって、こういうことがあったから、ここに気を付けなければいけない。だとすると、こういう提案したほうがいいかな」と自分で考えることができるので、強力な学習ツールになりますし、社員教育になります。とはいえ自分でデータを探し出すのが大変なので、弊社の営業支援ツール「Senses(センシーズ)」では、AIが自動的にそのデータを出すことができます。

またSensesでは、企業のデータベースやニュース、プレスリリースの情報が見られます。例えば、「A社は直近どうなんだろう?」と思ったら、直近のニュースや決算情報を見に行ったり、顧客データに基づき、自動的に表示される機能があります。

大久保:営業マンの検索する手間が省けるのですね。

黒佐:はい。例えば休眠顧客の直近ニュースが自動的に出て、「もう1回久しぶりに連絡してみようか」というきっかけになります。決算情報がきれいにまとめられているので、強力に営業現場を支援することができます。

営業現場が「使いたい」「使いやすい」と思えるCRMを提供していきたい

大久保:最後に、マツリカが将来的に目指すところを教えてください。

黒佐:CRMの業界は20年以上の歴史がありますが、導入したけれどあまり使われない、現場の入力が面倒だ、では肝心なデータがたまりません。入力すらされないといったことがまだ解決できていません。我々はこの問題を解決したいと思っています。

そのために、われわれは営業現場が使いたい、使いやすいと思うプロダクトを、今も今後も作り続けていきます

CRMは「使いこなすのが難しい」「まだまだだ」とおっしゃる方もいますが、情報を残して整理していくことは、企業にとって非常に重要なことです。これから導入する方、1回導入したけれどうまく運用できなかった方にも、ぜひ弊社のSensesを使っていただきたいと思います。われわれはこれまでのCRMとは、違うものを作っていきたいと思っています。

大久保:今日は貴重なお話をありがとうございました。

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(取材協力: 株式会社マツリカ 代表取締役 Co-CEO 黒佐英司
(編集: 創業手帳編集部)

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