四方よしの儲かる社会起業のコツ。能力を伸ばす障がい者雇用のトップランナー リベラル上田 庸司の挑戦

創業手帳

障がい者が中古情報通信機器の清掃を行い「作品」を生み出す唯一無二のビジネスモデルから学ぶ


社会起業障がい者の雇用は、良いことをしているのに儲からないというイメージがあります。しかしビジネスとして成立しないと、永続や拡大が困難です。そんな中で、障がい者が従業員のほとんどを占めていながら、好業績を上げているのがコピー機再生などを手がけるリベラル

障がい者にも特定の能力は備わっており、訓練を積むことで、どんどん伸ばしていくことができます。ひたすら真面目にその能力に集中する分、健常者を上回る能力を発揮することもあるのです。リベラルは、障がい者を雇用し、健常者に近い報酬にすることで、障がい者が自立的、持続的に働けることを可能にしています。

リベラルでは、オフィスでお金のかかるコピー機などの機器を、障がい者のスタッフが「作品」と呼ばれるまでに磨き上げます。そんな「作品」とも言えるコピー機は、創業手帳の本社でも購入しています。社会的な意義で、ということではありません。コストが圧倒的に安い上に、新古品のような美しい仕上がりで故障も少なく、フォロー体制も充実している魅力的な作品なのです。値段も安く価値が高ければ熱烈なファンが多いのは当然。ゆえに会社も業績を上げることができています。

つまり、働く人、購入者、会社、そして社会の「四方よし」の経営を実現しているのです。また、最近ではシェアオフィスなども展開しているというリベラル。そんな社内起業・社会起業仕掛人の上田氏にお話を伺いました。

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上田 庸司(うえだ ようじ)リベラル株式会社 常務取締役
STAYUP横浜 支配人
流通経済大学 非常勤講師
電気通信大学 非常勤講師
厚労省 就職困難性評価制度 評価委員

2008年、ラディックスグループの特例子会社としてリベラル株式会社を設立。知的障がい者が中古OA機器の清掃・修理を手がけ、新品同様に再生OA機器を磨き上げ商品として生み出すことで、新しい市場分野を創造。障がい者を「利益」が追求できる「戦力」として雇用・育成し、障がい者の仕事ぶりを世の中へ拡めることで、社会性と事業性の双方を実現できる組織を目指している。2016年KAIKA大賞、2017年東京都障害者雇用エクセレントカンパニー賞、2018年ホワイト企業大賞、2019年厚生労働省「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」を受賞。

2019年6月には、「知的障がい者の働き方を世の中へ拡める」べく、サービスオフィス「STAYUP横浜」を開業。「働きやすい環境」+「心の育み」という、次世代サービスオフィスを展開している。経営管理修士(MBA)、M&Aアドバイザー。

自分の考えがすべてではないと思い続けることで人は成長できる


ーリベラルを社内起業のような感じで設立されていますが、当時はどのような心境でしたか?また、その時の状況、立ち上げの過程などを教えて下さい。

上田:障害者雇用促進法で定められる、障がい者の法定雇用率をグループ全体で達成していなかったため、雇用率を達成するために企画を出し、特例子会社の設立が決まりました。
義務のために障がい者雇用をするのではなく、障がい者雇用はやって当たり前。どのようにしたらみんなが楽しめる組織にできるか、且つ社会の役に立てるかということを日々考えていたのを覚えています。

私自身、学生のころから将来は経営者になりたいと思っていたので、「チャンスがきた」と思ったのが素直な心境ですね(笑)

ーリベラルの事業はどういったものでしょう?

上田:リベラルでは、知的障がい者が中古情報通信機器(ビジネス電話機・コピー機・パソコンなど)の清掃を行っています。設立当初から「日本一キレイな中古商品を創ろう」というスローガンを掲げて事業活動を行っており、知的障がい者が、新品同様の品質になるまで心を込めて丁寧に磨き上げています。

「障がい者の仕事ぶりを世の中に拡める」という企業理念のもと、日々知的障がい者が磨いた商品を販売しています。詳しくは、リベラルのホームページ運営するECサイトをご覧ください。

ー今から思うと、サラリーマンの時にやっておけばよかったという、経営者になるために有効な準備は何かありますか?例えばMBAなども行かれていますよね。

上田:今考えると、タイミングとは不思議なもので、私がたまたま経営職大学院に入学した数ヶ月後に、特例子会社設立の企画を出し、在学中にリベラルを設立しました。

そこで最も勉強になったことは、自身が今まで経験してきたビジネスのやり方がすべてではないということです。ビジネスにはいろいろなやり方があり、自分たちのやり方だけがすべてではないこと、人は何歳からでも挑戦し成長できること、今のやり方が正しいわけではなく、もっといいやり方があるはずだと思い続けることの大切さなど、ビジネスにはさまざまなやり方が存在します。

自分たちの考えがすべてではないということですね。そういう意識をもつことが非常に大切だと感じています。

ということで……

準備といえるかどうかわかりませんが、自分が思っていることは絶対じゃないと考えることです。仕事とは、限られた時間の中でいかに全力を出すかが重要であり、それを成し遂げるためには決して自身の考えに偏ることなく、さまざまな人の意見を聞き、常に最高のパフォーマンスを発揮できるように心がけることが必要だと感じています。

社会起業に大切なことは会社が人に合わせること


ー障がい者スタッフの能力をどうやって引き出しているのでしょう?また、そのコツは何でしょう?

上田「人が会社に合わせるのではなく、会社が人に合わせる経営」これに尽きると思います。

リベラルは障がい者雇用を目的として設立された特例子会社で、社員の大半が障がい者です。字が読めない、時計が読めない、会話が難しいなど、社員の数だけ障がいがあります。その障がいの部分だけを考えてしまうと”できないこと”ばかりに目が向いてしまいますが、逆に”できること”に目を向けると、それぞれの長所を活かした仕事をすることができます。

「障がい者に難しい仕事はできない」と簡単に決めつけてしまうことは、非常に残念です。リベラルでは「障がい者が仕事で結果を出せない場合、指導する健常者側に問題がある」と考えているので、まずは健常者の指導方法を見直します。教え方に問題があるのなら、教え方を変えてみる。マニュアルに問題があるのなら、何度でも作り直すなど、とことん障がい者と向き合うことを忘れずにいます。一般的に、会社の経営に合わせた働き方を強いられる中で、障がいがある社員に、それは難しいと判断した結果が最初に話した通りです。

ー最初の立ち上げは大変で常に課題あると思いますが、立ち上げが一段落して、だいたい軌道にのったかな、という手応えがあったのはいつですか?

上田:そうですね、軌道にのってきたなと感じたのは、設立3年目でしょうか。中古OA機器を磨き、一流の商品にするノウハウを習得するのは容易いことではありませんでしたね。3年はかかると覚悟していたので、とにかく社員の給与を払うために、ひたすら営業活動を行っていました。

粗悪な噂などが立つことは避けたかったので、リベラルの理念を理解してくれている、信頼できる取引先だけに販売すると決め、営業をしていました。でも最初の2年は本当にキツかったですね……。設立から3年の年月を経て、ようやく各方面の取引先から商品の品質に対するお褒めの言葉をいただくことが増えました。それが励みとなり自信にもなり、社会から認めてもらえる商品の品質に追いついたと少し手応えを感じることができ、本格的に商品展開を始めました。

ーこの仕事の大変さもあると思いますが、どのように対処していますか?

上田:もともと設立時は、健常者2名と知的障がい者5名の計7名で、コピー機の清掃作業を行っていました。コピー機の清掃作業をやったことのない7名で行う清掃作業ですから、想像はつきますよね(笑)。生産性は全く上がりませんでした。親会社から仕事も回ってこない状況でしたし、とにかく「今のままではいけない」と思い、自力で売上を出す方法を考えました。

私は清掃作業から離れ、とにかく営業活動をひたすら行いました。私は、”営業活動と会社の運営”、もう一人の健常者は、”障がい者の育成”と役割を分担し、自分の仕事に責任を持つこと、お互いのやり方に干渉しないことも決めましたね。これが、結果としてはとても良かったと思っています。私は、売上を上げ、利益を出し、社員の雇用を守るために限りある資産(コネや仕入先)を活用して、とにかく営業活動に奮闘する日々でした。正直大変でしたが、「大変だと思わない」と心に決めていました。

そもそも世の中に楽な仕事はないですし、苦難を乗り越えることで、事例と経験を積むことができます。その蓄積がいつか年齢を重ねた時に活きると信じていますから。「大変な時も、大変と思わないこと」、これが自分の考えです。

ー古いものを再生して、新しい製品に生まれ変わらせる、というお仕事で、重要なことは何でしょうか?

上田:私たちがメインで取り扱っている商材は中古OA機器ですが、中古をただの中古で終わらせないということです。「中古だから汚い」、「中古だからすぐ壊れる」では、長期的なビジネスを展開できません。私たちが目指すのは、”日本一キレイな中古OA機器販売”。知的障がい者が細部まで徹底的に磨き上げ、メンテナンスまでしっかり行うことで、新品同様の品質と謳うことができます。ただ、日本一の中古OA機器を目指すには、清掃技術だけでは不十分です。

重要なのは、いかなる時も”心”だと思っています。いかに仕事に想いを込めるか。清掃を単なる”作業”にせず、仕事に誇りと想いを込めること、それが中古品に命を吹き込み、何にも勝る付加価値になると信じています。そのような考えから、リベラルでは販売している中古商品を”作品”と呼んでいます。

ー今の課題と挑戦は何でしょう?

上田:組織を継続させることです。リベラルで雇用している障がい者は、自ら転職先を見つけることができません。そういった社員を雇用した以上、雇用を守り続けるために、持続性のある永続的な組織づくりが不可欠だと考えています。

そのために、後継者を育成することが今の一番の課題であり挑戦だと考えています。併せて、社員が楽しく笑顔で働ける会社であること、これが長期的なビジョンになります。

ーサラリーマン、会社立ち上げ、社会人学生を経験されています。比較するとどうでしょう?それぞれの難しさと良さを教えて下さい。

上田:サラリーマンは、真面目に一生懸命やっていれば生活は安定する、そこは良い点だと思います。難しいのは、一番の顧客が誰なのかを見失ってしまうことです。本来であれば顧客を一番に考えなければならないところ、上司や経営陣を見て仕事をしてしまいがちです。上司も、大口契約の顧客ばかりに目を向けるのではなく、その顧客と直接対面し、営業している社員を大切にしなければなりませんが、実際はどうでしょうか。その点ですれ違いが生じると難しいですね。

会社立ち上げの難しいところは”覚悟”を決めることです。すべて責任を負う覚悟と信念、そして自分が見出した想いを忘れずに維持し続けることが大切です。その想いが社会に認められた時、やりがいに繋がり、どんどん仕事が面白くなっていきますね。

社会人学生は、仕事と勉強がメインの生活になりますから、プライベートを楽しむ時間がなくなります。でも、その期間、とにかく何事も本気で取り組みましたね。本気で喜んで、本気で楽しんで、本気で泣いて。そのような時間を過ごしたからこそ、私の場合仕事が最も楽しいと認識することができました。

働くとは傍を楽にする、仕事とは価値の提供、そんな気持ちをシェアしたい

シェアオフィスのオープンスペース

ー最近はシェアオフィスも展開していますね。なぜですか?

上田:もともとリモートワークのためのシェアオフィスというよりも、人が集まるコミュニティスペースを創りたいという想いがあり、シェアオフィスを開業しました。

近年、”人は人、金は金”と割り切る人が増えてきたように感じていたんです。割り切ることが決して悪いわけではありませんが、想いを持った人同士が集まることで、互いに高め合えるような場所があればと考えていました。そのような人と人が繋がる場があれば、新しい仕事も生まれるでしょうし、より大きな仕事も生まれ、集まった人も成長できると感じていました。

「STAYUP」というシェアオフィス名に決めたのも、Stayすることで人、モノ、金だけではなく「心がUp」する場にしたいという願いからです。我ながら良い名前をつけたなと思っています(笑)。

ーどんな特徴があるサービスですか?

上田:2019年6月にオープンしたシェアオフィス「STAYUP横浜」は、従来のシェアオフィスの概念を覆すサービスを提供したいと考えていたので、まずは利用者とスタッフの主体性を重視し、ルールを作らないことにしました。

「STAYUPの雰囲気はみんなで創りましょう」と。”STAYUPポリシー”にも掲げているのですが、組織は違ってもSTAYUPの利用者は全員仲間です。「あかるく」「たのしく」「うつくしく」をモットーに、互いを尊重し合い、受け入れる力と素直に感情を出す力を身につけていきましょうというのが唯一のルールです。そこがSTAYUPの強みであり、文化だと自負しています。その結果、利用者のみなさんがいるから、今のSTAYUPがあります。日々たくさんの出会いと人との繋がりが生まれています。

ビジネスだけではなく、「心の成長」を加速してもらうために、働くにあたってベストな環境を用意しております。その中には少々”お節介なサービス”も含まれております(笑)。
ぜひSTAYUPのホームページを見てください。

そして、「働くとは傍を楽にする、仕事とは価値の提供」、まずは自分以外の”人”や”社会”に貢献し、自分以外に価値の提供ができる人が増えたら社会はもっと良くなる。この僕の想いを伝える場でありたいと思っています。それが社会起業に大切なことだと。

ーリモートワークで大事なことはなんですか?

上田:僕自身が2年前に半年ほどリモートワークを実践し、そこで感じたことでもあるのですが、日本人の多くは「人の目を気にして仕事をしている」。言い換えると、「人に見られないと仕事をしない」という傾向があるのではないでしょうか。今回多くの方が、新型コロナウイルスの影響でいきなり在宅勤務になったと思います。その中で生産性が上がったと言える人はごく一部ではないでしょうか。(実際僕は相当下がりました。)

ほとんどの方は生産性が下がっており、最大の理由が「人の目を気にして仕事をしている」ことだと感じます。まずはこの事実を認め、受け入れてください。「生産性が下がったのは会社のせいじゃない!自分の心の甘さのせいだ」と受け入れられたら、おのずと結果は出てくるのではないでしょうか。

次に言いたいことは、社内での会話を積極的に増やしてください。リモートワークで使うのは、人間の五感のうち視覚と聴覚だけです。視覚と聴覚だけですと、どうしても意思の疎通が難しくなります。それを補うためにも、社員同士の会話の量をとにかく増やしましょう。

組織が円滑に運営されるために、コミュニケーションは必須です。
「コミュニケーションは会話の量で決まる」
この言葉を覚えていただけたら嬉しいです。

ーシェアオフィスビジネスで成功のコツはなんですか?

上田:シェアオフィス利用者の成功を、自分たちの成功だと思うことです。僕はシェアオフィスの業績が上がっても、利用者が成長しないと長続きしないと考えています。「利用者が成長するために必要なこと」として僕たちができることは、「想いを持って見守る」。このことが大切だと思っています。これはシェアオフィスに限らずいえることですが……。

あとは、他社と比較されない差別化されたサービス、そしてシェアオフィスをやる意味をしっかり考え、目的を見失わないことです。

ー読者に向けてメッセージをお願いします!

上田:まずは現実を受け入れ、自分自身を客観的に受け入れることが、これからの時代、大事だと思っています。今回の新型コロナウイルスの影響で、リストラや給与削減をする企業に所属し、被害にあわれている方は多いと思います。

弊社は今のところリストラや減給はありませんが、新型コロナウイルスの影響でビジネスモデルの転換を余儀なくされており、今後の見通しは不透明です。しかし、この大変なことを社会のせいにしたところで、何の解決にもならないと思っています。

個人で見た場合も同様のことが言えると思います。
「自分自身が頑張ってどうにもできないことに目を向けるのではなく、自分がどうにかできることを自分自身でなんとかする」
ことが重要だと思います。

今後リモートワークが推奨され、定着していく中、個人の生産性が下がり続けることで生じるリストラや給与削減などが出てくるでしょう。そういった時代がきてもいいように、今のうちに準備しておかないと生き残れません。いまこそ「自己の成長」を徹底的に求めてください。それが自分を助ける矛と盾になります。

ーためになるお話をどうもありがとうございました!


今回のインタビューは、社会起業で利益を上げ、長期的なビジネスとして展開していくために必要なことがぎっしり詰まった内容となりました。

「働くとは傍を楽にする、仕事とは価値の提供」との言葉も印象的でした。起業家の方々にとって、さらなる成長のきっかけとなれば幸いです。

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(取材協力: リベラル株式会社 常務取締役 上田 庸司
(編集: 創業手帳編集部)

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