日本政策金融公庫の融資を受けるための条件とは?審査落ちしないためのポイントも解説

創業手帳

日本政策金融公庫で融資を受けるには様々な条件を満たす必要がある


中小企業や小規模事業者などが融資を受けたい場合、申請先としてまず挙げられるのは「日本政策金融公庫」です。
日本政策金融公庫は国が100%株式を保有する政府系の金融機関であり、創業したばかりの人や、これから起業を考えている人でも比較的借りやすい金融機関となっています。
ただし、誰でも融資が受けられるわけではありません。融資を受けるためには条件を満たす必要があります。

そこで今回は、日本政策金融公庫の融資別に見る条件と、審査落ちしないためのポイントを紹介していきます。
これから起業を考えている人や融資を受けたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。

創業手帳では、公的融資についての申請ポイントをまとめた「公的融資チェックシート」を無料でお配りしています。融資も様々な機関が実施していますが、中でも多くの事業者が活用されるのは公的融資かと思われます。フェーズごとにチェック項目を整理し、わかりやすくまとめています。ぜひこちらもあわせてご活用ください。



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日本政策金融公庫の融資別に見る条件


日本政策金融公庫では中小企業や小規模事業者を対象に、様々な融資を提供しています。ただし、各融資で対象者や融資限度額、返済期間などが異なることに注意が必要です。
ここでは、各融資における条件を紹介します。

新規開業資金

新規開業資金は新規で事業をスタートさせる人や、事業を開始してしばらく経過した人をが対象の融資です。対象者によって3つに分けられます。
それぞれの条件について紹介していきます。

女性、若者/シニア起業家支援関連

対象者 新たに事業を始める方、または事業開始からおおむね7年以内の方のうち、女性または35歳未満か55歳以上の方
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
担保・保証人の有無 希望を伺いながら相談可能

女性、若者/シニア起業家支援関連は、その名のとおり女性や35歳未満の若者、55歳以上のシニアに向けて提供する融資です。
これらに該当する人は低利率で融資を受けられます。
また、経営者保証免除特例制度や創業支援貸付利率特例制度などの特例制度と併用することも可能です。

中小企業経営力強化関連

対象者 新たに事業を始める方、または事業開始からおおむね7年以内の方のうち、「中小企業の会計に関する基本要領」もしくは「中小企業の会計に関する指針」を適用しているまたは適用予定の方で、自ら事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関からの指導・助言を受けている方
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
担保・保証人の有無 希望を伺いながら相談可能

中小企業経営力強化関連は、中小会計を適用しているまたは適用を予定している人を対象にした融資です。
中小会計のルールは中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)と、中小企業の会計に関する指針(中小指針)の2種類があり、中小企業経営力強化関連ではどちらを選んでも問題ありません。
中小会計要領や中小指針に基づいて会計を行うことで、低利率での資金調達も可能になります。

再挑戦支援関連

対象者 新たに事業を始める方、または事業開始からおおむね7年以内の方のうち、以下すべてに当てはまる方
・廃業歴等のある個人、廃業歴等を有する経営者が営む法人である
・廃業時の負債が新事業に影響が出ない程度に整理される見込み等がある
・廃業の理由や事情がやむを得ないもためある
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:15年以内(うち据置期間5年以内)
担保・保証人の有無 希望を伺いながら相談可能

再挑戦支援関連は、廃業歴等があり再び創業にチャレンジする方を支援するための融資です。
事業に必要な設備資金や運転資金に加え、前事業の債務を返済するために必要な資金も含まれます。

新事業活動促進資金

対象者 1.経営革新計画の承認を受けた方
2.基盤確立事業実施計画の認定を受けた方
3.経営力向上計画の認定を受けた方
4.中小企業等経営強化法における中小企業等の経営強化に関する基本方針に定める新しい取組みを行い、2年で4%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる方
5.技術やノウハウ等に新規性がみられる方
6.上記1~5に当てはまらない方で、新たに第二創業を図る方または第二創業開始からおおむね5年以内の方
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内)
担保・保証人の有無 希望を伺いながら相談可能

新事業活動促進資金は、新たに第二創業を図る方を対象に提供される融資です。第二創業としては、経営の多角化や事業転換、新市場への進出などが挙げられます。
対象者の6番に該当する人が必要とする運転資金には、既存事業のすべてまたは一部を廃止するための資金や、既存事業の廃止にともなう債務の返済資金も含まれています。

事業承継・集約・活性化支援資金

対象者 1.中長期的な事業承継を計画し、現在の経営者が後継者(候補者含む)と共に事業承継計画を策定している方
※融資後おおむね10年以内に事業承継の実施が見込まれる方
2.安定した経営権の確保等で、事業承継・集約を行う方および当該事業者から事業の承継・集約をされる方
3.経営承継円滑化法第12条第1項第1号の規定に基づき、認定を受けた中小企業者(同行第1号イに該当する方のみ)の代表者、同法第12条第1項第2号の規定に基づき、認定を受けた個人である中小企業者、または同胞第12条第1項第3号の規定に基づき、認定を受けた事業を営んでいない個人
4.事業承継で経営者個人保証の免除等を取引金融機関に申し入れたことをきっかけに、資金調達が困難になった方で、公庫が融資について経営者個人保証を免除する方
5.事業承継・集約をきっかけに、新たに第二創業や新たな取組みを図る方(第二創業や新たな取組み後おおむね5年以内の方も含む)
融資限度額 別枠7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
担保・保証人の有無 希望を伺いながら相談可能

事業承継やM&Aなどで株式や事業資産を取得する際に、多額の費用がかかってしまう場合もあります。
この資金を調達するのに役立つのが、事業承継・集約・活性化支援資金です。事業承継計画を実施するための設備資金・運転資金などに活用できます。

ソーシャルビジネス支援資金

対象者 以下1または2に該当する方
1.NPO法人
2.NPO法人以外で、次の①または②に該当する方
①保育サービス事業、介護サービス事業等を営んでいる方
②社会的課題の解決を目的とする事業を営んでいる方
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内)
担保・保証人の有無 希望を伺いながら相談可能

ソーシャルビジネス支援資金は、社会的課題の解決を目的に事業を営む人を対象とする融資です。
NPO法人でなくても、保育サービスや介護サービスを提供する企業や、社会的課題の快活を目的に事業を営んでいる人も対象に含まれます。
保育サービス・介護サービスは主に日本標準産業分類において、以下の事業を指します。

  • 老人福祉・介護事業
  • 児童福祉事業
  • 障がい者福祉事業 など

経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)

対象者 社会的・経済的環境の変化等外的要因で一時的に売上げの減少等業況悪化をきたしているものの、中長期的に業況は回復・発展することが見込まれる方で、以下いずれかに該当する方
1.最近の決算期の売上高が前期または前々期と比べて5%以上減少している
2.最近3カ月の売上高が前年同期または全前年同期に比べて5%以上減少し、かつ今後も売上減少が見込まれる
3.最近の決算期の純利益額または売上高経常利益率が前期または前々期に比べて悪化している
4.最近の取引条件が、回収条件の長期化または支払い条件の短縮化等により、0.1カ月以上悪化している
5.社会的要因による一時的な業況悪化で、資金繰りに著しい支障をきたしている、またはきたす恐れがある
6.最近の決算期で赤字幅が縮小したものの、税引前損益または経常損益で損失が出ている
7.前期の決算期で税引前損益または経常損益で損失が出ており、最近の決算期で利益は増えたが利益準備金および任意積立金等の合計額を上回る繰越欠損金を有している
8.前期の決算期で税引前損益または経常損益で損失が出ており、最近の決算期で利益は増えたが債務償還年数が15年以上ある
融資限度額 4,800万円
返済期間 設備資金:15年以内(うち据置期間3年以内)
運転資金:8年以内(うち据置期間3年以内)
担保・保証人の有無 希望を伺いながら相談可能

経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)は、社会的・経済的環境の変化など外的要因によって一時的に業況が悪化している人を対象とする融資です。
適用される利率は基準利率となりますが、対象者の5番に該当しており、以下のいずれか2つにも当てはまっている人は、特別利率Qになります。

  • 原油価格の上昇をはじめとする原材料やエネルギーコストの増加や、ウクライナ情勢の変化の影響を受けており、さらに最近の売上高総利益率または売上高営業利益率が前期に比べて5%以上減少している
  • ALPS処理水の処分にともなって風評被害に遭っており、最近の売上高が前期に比べて5%以上減少している

資本性ローン(挑戦支援資本強化特別貸付)

対象者 次の融資制度・その他条件を満たす法人または個人企業
【融資制度】
次の1~6までのいずれか融資制度の対象に当てはまる方
1.新規開業資金
2.新事業活動促進資金
3.海外展開・事業再編資金
4.事業承継・集約・活性化支援資金
5.企業再建資金
6.ソーシャルビジネス支援資金

【その他条件】
以下すべての要件も満たす方
1.地域経済活性化にかかる事業を行うこと
2.税務申告を1期以上行っていた場合、原則所得税等を完納していること

融資限度額 7,200万円(別枠)
返済期間 5年1カ月以上20年以内
担保・保証人の有無 無担保・無保証人

資本性ローン(挑戦支援資本強化特別貸付)は、スタートアップや新事業・海外事業の展開、事業再生などに取組む方を応援する融資です。
財務体質の強化や、ベンチャーキャピタル・民間の金融機関などからの資金調達を円滑にすることを目的としています。
利率は融資後1年ごとに直近の業績に合わせて返済期間ごとに、以下2区分の利率に変化します。

税引後当期純利益額 返済期間
5年1カ月 5年1カ月超7年以内 7年超10年以内 10年超15年以内 15年超20年以内
0円以上 3.60% 3.90% 4.15% 4.40% 4.65%
0円未満 0.50%

なお、資本性ローンを利用するためには、事業計画書を提出し、完済するまで四半期ごとに経営状況の報告などを含む特約を結ぶ必要があります。

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

対象者 商工会・商工会議所または都道府県商工会連合会が実施する経営指導を受けている小規模事業者(商工業者のみ)であり、商工会・商工会議所等の長の推薦を受けている方
融資限度額 2,000万円
返済期間 運転資金:7年以内(1年以内)
設備資金:10年以内(2年以内)
担保・保証人の有無 無担保・無保証人

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、商工会議所や商工会などの経営指導を受けることで利用できる融資です。
新型コロナウイルスや自然災害などの影響を受けている人の場合、2,000万円の融資限度額に加えて1,000万円までの融資が可能となります。

一般貸付

対象者 特になし
融資限度額 運転資金・設備資金:4,800万円
特定設備資金:7,200万円
返済期間 運転資金:5年以内、特に必要な場合は7年以内(うち据置期間1年以内)
設備資金:10年以内(うち据置期間2年以内)
特定設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内)
担保・保証人の有無 希望を伺いながら相談可能

一般貸付は、ほとんどの業種の中小企業が利用できる融資です。返済期間や担保の有無によって利率は異なります。
なお、以下の生活衛生関係の事業を営む人の場合、一般貸付(生活衛生貸付)を利用することが可能です。

  • 飲食店営業
  • 理・美容業
  • 旅館業
  • クリーニング業 など

日本政策金融公庫の融資で審査落ちしないためには?


日本政策金融公庫の融資を受けるためには、各制度の対象者に該当すること以外にも、気を付けたいポイントがあります。
ここで、融資で審査落ちしないためのポイントを解説していきます。

個人の信用情報に問題がないか確認する

日本政策金融公庫は、審査を行う際に個人の信用情報に問題がないか確認を行います。申込者に借金がないかどうかを調査し、確実に返済されるか判断するためです。

例えば、過去2年間に複数の滞納があったり、キャッシングの債務があったりする場合は、審査において不利になってしまう可能性が高いです。
また、過去5年以内に債務整理や強制解約を受けていたり、過去10年以内に自己破産をしたりすると、審査落ちする可能性がより高まります。
融資を受ける前に、個人の信用情報に問題がないか確認しておいてください。

自己資金を必要額の2~3割程度は用意する

融資を受けるためには、自己資金も必要です。特に1,000万円以上の高額融資を希望している場合、自己資金ゼロで申し込んでしまうと審査で不利になります。
日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、創業資金調達総額に占める自己資金の割合は24%でした。
自己資金が24%以上あれば必ず審査に通るとはいえないものの、目安として必要額の2~3割用意しておくと安心です。

事業計画書に矛盾が生じていないか確認する

事業計画書の中身に矛盾が生じていた場合、審査に落とされてしまうことがあるかもしれません。
融資担当者は事業計画書を見た上で、事業の将来性などを予測し融資をするかどうかを判断します。
事業計画書は融資を受けるために重要な資料といえますが、その内容に矛盾点があると将来的な売上げやキャッシュフローなどの根拠が不明瞭となりやすく、審査に落ちやすくなってしまいます。
事業計画書を作成する際は、矛盾や曖昧な部分をなくすように作成し、何度も確認を行うことが必要です。

保証人や担保を用意する

日本政策金融公庫の融資は、保証人や担保があれば審査で有利になります。
返済不能になったとしても保証人や担保によって返済額を工面できると判断されるため、貸し倒れのリスクが減り、審査に通りやすくなります。

ただし、保証人の有無は担当者との相談によって決められる場合がほとんどです。
マル経融資や資本性ローンなど、無担保無保証人を前提に借りられる融資もあり、保証人や担保があることで審査落ちしなくなるわけではありません。
面談や審査後の担当者の判断次第であることを念頭に置きつつ、保証人や担保を用意しておくと良いでしょう。

面談時は事業計画書の内容に沿って丁寧に説明する

融資の審査を受ける前に、融資担当者との面談があります。面談の際には事業計画書の内容と矛盾しないように、計画書の内容に沿って事業の説明を行うことが重要です。
また、担当者から質問を受けることも多いため、事前に聞かれそうなことを予想し、答えを用意しておくとスムーズな受け答えにつながります。
なお、担当者からの質問に対して嘘をついたりあやふやな返事をしたりすると、審査に落とされてしまう可能性もあるため注意してください。

まとめ・日本政策金融公庫の融資は起業・開業時の資金調達にもおすすめ!

日本政策金融公庫の融資は様々な種類があり、民間の金融機関と比べて低利率で融資を受けられる場合もあります。
特に起業・開業をしてからすぐのタイミングで資金調達ができることはメリットです。
起業・開業時の資金調達を行う際には、日本政策金融公庫の融資をぜひ活用してみてください。

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