【税理士監修】青色申告特別控除75万円に向けて個人事業主が準備すべきこととは?

2026年度税制改正で青色申告特別控除の見直しが正式決定


2025年12月26日に閣議決定された2026年度税制改正大綱に基づき、2026年3月に国会で関連法案が成立しました。今回の改正では、基礎控除の引き上げや賃上げ促進税制の見直しなどが注目を集めています。

青色申告特別控除は、所得税の負担を軽減する重要な制度ですが、今回の改正によってその要件や控除額が大きく変わることになりました。

この記事では、正式決定した青色申告特別控除の改正内容や、変更前・変更後の徹底比較、そして新制度の適用に向けて「今から」準備しておくべき実務のポイントを分かりやすく解説します。

監修:谷 孝洋(たに たかひろ)
税理士谷孝洋事務所 代表 / 合同会社オフィスタカ 代表社員 / 税理士
国税局・税務署で30年間勤務後、独立。現在は「経営者の身近な伴走者」として、広島を拠点にクラウド会計やLINEを活用したスマートな経営サポートを行っています。難しい税金を分かりやすく解説し、経営の「これから」を一緒にワクワクしながら形にするアットホームな税理士事務所です。

この記事の目次

2026年度(令和8年度)税制改正で確定した「青色申告特別控除の見直し」とは


今回の2026年度税制改正では、会計ソフトの普及や電子申告の割合を向上させるために、青色申告特別控除について一定の見直しが行われることになりました。

2026年度(令和8年度)の税制改正により、個人事業主の記帳・申告のデジタル化(DX)を強力に推進するため、青色申告特別控除の仕組みが正式に見直されることになりました。
今回の法改正に盛り込まれた、主な変更内容は以下の3点です。

  • 【拡充】優良な電子帳簿保存等の要件クリアで、控除額が最大75万円に引き上げ
  • 【必須化】e-Tax(電子申告)が必須に(従来の書面提出による55万円控除は廃止・縮小)
  • 【制限】売上1,000万円超の場合、簡易簿記による10万円控除は対象外

それぞれの改正内容について、実務への影響を含めて詳しく解説していきます。

【拡充】優良な電子帳簿保存等のクリアで最大75万円に引き上げ

今回の見直しで特に実務への影響が大きいとされているのが、新たに75万円控除が設けられた点です。
これまで青色申告特別控除は、以下の要件を満たすことで最大65万円の控除を受けられるようになっていました。

  • 複式簿記による記帳
  • 貸借対照表・損益計算書の提出
  • 確定申告の期限内に提出
  • 電子申告または優良な電子帳簿保存

今回の見直しで最も注目されているのが、新たな最高枠として「75万円控除」が新設された点です。
これまでの最高額(65万円控除)の要件は、「複式簿記による記帳」「貸借対照表・損益計算書の添付」「期限内申告」を満たした上で、「e-Taxによる申告」または「優良な電子帳簿保存」のどちらか一方を行えばクリアできていました。
しかし、今回の改正により、これまでの65万円の要件(e-Taxによる期限内申告など)をクリアした上で、さらに以下のいずれか一方のデジタル対応を重ねて行うことで、特別控除額が最大75万円に引き上げられます。

  • 仕訳帳および総勘定元帳について、法的な一定要件(訂正・削除履歴の確保など)を満たす「優良な電子帳簿」として保存している場合
  • 受け取った請求書等のデジタルデータ(電子取引データ)を、真実性や検索性の一定要件を満たして会計ソフト等へ自動連携・保存している場合

【必須化】書面提出(55万円控除)の廃止とe-Taxの完全必須化

これまでは、e-Taxを使わずに「書面」で確定申告書を提出した場合でも、正規の複式簿記で記帳し、期限内に損益計算書とあわせて「貸借対照表」を提出していれば、「55万円」の控除を受けることができました。

しかし、今回の法改正により、従来の「55万円控除」という区分そのものが廃止されます。今後は、たとえきちんと貸借対照表を添付して提出していたとしても、それが「書面(紙)」である場合は、一気に「10万円控除」まで大幅に縮小されることが確定しました。

つまり、65万円(または新設の75万円)の控除を受けるためには、e-Taxによる電子申告が完全に必須となります。これまでせっかく貸借対照表を作って紙で提出していた人は、提出方法をe-Taxに切り替えないと実質的な増税となってしまうため、注意が必要です。

【制限】売上1,000万円超の簡易簿記は10万円控除の対象外へ

青色申告者で、複式簿記ではなく「簡易簿記」で記帳している場合、これまでは一律で10万円の特別控除を受けることができました。

しかし今回の改正により、簡易簿記で記帳している人のうち、前々年(基準期間)の事業収入(または不動産収入)が1,000万円を超える場合は、10万円控除の対象から除外(控除額が0円に)されることになりました。

売上が1,000万円以下の場合はこれまで通り10万円の控除が維持されますが、1,000万円を超える規模の事業者は、簡易簿記のままだと青色申告の税制メリットを一切受けられなくなります。
該当する場合は、これを機に複式簿記(クラウド会計ソフト等の活用)への移行を検討する必要があります。

青色申告特別控除の変更前と変更後を比較


2026年度税制改正により、青色申告特別控除は控除額や適用要件が見直されます。
電子帳簿保存やe-Taxの利用状況によって受けられる控除額は変わるため、変更前と変更後の違いを把握しておくことが重要です。
以下の表で、控除額や要件の主な変更点を比較して確認してください。

申告・記帳のスタイル 変更前(現行) 変更後(改正後) 主な適用要件
最高額の優遇枠 65万円 75万円 複式簿記+期限内申告+e-Tax
【追加】優良電子帳簿保存または自動連携
通常の複式簿記(電子) 65万円 65万円 複式簿記+期限内申告+e-Tax
通常の複式簿記(書面) 55万円 10万円 複式簿記+期限内申告+書面(紙)提出
簡易簿記(売上1,000万円以下) 10万円 10万円 簡易簿記+期限内申告(売上1,000万円以下)
簡易簿記(売上1,000万円超) 10万円 対象外(0円) 簡易簿記+期限内申告(売上1,000万円超)

今回の法改正で「影響を受ける人」

今回の見直しにより、これまでの記帳方法や申告スタイル(紙の提出など)をそのまま続けている個人事業主は、大きな影響を受けることになります。具体的には以下のようなケースが該当します。

これまで「書面(紙)」で55万円控除を受けていた人:今回の改正で55万円控除の区分そのものが廃止されたため、提出方法をe-Taxに切り替えないと、控除額が10万円まで激減してしまいます。
売上1,000万円超で「簡易簿記(10万円控除)」を選択している人:前々年の事業収入が1,000万円を超えている場合、簡易簿記のままだと10万円控除の対象から外れ、控除額が0円になってしまいます。

今回の変更は、デジタル化への対応を怠ると実質的な「増税」になってしまうという、非常に影響の大きい内容となっています。

今回の法改正で「影響を受けない人(または得をする人)」

一方で、すでに業務のデジタル化が進んでいる個人事業主にとっては、実質的なマイナスの影響はほとんどありません。むしろ、さらなる減税のチャンスとなります。

すでにe-Taxを利用し、複式簿記で65万円控除を受けている人:現行の運用を続けるだけで、改正後も「65万円控除」をそのまま維持できます。さらに、会計ソフトの設定を「優良電子帳簿保存」に切り替えるだけで、最高額の「75万円控除」へステップアップできるため、最も恩恵を受ける層と言えます。
売上1,000万円以下で、従来どおり10万円控除(簡易簿記)を受けている人:売上が1,000万円以下であれば、簡易簿記であってもこれまで通り10万円控除が維持されるため、申告方法を急いで変える必要はありません。

すでに電子申告やクラウド会計ソフトを活用している場合は、新しい制度への移行も非常にスムーズに進めることができるでしょう。

青色申告特別控除の変更が適用される時期


青色申告特別控除の見直しが実際に適用されるのは、2027年(令和9年)分以後の所得税と、2028年(令和10年)分以後の個人住民税に決定しています。
「まだ先の話だから、来年の確定申告が終わってから考えればいい」と後回しにするのは禁物です。

なぜなら、最大75万円の控除を受けるための要件である「優良な電子帳簿保存」などは、その年の1月1日から12月31日まで、1年を通じて継続して運用している必要があるからです。

申告の時期(2028年春)になってから慌てて設定を切り替えても、2027年分として遡って適用することはできません。新制度のスタートとなる2027年1月1日の取引開始に間に合わせるためにも、2026年中の今から、記帳方法や会計ソフトの設定変更、e-Taxへの切り替えなどの準備を確実に進めておくことが重要です。

乗り遅れないために!変更が適用される前に準備すべき3つのこと


青色申告特別控除の変更が適用される前に、具体的にどのような準備を進めていけば良いのでしょうか。ここで、変更が適用される前に準備すべきことを紹介します。

電子申告(e-Tax)に切り替える

今回の改正によって、従来の「書面提出による55万円控除」という区分そのものが廃止されます。これまで紙で確定申告書を提出していた人は、提出方法をe-Tax(電子申告)へ切り替えないと、控除額が10万円まで大幅に減少してしまいます。

e-Taxに切り替えることで、これまでの55万円から「65万円(または新設の75万円)」へと控除額を維持・拡大でき、税負担を抑えることができます。

電子申告を行うにあたっては、事前の準備が必要です。税務署が発行するID・パスワード方式もありますが、セキュリティや今後の利便性を考慮すると、国が推奨する「マイナンバーカード方式」を整えるのが確実です。まだカードを持っていない人は早めに発行を申請し、あわせてカードを読み取るためのスマートフォン(またはICカードリーダライタ)を準備しておきましょう。

会計ソフトの設定やプランを見直す

電子申告をスムーズかつ効率的に行うために、利用している会計ソフトの見直し・確認も極めて重要です。特に、新設された最大75万円の特別控除を受けたい場合は、その会計ソフトが電子帳簿保存法上の「優良な電子帳簿」の要件を満たしているかを確認する必要があります。
「優良な電子帳簿」として認められる主な法的要件は以下の通りです。

  • 訂正・削除履歴の保持: データの修正や削除を行った場合に、その事実と内容がシステム上に自動で記録されること。
  • バックデート(遅延入力)の記録: 通常の業務期間を過ぎてから入力された場合、その事実が確認できること。
  • 帳簿間の相互関連性: 仕訳帳と総勘定元帳など、関連する帳簿の間でデータのつながりが確認できること。
  • 検索機能の確保: 「取引年月日」「勘定科目」「取引金額」で検索ができ、範囲指定や複数条件の組み合わせができること(※税務調査時にデータダウンロードに応じる場合は一部緩和あり)。

一見すると難しく思えますが、現在主流の主要なクラウド会計ソフトであれば、標準機能として対応しているか、専用のプランや設定に切り替えることで、これらのシステム要件をクリアできるようになっています。まずは自身のソフトの設定状況を確認してみましょう。

経理業務のデジタル化を進める

新しい青色申告特別控除のメリットを最大限に活かすためには、日々の経理業務そのもののデジタル化を進めることが成功のポイントになります。

例えば、75万円控除の要件である「優良な電子帳簿」を運用する場合、銀行口座やクレジットカード、経費精算アプリを会計ソフトと「同期(自動連携)」させる体制を作っておくと、人の手を介さない正確なデータが自動で蓄積されるため、仕訳の手間を劇的に減らすことができます。

また、電子取引データ(メールで届いたPDFの請求書や、ネットショップの領収書など)をデジタルのまま適切に保存する仕組みを構築しておくことも、スムーズな会計入力と電子申告につながります。

この法改正を、単なる手続きの変更と捉えるのではなく、「自社の経理業務の効率化(DX)」を図る絶好のチャンスとして、体制の見直しを進めてみてください。

青色申告特別控除とは?


そもそも青色申告特別控除とは、税務署から「青色申告」の承認を受けた個人事業主が活用できる、非常にメリットの大きい税制上の優遇制度です。

通常、個人事業主の税金は、売上(収入金額)から必要経費を差し引いた「所得金額」をベースに計算されます。しかし、青色申告特別控除の適用を受けると、この所得金額から最大75万円(改正前は最大65万円)を差し引くことができるため、ダイレクトに所得税や住民税を安く抑えることが可能です。

また、青色申告特別控除のメリットは税金だけにとどまりません。国民健康保険(国保)に加入している場合、保険料の計算ベースとなる「所得割(前年の所得に応じて課される部分)」の算出時にもこの控除が適用されます。そのため、税金だけでなく毎月の国民健康保険料も低く抑えられるという、個人事業主にとって二重のメリットがあります。

この青色申告特別控除を受けるためには、適用を受けたい年の3月15日まで(その年の1月16日以降に新規開業した場合は、開業日から2カ月以内)に、「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出しておく必要があります。提出期限を過ぎると、その年は青色申告ができなくなってしまうため、早めの手続きが肝心です。

【基本をおさらい】e-Taxで青色申告を行う際の手順

法改正による最大控除(75万円または65万円)を勝ち取るためには、e-Tax(電子申告)での期限内申告が完全必須となります。
現在はマイナンバーカードを活用することで、従来のような事前の面倒な書面手続き(開始届出書の提出など)を一切行うことなく、画面の指示に従うだけで即座にアカウントを開設して申告まで完了できるようになっています。
最もスムーズに申告を終えるためのステップは以下の通りです。

ステップ1:必要な機器と書類を準備する

まずは、申告書を作成・送信するために必要な以下の環境と書類を手元にそろえます。

  • マイナンバーカード(電子署名を行うための「署名用電子証明書」のパスワードも要確認)
  • スマートフォン(NFC対応)、またはパソコン接続用のICカードリーダライタ
  • 青色申告決算書・確定申告書を作成するためのデータ(会計ソフトで出力したデータ、または売上・経費の総額がわかる集計表)
  • 各種控除証明書(社会保険料、生命保険料、ふるさと納税の受領書など)
  • 還付金の振込口座がわかるもの(通帳やキャッシュカード)

ステップ2:国税庁の「確定申告書等作成コーナー」へアクセス

国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、「作成開始」をクリックします。
画面の案内で税金の提出方法を選択する画面が表示されるため、準備した環境に合わせて「スマートフォンを使用してe-Tax」または「ICカードリーダライタを使用してe-Tax」を選択します。

ステップ3:マイナンバーカードを読み取り、アカウント(利用者識別番号)を自動開設

画面に表示されるQRコードをスマートフォンで読み取るか、リーダライタにマイナンバーカードをセットして、カードの認証を行います。

初めてe-Taxを利用する場合でも、カードから氏名や住所などの情報が自動で読み取られ、その場でe-Tax用のアカウント(利用者識別番号)が自動的に発行・登録されます。事前の届出書の提出や税務署への郵送などは一切不要です。

※マイナンバーカードをお持ちでない場合(カードを使わない場合): カードを使わずに申告する場合は、事前に国税庁の「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」へアクセスし、画面の案内に従って「開始届出書(個人の方用)新規」をオンライン送信(または書面で税務署へ郵送・持参)してください。手続きが完了すると、ログインに必要な16桁の「利用者識別番号」が即時発行されます。 なお、かつて提供されていた「ID・パスワード方式」の新規発行は完全に終了しているため、カードなしで新しくアカウントを作る場合はこの「開始届出書」のルートが必須となります。

ステップ4:決算書と確定申告書を作成する

ログインが完了したら、作成する書類として「決算書・収支内訳書(+所得税)」を選択します。
画面のガイド(ナビゲーション)に従って、売上金額や経費、各種控除の金額を入力していきます。お使いのクラウド会計ソフト等で作成した「申告データ(xtx形式)」がある場合は、ここでそのファイルを読み込ませるだけで、すべての数字が自動で一括入力されます。税額や還付金の計算はシステムがすべて自動で行ってくれます。

ステップ5:電子署名を付与してデータを送信する

すべての入力と確認が終わったら、最終確認としてもう一度マイナンバーカードをスマートフォン等で読み取り、本人確認のための「電子署名」を付与します。
そのまま「送信」ボタンをクリックすれば、税務署への確定申告データの提出は完了です。

ステップ6:受信通知を確認し、控えデータを保存する

送信後、e-Tax内の「メッセージボックス」に「所得税及び復興特別所得税申告の受信通知(データが正常に届いたという証明書)」が届くので、必ず確認してください。
銀行での融資手続きや賃貸契約、マイホームのローン審査などで「確定申告書の控え」の提出を求められた際、e-Taxの場合は「申告書のPDF」と「この受信通知(メール詳細)」の2点がセットで初めて証明書として有効になります。必ず両方のデータをパソコンやクラウドにダウンロードして、大切に保管しておきましょう。

まとめ・青色申告特別控除の改正に向けて、今から準備を進めよう

2026年度(令和8年度)の税制改正により、青色申告特別控除の仕組みが大きく変わることが正式に決定しました。

今回の改正により、優良な電子帳簿保存などのデジタル要件をクリアすれば、控除額が最大75万円へと引き上げられる大きなチャンスが生まれます。その一方で、これまで「書面(紙)」で55万円控除を受けていた人は、e-Taxへの切り替えを行わないと一気に10万円控除まで縮小されてしまうため、早急な対策が必要です。

新しい控除制度が実際に適用されるのは2027年分(令和9年分)の所得からとなります。まだ少し時間があるように思えますが、満額の控除を受けるためには「その年の1月1日から12月31日まで」継続してデジタル運用を行っていなければなりません。

損をせず、新しい制度のメリットを最大限に活かすためにも、以下の準備を「2026年中」に進めておきましょう。

まとめ
  • マイナンバーカードを準備し、e-Tax(電子申告)ができる環境を整える
  • 利用している会計ソフトが「優良な電子帳簿保存」に対応しているか確認・設定する
  • 銀行口座やクレジットカードとの自動連携など、経理業務のデジタル化(DX)を進める

直前になって慌てることがないよう、今のうちから計画的に体制の見直しを進めて、スムーズに新制度を迎えましょう。

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(編集:創業手帳編集部)