商工中金とは?日本政策金融公庫との違いやメリット・デメリットなどを詳しく解説!

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商工中金(商工組合中央金庫)は経営実績がある中小企業から選ばれやすい


政府系の金融機関には、商工中金や日本政策金融公庫があります。なかでも商工中金は中小企業でも融資を受けやすいのが特徴です。
しかし、商工中金と日本政策金融公庫の違いについて詳しく知らない方も多いかもしれません。

そこで今回は、商工中金と日本政策金融公庫の違いや、商工中金のメリット・デメリットについて解説します。
政府系の金融機関で融資を検討している方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。

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商工中金はどのような機関なのか?


商工中金とは中小企業専門の金融機関のことで、全都道府県に1カ所ずつと海外にも4カ所の拠点があります。
昭和初期の恐慌で多くの中小企業が危機的な状況に陥ったことで、政府と組合が共同出資して設立しました。

設立目的は、恐慌という厳しい状況で苦しんでいる中小企業の救済です。
設立から現在に至るまで、商工中金は中小企業に特化した金融機関として、財務改善・事業再生・経営改善・海外進出といった幅広いサービスを提供しています。
新たに事業をスタートさせた経営者をはじめ、企業だけでは解決できない課題にも対応しており、中小企業の成長や発展をサポートできる強みがあります。

各地域の金融機関や業界団体と連携することも業務運営の一環としており、2018年に地域連携推進室も設置されました。
様々な機関と連携し信頼関係を強固なものにすることで、公的金融機関の枠組みを超えた、連携・協業機関とのコーディネーターとして活動しています。

商工中金融資の審査基準について


商工中金の融資を利用したい場合には、審査に通らなくてはなりません。続いては、商工中金で融資を借りる場合の審査基準について解説します。

必要書類は不備なく用意する

商工中金でローンを組むには、まずは商工中金の本店もしくは支店に問い合わせて、ローンを検討している旨を相談してください。
申し込みには、会社案内や決算書(3期分)・商業登記簿謄本・事業計画書などが必要です。

決算書については、3期分を用意する必要があります。つまり、事業を始めてから少なくとも3年が経過していなければいけません。
商工中金では、経営実績における申し込み要件はありませんが、事業運営計画や返済能力について厳しく審査されます。

また、設備資金としてローンを組む場合には、見積書も必要です。ほかにも、どのような融資制度を利用するかによって必要な書類は異なります。
商工中金から求められた資料や書類は、不備なく準備することが大切です。

事業年数は問われない

金融機関で融資を受ける場合、申し込み要件に事業年数が含まれていることが多いです。しかし、商工中金では事業年数は問われません。
仮に申し込み時点では事業年数が3年未満だったとしても、審査には進めます。
ただし、前述したように商工中金では融資の申し込み時に3期分の決算書が必要となります。そのため、最低でも事業年数が3年を経過していることが前提です。

審査時に事業年数を要件としている金融機関では、安定した経営を図っているかどうかを重視しており、事業年数が短い場合は信用能力が低いと判断されてしまいます。
商工中金では、事業年数について問われることはありませんが、事業の安定性や返済能力の有無をチェックしています。

日本政策金融公庫について


日本政策金融公庫は、政府が100%出資している金融機関です。
2008年10月に国民生活金融公庫・農林漁業金融公庫・中小企業金融公庫・国際協力銀行・沖縄振興開発金融公庫の5つが統合して発足しました。
主に国民生活事業や農林水産事業、中小企業事業を中心として、融資や支援・情報提供といったサービスを行っています。

なかでも中小企業に関連するのは、国民生活事業と中小企業事業です。
国民生活事業は、国民の教育ローンや恩給、共済年金といった融資をはじめ、小規模事業者の小口事業資金融資や創業支援、スタートアップ支援、海外展開支援などを行っています。

中小企業事業は、その名のとおり中小企業を対象にした長期事業資金の融資や新事業支援やスタートアップ支援、事業承継支援・ビジネスマッチングによる経営課題解決支援などを行います。
小口融資が主体になりますが、各事業ともに幅広いサービスを展開しており、創業融資だけでも融資先は88万件あるのが特徴です。

日本政策金融公庫についてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

日本政策金融公庫について、詳しくはこちらの記事を>>
日本政策金融公庫の起業時に利用できる3つの融資制度

商工中金と日本政策金融公庫の違いはどこにある?


商工中金も日本政策金融公庫も、中小企業の融資を提供しているといった点は同じです。ここでは、2つにどのような違いがあるのか解説していきます。

1.創業融資として利用可能か?

まず、創業融資としての利用可否に違いがあります。
商工中金では、融資の審査基準において3期分の決算書が必要であるため、既存の中小企業が対象です。そのため、創業融資としての利用には不向きです。

日本政策金融公庫は、新たに事業をスタートさせる人や開業資金や運転資金を調達したいという人を対象にした創業融資に力を入れています。
若年層やシニア層、中小企業の事業開拓でも借りられる新企業育成貸付もあるため、創業融資として利用できるのは日本政策金融公庫です。
日本政策金融公庫も融資を受けるには所定の審査が必要ですが、創業融資として利用したいのであれば、商工中金よりも審査に通過する可能性が高いです。

2.対象となる企業

商工中金も日本政策金融公庫も中小企業を対象にした融資を提供している点は同じですが、商工中金は中小企業団体やその構成員を対象としています。
上場していない大手企業など、幅広い企業を対象にしていることがわかります。

一方、日本政策金融公庫は一般の個人をはじめ、個人事業主や小規模事業者、中小企業などが対象で、それ以外の大きな企業や上場企業は利用できません。
どちらも幅広いサービスを提供していますが、対象となる企業に関しては商工中金のほうが既存の中小企業や大きな会社向きとなっています。

3.保証人制度

商工中金では、一般的な融資でも状況に応じて保証人や担保が必要です。
特にリスクが大きいと判断される貸付の場合、民間の金融機関と同じように保証協会の保証が求められる可能性があります。

日本政策金融公庫では、要件を満たしていれば融資を受ける際の保証人は不要です。ただし、保証人が不要とされる融資では融資額に限りがあります。
また、個人事業で経営者が融資を申し込んだ場合や事業承継における融資の場合、保証人が必要になる可能性もあります。

4.融資の内容

融資限度額は、融資制度で定められている上限額を表し、貸付限度額や借入限度額とも呼ばれています。
商工中金では、一般的な融資として設備資金や運転資金といった使途が多くなっていますが、限度額に関しては中小企業のニーズに合わせて柔軟に対応しているため、融資上限額が高くなっています。長期的な融資をはじめ、短期的な融資にも対応可能です。

一方、日本政策金融公庫では開業資金や運転資金など様々な融資に対応していますが、融資制度によって融資限度額が設定されています。
例えば、新規開業資金では7,200万円、新創業融資制度では3,000万円が限度額です。原則として、限度額の範囲を超える融資を借りることはできません。

5.預金・決済機能

預金・決済機能は、指定された口座から指定金額の引き落としや自動振替の手続きが行えるサービスです。
預金決済機能に対応している金融機関では、手形割引や短期融資の対応が可能です。
商工中金には預金・決済機能があるため、手形割引や短期的な融資も可能とされています。
また、融資金額の把握に加え、月々の支払いの確認も容易になるといったメリットもあります。

一方、日本政策金融公庫には預金・決済機能がないため、手形割引など短期的な融資の取り扱いもありません。
指定された民間の金融機関に融資が振り込まれ、返済する形となります。

6.資金調達の方法

商工中金と日本政策金融公庫では、資金調達方法にも大きな違いがあります。
商工中金では、構成員による出資金・預入金・信託預金・商工債券などから資金調達を行っており、政府には依存していません。

日本政策金融公庫では、財政融資金借入金や政府出資金・政府保証債・財投機関債から資金調達を行っており、政府に依存しています。
政府の出資金や国債による資金調達の場合、万が一の時でも資金調達が難しくなるといった心配がありません。

商工中金の場合、ある程度の利益を出さなければ資金調達が困難になる可能性があります。そのため、商工中金では日本政策金融公庫よりも審査基準も厳しくなっています。

商工中金を利用するメリット


中小企業が融資を受けるために商工中金を利用する場合、相談のしやすさや低金利での借入れができるといったメリットがあります。
ここでは、商工中金を利用するメリットについて詳しく解説します。

1.サービスが豊富で相談しやすい

商工中金の魅力は、中小企業のための金融機関というだけあって提供しているサービスが豊富です。
資金調達はもちろん、資産運用や事業支援、経営サポート、海外進出支援など、幅広いサービスが用意されています。
一般的な金融機関ではサービスに制限があるところもありますが、商工中金では企業のニーズによって柔軟に対応してくれる点が大きなメリットです。
行政との連携を密にしているため、企業が抱えている課題解決に向けた相談窓口としての役割という特徴もあります。

本店・支店・出張所も全国各地にあるので、相談しやすいところも魅力です。
知らないサービスについても丁寧に対応してくれるので、気付いていなかった問題の早期発見や解決にもつながります。

2.低金利で融資を受けられる

融資を受ける場合、できる限り低金利で受けたいと考えるかもしれません。しかし、民間の金融機関だと、中小企業を対象にした融資制度は金利が高くなる傾向にあります。

一方、商工中金では中小企業でも低金利で融資を受けられます。
年利でも金利1%台が基本です。金利の低さは、政府による出資が含まれている点が大きな要因となっています。

また、政府の出資金が含まれていることから、自然災害によって事業運営が難しくなった場合でも利用しやすいといった利点もあります。
低金利で融資を受けられれば、返済額を抑えながらも効率良く資金調達ができるため、中小企業が運転資金や設備資金を調達する上でメリットになるでしょう。

商工中金を利用するデメリット


中小企業が商工中金を利用するデメリットとして、金利が前もって確認できないことや、構成員になる必要があることなどが挙げられます。
最後に、商工中金を利用するデメリットを詳しくご紹介します。

1.金利を前もって調べられないケースが多い

商工中金は、低金利で融資を受けられることや、基本的に金利が1%台であることは上記でもご紹介しました。
融資制度を提供している金融機関では、金利を明確にしているところが多いです。
しかし、商工中金ではインターネット上で詳しい金利を調べられません。

詳しい金利を確認するには、商工中金の本店や支店、出張所に足を運んで直接確認する必要があります。
民間の金融機関のように、事前に金利を調べて相談できないため、道筋や計画が立てにくいといったデメリットもあります。
場合によっては、想定を超える金利が提示されるケースもあるかもしれません。

2.構成員などにならなければいけない

商工中金で融資を受けるには、構成員や株主になっていなければなりません。
なぜなら、商工中金が提供している融資制度は、構成員貸と組合員貸の2種類の取り扱いしかないためです。
構成員貸は、事業者が所属する団体が株主の場合に利用できる融資で、組合員貸は商工中金の株主が利用できる融資です。

商工中金の組合員になる場合、年会費を支払わなければなりません。同様に、株を取得する場合もそれにともなう費用が発生します。

まとめ

中小企業が事業の運転資金や設備資金のため融資を受ける際には、商工中金を検討するケースが多いです。
商工中金は、中小企業の安定した運営をサポートするために設立された金融機関であり、幅広いサービスに対応しています。

商工中金と日本政策金融公庫では、対象となる企業から保証人制度、融資の内容まで、様々な部分に違いが見られました。
両者の違いをよく理解した上で、どちらの融資制度を利用するか検討してみてください。


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(編集:創業手帳編集部)

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