日本政策金融公庫の新創業融資制度が2024年3月で廃止に!今後の資金調達方法や審査に通過するコツを解説

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新創業融資制度の廃止に伴って今後は新規開業資金を活用することに


2024年3月をもって、日本政策金融公庫の新創業融資が廃止されました。今後、新規開業者やスタートアップ企業が公庫から資金調達する場合は、新規開業資金へ申込みを検討される方が多くなるでしょう。新創業融資の廃止に伴い、新規開業資金について内容がリニューアルされています。

制度の廃止と聞くと「不便になったのかな?」と考える方がいるかもしれません。しかし、実際には新規開業者に対する支援が手厚くなり、利便性が向上しました。

こちらの記事では、新創業融資制度の廃止に伴う影響や、今後活用を検討することになる新規開業資金について解説します。公庫からの借り入れを検討している方に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。


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新創業融資制度が廃止!新規開業資金の変更内容とは


2024年3月で、日本政策金融公庫の新創業融資が廃止となりました。それにともない、新規開業資金の内容が一部リニューアルされました。

以下で、2024年4月以降に起こる具体的な変化について解説します。

各種融資が無担保・無保証人に

事業を始める方または事業開始後の税務申告を2期終えていない方が新規開業資金に申し込む際、無担保・無保証人でも問題ありません。担保となる資産や保証人を用意するのが難しい事業主でも、申し込みが可能です。

創業期にある事業主の方は、営業実績が乏しく財務体制が盤石とはいえないケースが考えられます。資金調達で難渋すると事業の発展を妨げる要因となるため、新規開業資金では担保と保証人を不要としています。

返済期間が延長に

今まで新規開業資金の返済期間については、設備資金なら20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金なら7年以内(うち据置期間2年以内)となっていました。

新創業融資においての返済期間は各種融資制度で定める返済期間以内となっており、新規開業資金との組み合わせで利用していた場合は先の期間での返済となっていました。

新創業融資制度が廃止されたことにより、新規開業資金の返済期間が延長され、設備資金なら20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金については7年以内から原則10年以内(うち据置期間5年以内)に変更となり、今までよりも長期の返済が可能となりました。

利率を一律0.65%引下げ

新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として利率が0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引き下げとなります。

これにより、返済の利息負担を抑えることが可能です。

自己資金要件が撤廃に

新創業融資制度と新規開業資金を組み合わせて利用する場合には今までは「創業資金総額の1/10以上」の自己資金を用意する必要がありました。

例えば、創業資金が5,000万円の場合は500万円以上の自己資金を用意しなければなりませんでした。

しかし、2024年以降は新創業融資制度が廃止となり、実質新規開業資金での利用となるため、従来どおり自己資金を用意できなくても申し込みができます。

新創業融資制度が廃止されたことによるメリットは?


新創業融資制度が廃止され、新規開業資金に一本化されたことで経営者はメリットを得られます。

以下で、具体的にどのようなメリットが期待できるか解説します。

有望なビジネスであれば多額の融資を受けられる可能性がある

公庫から将来有望なビジネスであると評価された場合、多額の融資を受けられる可能性があります。

日本政策金融公庫の基本理念は「国の政策の下、民間金融機関の補完を旨としつつ、社会のニーズに対応して、種々の手法により、政策金融を機動的に実施する」ことです。

つまり、審査の段階で公庫から「社会的ニーズが高い事業である」という評価を得られれば、希望している金額を調達できる可能性が高まるでしょう。

協調融資を行わずに済む可能性がある

公庫から十分な金額を融資してもらえれば、協調融資を行わずに済む可能性があります。

協調融資とは、複数の金融機関が協調して融資を行うことです。実際に、公庫と民間金融機関から協調融資を受けている事業主も少なくありません。

協調融資では複数の金融機関から融資を受けるため、多額の資金を調達できるメリットがあります。しかし、手続きが煩雑になる分だけ審査に時間がかかったり、そもそも1つの金融機関が融資を拒否すると協調融資が成立しなかったりするデメリットがあります。

2024年以降は、協調融資をせずに済むケースも考えられるでしょう。これにより、事業主にとっては資金調達に関する手続き負担を軽減できます。

新規開業の融資として使える、新規開業資金とは

新規開業資金の概要についてまとめます。

対象者 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
資金用途 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
金利 基準金利(詳しくはこちら
返済期間 設備資金20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金10年以内(うち据置期間5年以)

融資には審査があり、実際の融資額は審査状況によります。必ずしも融資限度額上限まで借りられるとは限らない点に留意してください。

なお、以下に該当する方は、優遇された融資制度を利用できます。

  • 女性、若者、シニアの方で創業する方
  • 廃業歴等があり創業に再チャレンジする方
  • 中小会計を適用して創業する方

適用される金利が優遇されるなど、優遇措置を受けられる可能性があるため、該当する方は相談してみると良いでしょう。

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新規開業資金とは?概要や特徴、新創業融資制度との違いを解説

日本政策金融公庫で相談したいとき


新規開業資金の申請や必要書類など、相談したいことがあれば日本政策金融公庫で相談することをおすすめします。

公庫では、店舗の窓口や電話などで相談を行えるため、気になることがあれば相談してみましょう。

オンライン・来店

オンラインまたは店舗の窓口で相談する方法があります。公庫には「創業サポートデスク」という相談窓口が全国にあり、実際に支店に足を運ぶかMicrosoft Teamsでのオンライン面談が可能です。

近くに創業サポートデスクがない場合はオンライン相談、実際に対面でじっくり相談したい場合は来店相談を活用するとよいでしょう。

なお、相談する際には事前に予約をしておくことをおすすめします。来店相談を希望する場合は希望日の前営業日16時まで、オンライン相談を希望する場合は希望日の2営業日前16時までに予約を済ませましょう。

相談時間は平日9時~17時となっています。

事業資金相談ダイヤル

公庫では「事業資金相談ダイヤル」という電話相談窓口を設けています。受付時間は平日9時~17時となっていますが、これから創業をする予定の方や創業して間もない方、個人企業・小規模企業の方は平日9時~19時まで相談できます。

近くに店舗がなく、Microsoft Teamsをうまく使いこなせない場合は事業資金相談ダイヤルの利用を検討するとよいでしょう。

ビジネスサポートプラザ

公庫では、創業を考えている方や公庫との取引が初めてという方に向けて「ビジネスサポートプラザ」という相談窓口を設けています。

名称 所在地 電話番号 対応時間
東京ビジネスサポートプラザ 東京都新宿区西新宿1-14-9 03-3342-3831 【平日】
平日9時~17時
【休日】
毎週土曜9時〜17時
毎月第1・3日曜9時〜17時
【平日(夜)】
毎週木曜17時~20時
名古屋ビジネスサポートプラザ 名古屋市中村区名駅3-25-9 堀内ビル 6F 052-561-6316 【平日】
平日9時~17時
【休日】
毎週土曜9時~17時
大阪ビジネスサポートプラザ 大阪市北区曽根崎2-3-5 梅新第一生命ビルディング7F 06-6315-0312 平日9時~17時
毎週土曜9時~17時
毎週火曜17時~20時

新規開業資金をはじめとした融資制度の概要や、事業計画の策定などの相談に応じています。創業前は資金繰りや事業計画をはじめ疑問や不安が多く出てきますが、ビジネスサポートプラザで相談すれば解決できる可能性があります。

平日だけでなく土日も相談できるため、平日は相談時間が確保できないという方にとってありがたい窓口です。

ビジネスサポートプラザでの相談は事前予約が必要となるため、忘れずに済ませておきましょう。相談予約はWEBか電話で行えます。

日本政策金融公庫での審査を通過するためのポイント


新規開業資金をはじめ、公庫から資金を融資してもらうためには審査に通過しなければなりません。

以下で、公庫で審査を通過するために行うべきポイントを解説します。少しでも審査に通過できる可能性を高めるためにも、可能な範囲で実践してみてください。

可能な限り自己資金を用意する

可能な限り自己資金を用意することで、審査に通過する可能性を高められます。新規開業資金では自己資金の要件がありませんが、債権者(お金を貸す人)の立場からすると、自己資金が多い事業主のほうが信頼を置けます。

自己資金比率が高いほど財務の安定性が増すことから、公庫としても「貸し倒れのリスクが低い」と判断するでしょう。また、自己資金を用意して借入額を抑えることで借入金の返済負担を軽減できます。

さらに、多くの自己資金を投入することは、事業に対する強い意志があることをアピールする要素にもなります。資金面でも精神面でも、本気で創業する姿勢を示すためにも、自己資金を用意することは有意義です。

代表者の個人信用情報を良好に保つ

創業するにあたって、代表者の個人信用情報を良好に保つことは審査に通過するうえで重要です。個人信用情報は、事業主の信用力を測る重要な指標の一つです。

個人信用情報とは、クレジットカードや各種ローンなど、金融サービスの利用履歴を指します。もしクレジットカード代金の延滞やローンの返済を遅延した記録があると、個人信用情報に傷がついている状態です。

過去に問題を起こしていると、公庫としては「また問題を起こすかもしれない」と警戒する可能性があります。金融サービスの利用履歴は信用情報機関に登録されており、金融機関は申込者の信用情報を確認するのが一般的です。

他にも、公共料金や税金の支払いを滞納している場合も、「事業主として信用できない」という印象を与えてしまう恐れがあります。納めるべきお金や生活に必要な支払いが満足にできていないということは、金銭管理が杜撰と言わざるを得ません。

事業主が信頼できなければ、事業そのものの信頼性にも悪影響を及ぼしてしまいます。公庫は「地域の維持・発展に貢献し、日本の未来を共に創ります。」という使命を掲げていることから、信頼を得られなければ審査に通過できないでしょう。

現実的かつ具体的な事業計画を策定する

公庫に審査を申し込む際には、現実的かつ具体的な事業計画を策定することが重要です。審査の過程においては、必要書類を提出したあとに公庫の担当者と面談する必要があります。

面談の際には、公庫の担当者から事業計画や資金繰りの見通しなどを質問されるのが一般的です。この際に、現実的かつ具体的な事業計画を策定したうえで、説得力のある根拠を添えて伝えなければなりません。

もし非現実的な事業計画を立てている場合、公庫からすると「融資したお金が回収できない恐れがある」と判断するかもしれません。また、事業計画に具体性が伴っておらず漠然としていると、事業が失敗するリスクを警戒するでしょう。

事業計画を策定する際には、市場動向・競合分析・販売戦略・収支予測などを具体的に策定する必要があります。どのようなリスクが起こり得るかを織り込み、現実的な事業計画を策定していれば、事業主としての事業理解度や準備の徹底さを評価してもらえるでしょう。

公庫が最も避けたいのは、融資したお金が返済できなくなる「貸し倒れ」です。公庫が懸念しているリスクを軽減するためにも、事業計画書に詳細な資金計画を記載すると、好印象を与えられる可能性があります。

まとめ:新創業融資は廃止になっても創業者向けの融資制度はある

2024年3月をもって新創業融資は廃止となり、新しく創業する際に資金調達する際には新規開業資金の活用を検討することになります。

従前よりも融資制度が拡充された部分もあり、使い勝手がよくなった部分もあります。

資金調達は、起業や経営における重要なファクターのひとつであり、創業するにあたって必ず考える必要があります。資金調達の方法だけでなく、調達後の活用方法も鑑みて、資金計画を立てましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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