外食産業向け業態転換等補助金とは。対象事業者や補助金額、スケジュールなどを解説

創業手帳

コロナ禍で悪化した業績を回復するために業態転換に取り組む飲食事業者への支援金。活用を検討してみよう!


2022年3月にまん延防止等重点措置が解除され飲食店にも人が戻り始めましたが、このままではコロナ前の状態に戻ることは期待できないと考える飲食店経営者もいるでしょう。

業績を回復させるには業態転換も有力な選択肢かもしれませんが、業態転換に必要な店舗の改修や設備の導入、人材育成など多額の費用が想定されます。

本記事では、業態転換に取り組む飲食店経営者に対する「外食産業向け業態転換等補助金」について解説します。支援対象となる取り組みや支給額も紹介しますので、活用を検討してみましょう。

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コロナ禍における外食産業の動向について

日本フードサービス協会の外食産業に関する調査によると、2021年(1月~12月)の外食産業の市場規模は、コロナ前(2019年)の83.2%に留まります。業態別の状況は次の通りです。
(外食産業の2021年売上高)

業態 2019年比 2020年比
ファーストフード 101.8% 104.8%
ファミリーレストラン 70.3% 91.8%
パブレストラン/居酒屋 27.2% 57.8%
ディナーレストラン 57.4% 89.9%
喫茶 69.2% 100.1%
その他 76.7% 98.8%
83.2% 98.6%
参考:日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 令和3年(2021年)年間結果報告」

業態別に見ると、緊急事態宣言などで「酒類提供の制限・禁止」などの規制を受けた「パブレストラン/居酒屋」の売上は、2019年比で27.2%と大幅に減少しました。一方、「ファーストフード」については、テイクアウトやデリバリーを増やすなどの対応により、売上を維持しています。

このデータからもわかるように、従来の飲食スタイルだけでは売上が維持できないため、事業の存続に向けて業態転換等の検討が必要なケースもあると思われます。

外食産業向け業態転換等補助金とは


外食産業向け業態転換等補助金は、2022年6月15日から公募がスタートした飲食店経営者向けの農林水産省の補助金です。

コロナ禍で業績の悪化した外食産業が、業態転換などで業績の立て直しを図るのを支援するために設けられました。

どんな取り組みが対象?

補助対象となるのは、次の2つの条件を満たした取り組みです。

  • 新型コロナウイルス等の感染症拡大防止対策を前提とすること
  • 飲食店の行う業態転換など

「現在扱っている商品・サービスの内容を変える取り組み」や「商品・サービスの提供方法を変える取り組み」が対象となります。
飲食店経営者向けの補助金の公募案内パンフレットには、次の通り具体的な取り組み例が記載されていますので参考にしてください。

画像引用元:令和4年度外食産業事業継続緊急支援事業のうち業態転換等支援事業公募(第1次)のご案内

補助率と補助金下限と上限の金額

補助金の補助率は、後述する対象経費の2分の1です。また、補助金の限度は次の通りです。

  • 補助金の上限:1,000万円
  • 補助金の下限:100万円

総事業費が200万円以上の取り組みが補助金の対象となるため、総事業費200万円未満の取り組みに対する補助金はありません。

対象者は?

補助金の対象となるのは、次の4つの要件をすべて満たす飲食店事業者(業態転換等を実施する事業者)です。

まとめ
  • 飲食店の営業許可を持ち各都道府県の感染症拡大防止対策(第三者認証制度)を取得している
  • 飲食店事業における2021年度の売上高が2019年と比較して5%以上減少している
    (2018年4月1日から申請時点まで飲食店として活動していることが前提)
  • 「資本金5千万円以下または従業員数が50人以下」または「資本金の額などが10億円未満」であること
  • 同じ応募内容でほかの補助等の交付対象者(または候補者)でないこと

また、補助金に応募するには、共同事業者の選定が必要です。

飲食店経営者は共同事業者の協力を得て、業態転換等の事業計画立案や計画実施などを行います。

共同事業者になれるのは、資本関係のないコンサルタントや金融機関、中小企業診断士、機械・機器・システムの製造・販売業者などです。

対象経費は?

対象となる経費は、業務転換等に必要とされる次表の経費などです。
(外食産業向け業態転換等補助金の対象経費)

対象経費 経費の例
建物費 事務所や生産施設、加工施設、販売施設 など
機械装置・システム構築費 機械装置や工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 など
技術導入費 必要な知的財産権等の導入に要する経費 など
専門家派遣費 専門家に支払われる経費 など
運搬費 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 など
外注費 加工や設計、デザインの一部を外注する場合の経費 など
広告宣伝・販売促進費 製品・サービスの広告や展示会出展、市場調査の経費 など
研修費 従業員などに対する教育訓練や講座受講等に係る経費
委託費 特殊な知識・技術が必要な事業の一部を第三者に委託する経費

今後のスケジュールと申請に必要な書類


補助金を受けるまでのスケジュールや申請に必要な書類について説明します。
 

スケジュール

補助金を受けるまでの流れは、①事業計画を策定して補助金申請を行う、②交付決定(採択)後に計画を実施する、③事務局に完了報告する、の3ステップです。事務局とは、日本能率協会コンサルティングのR4外食業態転換事業の事務局のことです。

おおよそのスケジュールは次の通りです。

スケジュール
  • 公募期間:2022年6月15日(水)~8月1日(月)
  • 交付決定:2022年9月頃(予定)
  • 事務局への完了報告:2023年2月15日(月)まで
  • 交付決定から完了報告の最終日までの間に、事業計画を実施し補助金の対象経費の支払いを終えた上で、完了報告しなければなりません。

    また、2023年2月15日前でも、事業の完了した日から1カ月を経過した場合は、その日までに完了報告しなければなりません。
     

    必要な書類

    補助金を受けるために事務局へ書類を提出するのは、補助金への応募時と事業の完了報告をするときです。補助金への応募時に必要な書類は次の通りです。

    • 補助事業申請書(別紙様式1-1、別紙様式1-2)
    • 事業計画書(別紙様式2)
    • 実施スケジュール(別紙様式3)
    • 経費内訳書(別紙様式4)
    • 連絡先一覧(別紙様式5)
    • 提出書類自己チェック表(別紙様式6)
    • 事業計画補足説明書(必要に応じて事業計画書を補足する資料などを添付)
    • 見積書および選定理由書(補助対象経費の見積や選定に関するもの)
    • 業態転換等事業実施者(応募者)の会社概要・店舗概要等が分かる資料
    • 共同事業者の会社概要が分かる資料(会社パンフレットなど)
    • 飲食事業における2019年度と2021年度の売上高が分かる資料
    • 各都道府県が発行する食品営業許可や飲食店営業等の許可書
    • 各都道府県が発行する飲食店感染防止対策認証制度(第三者認証)等の取得がわかる資料

    1~6の書類については、公募要領・様式(ZIP形式)よりダウンロードできます。また、11の「2019年度と2021年度の売上高が分かる資料」とは、売上高が5%以上減少していることを示す書類で、決算報告書や確定申告書のコピーなどが該当します。

    補助事業の完了後に事務局へ提出が必要な書類は次の通りです。

    • 実施結果報告書(別記様式第6号)
    • 支払経費ごとの内訳を記載した資料、帳簿等の写し など

    1の書類については、実施規程・様式・別表よりダウンロードできます。

    よくある質問

    外食産業向け業態転換等補助金について、よくある質問をQ&A形式でまとめてみました。参考にしてください。

    (Q1)2019年度の営業期間が1年未満の場合でも補助金はもらえるの?
    (A1)2019年度に3カ月以上の営業実績があれば申請可能です。2021年度の同時期と比較して売上高が5%減少しているかどうかを判断します。

    (Q2)持続化給付金や事業復活支援金の給付を受けている場合、応募は可能ですか?
    (A2)可能です。持続化給付金などは、事業継続を支援することを目的とした使途に制約のない資金であり補助金ではないからです。

    (Q3)共同事業者をどうやって探せばいいですか?
    (A3)事務局から紹介は受けられないため、導入・利用を検討している内容に応じてインターネットなどで自分で探してください。「一般社団法人中小企業診断協会」「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」「一般社団法人日本自動販売システム機械工業会」などの業界団体のホームページなども参照してみましょう。

    (Q4)補助対象にならない経費をいくつか教えてください。
    (A4)土地・建物の購入費や家賃、既存設備の更新、車両やパソコンなどの購入費、資格試験の受験料(研修費用は経費)、求人広告の費用、などは対象外です。

    まとめ

    外食産業向け業態転換等補助金は、コロナ禍で業績の悪化し業態転換等に取り組む飲食店経営者を支援するものです。

    1,000万円を上限に、業態転換等にかかった費用の2分の1を補助金として受け取れます。

    消費者の行動様式が変化し、新型コロナウイルス感染症が収束しても従来通りのやり方では事業の継続が難しいケースも考えられます。

    自社の事業モデルを再点検し、必要性を感じたら、補助金を活用した業態転換等を検討してみましょう。

    (編集:創業手帳編集部)

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